男性育休取得者事例

株式会社ヒロテック 三宮さん

技術開発部 性能解析課  三宮 広之さん(写真左)
プロジェクト管理部 管理二課 三宮 かえでさん(写真右)

夫婦で一緒に育児にかかわって、家族関係もキャリアもハッピーに!

国内に2社、海外に13社とグローバルに事業を展開する株式会社ヒロテック(以下、ヒロテック。ヒロテックの記事はこちら→)。
今回取材したのは、夫妻共に同社に勤務する技術開発部性能解析課三宮広之さん(以下、広之さん)と、プロジェクト管理部管理二課所属で、現在は育児休業(以下、育休)中のかえでさん(以下、かえでさん)ご夫妻。広之さんは入社4年目、かえでさんは入社5年目という若手のカップルだ。

ある民間会社の調査(※1)によると、男性の育休取得について、「賛成」と考える20代男性の割合は98.5%、育休取得を「希望」する20代男性の割合は81.7%と非常に高い。今回は、夫の広之さんが1カ月間の育児休業を取得した三宮夫妻に、育休を取得した経緯や感想、ワークライフバランスや今後のキャリアについて伺った。

Q. 育休を取得しようと考えたきっかけをお聞かせください。

広之さん 日本では、まだ「夫は外で働き、妻は専業主婦で家を守る」という夫婦の役割分担の考えも残っていると思います。しかし、私は「女性がキャリアアップできないのは良くないな」と考えていました。また、妻だけに子育ての負担を押し付けるのではなく2人で協力したいとも思いました。社内で男性が育休を取得するケースは少なく、正直ためらいはありましたが、妻に背中を押される形で取得を決意しました。

かえでさん 私が強く希望して、主人に育休を取得してもらいました。育児が始まると、日常生活が大きく変わります。そういった変化に2人で対応し、今後の生活基盤をつくるという意味で、父親の育休は絶対に必要だと考えていました。育児において、夫が妻に指示をされなければ、子供の世話ができないのは良くないと思っていましたし、育休期間中に子供の様子を察しながら、夫が自信をもって一人で対応できるようになってもらいたいと考えていました。
社内であまり前例がないため、育休の取得について会社に相談することは、言い出しにくさもあったと思います。ただ、実際に取ると決めてくれたときは、とてもうれしかったです。

Q. なぜ、夫に「育休を取得してもらいたい」と強く思うようになったのでしょうか。

かえでさん 私には年の離れた妹がいるのですが、私の父はいわゆる「昔ながらのお父さん」で、仕事ばかりで育児は全くせず、母の大変そうな姿をずっとそばで見てきました。私も幼いながらに育児を手伝い、妹たちの成長する姿を見ながら、子育てについて何となく理解してきました。
そんな中、妹たちと父との間に少し溝ができてしまった様子を見て、同じ状況にならずに済むにはどうしたらよいのかとずっと考えていました。その答えが、父親も育児を行い、子供ともっと関わったほうが良いのでは、ということでしたね。

Q. 今回、1カ月間の育休を取得されました。期間についてお2人はどう感じていますか。

かえでさん 夫が、一人で一通りの育児ができるようになることが育休取得のゴールだと考えていたため、それは達成できたと感じています。
2人とも初めての経験ですので、同じスタートラインに立って最初の1カ月を乗り越えた意義はとても大きかったです。

広之さん 妻も言うように、同じスタートラインで育児スキルを身に付けるという点で、1か月という期間は必要だったと思います。今のところ予定はないですが、例えば、子供が保育園に入園し、妻が復職するタイミングでもう1カ月取得するという取り方も、妻の負担を減らすという意味では良いのかもしれないと思います。

Q. お二人で育休を取ってみて良かったと感じる点について、お聞かせください。

かえでさん まず、2人とも余裕を持って育児に取り組めたことです。親になって最初の1カ月を家族として笑顔で過ごせたことが何よりも幸せだと感じます。
また、夫に対する信頼は抜群に上がりました。父親として頼りがいがあると感じています。あとは、育休中、夫が幸せそうだったことですね。

Q. 広之さんの復職後の仕事やご家庭の様子をお聞かせください。

広之さん 現在はフルタイムで勤務しています。今は仕事が終わって子供の世話をするのが楽しみで、なるべく早く帰れるようにしたいという意識に変わり、前向きな気持ちで働けています。毎日帰宅後の2時間は、完全に私が育児を担当する時間としていますが、全く負担に感じることはありません。妻がリフレッシュする時間をつくれるため、家族がうまく回っていると思います。育休を取っていなかったら、妻の大変さを理解できず、けんかになることも多かったかもしれません。

かえでさん 夫に安心して育児を任せ、私が完全にフリーになれる時間があるおかげで、ちゃんとその日の疲れをリセットすることができ、毎日ストレスなく過ごせています。夕方になると疲れも溜まってくるので、「早く帰って来てくれないかな」と思います(笑)。

Q. 広之さんにお伺いします。率直なお気持ちとして、育休を取得して良かったと感じることはどのようなことでしょうか。

広之さん 育休を取得し、妻と同じスタートラインから育児を経験したからこそ、本当の意味での育児の大変さが分かったことでしょうか。子供は比較的おとなしい日もあれば、なかなか泣き止まない日や、一日中抱っこしていなければならない日もあります。客観的に見ているだけでは分からない辛さや疲労を理解できるので、例えば家事が少しおろそかになったとしても、「一日中家にいるのに、何でできていないんだろう」などと思うこともありません。
あとは、純粋に育児が楽しいと感じられることです。私自身、もともと育児や子供が特別好きだったわけではないですが、今は日々の子供の成長が楽しみですし、育児も苦労だと思うことはありません。もし育休を取っていなかったら、義務感で退屈そうに育児をしていたかもしれません。

Q. 今後、育休を取得する同僚や後輩に対して、どのようなアドバイスを送りますか。

広之さん 職場の環境によっては、取得希望を伝えることに、勇気が必要な場合もあると思います。ただ、良い意味で空気を読まずに、堂々と育休を取得して欲しいと思います。
育休に対する周囲の考えを変えるのは、なかなか難しいかもしれませんが、男性の育休が進むことでこれから少しずつ変わっていけば良いなという希望はあります。家族を大事にしたいという気持ちがあるなら、その気持ちに正直で良いと思います。今は、夫婦共働きが当たり前ですし、女性が結婚や出産で退職するケースは少なくなっています。
女性も働いて、キャリアアップする機会を保つためにも、男性も積極的に育児に参加すべきではないでしょうか。

Q. 貴社では、育児とキャリアアップを両立して活躍している女性も多いように見受けられます。ご自身の今後のキャリアビジョンについて、率直な思いをお聞かせください。

かえでさん 就職活動のときに、リクルーターをされていた有重さん(有重さんの記事はこちら→)にお会いし、まさに育児とキャリアアップを両立されているロールモデルに身近に触れ、私もそうなれたらいいなと思いました。
仕事に全力投球だった妊娠前の時点を100%とすると、復帰後も90%くらいではできると楽観的に考えていましたが、今は60%もできないのではないかと少し不安に感じています。両立されている方は本当に努力されていると思いますし、同じことが自分にもできるかというと、自信がなくなることもあります。一方で、子供は本当にかわいく、手をかけられる間はかけてあげたいという気持ちも芽生えてきました。会社の制度やさまざまなサービスを活用しながら、両立していきたいと考えています。
育児が一段落したあと、再び100%で働ける環境があることは、とてもありがたいと感じます。夫と2人で育休を取得することができ、会社に対して感謝の気持ちがより大きくなりました。当社で長く働きたいと思っています。

Q. 育児とキャリアアップの両立を実現するためには、どのようなサポート(会社・家庭)があれば良いとお考えですか。

かえでさん 働き方については、妊娠中から業務を複数担当制にしてバックアップしていただき、安心して働くことができました。産前産後休業にも、スムーズに入ることができました。
当社には、必要に応じて利用できる両立支援制度(※2)があり、男女関係なく申請し、取得することができます。育児中は、時短勤務を利用する女性が多いですが、男性も気兼ねなく利用できるよう職場の理解が進むことを望んでいます。
妻もキャリアアップしていくためには、夫も育児を担うことが前提だと思っていて、その意味で、夫の育児参画は不可欠だと考えています。

Q. ワークライフバランスについて、どのようにお考えですか。関連して、大切にしている価値観などありましたら、お聞かせください。

広之さん 仕事と家庭のバランスという意味では、ライフステージに合わせて家族を優先しても大丈夫と楽観的に考えています。男性と同じように、女性も当たり前に働き続けるようになり、女性の働く機会やキャリアアップの機会を奪わないためにも、男性も積極的に育児に参画すべきだと思いますね。

かえでさん 育児だけでなく、介護や病気などと付き合いながら働く人が増える中で、柔軟な働き方に対し、上司や会社の理解は不可欠だと思います。健康で制約なく週40時間働ける人を前提とした働き方から、多様な働き方を選択できる社会に変わっていけば良いと思っています。

(※1)出典:積水ハウスグループ 男性育休白書2021 「3.男性の育休取得の実態」
(※2)両立支援制度:株式会社ヒロテックでは、育休復帰後、子供が小学校に入学するまでの間1日につき、2時間以内の労働時間を短縮する時短勤務を申請することが認められている。