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輝く女性事例

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「社内初の女性管理職への道を進むことが
後進のためになれば」

広島空港ビルディング株式会社

  • サービス産業
  • 三原市
  • 31〜100
所在地 広島県三原市本郷町善入寺64番31
URL http://hiroshima-airport.com/
所属・役職 個客サービス部 課長
ご本人氏名 宮川 知子 さん

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1993年~
広島空港ビルディング株式会社入社後、案内所で交通や観光案内等の案内所業務(現在は外部委託)を担当。入社3年後に第1子、6年後に第2子を出産。当時は育休取得の前例がなく、産休のみ取得し、職場に復帰。

2007年~
同社の事業部(現個客サービス部)に異動。免税売店担当主任として、免税品の仕入れ、販売等の業務を担当。他空港視察、シンガポールへの出張等を通して、同業務についての経験値を積み、同課の係長、課長補佐へと昇格。

2015年~現在
同社の個客サービス部の課長に就任。現在は免税売店・直営店チームのマネジメント、中期計画や年間売り上げ計画の作成業務等を担当。管理職としてのやりがいと大変さを同時に感じながら日々奮闘を続けている。

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同社で初となる出産後の職場復帰

広島空港内にある同社が運営する免税売店や直営店の管理を課長として担当する宮川さん。同社に入社したきっかけは、職場が家から近かったことと、入社前にワーキングホリデーでカナダやニュージーランドに行くため空港を頻繁に使用していてなじみ深かったことだった。入社してからは、案内所業務(現在は外部委託をしているため、同社の従業員が案内所に立つことはない)に配属され、交通案内・観光案内・館内案内・旅行保険の受付等の業務を担当した。入社して3年目に第1子を授かったが、その当時女性従業員は結婚・出産を機に辞めるのが当たり前のような時代であったため、宮川さん自身も仕事を辞めるかどうしようかと悩んだ。その時、母からの「良い会社に入ったのに辞めるなんてもったいない。援助するからがんばって仕事を続けなさい」という言葉と、サポートしてもらえる環境に後押しされ、同社女性従業員初となる出産後復帰を果たした。当時から育児休業は法律で制定されていた(※1)が、実際に育児休業を取得していた女性は同社にはおらず、宮川さんも産後休業の8週間のみ取得した。
当時を振り返って宮川さんは、「(産後休業明けすぐの復帰は、)若かったのでできたことだと思います。当時は両立支援に対する職場の体制も整っていなかったので、子育てはほとんど母親に頼っていました。家庭と仕事の両立の大変さは十分理解できます」と語る。

※1「育児休業等に関する法律(育児休業法)」は1991年に成立

免税売店での活躍を経て、昇進昇格

入社14年目から同社の事業部(現個客サービス部)に異動となり、免税売店担当の主任に就任。同地位にいた女性が結婚を機に退職したことをきっかけに後任として抜擢された。免税売店は一般店と違い保税業務(※2)という専門的な知識を要する。また、サプライヤーとの取引の中でもある程度の情報を有していないと正確に内容を理解できず、有利な交渉ができないため、業務に必要な知識を自身で勉強したそうだ。飛行機の発着便によっても売れる商品が異なるため、他空港との情報交換や交流も非常に重要だと言う。「今度○○便が就航するけれど、どういう商品が売れるのかな」といった情報を免税売店間で共有し、仕入先業者を紹介し合うなどしている。他空港への視察や、シンガポールで開催された「免税エキシビジョン」に参加する等の経験を通して、プロフェッショナルとしての意識や自信もつけた。役職も、主任から係長、課長補佐へと順調に昇進昇格した。
これらの努力と成果が評価されたことに加え、社長の「新たなロールモデルとして女性従業員を管理職に登用する」という企業方針も相まって、2015年に個客サービス部の課長となった。それから現在まで免税売店・直営店チームのマネジメントや売上管理業務等を行っている。
管理職になって大変なのは、中期計画、年間の売上計画を作成し、進捗状況について毎月の経営会議で報告しなければいけないこと。特に会議前は、便毎の売上結果やその分析の資料作成に時間を取られ、慣れない頃は四苦八苦していたと話す。その一方でやりがいも感じていると言い、「売上計画を作成し、それをどのように達成するか等について、自分たちの意見を会社が取り入れてくれます。自分自身で考え、行動に移していけるところはおもしろいですね。また、部課長会議では女性だからこそ発言できる機会もあります。ただ、一般女性の感覚を求められた時に、自分自身が女性感覚について鈍く分からないことも多いのですが…(笑)。あとは部下をまとめ、全員で目標を共有して業績を向上させることが今後の課題です」と笑顔で話してくれた。

※2 保税業務とは…
外国から輸入された商品を免税売店で販売する際、関税を払っていないため特別な申告書を税関に提出する等の業務

管理職の苦悩を支える周りのサポートの偉大さ

入社当時から、管理職になることを目指していたわけではなかった宮川さん。同社にロールモデルがいなかったことから、管理職になるという想像すらしていなかったと言う。資料作成や人をまとめることが苦手で、役員から「課長になってもらいたい」と言われた時、最初は断ろうとしたが、「道を作らないと次が続かない」と説得され、同社の女性従業員の中で自身が最長勤務者であったこともあり「不安を抱えながら課長を引き受けた」と当時の心境を話してくれた。
管理職になってからは、課長という立場上、上と下に挟まれて難しい立場になったことも多々あった。帰宅後に悔し涙を流したことも数え切れないほど。しかし、その度に立ち上がることができたのは周りの大きなサポートがあったからだという。一番相談できるのは直属の上司だ。免税売店関連業務の知識が豊富で、他空港にも顔が利く頼もしい存在。そんな信頼のできる上司が、すぐ近くでサポートしてくれるのは心強い。また、家族のサポートも大きい。昔から宮川さんの仕事と家庭の両立を支えてくれている母はもちろん、結婚当時は「家庭に入ってほしい」と言っていた夫も今では家事や育児をし、宮川さんが管理職に就任した時は喜んで応援してくれた。子どもも、昔から宮川さんの帰宅前にご飯を炊くなど積極的に家事を手伝っていて、「今では妹のためにと長男が料理をするまでに成長した」と語ってくれた。
管理職として大変なことも多いはずだが、周囲のサポートに支えられながら「女性初の管理職」としての道を後進のために切り拓いている。その雄姿はきっと後輩の目に焼き付いて、未来を照らす灯りになっていることだと思う。