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輝く女性事例

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「一社員として、一土木技術者として、別の組織を見たことで、深みと幅広さを身に付けた」

復建調査設計株式会社

  • サービス産業
  • 広島市
  • 301以上
社名 復建調査設計株式会社
所在地 広島市東区光町2-10-11
URL http://www.fukken.co.jp/
所属・役職 経営管理本部 社会デザイン創発センター 首席研究員
ご本人氏名 川上 佐知さん

(2018年12月現在)

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2001年~
大学院卒業後、復建調査設計株式会社に入社し、環境技術部に配属される。海域環境の担当技術者として各地調査業務や計画・設計業務などに幅広く従事する。

2005年~
環境部水圏環境課に所属し、海域の中でも広島湾や瀬戸内海などの「閉鎖性海域」の計画業務を専門に行う。この間、主任、係長と昇進・昇格するとともに、技術士の資格を取得し、プロジェクトの中心的立場で業務を行うようになる。

2013年~
環境部付けの新事業開発担当となり、部内各課や他部署と連携しながら開発業務に従事。

2015年~
東京にあるシンクタンクに出向し、リサーチコンサル部門コミュニティ&インフラデザイングループのマネジャーとして、各種官民連携支援事業に従事。

2018年~
経営管理本部社会デザイン創発センターの首席研究員となり、新規事業開発を行う。

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建設コンサルタント会社に技術職として入社。幅広い実務と研究の機会にも恵まれ

海岸の防護、保全および利用に関する「海岸工学」について、大学院で研究していた川上佐知さん。川上さんが学んでいた土木系の学部において、約40名いた学生のうち、唯一の女子であったそう。そんな「土木女子(ドボジョ)」である川上さんは、大学での研究成果を生かすべく、建設コンサルタント会社である復建調査設計株式会社 (以下、復建調査設計)に入社し、海域環境の担当技術者として仕事を行うことになった。

入社当初に担当したのは、広島港五日市地区人工干潟における、環境調査だった。広島県は、広島港五日市地区において、流通拠点港湾の整備などを目的とする154haの埋立事業を進めた。この埋立地に隣接する八幡川河口部は、県内でも有数の水鳥の生息地であったため、人と自然の力を組合せ、干潟を造り、干潟に生息する多くの生物を呼び戻す試みが行われた。その造成後におけるモニタリングの調査が川上さんの仕事。その他、入社して早々、尾道糸崎港海老地区人工干潟など、各地の調査業務や計画・設計業務などに幅広く従事した。

「技術者として、現場で専門的な業務経験を積み、同時に大学等との共同研究により論文を執筆して発表するなど、充実していました。また、国際シンポジウムへのパネルブース出展について、その企画・運営を任されました。出展の内容を企画するにあたって、自社の所有技術が何で、どこに他社との違いがあるのかを調べ、自社について客観的に考える良い機会となりました」と、新入社員時代を振り返る。

海域環境の専門家として経験を積み、社外にロールモデルを発見

入社して5年目頃からは、広島湾や瀬戸内海など、周囲を陸地に囲まれた「閉鎖性海域」の環境再生や保全に関する計画業務を専門的に行うようになった。そして、国や県の発注部局が複数にまたがり、かつ継続的展開が求められるような大きなプロジェクトも担当することに。例えば、干潟の造成計画に関する案件では、生活に深く関わる地域の漁協など、利害関係者と話をすることも多かったという。

「こちらが専門家として、良いと思うプランを立てても、見方を変えれば、そうでないこともあります」と、川上さんは言う。さまざまな立場の人に理解を示しつつ、プランを立て、説明するという、精神的なタフさが求められる仕事だったそうだ。環境部水圏環境課での7年間の間に、主任、係長と昇進・昇格するとともに、技術士の資格を取得し、プロジェクトの中心的立場で業務を行うようになった。

またこの頃、土木学会コンサルタント委員会の活動へ参加し、同業の女性技術者との人脈も広がったそう。「社内に女性の技術者として活躍する先輩はほとんどいませんでした。しかし、学会では、同業の40代~60代の女性の先輩もたくさん活躍しており、色々な働き方があるな、と励みになりました」と、川上さんは話し、社外でロールモデルを見つけたようだ。

新規事業開拓とシンクタンクへの出向で学んだ働き方の多様性

13年目となる2013年に、環境部付けの新規事業開発担当となった。従来型の土木系の公共事業が減っていくと予想される中、会社として新規事業を開拓するというのが川上さんのミッション。そして、県内各地の「スマートコミュニティ(※)事業化調査」に携わり、システム会社など、他業種と取り組むプロジェクトが増え、土木系コンサルディング以外のさまざまな考え方や事業の進め方に触れることなった。

さらに、2015年から東京にあるシンクタンクに出向し、官と民が連携して公共サービスを提供することや、公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営に、民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うことについてのコンサルティング業務などを経験。異なる業務について学んだだけでなく、異なる組織の一員として、チームを組成して業務を実施し、働き方についての学びも多かったという。

「上司(部長)は女性で、部下の中には育児中の女性専門職もいました。時短中のメンバーには、まとまった仕事をある期限までに、自身の裁量で実施することを指示し、工夫しました。色々な働き方の選択肢が必要であると感じた一方、色々な働き方をしている方を生かす組織力が必要であるとも感じました」。

※スマートコミュニティとは、様々な需要家が参加する一定規模のコミュニティの中で、地域におけるエネルギー需給を総合的に管理し、エネルギーの利活用を最適化するとともに、高齢者の見守りなど他の生活支援サービスも取り込んだ新たな社会システム。
経済産業省のHP参照(http://www.meti.go.jp/press/2017/06/20170623002/20170623002.html)。

世の中が変化し、コンサルティング内容も変化。多様な人材の力が必要

出向から戻り、経営管理本部社会デザイン創発センターの首席研究員となった川上さん。同センターでは、建設コンサルタントの「建設」にこだわらず、各種地域課題を解決するため、あらゆる分野で官民双方の活力を生かしながら、まちづくりや地域経営(マネジメント)を積極的に支援する新たなコンサルティング業務を行っていくことがミッションだ。川上さんは、具体的には、人口が減少し、高齢化が進む地域での新たな拠点づくりや公共交通に関する計画や事業化検討を現在行っている。

復建_女性文中写真.jpg「今の土木には、インフラを計画・整備するハード的視点だけでなく、防災や福祉、エネルギー、交通、経済など、多様化する地域課題を総合的に解決するソフト的視点が求められ、私たち建設コンサルタントが備えるべきスキルも増えています。

そうすると、複眼的な思考が求められますので、多様な価値観を持った専門家が複数で業務を遂行していく必要があります。当然、女性の力、女性の視点ももっと必要になります。私たちの仕事は地域課題を解決する『まちづくりの医者』だと思っています」と、これからの業務と、多様な人材の必要性について、熱がこもる。

プロ意識が高い川上さん。これからも「まちづくりの医者」として、新たな付加価値を創造する専門家として歩んでいく。