女性活躍事例一覧

「非正社員から正社員・管理職への道を整備。
子育て後の即戦力となる人材を確保」

中鋼運輸株式会社

  • 運輸業・郵便業
  • 呉市
  • 101〜300
  • 両立・継続支援
  • 人材活用
所在地 広島県呉市広町田2丁目7-41
URL https://www.chukou-unyu.co.jp/
業務内容 昭和34年の創業以来、「物流に付加価値」をつけてお客様とともに歩むことをモットーに、物流のトータルサービスを提供している。現在は運輸事業、倉庫事業、引越し事業、開発事業という4本の柱で、東北から九州まで全国に事業所を展開している。「正確に」「スピーディーに」「コストを抑えて」が物流に強く求められる昨今、より良いサービスの提供を目指して中鋼運輸(株)は挑戦を続けている。
従業員数 134名(2017年4月1日現在)
女性従業員比率 10.4%
女性管理職比率 7.1%

(2017年7月現在)

type2_chukou_unyu_1.jpg

代表取締役社長 保岡 義昭氏

seika_header_sesakuyaseika.png

  • 女性管理職という道を身近に感じさせた企業内ロールモデルの存在
  • 非正社員から正社員、管理職への登用実績も1例あり
  • 女性ドライバー増に向けた今後のチャレンジ

seika_footer.png

1 女性管理職という道を身近に感じさせた企業内ロールモデルの存在

運輸・郵便業界の女性比率は19.5%が平均(※)である。しかし、中鋼運輸(株)のようなガスボンベ等の重たい荷物を輸送する業界は少し特殊で、全職種で当たり前のように女性が活躍しているとは言えないのが現状である。中鋼運輸(株)における女性比率は10.4%、人数にして30人に満たず、そのほとんどが事務職である。本社経理や各拠点の事務職に女性が配置されており、しかも育成に時間を要する新卒採用ではなく、即戦力となりえる30代中心の中途採用が多くを占め、既婚者や子育て中の者が多い。
中鋼運輸(株)の特徴は、正社員として採用または登用後は、ほとんどの女性が定年の60歳まで勤続して退職するという企業風土が30年以上続いていることである。現在の女性管理職は呉営業所の課長のみであるが、本社経理課の係長、その他主任クラスといった次世代の管理職候補といえる女性従業員も存在する。女性従業員に責任ある役割を与え、育成していく方針のもとで過去には部長代理にまで昇格した女性もいた(平成28年退職)。現在活躍している女性管理職は60代。子育てが一段落した時期に非正社員(パートタイム)として入社し、後に正社員となった。請求や支払い、ISO事務局、経営資料の取りまとめ等を担当し、着実にキャリアを重ねてきた。
保岡社長が事あるごとに「女性の力が必要。女性が活躍できるように」と声を挙げることで働きやすい環境が醸成されており、女性の管理職登用も長年続いてきた。こうしたロールモデルの存在意義は大きい。女性従業員が管理職になることに抵抗を示さず、評価されれば昇進するという流れが定着してきているからだ。

(※) 出典:総務省統計局(2016年)『労働力調査 長期時系列データ 表5 第12回改定日本標準産業分類別就業者数』

2 非正社員から正社員、管理職への登用実績も1例あり

現在、育児休業を取得している従業員はいないが、小学生以上の子どもを持つ従業員は多く、子どもの学校行事には半日単位等の有給休暇を取得して参加しているという。有給休暇が取りにくいという雰囲気はなく、企業としても取得を推進している。男女とも有給休暇の取得率は40%を超えた。(厚生労働省の「平成28年就労条件総合調査」によると運輸業、郵便業の平均取得率は48.2%)となっていることから制度はほぼ有効活用されているといえる。
また、非正社員(パートタイム)は週20時間勤務という枠を設け、原則はその中で自由に就業時間の調整ができるようにしている。このため子育てや介護など家庭の都合に合わせたフレキシブルな働き方が可能である。
一方で、自分のために使える時間が増えた際に、非正社員から正社員に登用する制度も整備されている。最初は非正社員で採用され、子育てが一段落ついた後にフルタイムで勤務する正社員になるという選択肢が用意されている。前述したとおり、非正社員から正社員に登用され、管理職に昇進した従業員もいる。どのライフステージにおいても会社が受け入れ体制を整え、業務に対する評価を平等にするという安心感と、定年までいきいきと働きロールモデルとなる先輩が存在することが、長く働きたい女性従業員の心の支えとなっているようだ。また、時には全拠点の女性が本社に集まり、交流会を開催することもある。これも保岡社長の一声から実現したもので、経営者が女性従業員の活躍を心から願っていることが伺える。

3 女性ドライバー増に向けた今後のチャレンジ

採用に関しては、男女の区分なく、能力がある人を採用する方針であり,2年前に初の女性ドライバーを採用した。大型免許及びユニック(移動式クレーン)の資格保有者であり、現在は東広島営業所に所属し、中国・四国及び九州地区の運輸を担当しているという。他のドライバー同様のシフトが適用されているが、荷物や移動距離などは負荷が重くなりすぎないよう配慮されている。また、採用後は、女性が働きやすい環境にするために女性トイレの改修等も行った。
物流業界は深刻なドライバー不足が問題となっており、今後は会社においても女性ドライバーの採用が肝になると北吉総務課長は言う。
現状は、非常に重い荷物を手で積み下ろしするような業務もあることから、女性では体力的に難しい仕事も多い。しかし、将来的には、機械化等により労働環境を改善し、男女とも働きやすく、女性もドライバーとして活躍できるようにできればと考えている。

●取材担当者からの一言

中鋼運輸(株)は、事務職のみではあるが、パートから正社員への登用実績がある。子育てが一段落した女性がさらなる活躍を目指した際の受け皿ができており、実際に管理職まで昇進した実績もあり、非常に先進的といえる。労働力人口の中で60~64歳の次に多いのは現在40代前後のいわゆる団塊ジュニア世代である。つまり子育てのピークを終えた専業主婦層が多く存在するということだ。今後就業可能な年齢が上昇することも想定すると、団塊ジュニア世代は70歳ぐらいまで約30年間働くことができるのだ(図1参照)。そこに優秀な人材が埋もれている可能性が高いと考え、人材不足に悩む企業として早々に動き出した点は評価すべきではないだろうか。

図1 女性の年齢階級別人口及び有業率

type2_chukou_unyu_2.png

出典:女性の年齢階級別有業率:「平成24年就業構造基本調査」
   女性の総人口:「人口推計(平成24年10月1日現在)」

type2_chukou_unyu_3.jpg●取材ご対応者
総務課課長 北吉 真盛 氏