女性活躍事例

「特性に合わせて工程を組んだ結果、
製造ラインに4割の女性が従事」

株式会社マテック

  • 製造業
  • 広島市
  • 31〜100
  • 両立・継続支援
  • 人材活用
  • 能力開発・キャリアアップ支援
  • 評価・処遇
所在地 広島県広島市佐伯区石内北5丁目1番16号
URL http://ma-tech.co.jp/
業務内容 株式会社マテックは、1997年広島市安佐南区で現代表取締役である田村社長が設立。業務内容は、プラスチック素材販売とプラスチック加工品製造、分野は建材・硝子・建築、産業・工業、サイン・看板・店装等多岐にわたる。「多品種少ロット」を武器にこの20年で急成長・拡大を続けており、現在は工場が付設した広島本社、工場機能を持つ福山営業所、そして大阪にサテライトオフィスを有する。
従業員数 43名
女性従業員比率 27.9%
女性管理職比率 25.0%

(2017年10月現在)

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代表取締役社長 田村 昌巳 氏

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  • 男女区別ない採用・配置で、製造ラインに業界平均より高比率(4割)の女性が従事
  • 丁寧なOJTにより未経験者が着実にスキルアップする仕組みづくり
  • 残業時間削減と人事評価についての取組と今後の課題

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1 男女区別ない採用・配置で、製造ラインに業界平均より高比率(4割)の女性が従事

 株式会社マテック(以下、マテック)の主要事業は、プラスチックの加工品製造とプラスチック素材販売の2つ。加工品製造に関しては産業・工業用分野が7割以上を占めるが、建材・硝子・建築分野、サイン・看板・店装分野など幅広い分野の注文にも対応する。看板や建築等であれば私たちの目に触れる機会も多いが、産業・工業用は、製造に使用される機械の1パーツに使用されていることから、私たちの見えない部分で暮らしを支えている部品だ。

そんな同社の特徴は「製造ラインで女性が活躍している」こと。業界平均と比較すると、プラスチック製品製造業に従事している女性従業員比率(全体)は業界平均より8%低いものの、「製造工程従事者」を比較すると4%、マテックが上回っている(図1)。つまり、製造工程に携わっている女性従業員比率が業界平均に比べて高いということがわかる。

図1 プラスチック製品製造業において全体・製造工程従事者の女性比率の比較

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マテックでは、なぜ製造ラインの女性従業員比率が高いのか。
その理由は「男女区別ない採用・配置」、「女性でもできる製造工程を組む」ことの2点にある。

まず採用においては、ハローワーク求人のみを活用。現在、会社が急成長中で人材不足であるため、新卒採用活動が始まる時期まで待てないことから中途採用に絞っている。求人の際に求める人物像を「やる気があれば経験・年齢不問」とし、「土日祝休み」、「時間外労働時間の少なさ」、「年間休日の多さ」と、働きやすい職場をアピールした結果、応募者数を一定程度確保することが可能となり、選定に苦労するほどであるそうだ。採用において特に重視しているのは「やる気」。製造ラインの採用についても同様で「やる気」があれば性別年齢を問わず採用しているという。

製造ラインに従事する従業員の4割が女性になったのも意図的ではなく、本人の希望を元に配属した結果だ。配置に関しては、個人の「やる気」と適正、そして能力を踏まえ、機械を選んで行う。もちろん、法律で禁止されている重量物を取り扱う業務には女性を配置しないが、育成・評価等の面では男女の区別はない。製造業において一般的に女性の配置が多い「検品」や「梱包」等の業務への配属はもちろん、製造工程である「穴開け」、「接着」等の業務にも適性・技術を見て配置していることからも、その様子がうかがえる。

また育成に関しては、男女問わず従業員の多くは未経験で入社するため、先輩によるOJT指導と、月に1回の社内勉強会(社長や部長、材料メーカーの方等が講師)によって技術や知識を習得するよう促す。実際に、同社で業務を一人前として任されるようになるには3年程度かかるそうだ。


type2_matech_4.jpgこういった女性活躍の背景には、田村社長が推し進める「男女区別なく働ける環境づくり」がある。「当社は性別で区別はしません。全従業員の一人ひとりがどこまで活躍できるのかという点を見ています。従来、男性しか扱っていなかった機械でも一工夫を加えるといった、良い意味での配慮をすれば女性も製造ラインで活躍できますよ」と、田村社長は話す。


2 丁寧なOJTにより未経験者が着実にスキルアップする仕組みづくり

同社初の製造ラインで働く女性で、今年10年目を迎える従業員に話を聞いた。

彼女が同社に応募したきっかけは、マテックの待遇の良さと、家から近距離であったこと。製造職を希望した理由を尋ねると、「事務より体を動かす仕事がしたかったから。製造の経験はなく、実際に会社に入って初めて機械を触りました」と話す。


type2_matech_5.jpg不安はなかったか尋ねたところ、「最初は自分ができるかどうか不安でしたが、工場長や社長がOJTで丁寧に指導をしてくださいました。最初は『穴開け』作業からのスタートでしたが、今はそれより高度な技術が必要となるボール盤を用いての『タップ切り』、熱を加えて樹脂を溶かしながらの『接着』、ドリルを用いて『アクリルを磨く』等の業務にも携わっています」と教えてくれた。マテックのトップも参加する丁寧なOJTが女性従業員の活躍を支えていると同時に、男女ともに着実にスキルアップを重ねていける仕組みづくりが従業員一人ひとりの技術の高さを担っていると感じた。


彼女は、製造ラインで採用された初の女性であったが、社内に年齢が近い従業員が多かったこともあり不安は少なかったという。現場でのやりがいを尋ねると、「難しい加工品を失敗せずに完成させられたらうれしい。自分の成長にもつながっていると感じます。入社当初は設計図(※2)を見ても全くわかりませんでしたが、今では設計図を見るだけで加工する向きや加工工程までもわかるようになりました」と目を輝かせながら話してくれた。

今後の目標は、自身の可能性を広げていくことと、3年前に同じ製造ラインで働く女性従業員が入社したので、後輩指導に力を入れていくことだそう。マテックは結婚・出産をしても仕事と家庭を両立できる制度や環境がしっかり整っているので長く働き続けたい、と話していた。

※2 同社では、受注の際、顧客から設計図を受け取り、それに基づき製品の製造を行う

3 残業時間削減と人事評価についての取組と今後の課題

type2_matech_6.jpgマテックに女性が応募してくる理由の1つに、両立しやすい職場環境がある。

残業時間の削減に関しては、1人あたりの残業時間の目標を最大で月に24時間と設定。その目標を達成するために、3つの取組を行っている。

1つ目は、「残業時間の見える化」を進め、全従業員の残業時間を管理、把握すること。

2つ目は「稼働率の見える化」で、1つの製造工程にいくら時間がかかったかをチェックしている。把握方法は、製造・売上が一緒になったソフトウェアを用い、1つの部品を製造するための工程を5つに分け、それぞれにバーコードを振る。稼働開始時(機械が動き始める時)と終了時(機械が動き終わる時)に該当のバーコードを読み取ることで実際に機械を動かしている時間を把握する。

3つ目に「チーム内ローテーション」がある。製造ラインには大きく分けて、旋盤チーム、フライスチーム(※3)、品管チームの3つのチームがあり、品管チーム以外は各7~8名が従事している。そのチーム内でジョブローテーションを行い、属人化を避けて誰でもカバーできるような体制をつくっている。

田村社長が掲げる「男女区別なく働ける環境づくり」では「平等な評価」も欠かせない課題として残る。賃金制度に関しては、どれくらいキャリアを積めば、どのようにランクアップをして賃金が上がっていくのかがわかるような賃金体系を整備し、従業員が見える場所にその表を貼って意識啓発を行っている。年功序列と成果主義をうまく組み合わせた制度設計が考えられている。しかし、平等な評価制度について田村社長は頭を抱える。

「全従業員を平等・公正に評価したいと考えているが、なかなか難しい。人事評価は自己評価と上司からの評価が一般的なものですが、私は部下からの評価も必要なのではないかと考えています。今は、従業員規模が50名以下ですから、すべての従業員の名前と顔がわかり私の目が行き届く規模ですが、これから企業規模が拡大した時にも適用できるような人事評価設計が必要だと考えています」といい、更なる制度改善に着手していくそうだ。

※3 「旋盤」・「フライス」は製造ラインにある機械の名称。

取材担当者からの一言

type2_matech_7.jpg取材で実際に製造ラインを拝見し、女性従業員が、ボール盤でプラスチックに穴を開ける仕事さばきの「かっこいい」姿に惚れ惚れしてしまった。田村社長が言うように女性が働くことで、職場の雰囲気が明るく和んでいるように感じられた。取材担当者が「製造ラインに女性が活躍しているというのは珍しいことです」と伝えると、田村社長は驚いていたが、それくらい同社が当たり前のように男女区別ない配置を行っていることの証なのだろう。若い従業員も多く、平均年齢は33~34歳。工場長も大変明るい印象だったが、同社で女性が活躍しているのは、田村社長をはじめ、こうしたトップの優しい人柄に惹かれるということもあるのかもしれない。

取材日は奇しくも20周年記念日(10月16日)であった。昨年は20周年記念として全従業員でハワイに旅行に行ったそうだ。仲の良い社風はこうした積み重ねでできているのだろう。



type2_matech_8.jpg●取材日 2017年10月
●取材ご対応者
代表取締役社長 田村 昌巳 氏
監査役 落合 秀昭 氏