女性活躍事例

「子育てが落ち着いた世代が、子育て世代を支える」
循環型の両立支援

株式会社サンライフ

  • 医療・福祉
  • 広島市
  • 31〜100
  • 両立・継続支援
  • 能力開発・キャリアアップ支援
  • 登用
所在地 広島県広島市西区商工センター4丁目6-8
URL http://www.sunlife-gp.co.jp/index.html
業務内容 株式会社サンライフは、広島市に本社を置く株式会社コンセックのグループ会社として2004年に設立。広島県内に4事業所を有し、高齢者対象の介護サービス(サービス付き高齢者住宅、高齢者向け賃貸住宅、介護付有料老人ホーム、ホームヘルプサービス、デイサービス、ケアプランサービス)事業、障害者対象の障害福祉サービス(生活介護)事業を運営する。
従業員数 82名
女性従業員比率 79.3%
女性管理職比率 66.7%

(2017年10月現在)

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代表取締役社長 福田 多喜二 氏

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  • 設立以来、初めての女性管理職を登用で社内の雰囲気も一変
  • 手当の導入により、中途採用促進と従業員のモチベーションアップに寄与
  • 子育てが一段落した世代が支える、両立支援
  • 初の女性管理職として活躍する原動力は「好奇心」

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1 設立以来、初めての女性管理職を登用で社内の雰囲気も一変

これまで株式会社サンライフ(以下、サンライフ)では、事業所で管理業務などを担うリーダー的な従業員は存在したが、人事制度上の明確な管理職はいなかったという。しかし、組織として役割や責任、権限の所在を明らかにし、経営に対する積極的な発言やさらなる活躍を期待すべく、平成29年4月に組織変更を実施。初の管理職として、事業所の責任者となる課長職5名(男性2名、女性3名)と、新しく設立した運営企画部の部長1名に女性が就任した。この結果、女性管理職比率は66.7%になり、医療・福祉業の平均である50.6%(※1)を大きく上回ることとなった。管理職登用した女性4名については、平成16年の会社設立以来、事業所の立ち上げなどに深く関わってきたメンバーだ。

中でも運営企画部の部長に昇格した女性管理職は、全事業所の人事や介護保険請求制度、コンプライアンスなどの会社の管理面を支えるだけでなく、職場内のコミュニケーションを促進させ、職場を活性化する役割を期待されている。

サンライフは、従業員約80名の規模で、従業員全員の顔をお互い認識できるような距離感が取れている。従来も従業員の声が経営層まで届く風通しの良い環境であったが、4名の女性管理職の誕生により、コミュニケーションが一層促され、各事業所の問題点が本社に上がってくるスピードが速くなるなど、経営陣も早速メリットを感じているという。

※1 出典:厚生労働省「平成28度均等基本調査 図9産業別女性管理職割合(課長相当職以上)

2 手当の導入により、中途採用促進と従業員のモチベーションアップに寄与

介護業界は平均勤続年数が約2年といわれており、特に勤務後3年以内の離職率が67.2%と高い。しかし、3年を超えると比較的勤続年数が伸びるという調査データがある(※2)。

サンライフにおいても「従業員の採用」や「定着率の低さ」が企業課題の1つとなっており、人材流出に頭を悩ませていた。そこで、改善策としてまず着手したのが“従業員の報酬制度の見直し”であった。前述の組織変更・女性の管理職登用にともなって給与規程を改定したり、事業所の主任、リーダーなどに対する諸手当の導入を行った。

具体的には、「資格手当」と「処遇改善手当」であり、前者については資格を分類し、介護支援専門員や介護福祉士など業務上責任が重い資格についての手当を増額することとした。後者については従来から導入していた手当であるが、平成29年の診療・介護報酬改定時に介護職員処遇が変更され(※3)、結果的に個人への支給額の増額へとつながることとなった。

この諸手当制度の改正を導入した理由は、給与規程はすべての従業員が目にするものであり、処遇改善として最もわかりやすい指標の1つであると考えたからだ。経験者である中途採用を中心とした人材確保を行うサンライフにとっては、応募者が他社と報酬を比較することに着目し、施策として効果が得やすいと考え、導入を決めたという。

また同社は、今回の手当導入を従業員が昇進・昇格を目指すインセンティブの1つにしたいとも考えているという。資格手当をきっかけとした資格取得であっても、資格の取得そのものは、従業員の技術や能力を高めるとともに、利用者へのサービス向上にもつながる。実際、導入後は従業員からモチベーションアップにつながっているとの声もあがってきているそうだ。

※2 出典:公益財団法人介護労働安定センター「介護労働の現状について平成28年度介護労働実態調査」
※3 出典:厚生労働省
平成29年4月1日より加算の高い新たな区分である「加算Ⅰ」が加わり5区分となる。「加算Ⅰ」を取得すれば介護職員1人当たり月額3万7千円相当の加算が受け取れる。従来の加算Ⅰ(現在の加算II)は月額2万7千円相当であったため、比較をすると月額平均1万円相当の増となる。

3 子育てが一段落した世代が支える、両立支援

妊娠・出産をした従業員の数は平成27年度に3名、平成28年度に4名と増加傾向にある。また、同社の両立支援制度を活用することで全員復職(予定者を含む)をしており妊娠・出産による離職はないという。

サンライフが仕事と家庭の両立支援に関する支援制度以外に“高い復職率”を実現させているもう1つの理由として、同社における「デイサービス事業」の就業時間が、一般的な保育園施設における利用時間帯に収まっており、育児と家事を両立しやすいことが挙げられる。

また、女性従業員の約3分の1が子育て世代であるため、お互いに理解し、助け合いながら、学校行事等の理由で休みを取りやすい雰囲気がつくられているという。

育児休業からの復帰後は、原則として休業前と同じ勤務地および職種で復職することとしているが、復職前に人事担当者と面談し、可能な限り就業継続しやすい環境を優先させるべく配慮しているという。

一例を挙げると、育児休業前は24時間体制の施設運営に携わっていた従業員について、本人の意向や保育園の状況、家族の協力体制などを復帰前にしっかり話し合うことで、無理なく就業継続ができるよう配置を検討している。その結果、休業からの復帰後は、自宅近くのデイサービス事業所に異動することで、ワークライフバランスの取れた働き方を可能にしている。こういった異動が可能となっている背景には、子育てが一段落した世代の支えも大きい。

サンライフにおける非正規従業員の約半分は50代以上の女性であることから、子育てが一段落した方も数多く在籍している。これに着目し、若い世代の応援者としてサポートをお願いしている。子育て中の女性が困難である「早朝」や「夜間勤務を要する業務」を担当するなど、役割分担を図り、子育て世代の勤務時間を調整しやすいよう、サポート役として活躍しているそうだ。

4 初の女性管理職として活躍する原動力は「好奇心」

type2_sunlife_3.jpg平成29年4月から運営企画部の部長を務める横井さんは、前職の上司に、昭和南デイサービスが開所するので、介護業界で働かないか、と声を掛けられたのが縁でサンライフに入社したそうだ。介護業界は初めてであったが、入社後、保険請求業務を担当することになり、独学で勉強を始めた。介護保険制度は頻繁に改正が行われるため、常に最新知識を得る必要がある。責任感の強い横井さんは、仕事に没頭し、大変ながらも新しいことを知ることを楽しんだという。その後、3カ所の事業所の開設に携わり、その都度、一から立ち上げる苦労を経験した。

平成22年に第二子を妊娠、出産。出産後は産休のみを取得し、復帰した。
保育園に入園できるタイミングまでは両親に預かってもらうことを選択した横井さんにその理由を尋ねると、仕事のブランクをできるだけ少なくしたいと考えたからだそう。「仕事を持つことで自分も成長でき、かつ、評価や対価が得られます。私には、家でじっとしているのが合わなかったようです。少しの間だけ専業主婦を経験しましたが、時間を持て余してしまって退屈だと思ってしまいました」と笑って答えてくれた。

運営企画部長である現在も、ほぼ毎日、段原東のデイサービス施設に赴く。ここには、高齢者サービスのほかに、新規事業の障害者支援事業もあり、自身の児童発達支援管理責任者(※4)の経験を生かしながら現場主義を貫いているという。

横井さん自身は時短勤務を活用せず、延長保育などを利用しながら働いたが、これには家族のサポートが重要という。「私の頑張りを家族が理解し、応援してくれている。両親の近くに住むことで、家族のサポートが手厚かったことにも感謝しています。子供が小学生になった今も育児に協力してもらっているんですよ」と話す。

自身は育休を取得しない働き方を選択したが、産育休を取得する従業員のサポートは大切にしているという横井さん。例えば、産育休から復帰する従業員のほとんどが時短を利用するため、常に人員配置の計画や調整に細やかに気を配っている。女性従業員の悩みや事情に耳を傾け、できるだけ希望する環境や時間で働けるようにと気にかけている。

部下の就業継続を応援するには「知りたがることが大切」という横井さん。興味を持って知ることで、女性従業員たちが働きやすい環境をつくることができる。また、自身の仕事や考え方の幅が広がることで、自分の成長につなげることができるという。こうした横井さんの活躍が後進につながっていくことを期待したい。

※4 放課後等デイサービス、児童発達支援センターまたは事業所など児童福祉法に定められた施設での子どもとのかかわりを通して、施設での療育をリードする役割

横井さんのキャリアヒストリー

2004年~
中途採用で医療法人サンライフクリニック(現サンライフ)に入社。
昭和南デイサービスで介護保険請求・デイサービス利用者の介護・送迎等を行う。

2009年~
廿日市デイサービスを経て、サンライフ段原東に異動。訪問介護管理者、デイサービス管理者を担当する。

2010年~
第二子の妊娠・出産。
産前・産後休業のみを利用し、職場復帰。

2013年~
介護の勉強を進めるうちに高齢者だけでなく、子供への支援に対しても関心を持ち、障害児の支援現場での勤務を希望し、転職。放課後等デイサービス(※5)において、児童発達支援管理責任者として保護者との連絡調整、児童の支援・送迎等を行う。

2015年~
サンライフに復職し、各事業所管理者の相談支援等、本社における総務事務を行う。

2017年~
運営企画部 部長となり、現在に至る。

※5 放課後等デイサービスは、学校(幼稚園及び大学を除く)に就学している障害児に、授業の終了後又は休業日に、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進などを実施するサービス(出典:厚生労働省)

取材担当者からの一言

近年、介護業界は人材確保が難しい。中小規模の介護サービス事業者にとって、人事制度や給与制度を整備・改訂することは負担が大きくもある。しかし、従業員の収入に直結する手当などの導入や人事評価の明確化は、従業員のモチベーションを上げ、就業継続を促す有効な策となるようだ。目に見える評価や手当は従業員にとっても理解しやすく、受け入れやすい手法であると感じた。

今回サンライフが導入したのは、国によって整備された新制度を活用した。「処遇改善手当」の申請をすること従業員の給与に手当を付与できるというもので、企業の負担は最小限に抑えることができる。国の制度以外に公共(政府や広島県、市町単位)での支援がある場合もあり、地域や企業の実情に合わせた制度を利用することが新しい第一歩となるのではないだろうかと感じた。

また、子育てが一段落した世代が夜勤等の勤務をこなし、世代間で支え合うといった働き方も、人材確保や就業継続に対する現実的な施策といえるのではないか。ライフイベントによって働き方を変更せざるを得ないという現実を組織全体で当然のこととして受け入れ、支援する風土が重要なのだと改めて感じた。

type2_sunlife_4.jpg●取材日 2017年10月
●取材ご対応者
専務取締役 櫻 浩明 氏
運営企画部部長 横井 史枝 氏