女性活躍優良事例

「残業、出張等、離職の原因となる
“働きにくさ”を細やかに解消」

株式会社ヤマサキ

  • 製造業
  • 西部
  • 101〜300
  • 方針・取組体制
  • 能力開発・キャリアアップ支援
  • 評価・処遇
  • 登用
所在地 広島市中区舟入本町3-7
URL http://www.corporate.lasana.co.jp/
業務内容 株式会社ヤマサキは広島市中区舟入本町に本社を置く、化粧品および医薬部外品の製造・販売を行う化粧品メーカーである。ヘアケア、スキンケア、アロマ、入浴剤、など化粧品全般の開発、製造、商品発送までを社内で一貫して行う。店舗販売だけでなく、ネット通販、カタログ通販で売上を伸ばしており、自社ブランドである「La Sana(ラサーナ)」は洗い流さないヘアトリートメント部門で9年連続で国内売上No.1を獲得している。2015年には、お客様へのサービスと品質向上を目指し自社運営のコールセンターを設置。
従業員数 267名
女性従業員比率 70.0%
女性管理職比率 27.4%

(2017年12月現在)

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代表取締役 山崎 宏忠 氏

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  • 10日ごとに、総務から各部門へ残業時間を配信し、全社で働き方改革に取り組む
  • 人事評価制度を構築、多様な働き方のニーズにも配慮
  • 係長以上の役職者を、部門長会議に参加させ、次世代リーダー育成や社内人脈構築を促す
  • 3人の子供を育てながらキャリアアップも手を抜かず

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1 10日ごとに、総務から各部門へ残業時間を配信し、全社で働き方改革に取り組む

株式会社ヤマサキ(以下、ヤマサキ)は商品開発から製造、商品発送を一貫して行う化粧品メーカーである。商品の中でも「La Sana(ラサーナ)」は「洗い流さないヘアトリートメント部門」において9年連続で国内売上No.1を獲得している人気商品であり、主なターゲットは女性だ。

ヤマサキにおける従業員構成を他の製造業と比較すると、女性従業員比率、女性管理職比率ともに抜きん出て高い(図1参照)。女性従業員比率については、業種別トップの医療、福祉に並ぶ勢いである。

図1 女性従業員比率、女性管理職比率の比較

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女性が活躍しているヤマサキにおける従業員の配置状況は、SE職(システム担当)を除き、偏りなく男性・女性従業員を配置していることが見て取れる(図2参照)。中本真理総務部長は「男女の区別がない社風により、特に男女を意識した配置をしないことが、この結果につながっているのでは」という。

図2 ヤマサキにおける従業員の配置状況

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そんな中、コールセンターは女性従業員を中心として運営している。これは、ヤマサキの商品を購入するお客様の大半が女性ということもあり、お客様目線で物事をとらえることができるように、という戦略的な考えからだそうだ。

type2_yamasaki_5.jpgかつて、コールセンター業務は県外業者に外部委託していたが、お客様へのさらなるサービス・品質向上を目指し、自社運営によるサービス強化を進めることとし、平成27年に本社近くに新たにコールセンター専用ビルを新築した。外部委託から、自社運営に切り替えたことで,女性の活躍の場を生むとともに、ラサーナ商品の愛用者がコールセンターに就業し、商品をアピールするといった好循環が生まれているという。コールセンター業務の移転により、広島県の雇用促進にも貢献しているようだ。


また、マーケティング部商品企画課においては、ヘアケア製品等のマーケット状況に精通した女性従業員が、その道のプロフェッショナルとして活躍している。

さらに、平成26年から平成29年12月現在までに妊娠・出産というライフイベントを迎えた女性従業員は25名であるが、退職者は1名のみとなっており、従業員の定着率の高さもうかがえる。現在は定着率の高いヤマサキだが、以前は長時間勤務を主な理由として、結婚と同時に退職する女性従業員が多かったという。その状況を危惧し、「まずは意識を変えよう。残業は美徳ではない」と平成23年から長時間勤務の是正を行うことになった。

そこで、まず、1カ月の残業時間を45時間以内にすることを目標として、毎月10日ごとに残業実績を取りまとめ、全部長へ配信。時間外労働に対する管理職の意識を変えることから始めた。この取組を各部門長の責任で管理させた結果、全社で45時間以内の目標を達成。その後、1カ月30時間以内へと目標を変更した。この目標も達成したことから、平成30年からは1カ月の残業時間を25時間以内に抑えることを予定しているそうだ。無理のない目標を立て、それを達成しながら企業全体の意識を変えていく着実な取組といえる。

また、全国のドラッグストア等の店舗で直接店舗従業員と接する営業職は重要なポジションであるが、業務のほとんどが出張を伴うということもあり、結婚や出産を機に女性従業員が退職する傾向にあった。そこで、ライフイベントを理由とした離職を最小限にすることに主眼を置き、営業職の女性には本人の働き方の希望を聞いて、必要に応じて営業職から他部門へ異動させることで就業継続しやすい環境を整え、優秀な従業員の流出防止に努めているそうだ。

2 人事評価制度を構築、多様な働き方のニーズにも配慮

長時間勤務の是正と時を同じくし、平成23年に社員人事評価制度を構築することになった。業績が急成長したヤマサキは従業員も加速度的に増え、「制度」が必要な時期になっていた。

人事評価制度はゼロからの構築となるため、外部の専門家と評価制度を検討し、まずは正規従業員を対象とした「一般的な」社員人事評価制度を整備した。翌年には社員人事評価制度を踏まえた上で「パート人事評価制度」を構築。中本総務部長がプロジェクトリーダーとなり各部門と連携して制度設計を行った。

ヤマサキにおけるパート従業員のうち88.0%は女性であるが、制度設計に際して従業員へのヒアリングを実施したところ、同じパート従業員といえど一括りにすることはできないことが判明した。各個人の家庭環境や働き方に対する考え方があり、部門も違えば業務も異なり、多様な働き方のニーズがあるためだ。一例を挙げると、工場に勤務するパート従業員は、配偶者控除を意識した勤務を希望する者が多い。一方、コールセンター業務に当たるパート従業員は正規従業員と同じフルタイムでの勤務を希望する者が多い。加えて、生活環境・家庭環境の変化等でパート従業員から正規従業員への登用を望む人もいれば、逆に正規従業員からパート従業員への雇用形態の変更を希望する人もいる。

「制度はできる限り分かりやすくするとともに、その後の運用が煩雑にならないように」という考えから、分類をできるだけ少なくするよう試みたものの、多様な働き方への配慮をしながらの制度設計は、非常に苦労したという。

平成23年度に最初に社員人事評価制度を構築してから5年の節目となるため、平成28年には、約1年をかけ、先に制定した社員人事評価制度の改定を行った。外部の専門家に加え、女性役員である小山常務取締役兼マーケティング部長もプロジェクトに参画し、「ヤマサキらしさ」を積極的に組み込んだ。その一例を挙げると、目標設定においては、結果だけでなく、その過程の指標も重要な目標として評価対象とした。制度設計変更の主目的は、全社目標を全員が個々の業務に照らし合わせた目標として持つことにより、自部門だけ達成したら良いのではなく、全社一丸となって協働体制で目標達成できる組織になるような仕組みとすることだという。

3 係長以上の役職者を、部門長会議に参加させ、
次世代リーダー育成や社内人脈構築を促す

ヤマサキでは、男女問わず、次世代リーダー人材の育成に注力して取り組んでおり、平成27年から、従来は部長職以上の参加であった部門長会議に課長や係長にも出席を促すことにした。これは、トップが会議の場において全社的な議題をどのように議論しているのか、将来のリーダー候補に具体的に体感してもらうためである。また、部門長会議には、普段の業務で接する機会の少ない他部門の部長等が一堂に会するため、そこへ参加することは、男女問わずキャリア形成支援の場となっているようだ。多様な部門長の働き方を知ることで、将来の自分の働き方が想像しやすくなるだけでなく、他部門の係長・課長と横のつながりを持つことにより、社内のネットワークを構築することができるからだ。

併せて、雇用形態にかかわらず、全従業員が商品開発・販売等にかかわる情報やアイデアを日報で報告する、という仕組みも確立した。女性向けの製品を販売している会社として、全従業員の70.0%を占める女性従業員から、競合の動向、営業のアイデアや顧客目線といった様々な情報や意見をタイムリーに吸い上げ、商品企画等に反映させたり、サービスの向上を図ったりする仕組みは、ヤマサキの強みとなっている。

さらに、パート従業員が全体の62.5%を占めるヤマサキでは、「パートリーダー」という役職を導入し、パート従業員の中から任命する取組を開始した。これは、パート従業員にもリーダーシップを発揮してもらえる環境を構築することが目的だ。

type2_yamasaki_6.jpg特に、製造現場においては管理業務の一部をパートリーダーに任せることで、「責任感」や「やりがい」を持ってもらうことを狙いとした。その結果、パートリーダーは、パート従業員の取りまとめ業務だけにとどまらず、作業現場や製造工程においても、パート従業員の意見を基に改善を実施し、作業効率の向上へとつながった。


4 3人の子供を育てながらキャリアアップも手を抜かず

ヤマサキでは、女性が役員や部長として活躍していることも特徴的である。

type2_yamasaki_7_2.jpg女性役員である小山常務取締役は、リーダーの育成に対して非常に力を注いでいる。幹部だけでなく、一般従業員との面談も積極的に実施し、従業員のニーズを知るために耳を傾ける。そして、各部門のリーダーに会社の発展へつながるような課題を与えることで、モチベーションの向上を図るとともに、自ら考えて行動できる人材へと導いている。さらには、「青年社長育成講座」や「ビジネス・イノベーション」の特別講師として、大学でリーダー育成やマーケティングについて教えるなど、社内外で活躍している。


type2_yamasaki_8.jpgまた、中本総務部長(以下、中本さん)は、「専業主婦より仕事が好き」と第一子出産後の平成10年にヤマサキに入社し、3人の子育てと仕事を両立してきた。

パート従業員として営業部門(営業事務)に入社した中本さんは、簿記の知識があったため、入社後、経理を任されることとなった。重要な役割を自分1人が任せられることとなり、当初不安もあったが、「自身を成長させるチャンス」と前向きに業務に打ち込んだという。

第二子出産後にはフルタイムの正規従業員となった。経理業務に加え、総務業務も行うこととなり、業務の幅は広がった。業務、子育てともに忙しかったというが、他部署の多くの人と接することができる総務の業務はやりがいに溢れていたと振り返る。

さらに、第三子出産後には課長に昇進・昇格。多くの学生の前で会社説明のプレゼンを行うなど、採用活動の最前線にも立った。自らが採用に関わった学生が、新入社員となり入社した後の成長を見ることは、喜びの1つであったという。また、新入社員研修制度のゼロベースからの構築や、人事制度、両立支援のための制度整備などにも取り組んだそうだ。

中本さんは、平成27年から総務部長の職に就いたが、課長時代とは違い、会社を支える幹部としてのプレッシャーを感じる日々だという。特に人事は会社と個人の人生を大きく左右する重要な仕事であり、求められる期待も大きい。会社に貢献するために何をすべきか、常に考えているそうだ。

業務においては、山崎社長の「器を大きくして、成長させる。役職を上げて、モチベーションを高めてもらう」という考えを大事にしているそうで、人事を担当する総務部長としてはもちろん、自身の体験も踏まえ、従業員の成長を促すような施策をこれからも実践していきたいという。「今後は、キャリア形成のための研修制度の充実と、ジョブローテーションによる人材育成に力を入れたいです」と中本さんは今後の抱負を語ってくれた

取材担当者からの一言

化粧品メーカーであるヤマサキは、かねてより女性従業員比率が高かったものの、女性がライフイベントを機に退職しない組織となったのは、長時間労働の是正や継続しやすい部門への異動等の取組を行ってからだという。就業継続が当たり前となった今、今後の課題は女性管理職の登用だろう。ヤマサキの女性従業員比率は70.0%であるが、女性管理職比率は27.4%に留まっている。そのために「課長や係長が部門長会議に参加する」という施策は、女性のキャリア形成の上でとても有意義な仕組みになるだろう。

社内のネットワーキングはキャリア形成のみならず、業務上で様々な利便をもたらす。かつては「喫煙所」「飲み会」「ゴルフ」などが、会う機会の少ない上級管理職や他部署とのネットワークを構築する場という役割を果たしてきたというが、これからの時代には男女問わず別の方法も必要なのかもしれない。

こういった「私的」なネットワーキングに対し、ヤマサキが実施する「業務の中で作られるネットワーク」は、男女問わず、時代に即したものであると感じた。女性の役員や部長、課長、係長が活躍するヤマサキが、広島県内の女性管理職育成の先進事例を作っていくことに期待したい。

type2_yamasaki_9.jpg●取材日 2017年12月
●取材ご対応者
総務部 部長 中本 真理 氏