女性活躍優良事例

「会社を“大家族”と捉え、任せ、見守り、評価する社風。
『イカ天瀬戸内れもん味』ヒットで
業績UPを支える女性従業員!」

まるか食品株式会社

  • 製造業
  • 東部
  • 101〜300
  • 両立・継続支援
  • 能力開発・キャリアアップ支援
  • 登用
  • 職場風土
所在地 広島県尾道市美ノ郷町本郷455-10
URL http://www.e-maruka.co.jp/
業務内容 まるか食品株式会社は尾道市にてスルメフライを主体に、海産珍味およびスナック類の製造販売を行う企業である。2013年12月に発売された「イカ天瀬戸内れもん味」が一躍大ヒット商品となり、全国的に知られることとなった。
従業員数 121名
女性従業員比率 70.2%
女性管理職比率 33.3%

(2018年1月現在)

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代表取締役社長 川原 一展 氏

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  • 女性管理職登用による活躍と機敏な経営で、右肩上がりの実績
  • 新人の育成は組織全体で。任せ、見守り、評価する
  • 従業員は「大きな家族」、仕事と情報を円滑にまわす秘訣は“お節介”
  • ヒット商品の生産目標をわずか3カ月で達成。まるか食品を支える女性部長

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1 女性管理職登用による活躍と機敏な経営で、右肩上がりの実績

広島県はイカ天の生産工場数が日本一であることはご存知だろうか。
イカ天専業メーカーは全国に11社ある。11社中9社が広島県に本社を置いており、そのうち5社が尾道市にある。その中でも、近年知名度が急上昇したのは、尾道市美ノ郷町に本社を置く、まるか食品株式会社(以下、まるか食品)だ。

女性従業員が中心となり「女性をメインターゲット」に据えて企画・開発を進め、平成25年12月に発売した「イカ天瀬戸内れもん味」が、老若男女問わず消費者を魅了するヒット商品となり、全国にその名を知られることとなった。

同商品の大ヒットと共に、まるか食品も急成長。

平成26年4月時点で全従業員数は96名、正規従業員は29名であったが、3年後の平成29年4月には全従業員数が121名、正規従業員は45名と増加した。女性従業員比率は70.2%となっており、食料品製造業の全国平均である52%(※1)より20ポイント以上も高く、女性管理職比率は33.3%と全国平均5.9%(※2)の約5倍であり、女性が活躍中の企業である。

図1.食品製造業(全国)と「まるか食品」の女性活躍状況の比較
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type2_maruka_4.jpg女性従業員比率が高い理由の1つとしては、全女性従業員の77.6%を占める女性パート従業員の活躍がある。大半の女性パート従業員は製造部門、主に製造2部で商品の梱包作業を担当する。定着率は高く、19歳で入社し、70歳の現在まで働き続けている女性パート従業員もいるというから驚きだ。

女性管理職としては、新卒採用で同社に入社してから“まるか食品一筋”の製造2部の森永部長(後述)をはじめ、「イカ天瀬戸内れもん味」開発者の品質管理課の坂本摩理課長、パート勤務だった前職から、まるか食品へ転職後、わずか3年で管理職へと昇進した総務課の吉岡弘美課長など、女性管理職が好調な経営を支えている。

一方で、平成29年広島県女性活躍推進企業実態調査報告書によると、企業内に女性管理職が少ない、またはいない理由として「人材不足」を挙げる企業が多い。そのうち48.5%もの企業は「現時点で、必要な知識や経験、判断力を有する女性がいない」ことが原因だと回答する(※3)。


図2.女性管理職が少ないまたはいない理由
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※3 出典:広島県 広島県女性活躍推進企業実態調査報告書 平成29年3月

この差を探るべく、詳しく話を聞いてみたところ、まるか食品では、性別や年齢により区別せず「能力がある人に責任のある仕事を任せる」社風と、「従業員の生の声を聴き、機敏に経営を行うことで時代に応じた働きやすい環境を整える」方針により、管理職に必要な知識や経験、判断力のある女性が自然と育っているということがわかった。

平成26年は約17億の売上であったが、平成28年においては約22億と約30%の売上増加となっており、女性従業員の活躍が会社の成長を支えているという。

2 新人の育成は組織全体で。任せ、見守り、評価する

「能力がある人に責任ある仕事を任せる」のがまるか食品の社風であり、そこに性別や年齢などの区別は存在しない。

例えば、新卒採用は3年目の女性従業員が担当し、自ら考えて仕事を組み立て行動する。また、新卒2年目の女性従業員を製造部の主任として、主力商品である「イカ天瀬戸内れもん味」の工場を任せている。こうした社風は20年ほど前から変わっていないそうで、森永製造2部部長も入社2年目から約50名のパート従業員を束ねる主任であったそうだ。

type2_maruka_6.jpgしかし、ただ若手に役割と責任を与えるだけでは負担になると考え、同社では先輩社員に質問や相談をしやすい環境を意識して整えている。
まず、各現場で困ったことは「ピンクさん」と呼ばれるベテラン女性パート従業員に相談する。「ピンクさん」の名前の由来は、若手が相談できる人が一目でわかるように、製造現場のリーダーは、ピンクの帽子をかぶっているからだという。ベテラン従業員に相談しやすい環境をつくり、疑問を残さず質問をし、経験を重ねることで新人ものびのび成長していく。

また、必ず月に1度、上司である主任との面談が行われ、業務における悩みや相談を含めて様々なことを話すという。さらに半期に1回は、社長と上司との三者面談も行うという。その場では従業員は5分間のプレゼンを行い、経営に対する提案をしたり、自己アピールをしたり、異動希望を出すなどしているそうだ。

近年、従業員が増加したまるか食品では、2019年の制定を目指し、人事評価制度を整備することになった。年功序列ではなく「できる人間に仕事を任せる」という、まるか食品の社風にあった評価制度を構築することで、それぞれの従業員のモチベーションを高めることを目標とするそうだ。

このように能力に応じて、責任のある仕事を積極的に任せていく。周囲もそれをサポートし、成功体験を積み重ねていく。若手の成長を促し、評価することで仕事の「やりがい」につなげ、定着率の向上へ導いていくという好循環を生み出しているようだ。

3 従業員は「大きな家族」、仕事と情報を円滑にまわす秘訣は“お節介”

まるか食品のもう1つの特徴は「従業員の生の声を聴き、機敏に経営を行うことで時代に応じた働きやすい環境を整える」という風土である。こうした風土の背景には、現会長夫人である川原勝子氏の立ち振る舞いが大きな影響を及ぼしているという。

前社長である夫と共に会社の経営に携わってきた勝子夫人は、昔から従業員に対して「家族」のように接してきたそうだ。例えば、早朝出勤の従業員に対しては自らおにぎりを用意し、残業の従業員にはお弁当とジュースを提供。従業員が20名程度だった頃は、全員にクリスマスのホールケーキをプレゼントすることなどを福利厚生として行っていたのだという。経営コンサルタントからは「コスト削減のために止めた方が良いのでは」と言われることもあったそうだが、川原社長は「従業員は『大きな家族』」という考えから続けたという。そして、今も形を変えながら福利厚生を大切にしているのだという。

また、勝子夫人は子育てをしながら働く大変さをよく理解していたことから、女性のライフイベントに対応する制度整備のため、情報を自ら収集し、常に時代と法律に則した仕組みを構築してきたという。「育児休業を取りんちゃい」「こんな新しい制度があるんよ」と子育てをする従業員に声掛けをしていたという。

このような夫人の行動、考え方を引き継ぐかのように、まるか食品では、3カ月に1度、部署ごとに「懇親会」の開催を義務付けることを3年前から始めた。会社から一人につき3,000円を懇親会費として支給し、実施をしない部署の責任者に対しては反省文を書かせるという徹底ぶりである。

これは「普段からコミュニケーションを活性化させることで様々な情報を素早く上に上げる」という、川原社長の方針によるものだ。根底には「苦楽を共にする従業員はいわば『家族』。同じ釜の飯を食べ、本音を言い合える環境をつくり、価値観を合わせていく」という、まるか食品が大切にしている「従業員は家族」という考えがある。

取組から3年後、狙い通りの効果が現れ、情報も以前より早く伝達されるようになってきた。
また、密にコミュニケーションが取れることで、個人的な事情も従業員同士が理解し、「赤ちゃん産まれたんよね?早よ帰りんちゃい」など、良い意味での「お節介」をして配慮し合うなど、家族のような雰囲気がいっそう高まったという。同時に、従業員から会社に対する要望も多く上げられ、会社もそれに応えることを積み重ねてきた。

例えば、従業員の声を反映した事例の1つに、勤務時間がある。定時は8時15分から17時、時間短縮勤務は9時から16時までだが、中には9時半から12時半までの3時間しか働くことができない従業員もいる。こうした時間的制約のある従業員には面談を実施し、個人の事情に応じた勤務時間の柔軟な設定を行っているという。

その他、3カ月の介護休業の取得を認めたり、子育て中のパート従業員を時間的に融通の利く部署へ一時的に異動させたりする等、個々の従業員に合わせて様々な配慮を行っている。

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4 ヒット商品の生産目標をわずか3カ月で達成。まるか食品を支える女性部長

まるか食品で活躍する女性管理職の一人、森永さんに話を伺った。

type2_maruka_8.jpg製造2部の森永部長は、入社時より製造部門に所属する生え抜き従業員である。
当時、包装の現場を取り仕切っていたのは森永さんの母親世代、もしくはそれ以上のベテランパート従業員。そんな中、入社2年目には約50人のパート従業員を取りまとめる主任となり、業務管理を任された。

すべてが手探りの状況の中で、なんとか形にしていく日々ではあったが、役が与えられたので「やらないとしょうがない、やってみようじゃないか」と思い前向きに業務に取り組んだという。
大変なこともあったが、次第に楽しさを見つけた。それは「自分の裁量で仕事ができる」ということに他ならない。物事は常に動いている。製造現場は止まらない。絶えず自分で判断を下して、ラインを動かし、物を作りだす。森永さんはそこに魅力を見出したと当時を振り返る。

その後、森永さんが異動となった品質管理課に在籍中、空前の「イカ天瀬戸内れもん味」ブームが起きた。

商品の製造が追い付かず、商品の発注を受けてから入荷まで半年待ちとなる状況が発生した。そこで、供給スピードアップのため、新しく自動包装機械を導入することとなり、包装業務に長けた森永さんは現場へ呼び戻された。久しぶりに“ホーム”に戻った森永さんは、川原社長が掲げた1年間での達成目標をわずか3カ月で達成。ラインを預かる楽しさと同時に達成感も噛みしめた。

「初めての機械、初めての工程だったので、3年間の包装現場のブランクは関係ありませんでした。わからないことは機械メーカーさんに直接聞き、何度も足を運んでもらったりするなど、目標に向けて毎日チャレンジの繰り返しでした。『昨日と同じことをしない』『どうすればできるようになるか』だけを考えて仕事に取り組み、大変でしたが達成感はありました」と話す。

平成28年には、生産管理課長と製造部包装課(現・製造2部)の主任を兼任することとなり、既存の製造システムを自社に適した仕様となるよう改良を重ねつつ、効率的な製造工程へと改善を進めた。

そして、平成29年6月には、製造2部の部長へ昇進。今は現場の管理は後進へ任せ、指示を渡すパイプ役となることに徹しているそうだ。

森永さんに今後の目標を尋ねたところ、「あの人みたいになりたいなと思われる人になること」だという。誰か困ったとき、相談しやすく、“困った人を助けることができる人“になることが理想だ。

また、「管理職になったら、自ら部下に歩み寄ることが大事。そして、同期やちょっと上の世代やちょっと下の世代を大事にした方がいい。相談できる人を作ることは仕事において大切なこと。横のつながりを大事にしながら切磋琢磨してほしい」という働くためのコツを、管理職を目指す方や働く女性、後進へのメッセージとして送ってくれた。

森永さんのキャリアヒストリー

1994年~
大学卒業後、地元である尾道市で就職先を探し、まるか食品へ入社。入社2年目にして約50人をまとめる主任となる。主任という職位はこれまで社内になく、新しい職位のため、すべて手探りの状況の中で試行錯誤しながらなんとか形にする。

2005年6月~
第一子を出産し、育児休業を取得。出産で辞める女性が多い中、まるか食品では初めて育児休業の後に時間短縮のパート従業員として復職。3年後には第二子を出産し、育児休業を取得。第二子を出産して復職した初の事例となった。

2012年~
品質管理課へ移動。製品検査、クレーム対応を行う。

2014年~
製造部へ異動。
社長が掲げた1年間での達成目標をわずか3カ月で達成。

2016年~ 生産管理課 課長と包装課 主任を兼任。部下1名とともに新規システムの導入を進める。

2017年~現在
製造2部 部長に昇進。

取材担当者からの一言

まるか食品では、女性従業員が活躍し、経営に大きく貢献していることが印象的だ。

イカ天は今まで「男性向けのおつまみ」か「お好み焼きの具」というイメージであったかもしれないが、女性開発者が女性向けに開発したことで、若い女性というターゲットにリーチし、さらに購買層を広げ、市場拡大を図ることができた。

また、製造現場では、女性従業員が素早く売上拡大に対応するための供給体制を構築した。さらに、社内のコミュニケーションを円滑化する役目も女性従業員が中心となって担っているといい、経営者の情報収集力を高め、判断しやすい状況、現場へも経営者の考えが素早く伝播する状況が生みだされているのではないかと感じた。

その背景には、会長夫人が経営者の一人としていたことで、性別などに区別なく活躍できる風土が形成されていたことがあるといえるだろう。さらに「長く働き続けられる職場風土」「働きやすい職場環境」を醸成し、それが現在にも受け継がれている。

経営層にもやはり多様性が必要で、多くの女性が経営者として活躍する状況になれば、もっと広島経済が活性化するのではないだろうか。

まるか食品の例のように、女性が経営層として活躍し、女性活躍が進んでいる事例は多く見受けられる。これは多様性が生むイノベーションの効果であるともいえるのではないだろうか。今後、大企業でも女性役員が増えていくことを願う。

type2_maruka_9.jpg●取材日 2018年2月
●取材ご対応者
製造部 部長 森永 知枝 氏
総務課長 吉岡 弘美 氏