女性活躍事例一覧

「女性の就業継続や管理職登用に向けた取組を実践」

株式会社ユーホー

  • 卸売業・小売業
  • 福山市
  • 301以上
  • 方針・取組体制
  • 両立・継続支援
  • 能力開発・キャリアアップ支援
  • 登用
所在地 広島県福山市多治米町6-3-5
URL http://www.hc-ufo.co.jp/
業務内容 株式会社ユーホーは「We are UFO.暮らしにもっと“笑顔”と“楽しさ”を」を掲げ、ホームセンターを経営。「より良い商品を、より安く提供する。」という企業使命のもと、地域社会に密着し、住まいと暮らしをサポート。園芸、切り花、日用品、ペット用品、カー用品、家具・家電から建築資材、農業資材など幅広い商品を地域住民のニーズに応じて取り扱う。また広島県のホームセンター業界でいち早く灯油・軽油・ガソリンの販売を開始。備後地区を中心とし、広島県に20店舗、岡山県2店舗を展開している。
従業員数 937名
女性従業員比率 57.8%
女性管理職比率 7.5%

(2017年11月現在)

代表取締役社長  佐藤 哲士 氏

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  • パート社員から正社員・管理職へ。子育て後の新しい働き方を提案
  • 「エリア職」「時間単位の有給休暇」など多様な働き方に対応する制度の充実
  • 女性人事課長のチャレンジ

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1 パート社員から正社員・管理職へ。子育て後の新しい働き方を提案

株式会社ユーホー(以下、ユーホー)はかねてより女性を積極的に採用し、長く安心して活躍できる職場環境の整備を目指してきた。これは、ユーホーの経営戦略上、接客を非常に重要視しており、その担い手の多くが全従業員の54.6%を占める女性パート社員※であるためだ。

ホームセンターの客層は男女比がほぼ変わらず、年齢層も幅広い。それぞれのニーズに合わせた接客が求められるため、1日8時間のフルタイムで勤務し、専門知識が豊富かつ数多くの固定客を抱えるパート社員の存在感は大きい。経営層としても、地域住民・地域社会への情報提供やサービスの充実、人と人とのふれあいを重視した地域密着型のホームセンターとして、業界の停滞やネット販売の台頭に対抗できる女性従業員の接客能力の高さを評価しており、パート社員も賞与の対象としている。

これは、パート社員の労働環境を整備することで人材の獲得や就業継続を図りたいという考えからだ。あわせて「女性の採用拡大」、「女性の就業継続支援」、「女性管理職の増加」を三本柱とし、積極的に対策を実施している。その中の1つである「女性管理職の増加」に関しては、第一段階として、女性管理職比率を8%まで引き上げることを目標に掲げ、現時点で7.5%と達成が近い。

この取組の結果の裏にあるのが、正社員転換制度である。全従業員のうちパート社員が77.1%を占めるユーホーでは、個人の能力を磨き続ける優秀なパート社員に対しては正社員や管理職への登用を実施している。現在、ユーホーには4名の女性管理職が在籍しているが、そのうち2名はパート社員として中途採用された女性であるという。

例えば、現在第一営業部の課長としてバイヤー業務を務める女性管理職は、パート社員として採用されて店舗で接客等を担当し、正社員となった。後に店舗の主任、そして係長へと昇格。働き方や売り上げ、お客様からの評判などが評価され、本部の第一営業部へ異動するなど、着実にキャリアを積み、現職である第一営業部の課長になったという。

パート社員から管理職になった女性2名は、いずれも、店舗採用から、能力や成果を評価され管理職になっている。こうしたことからも、ユーホーでは経歴や性別に関係なく、個人の成果や能力により登用していることがわかる。

※ユーホーでは「パート社員」のうち、7割が女性従業員である。

2 「エリア職」「時間単位の有給休暇」など多様な働き方に対応する制度の充実

3本柱の残りの2つである「女性の採用拡大」、「女性の就業継続支援」を充実させるため、平成29年度の新卒採用から総合職に加え、エリア職を新設した。

ユーホーにおける総合職とエリア職の大きな違いは、「転居を伴う転勤の有無」である。エリア職での採用になると転居を伴う異動がなく、希望する地域に密着して働き続けることができる。一方で、この選択が昇格の妨げになることはなく、店舗の副店長まで昇格することが可能という。

企業側のメリットとしては(1)優秀な人材の確保・定着(2)地域に根差した事業展開の円滑化(3)多様な人材の確保、などが挙げられるといい、労働者側のメリットとしては、勤務地を限定することで就業継続が可能になるとともに、自身のワークライフバランスの実現を図ることができる。また、育児・介護等の家庭の事情との両立もしやすくなるということをPRし、採用拡大を図っているという。

type2_ufo_2.jpgさらに、全従業員中、57.8%を占める女性従業員の就業継続が課題となっている同社では、女性の様々な働き方に対応するため、平成29年9月、①1時間単位の年次有給休暇取得制度、②小学校入学までの育児休業の延長、③子ども手当を18歳まで6,000円支給、④育児のための短時間勤務の延長の4つの制度を新たに整備した。

導入されて間もないため、現在は新制度を周知するとともに活用を促しているが、時間単位の年次有給休暇制度はすでに頻繁に活用されており、男女問わず従業員から、有給休暇の活用の幅が広がり、取得しやすくなったと好評だそうだ。従来は半日休暇を取得し、学校行事等への参加や通院、その他の短時間の用事をこなすなどしていたが、本当に必要な時間のみを有給休暇に充てられるのでシフトの調整がしやすく、頻繁にある学校の行事などにも対応しやすくなったそうだ。

3 女性人事課長のチャレンジ

現在、人事課長として活躍している水田さんは、新卒でユーホーへ入社し、15歳、14歳、10歳の3人の子供を育てるワーキングマザーである。しかし、妊娠をきっかけに退職を考えた時期もあったそうだ。それは、第一子の産育休後、復職した直後に第二子の妊娠が発覚した時である。「当時は妊娠・出産で辞める人が多く、それが当たり前という雰囲気でした」と話す。だが、そんな水田さんを会社に留まるよう説得したのは、かつて一緒に働いてきた先輩たちだったという。

「私たちは妊娠・出産を理由に当たり前のように退職を選択した。子育てが落ち着いた頃に働きたいと思っても正社員として雇ってくれるところはどこにもなかった。今、あなたは辞めるべきではない」と。

一緒に働く女性の先輩は水田さんのロールモデルでもあった。先輩の後押しと説得、そして家族の協力により、水田さんは第二子の産育休の後に復職。その4年後には、第三子を出産し、3度目の復職を経て翌年には主任へと昇格した。

3度の産育休経験は、水田さんに大きな気付きと変化をもたらしたという。
職場に復帰するたびに気付くことは「きちんと引き継ぎを行えば、自分がいなくても業務が回る」ということだ。自分の役割を客観的に見ることで、組織の中で「やるべきこと」や「あるべき姿」を描き、優先順位や、やり方を見直すきっかけとなったと話す。

現在課長となり、より一層自分の業務や発言に責任を持つようになった。担当する業務が増えたことで、各店舗の店長からは水田さん宛てに日々、様々な質問が飛んでくる。その内容は、会社や人事関係のこと、法律・条約にかかわること等、多岐にわたる。これらの対応にあたっては、1つの自己研鑽だと捉えて、日々邁進しているそうだ。

また、水田さんは人事課課長として社内の改革にも前向きに取り組みたいと話す。職場慣行や職場風土の改革もその1つだ。
例えば、かつては土曜日に電話対応をするため、従業員が交代で休日出勤をしていたが、メーカー等が休みであることが多く、結果として解決には至らない場合が多かった。そこで、このような電話応対のために人件費を払うことが必要か否かを協議した結果、留守番電話の設置で代替することとなった。これは人件費の削減だけでなく、従業員にとっても、週末は安定して2連休を取得することが可能となったことから、業務効率が上がったという。

さらに、働き方改革に対しても積極的だ。

具体的に事例を挙げると、40代以上の店長は子育てが一段落していることもあり、土日の有給休暇の希望は少ない傾向にある。一方で30代の店長は、毎週日曜日の午前中は子供のソフトボールの監督を務め、午後から出勤するなど、世代や家庭環境が異なれば、働き方のスタイルは異なる。

同社では、女性従業員が年々増えると同時に社内結婚も増加し、夫婦ともに社内に勤務する例も少なくない。若い世代が夫婦ともに安心して勤務し、成長するためにも、会社全体での理解や制度、対応などが必要不可欠となる。人事課長として今年度、人事制度改革を行った水田さんだが、これからも風土の改革や時代に即した働き方対応について牽引していく頼もしい存在になるだろう。

取材担当者からの一言

人口減少・人口流出が市の課題となっている福山市に本社を置くユーホーは、子育てが落ち着いた女性を中途社員として雇い入れ、管理職まで育てるといった実績がある。

多くの企業は新入社員に焦点を当てて採用を行うが、今後、福山市の企業で注目していくべきは40~49歳の世代ではないだろうか。なぜならば、主な労働力人口である20~59歳の中で唯一、福山市で人口が増えている世代だからだ(図1参照)。

図1 福山市における人口推移(年齢別)
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ユーホーは、採用の拡大・雇用維持に向けた人事制度等の改革を今年度行った。しかし、制度の運用を支えるのは、店長などの現場管理職であり、その理解が不可欠だ。
制度と風土が両輪となって動くことで、働き方改革や女性の活躍が実現する。世代間による働き方の認識ギャップがあるとのことだが、様々な立場による考え方や価値観の違いを理解する場や、会社としての考えを情報発信するなど、意識改革を図ることで改革が促進されるのではないだろうか。

type2_ufo_4.jpg●取材日 2017年11月
●取材ご対応者
総務部部長 石丸 敏裕 氏
人事課課長 水田 理香 氏