女性活躍優良事例

「透明性を高めた人事評価制度や離職防止策でつながりを重んじる組織に」

備後漬物株式会社

  • 製造業
  • 東部
  • 301以上
  • 人材活用
  • 評価・処遇
  • 登用
法人名 備後漬物株式会社
所在地 広島県福山市駅家町法成寺1613-47
URL http://www.bingotukemono.jp/
業務内容 備後漬物株式会社は、「食を通じて家庭に幸せと感動をお届けする」という企業理念の下に、核となる漬物事業だけでなく、うなぎ事業、カット野菜事業と、時代の流れを見ながら新しい事業にチャレンジして売上を伸ばし、現在のグループ年商規模は約190億に達する。ヒットした和風キムチをはじめとする、国産白菜を使用したキムチ等の漬物を全国のスーパーマーケットに届けているが、全て広島の工場で生産・出荷している。
従業員数 397名
女性従業員比率 59.9%
女性管理職比率 15.0%

2018年4月現在

IMG_9281.jpg代表取締役社長 佐藤豊太郎氏

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  • 約6割を占める女性従業員は組織にとっての要
  • 新人事制度により評価の透明性を高めた結果、女性従業員が課長へ昇格
  • 若手従業員の離職防止・意欲向上を目指し、新たな施策を検討中

1.約6割を占める女性従業員は組織にとっての要

備後漬物株式会社(以下、備後漬物)の主力商品である「キムチ」は、中四国のスーパーでは圧倒的なシェアを占めるだろうと、総務部労務・人事課の村上係長は胸を張る。そして、そんな同社を支えるのは、約6割を占める女性従業員である。

2018年4月現在において、女性従業員比率は59.9%となっており、食品製造業の全国平均である52.0%(※1)より約8ポイント高く、女性管理職比率は15.0%と全国平均5.9%(※2)の約3倍であり、女性が活躍中の企業である。

図1 備後漬物と食品製造業(全国平均)の比較

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※1 出典:総務省統計局(2016年)「労働力調査 長期時系列データ 表5 第12回改定日本標準産業分類別就業者数」

※2 出典:厚生労働省(2017年6月)「賃金構造基本統計調査(産業ごとの管理職に占める女性労働者の割合の平均値)」

保育園.jpg全従業員の約6割を占める女性従業員のうち、約9割がパート従業員であり、その多くは製造業務に関わる。

パート従業員も含めた女性従業員の平均勤続年数は11.9年であり、男性従業員の12.7年と比較してもその差は大きくなく、比較的定着しているといえる。商品は全国に出荷しているが、従業員は地元からというトップの思いから、全て広島の工場で商品を製造している。

生産部門は比較的転勤が少なく、パート従業員を含む、全ての従業員が利用可能な社内託児所を整備するなど、働きやすい環境を整えるように努めてきたことが、従業員の定着につながったのだろう。このように、地元の雇用を増やしながら着実に業績を拡大させてきた。

図2 備後漬物株式会社の組織図と女性従業員配置状況

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また、開発部門は常に男女比を50:50にするというポリシーがあるという。これは、男女の感性、味覚を反映した商品を開発しなければいけないという考えからだ。半年に一度の新製品の開発においては、男性、女性の従業員が意見を出し合い、それぞれの感覚を生かすことで、様々なヒット商品が生まれ、成功につながったのではないかと分析する。

2.新人事制度により評価の透明性を高めた結果、女性従業員が課長へ昇格

女性管理職は2018年4月現在、3名であり、経理部、品質管理部、受注管理部に配属されている。2015年時点では女性管理職は2名であり、今年度1名増えたのは新しい人事制度により評価の透明性が高まったことが一因ではないかと、村上係長は分析する。

IMG_9141.jpg事業規模の拡大に合わせて従業員が増えたため、新人事制度を整備して2015年度より運用を開始した。

従業員が就業継続できる雇用環境を整備するとともに、男女問わず能力をしっかり評価する仕組みが大切という考えの下、公平で分かりやすい新人事制度を目指した。また、会社からの評価をフィードバックするとともに、目標達成に向けた支援も行うこととした。

村上係長によると、かつては、評価者である役員等の印象で、昇格者が決まる側面が強かったという。

例えば、それまではさほど成果を出していなかった従業員が、評価直前の仕事で成果を上げると、昇格させるといった具合である。このことは、成果が見えにくい業務を担当する部署の従業員にとっては、昇格し難い状況ではなかったかと考えた。

新人事制度においては、3年間でA評価以上を3回得た人物でないと、昇格の前提条件を満たさない。加えて、面接と論文試験を経て昇格者を決めることとなった。この結果、コンスタントに高評価を得た人物が昇格対象者となる。この制度の下、長年経理課で係長を務めていた女性従業員が昇格対象者として浮かび上がり、見事昇格したという。受注管理部で女性管理職として活躍する小泉課長(小泉さんの記事はこちら)も「かつては女性が社内で評価されていない」といった印象を持っていたそうだが、新人事制度による評価の透明化を歓迎しているという。

3.若手従業員の離職防止・意欲向上を目指し、新たな施策を検討中

備後漬物は5年前からコンスタントに毎年5名程度の新卒者を採用できているという。人材確保が困難な昨今の状況ではあるが、地元の人に働いてもらいたいという方針が地域に伝わり、実績もあることから、確かな就職先として選ばれた結果であろう。

他の企業でも見られるように、目下の課題は若手の離職防止だ。残念ながら、結婚や出産・転職で、せっかく採用して、育てた若手従業員が去ってしまうケースがある。村上係長は、若手同士の横のつながりが少々弱いことと、若手に仕事が面白いと感じてもらえるような機会が少ないのではと考えているそうだ。

また、女性従業員に関しては、部門によっては「女性は昇格しない」との先入観を持ってしまい、能力が発揮されていないのではという危惧もあるという。例えば、受注管理課は全員女性であり、昇格した実例があるため比較的意欲が高いが、開発・品質管理・生産部門は女性管理職の実例が少ないため、意欲が低いような雰囲気がある。

そこで村上係長は、今までは30代の中堅社員が担っていた忘年会や、地元の納涼会などの重要な社内・社外行事プロジェクトや社内報の作成業務を若手に任せることを検討中だ。これには、ある程度年数を経た従業員でないと主体的に考え、行動しないといった課題への対応も含んでいる。男女区別なく若手従業員をリーダーに任命し、主体的に考え、悪戦苦闘しながら成長してほしい、各行事での成功体験を積んで意欲を高め、横のつながりも強化してほしいと考えているという。

取材担当者からの一言

「頑張っているのに評価されない」と感じさせてしまうことは従業員のやる気を削ぎ、組織としても能力を生かし切れないことにつながる。男女区別なく、能力を発揮させる上で、透明で公平な人事評価は欠かせない。備後漬物が新人事制度によって、それを実現したのは、大きな一歩だろう。加えて、男女問わず「若手を辞めさせない」「やる気を引き出す」のに必要なのは「仕事が面白いと思った経験」や、横のつながりを含めた「良好な人間関係」である。

図3にあるように、入社3年程度の業務経験を男女比較すると、女性は男性と比べて「上司等から仕事面で期待されたり、頼られていると感じられた」「自分のアイデアや企画を提案する機会があった」「自分の技術や能力を伸ばしていくことができた」という回答割合が低く、成長の機会に男女差があるといった統計結果がある。また、管理職となっている女性は、それらを感じたと、回答する割合が非管理職の女性よりも高いようだ(※3)。

図3 男女別 初職の仕事経験(複数回答;n=3528)

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これらから考えると、管理職を育成する上においても、男女区別なく若手にプロジェクトリーダーを任せ、成功体験を積ませるといった施策は理にかなっている。備後漬物のこれからの取組を注視したい。

※3 出典:中央大学大学院戦略経営研究科ワーク・ライフ・バランス&多様性推進・研究プロジェクト(2016年8月)「社員のキャリア形成に関する調査」

●取材日 2018年7月

●取材ご対応者
管理本部 総務部 労務・人事課兼広報課係長 村上 友孝氏