女性活躍優良事例

「勤務時間の短縮や有給休暇取得率の上昇など、働く環境を着実に改善」

備北交通株式会社

  • 運輸業・郵便業
  • 庄原市
  • 31〜100
  • 人材活用
  • 登用
  • 職場風土
法人名 備北交通株式会社
所在地 庄原市東本町3丁目11番16号
URL http://bihoku.co.jp/
業務内容 広島県北部の三次市、庄原市、安芸高田市を中心とした県北一帯の路線バスと、県北と広島市を結ぶ高速バスを運行。ニーズに応じて観光バス等の貸切バスによる旅行業も行う。車両の塗装色から「ブル-ライン」として県民に親しまれている。2017年秋には高速バスの全車両に誰でも利用可能なフリーWi-Fi「Bihoku free Wi-Fi」を設置するなど、車内環境の充実を図っている。
従業員数 99名
女性従業員比率 10.1%
女性管理職比率 28.6%

(2018年9月現在)

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  • 女性の勤続年数が長く、管理職が多い理由は、風通しの良い社内環境にあり!
  • 期間限定のアルバイトから正規従業員となり課長代理に昇進  
  • 年々深刻化するバス運転手不足対策としてシニア層の活躍を推進

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1.女性の勤続年数が長く、管理職が多い理由は、風通しの良い社内環境にあり!

備北交通株式会社(以下、備北交通)は主に路線バスと高速バスといった乗合バスを運行し、「ブル-ライン」として広島県北部を中心とした広島県民に親しまれている。同社の特徴として挙げられるのは、女性従業員比率は10.1%と、運輸業・郵便業の19.7%(※1)と比較して低いにも関わらず、女性管理職比率が28.6%と、運輸業・郵便業の10.7%(※2)と比較すると高くなっていることだ。

図1 業種別の女性従業員比率・女性管理職比率、備北交通との比較

図1.jpg

備北交通で働く女性従業員は、事務系の3つの課に配置されている。総務・経理・労務を担う総務課、お客様のニーズや関連法令・自治体制度等を踏まえたバスのダイヤ改正、路線編成や運賃制度、国・自治体等との調整連携を担う業務課、旅行商品・貸切バス等の企画宣伝営業やお客様窓口業務を担う観光課である。総務課と業務課においては女性課長代理が活躍しており(図2、参照)、備北交通を事務面から支えている(総務課の黒田さんについては後述)。

図2 備北交通の組織図

図2.jpg

備北交通における女性従業員の平均勤続年数は13.9年で、結婚・出産といったライフイベントで退職する女性従業員はほとんどいないという。女性従業員が退職しない理由は、備北交通の風土が関係するそうだ。性別に関係なく、従業員の自由な発想で仕事を進めることができ、やりがいを持って働くことができる、また、職場の風通しが良く、意見を言いやすいため女性同士も仲が良いという社内風土だ。さらに、以前は非正規従業員であった女性事務職4名を、正規従業員と変わらない仕事ぶりだったため、2018年4月より正規従業員にした。これは、仕事の内容、時間についても正規従業員と同様であるとの理由からだそうだ。

※1 出典:総務省統計局(2017年)「労働力調査 長期時系列データ 表5 第12・13回改定日本標準産業分類別就業者数」
※2 出典:厚生労働省「平成29年度雇用均等基本調査 図11 産業別女性管理職割合 課長相当職以上(役員を含む)(企業規模10人以上)」

2.期間限定のアルバイトから正規従業員となり、課長代理に昇進

備北交通において初の女性管理職として活躍する総務課長代理の黒田さんに話を聞いた。黒田さんは人事・労務・庶務といった総務全般を担っており、事務面から同社を支えている。

今でこそ、女性初の管理職として活躍する黒田さんだが、1992年の入社当初は1カ月間限定のアルバイトとして備北交通に採用されたという。その期間終了後、正規従業員に登用された。正規従業員として仕事に追われる日々だったが、子供たちが協力して助けてくれたこともあり、仕事と家庭の両立を図ることができたと話す。

2012年には配置換えで総務係長として人事・労務・庶務といった総務関係全般を担当することとなった。以前までの経理業務とは打って変わった内容のため、かなり苦労したという。また覚えることが多く、かなりのストレスを抱えることとなったが、業務で疑問に思うことや知らないことは前任者を巻き込んで素直に質問することで解決していった。

黒田さん.jpgその後、2014年に総務課長代理に昇進。課長代理になる前と業務における違いはないが、昇進したことで社内の会議にも参加するようになった。「会議の場では、なるべく発言するように心掛けています。トップが柔軟なので発言しやすいんですよ」と黒田さんは言う。

また「女性従業員の人数が少ないからこそ、何かできないか」と黒田さんは考え、2017年より女性を集めた意見交換会を開始。7、8人の有志と年4回、業務時間外に集まり、食事をしながら会社や業務についてざっくばらんに話をする機会を設けた。その中の話題の1つとして、バス祭り等で販売するタオルの在庫がなくなりそうという話があがった。「いっそのことデザインも今風に変えてみませんか」と話が盛り上がり、企画として会社に提案。職場の垣根を越えた有志の集まりで作り上げた企画が通り、新デザインとなって、2018年より備北交通のグッズとして販売されている。

人事業務を担当する課長代理として、仕事を進める中で苦心したことは、人との接し方や、世代が異なる部下との関係性の構築だった。そんな背景のあった黒田さんは、心理学に興味を抱き、広島市内で毎週日曜日に行われる心理学の講座に自費で参加し、認定資格を取得したそうだ。また、人間関係の構築にはコミュニケーションが大切と考え、バスの運転手とのコミュニケーションを図るため、毎朝、庄原営業所へ赴くことにした。そうすることで日中に交流を持つことができない運転手と話をし、様子が分かるのだという。「男性の多い職場における、自分の立ち位置を考え、なるべく多くの社員とコミュニケーションを取るように心掛けています」と黒田さん。

目下の目標は「男女問わず、広い視野で物事を見ることができる後進を育てていくこと」だと教えてくれた。

3.年々深刻化するバス運転手不足対策としてシニア層の活躍を推進

黒田さんをはじめとする女性従業員が事務職として活躍する一方、バス運転手への女性の応募者はほとんどなく、これまでに採用・配属された女性は過去一人もいないという。

バス業界全体でも、乗合バスの運転手における女性割合は1.34%と全国的に見ても大変低い(※3)。備北交通ではこの原因は、拘束時間の長さではないか、と分析する。

備北交通の始発は朝5時、最終が24時過ぎのため、路線バスの営業時間に合わせれば拘束時間も長くなる。2016年の調査によると、営業バス運転手の年間平均労働時間は全職業平均と比較して19%長い2,520時間(月平均210時間)(※4)となっている。また平均所定外労働時間数も全職業と比較しても2倍以上も長い492時間(月平均41時間)(※5)との数字が出ている。

多くの男性従業員は40代以上になり、中途入社で運転手としてのキャリアをスタートする。備北交通だけでなく、運転手不足は業界全体の喫緊の課題でもある。全国的に見ても、乗合バス運行に必要となる大型自動車第二種免許の保有者数も減少傾向にある(図3)。

図3 大型自動車第二種免許保有者数の推移(※6)

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そのような状況下で優秀な人材を安定して確保するため、元気なシニア層の活躍の場となるように、定年退職後、最長70歳まで働き続けることができるようにした。

シニア層の運転手の雇用継続にあたっては、安全管理上、健康管理が重要となる。労働基準法に則った休憩時間の設定を行い、拘束時間にも手当てをつけている。また備北交通では有給休暇の取得目標を70%と定めて業務改善活動を実施。全員が確実に取得できるように、シフト確定1カ月前には有給休暇申請を提出してもらい、担当路線や時間の割振を配慮。また「従業員はこのくらい休暇をとるのではないか」とあらかじめ余裕をもった予測の上でシフトを組むこととした。

また事務職においても、働きやすさ向上のため、残業削減に努めた。パソコンの起動と終了時間を自動で取得して、勤怠表に貼り付ける。それを各管理者が把握することで労働時間の徹底的な改善を図った。その結果、終業時刻の1時間後には、事務職全員が退社するようになった。

2017年度の有給休暇は、バスの運転手が約8割である男性従業員全体で74%、女性従業員が78%と目標を大幅に超えた。また、月間総労働時間は男性が162時間、女性が164時間で、月間時間外労働時間は男性25.1時間、女性13.5時間となっている。男性従業員の時間外の方が多いのは、やはり運転手確保に苦労しているためで、今後も引き続き対策が必要と考えているという。

※3
・公益社団法人日本バス協会「2015年版(平成27年)日本のバス事業」
・公益社団法人日本バス協会「2016年版(平成28年)日本のバス事業」
※4
・厚生労働省「平成28年賃金構造基本統計調査」における「営業用バス運転者」の数値。
・平均労働時間数は、「平成28年賃金構造統計調査」の「所定内実労働時間数」及び「超過実労働時間数」の和を年間に換算。
※5 
・厚生労働「平成28年賃金構造基本統計調査」における「営業用バス運転者」の数値。
・平均所定外労働時間数は、「平成28年賃金構造統計調査」の「超過実労働時間数」を年間に換算。https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/var/rev0/0119/7589/jidousha1.pdf
※6 警察庁「運転免許統計」より作成

取材担当者からの一言

備北交通の事務面は女性が中心となり、活躍している。4つある課のうち、2課に課長代理の女性が配置されており、その下には係長として脇を固める女性もおり,後進の育成も行う。一方、運転手は男性中心で、備北交通のみならず、運転手不足に悩むバス業界においては、層の厚いシニア層の雇用による、人員の確保を試みている。安全性の確保が迫られる中で、有給休暇の取得を前提とした余力のある人員数を確保するため、毎朝営業所に女性管理職が行き、バスの運転手とのコミュニケーションを図ることで、個人個人への配慮を目指していることを聞き、人事担当として従業員一人一人をフォローする大変さが伝わってきた。

適材適所で人員を配置しつつ、それぞれが働きやすい環境を作り、世代を含めた多様化を進めて、人材を生かしていくことを進めている様子がうかがえた。

●取材日 2018年9月
●取材ご対応者
備北交通株式会社
専務取締役 栗栖 康範 氏
総務部 総務課 課長代理 黒田 由紀子 氏