女性活躍優良事例

「人材の能力を最大限引き出す適材適所への配置と環境改善への取組」

有限会社八千代運輸倉庫

  • 運輸業・郵便業
  • 安芸高田市
  • 31〜100
  • 方針・取組体制
  • 両立・継続支援
社名 有限会社八千代運輸倉庫
所在地 安芸高田市八千代町上根1208-2
URL http://www.y-u-s.jp/pc/
業務内容 安芸高田市に本社を置く有限会社八千代運輸倉庫は運送業、倉庫業、自動車整備業、燃料販売業といった物流に深く関わる事業を多角的に展開している。運送業においては、関西・中四国地方の荷物を中心に取り扱う。1台1台オーダーメイドした車両を所有することで「一般のトラックよりも多く荷物を積める」「どのドライバーでも同じように積める」という強みを持ち、幅広い荷物に対応している。
従業員数 93名
女性従業員比率 15.1%
女性管理職比率 23.1%

(2018年9月現在)

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  • 適材適所への配置で、人材の能力を引き出す
  • ハード・ソフトの両面から働きやすい環境づくり
  • 女性管理職が組織の困りごとを解決する潤滑油に

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1.適材適所への配置で、人材の能力を引き出す

有限会社八千代運輸倉庫(以下、八千代運輸倉庫)は広島県安芸高田市に本社を置き、運送業、倉庫業、自動車整備業、燃料販売業といった物流に深く関わる事業を多角的に展開している。八千代運輸倉庫の特徴として挙げられるのは、女性管理職比率が高いことだ。女性管理職比率は23.1%と業界平均の2倍近い数字となっている(※1)。


図1 八千代運輸倉庫と運輸業・郵便業の全国平均の比較

図1.jpg

現在、八千代運輸倉庫で管理職として活躍する女性は3名。うち2名はこの2年で管理職へ登用された。能力が周囲に認められての昇格だったというが、背景には八千代運輸倉庫が大切にしてきた2つの人事施策がある。それは人材の能力を最大限引き出すための「適材適所への配置」と「働きやすい職場環境づくり」である。

まず、「適材適所への配置」だが、固定化されがちだった事務職の女性従業員を中心に、10年ほど前より配置転換を実施してきた。「事務職だけでなく、他の業務も知ってほしい」「この人にしかできない、という業務をなくしたい」という宮中隆代表取締役社長(以下、宮中社長)の考えのもと、従業員一人一人の適性を考え、事務職だけでなく営業所や倉庫へ配置転換をしている。

八千代運輸倉庫_1.jpgこの結果、能力をさらに発揮させた者も出てきた。

例えば、30年以上、トラックの運行や配車、請求等の事務職を担当し、倉庫係へ異動した女性従業員である。倉庫係の業務は入出荷の管理のほかに、商品の梱包や検品などがある。特に海外から届いた荷物には、検品をすり抜けた虫などがついている場合があるため、一層注意を払うという。その女性従業員はそういった対応も十分にこなせるため、顧客からの信頼が厚く「彼女に聞けば、荷物の輸送状況がわかる」と言われるまでになった。この結果、管理職である主任へと登用されることとなったそうだ。

同社では、配置転換は能力開発のためだけでなく、従業員の個人的な状況に対応し、就業継続を促すためにも行う。八千代運輸倉庫は一般消費者向けのガソリンスタンドを2005年に開設しているが、年齢や健康上の理由で、運行に不安を抱えるドライバーをそこへ異動させ、雇用の継続を図る例もある。

八千代運輸倉庫_2.jpg現在、ガソリンスタンドでは、年齢層が異なる男女3名ずつが勤務しており、接客を重視したフルサービスで顧客に対応している。従業員の年齢層に応じた常連客がつき、コミュニケーションを深めながら、売上増に貢献しているそうだ。

その中で、育児をしながら主任として活躍する女性従業員は「タイヤを売ったらNo.1」と社内で言われるほど営業能力が秀でており、また経営に関する数字にも強いという。その能力を買われて、2018年に主任へと登用された。

※1 出典:厚生労働省「平成29年度雇用均等基本調査 図11 産業別女性管理職割合 課長相当職以上(役員を含む。)(企業規模10 人以上)」

2.ハード・ソフトの両面から働きやすい環境づくり

八千代運輸倉庫の2つ目の人事施策「働きやすい職場環境づくり」であるが、事務職に少し多めの人材を配置し、余裕を持って業務を振り分けることで、柔軟に対応ができるようにしているそうだ。事務職には女性従業員が多いため、妊娠・出産といったライフイベントや、子供の病気などの突発的な休みに対応できるようにするためである。また、ドライバーとして活躍する女性従業員もいるため、家庭との両立を配慮し、あらかじめ予定を組みやすい定期便を担当させているという。

また経験豊富なドライバーが65歳の定年を過ぎても、嘱託従業員として70歳以上でも勤務可能な制度もある。この嘱託従業員はフルタイムだけでなく、短日勤務形態(原則1日8時間で1カ月の勤務日数は15日)や短時間勤務(原則1日6時間で1カ月の勤務日数は所定日数)を導入し、従業員の希望に応じて選択できるように設定した。これはシニア層だけでなく、介護、子育て、体調などで、フルタイム勤務が難しい従業員も利用することができる。

さらに、働き方改革にも取り組んできた。宮中社長はかねてより「働き過ぎは良くない。休んで自分や家族のために時間を使おう」と考えてきたが、ようやく体制が整ったため実現できた。以前は隔週土曜日を出勤日としていたが、月1度のみの出勤に変更し、2018年から年間休日を89日から105日へと増やした。休日は増えたが、業務への影響があるといった声は今のところないという。さらに、ガソリンスタンドでは、売上が少ない第1、3日曜日を定休日とすることを検討中だそうだ。

働きやすい職場環境を実現するため、ハード面も改善してきた。14年前に本社を改装し、事務所内を明るくきれいにし、男女別のトイレを設置したこともその1つである。この改装を機に、宮中裕子総務・経理部長(以下、宮中部長)が2つのことを提案した。「事務所内の禁煙化」と「全員参加の掃除当番制度」である。

従来は事務所内でタバコを吸うことができたが、事務所内を禁煙とし、外に喫煙場所を設置した。また、掃除当番制度を開始し、取締役以下の従業員全員が、ローテーションで事務所やトイレ、シャワールームの掃除を行うこととした。自分たちが使う施設は自分たちで掃除してきれいにした結果、改装後14年が経過したにもかかわらず、改装当時のような状態が保たれ、気持ちが良い職場になったとともに、全員参加の清掃により、男女の固定的な役割分担意識が少しずつ薄れてきているという。

3.女性管理職が組織の困りごとを解決する潤滑油に

これらの取組には、総務・経理の部長として活躍する宮中裕子さんの存在がある。

宮中さんは、新卒で広島市内にある水産関係企業に、初の女性営業職として入社。それまでスーパーやコンビニの営業担当者は男性しかいなかったが、宮中さんは臆せず飛び込んだ。毎朝午前4時には出社し、営業先を回る生活を4年間続ける中で、女性の後輩もできた。またライバル企業も女性営業職を雇用しはじめるなど、自らがダイバーシティの先駆けとなった。

宮中社長との結婚を機に退社し、八千代運輸倉庫に入社した。「私の仕事はある意味、従業員の御用聞きなんです。困りごとがあれば、引き受けます」と宮中さんは言う。

宮中さんが、現在力をいれているのが、経営層の考えや、会社の方向性などを全従業員に知ってもらうことである。月1回、各部署の所長や課長が出席して、経営会議と安全会議が開催される。内容を周知させるため、会議の議事録を全従業員に回し、読んでもらうように徹底している。また、試験的にガソリンスタンドの全従業員をローテーションで参加させるようにした。それぞれが所長の代理として会議に参加し、内容を自部署に持ち帰り、他の従業員に伝えてもらう。この取組がうまくいけば、全部署へ展開していくという。これにより、各従業員が全社的な視点で考え、行動できるように成長を促せたらと考えているそうだ。

「コミュニケーションを密に取り、困りごとを解決していく。100名弱という規模なので、社内を細やかに見渡せ、幅広い業務を行うことができます。大手ではなかなか経験できないことかもしれません。とても楽しく仕事をしています」と、宮中さんは笑顔で話す。

取材担当者からの一言

八千代運輸倉庫は、シンプルに「適材適所」に配置することで、女性やシニアの力を引き出している。過去は「女性従業員=事務職」であったが、倉庫業務やガソリンスタンドに異動させたことで、事務職以外にも女性管理職が誕生することとなった。

また、「働きやすい職場環境づくり」にも、本気で取り組んでいる様子が見えた。100名弱の規模で、人員に余裕を持ったり、休日を増やしたりすることは、容易でないだろう。社内での効率化等の取組だけでなく、顧客に対する単価アップの交渉や積込にかかる待ち時間の削減などを行い、収益を上げつつ、従業員の働きやすさを実現しようとしている。会社全体として「働き方改革」に向けて動いている様子を垣間見ることができた。

●取材日 2018年9月

●取材ご対応者
有限会社八千代運輸倉庫
総務・経理 部長 宮中裕子氏