女性活躍優良事例

「多様性を軸に、利用者・従業員共に快適であることを大切に」

社会福祉法人 亀甲会

  • 医療・福祉
  • 東部
  • 31〜100
  • 両立・継続支援
  • 能力開発・キャリアアップ支援
  • 評価・処遇
法人名 社会福祉法人 亀甲会
所在地 三原市久井町江木161-1
URL http://www.kikkou-en.or.jp
業務内容 老人ホーム亀甲園の前身である久井村立敬老院は、1949年に創設された。これを継承した社会福祉法人亀甲会は、1965年3月に設立されて以来、地域に根ざした老人ホームとして今日に至る。養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、短期入所生活介護事業所、亀甲園デイサービスセンター、亀甲園訪問介護事業所を現在運営している。
従業員数 88名
女性従業員比率 70.4%
女性管理職比率 33.3%

(2018年10月現在)

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  • どの職場にも男女を配置し、それぞれの長所を生かすスタイルに
  • 時代や個々の従業員にマッチした多様な働き方を認め、人手不足を解消
  • 人を育てる人事制度で、人材のレベルアップにも精力的
  • ロボットの導入、作業の見直しにより、利用者、職員共に快適に

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1.どの職場にも男女を配置し、それぞれの長所を生かすスタイルに

三原市久井町で介護事業を行う、社会福祉法人亀甲会(以下、亀甲会)の女性従業員比率は70.4%であり、介護事業所の全体平均79.2%(※1)と比べると、8.8ポイント低くなっている(図1)。これは、多様性を推進して、男性従業員を増やした結果だそうだ。

亀甲会の前身である久井村立敬老院は1950年に設立と、介護に携わる組織としての長い歴史を有するが、14年ほど前までは、事務職は男性、介護現場は女性という暗黙の役割分担があったという。しかし、事務職においても、介護現場においても、それぞれ人材の多様性が必要と考え、男女共配置するようになったと、勘家啓子事務長は言う。

図1.介護事業所の全体平均と亀甲会の従業員構成の比較

図1_v2.0.jpg

※1 出典:公益財団法人介護労働安定センター「平成29年度 介護労働実態調査」

亀甲会の管理職は、園長、副園長、事務長の3名のみで、うち事務長が女性であるため、女性管理職比率は33.3%となっているが、現場の主任クラスでは、女性6割、男性4割と、比較的バランスよく活躍している。介護の現場ではチームワークが重要だが、男女ともいたほうがうまくいく、というのが亀甲会での考え方だそうだ。

図2. 現場の主任配置状況

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「14年前までは、介護現場は女性のみの職場でした。そこに介護専門学校新卒の男性従業員を初めて配置したのですが、ある意味開拓者であり、大変だったと思います。『利用者から、男性にオムツ交換をしてほしくないと言われた』と思い詰めたように、相談に来たことがありました。『オムツ交換は、女性に任せればいい。男性は力があり、入浴介助などで安心感があるといった利用者さんからの声もある。自分が活躍できる仕事で、がんばりんさい』と、励ましたこともありました」と、勘家事務長は言う。

2.時代や個々の従業員にマッチした多様な働き方を認め、人手不足を解消

亀甲会の正規従業員比率は84.1%であり、介護事業所の全体平均55.5%(※1)と比べると、28.6ポイントと大幅に高い(図1)。「6年前までは、亀甲会にパートの従業員はいませんでした。現場で『夜勤ができないとダメ』という考えがあり、産前産後を含む健康状況、家庭の事情などで夜勤ができない従業員は働けないという雰囲気があり、退職していく傾向がありました。しかし、人材の不足感が高まる中、多様な働き方を認め、人材を確保・維持することが必要になり、現場を説得しつつ、ようやくパート従業員が増えてきました」と、勘家事務長は話す。

運営する4施設のうち、2施設で夜勤があるが、それぞれの規模が小さいため、夜勤がないデイサービス施設への異動といった対応が難しいという。したがって、多様な人材を受け入れるためには、それぞれの事業所ごとに働き方を変える必要があった。

そこで、2013年4月に「パートタイム労働者就業規則」を整備した。パートタイム従業員は、日曜祝日、年末年始は休みである上、正規従業員と比べて1週間の所定労働時間が短いため、勤務時間帯や日数は各従業員と相談して決めていく。

「制度の導入にあたっては、現場の主任に『夜勤ができないとダメ』という考えでは人が来ない、昔とは状況が違うということを話し、日中のみ働く方も不可欠、ということを理解してもらうように努めました。また、パートタイム従業員に対しても、家族の協力を得られる場合は、日曜日なども出勤して助けてもらえるとうれしいということを伝え、お互いの立場を理解し、支え合えるようにしています」と、勘家事務長は話す。

さらに、亀甲会では8年前に精神障害者を採用し、今も活躍している従業員がいる。一般的に障害者採用で長期間定着した例はあまりなく、他組織等から注目されているそうだ。これも、適材適所の考えを実行した結果だ。ポイントは、障害の特性や、その人の能力に合わせた仕事と作業環境をつくること。精神障害者は、複雑でない繰り返しの作業を得意とすることが多い。そこで、同じ時間、同じ場所、専用の掃除道具で行う掃除の仕事を任せた結果、丁寧で確実な作業をしてくれるようになり、定着へとつながった。現在2名の精神障害者、1名の知的障害者、1名の重度身体障害者が勤務している。

3.人を育てる人事制度で、人材のレベルアップにも精力的

常に人手不足を課題とする介護業界において、質の高い介護サービスを提供し続けるためには、評価制度、給与制度、昇格・昇進制度といった人事制度や、人材を育成するシステムをしっかり整備・運用することが重要だ。

亀甲会では、2010年に人事制度を整備した。当時、介護関連団体から示された、見本となる人事制度をほとんどそのまま導入し、評価項目をトップダウンで決定した。しかし、人事制度、評価項目が、各施設の実情と適合したものではなかった。

そこで、2015年より人事制度改革に着手し、現場に合った制度へと改訂とするとともに、効果的に運用するための取組を行っている最中である。具体的には、外部の人事コンサルタントの助言を受けながら、施設長の方針である「個人を成長させる」ことを主眼にして、各現場の主任と共に評価項目の見直しを行った。また、適切な評価が行えるように、2017年から法人内で評価者研修を月に1度開催している。

この評価者研修では、「長く働いている人、介護業務を効率よくこなせる人が必ずしも現場のリーダーである主任として求められるのではない。人のマネジメント、人材育成ができ、コミュニケーション能力の高い人が主任となるべき」といった意識改革をはじめ、人を評価することに慎重になりがちな女性が多い職場で、人を育てるために「何ができて、何ができないかなど、日常業務で気が付いたことは記録に残す。具体的に言葉にして本人に伝えることにより成長を促す。できない所はどのようにすればできるようになるかを主任が具体的に伝える」ことなどを学ぶ。さらに、適切な評価フィードバック方法を各評価者に学んでもらうため、実際の評価者、被評価者に面談をしてもらい、事務長がその様子を観察して、面談後に評価者にアドバイスを実施するなど、模擬「評価フィードバック」を2018年度に実施中だ。

このように、ただ人事制度を整備するだけでなく、適切な運用が行われるよう、導入準備を入念に行い、「人を育てるための制度」となるよう、目指している。

4.ロボットの導入、作業の見直しにより、利用者、職員共に快適に

人手不足、職場環境改善への対応として、新しい器具やロボットを導入したり、一から業務を見直したりし、効率的に質の高いサービスを提供するための改革にも積極的だ。

亀甲会_1.jpgまず、新しい器具についてだが、排尿されるたび、自動吸引する装置「ヒューマニー」を導入したところ、オムツ交換の頻度が利用者によっては日に5、6回から、1、2回になった。特に、夜間から早朝にかけて、以前は夜勤者1名で各人2~3回程度のオムツ交換をしていたが、それが不要となり、負担が大幅に軽減された。

利用者にとっても、冬場は寒く、不快な思いをするオムツ交換が夜間なくなり、朝までぐっすり眠れるようになった。24時間でおむつ交換1回でも快適に過ごすことができる人もいる。

また、離床アシストロボット「リショーネ」も4台導入した。これは、ベッドの一部が分離し、車いすに変形するもの。従来は、食事などの際に、複数の従業員が利用者を抱きかかえて車いすに移動させる必要があったが、従業員1名で、足腰への負担なく行えるようになった。また、今までは各部屋で食事を取っていた利用者が、ベッドから起きて日に3度食堂に行くことで、気分転換になるとともに、褥瘡(じょくそう※2)が少なくなったことが何より良かったという。

また、各ケアについても「本当に利用者のためになっているのか、必要なのか」ということを考え、一から見直してもいる。例えば、オムツ交換は頻繁にするほど、手厚く、良い介護という考え方があるという。そこで、皮膚に優しいとされる布オムツを使い、頻繁に交換するとともに、尿漏れなどを防止するために、従業員が個々の利用者に合うパッドを購入し、利用者が少しでも快適になるように工夫していた。

しかし、布オムツをセッティングするだけで手が荒れてしまう従業員がいたり、利用者の中にもスキントラブルが発生する人がいたりした。つまり、頻繁なオムツ交換が利用者・従業員双方に負担をかけることもあったのだ。そこで、オムツメーカーと相談し、抜本的な見直しに着手した。排泄に特徴のある利用者5名の状況を観察して分析し、パターンごとに利用する紙オムツと交換タイミングを決めた。現場の従業員からは当初「本当に利用者のためか」といった意見もでたが、観察と分析という客観的根拠で説明したこと、実際に運用したら利用者・従業員ともに負担が少なくなったことから、現場に定着したという。

「利用者、従業員共に、良い方向に向かったいい例だと思います。介護においては、身体的な負担から肩、腰、膝などの具合が悪くなり、離職する従業員も多い。従業員が少しでも働きやすい職場にするため、改善を継続していく予定です」と、勘家事務長は話す。

※2 床擦れとも呼ばれる。

取材担当者からの一言

今回の取材の目的は「女性活躍」であるが、亀甲会においては「介護分野での男性の活躍促進」に腐心し、職場の多様性を目指してきた。勘家事務長によると「今までの経験では、女性6割、男性4割だとうまくいく」とのこと。また、同様の考えから、正規従業員だけの職場から、パート従業員も受け入れる職場へと変化させた。

亀甲会は、職場環境の改善に向けた、器具やロボットの導入について先進的だ。今まで「良い方法」と信じ、利用者のために行ってきたことを変えるために、現場の理解を得るのは容易ではない。しかし、外部の専門家の意見を求めたり、観察によって「良い」ということを証明したりし、現場を説得し、改善につなげている。このように、固定観念を崩すような改革で、利用者も、現場も良い方向に向かう例もある。人手不足が深刻な業界だからこそ、他の介護現場においてもこのような取組が広がればと感じた。

●取材日 2018年10月

●取材ご対応者
社会福祉法人 亀甲会
事務長 勘家 啓子 氏