女性活躍優良事例

「個々の従業員の事情に寄り添うアットホームな組織作り」

株式会社高宮運送

  • 運輸業・郵便業
  • 廿日市市
  • 101〜300
  • 人材活用
  • 職場風土
社名 株式会社高宮運送
所在地 廿日市市宮内工業団地1-9
URL http://takamiyaunso.com/
業務内容

廿日市市に本社を置く株式会社高宮運送は、中国地方における食品輸送に特化した物流企業である。1999年の創業時より積み上げてきた実績とノウハウを基に、特に安全性が求められる食品の輸送を担う。従業員の育成を重視しており、定期的な添乗指導や座学研修を実施している。

従業員数 150名
女性従業員比率 20.0%
女性管理職比率 11.1%

(2018年10月現在)

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  • 常に人手不足の業界において、人が定着しやすい風土づくりに成功
  • 女性に優しい職場環境は高齢者や男性にとってもいい環境
  • 未経験の女性を育てたことで入社へのハードルが低く
  • 顧客満足度と従業員満足度は比例関係にあるという考え

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1. 常に人手不足の業界において、人が定着しやすい風土づくりに成功

株式会社高宮運送(以下、高宮運送)は、広島県を中心とした中国地域を輸送エリアとして、物流の中でも特に安全性が求められる食品輸送を専門に取り扱う。1999年創業と比較的新しい会社ながら、毎年度増収を続けており、2013年度からの5年間で約2.5倍の売上高と、大幅な売上増加を達成している。

図1 高宮運送の業績推移(売上高)

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高宮運送のようなトラック運送業は、従業員一人一人がそれぞれの担当車両を運転する典型的な労働集約型の産業である。よって会社の成長のためには、ドライバーとなる人材の確保が必要不可欠となる。しかし、2018年4月時点で全職業(パート含む)の有効求人倍率が1.35倍であったのに対し、トラック運送業全体を見ると、貨物自動車運転手(パート含む)の有効求人倍率は2.68倍(※1)となっている。近年は、人員を募集しても応募がない、採用できても定着しないといった状況で、トラック運送業は慢性的な人手不足という問題を抱えている。

しかし、高宮運送では従業員数を順調に増やすことができている。従業員が家族や友人・知人に高宮運送を勧めることで、人が集まり、「高宮運送で働きたい」と思う仲間が増えたのだという。創業当時はわずか5名であったが、2018年10月現在においては150名もの従業員を抱えるまでに成長を遂げた。

なぜこのような継続的な企業成長と従業員の雇用を実現できているのか。それは、従業員と家族のように密にコミュニケーションを取り、職場環境を改善することで従業員満足度を高め、定着しやすい企業風土を作ってきたからである。

※1 国土交通省「トラック運送業の現状等について」の中の厚生労働省「職業安定労務統計」

2.女性に優しい職場環境は高齢者や男性にとってもいい環境

現在、高宮運送では120名在籍するドライバーのうち、9名が女性だ。日本で活躍する女性ドライバーの割合は2.4%(※2)であるが、高宮運送の割合は7.5%と3倍以上となっている。会社設立当初から女性ドライバーは存在していたが、この15年で徐々に増加してきたという。

高宮運送では、戦略的に女性を採用し、育成するという人事活動を行っているわけではない。しかし、高宮運送に入社したからには性別問わず長く働いてもらえる会社にしたいという思いから、従業員に合わせて業務内容や業務時間を工夫・調整し、働きやすい職場環境を作っていった結果、自然と女性ドライバーが増加したそうだ。

例えば、体の負担への配慮である。無理して受注することはせず、対応ができない業務があれば、得意先に事前にきちんと伝える。中でも負担が重い、荷物の手積み・手降ろしが必要な業務の受注は全面的に廃止した。なぜならドライバーの腰への負担が多いだけでなく、荷物を一つ一つ運ぶため、必要以上の作業工数が発生するからだ。

次に、従業員の勤務時間に応じた定期便トラックの設定である。顧客の受け取り時間に応じて、定期便トラックの出発時間を細かく分けて設定したことにより、従業員おのおのの勤務時間内に収まるように定期便の配送ルートを組むことができるようになった。さらに、運転のしやすさを考慮し、車両のオートマ化も進めている。

その結果として、女性ドライバーだけでなく高齢者、さらには男性も働きやすい環境となった。「従業員に長く働いてもらおうと思ったら、彼らの体の安全も考えないといけません」と高宮社長は話す。

また、ドライバー以外の将来ビジョンを従業員に示すことで、ドライバーから管理職へ、またはドライバーから運行管理者へ、と将来の選択肢を考え、従業員の努力次第で前進できる環境も整備している。その結果、高宮運送には自主的に国家資格である運行管理者の資格を取得した者が18人もいる。

※2 総務省「労働力調査(2017年度)」の「基本集計 第II-5表(産業、職業別就業者数)」より取材担当者が算出

3.未経験の女性を育てたことで入社へのハードルが低く

高宮運送は、トラック輸送業界の人手不足がなかなか解消できないのは、経験者を優先して採用する傾向にあるからではないかと考えた。そこで、新たな試みとして、ドライバー未経験者を採用し、一人前に育てていこうとしている。

takamiya_1_v2.jpgドライバー未経験で入社して6カ月の上田さんは、広島市内便を担当している。現在、普通免許で運転できる2tトラックで、午前中は配達、午後は集荷業務に当たる。平日は9時から17時まで勤務し、定時後は2人の子供を迎えに行き、土日祝日は、休日として子供たちと過ごしている。

上田さんはもともとドライバー志望というわけでもなく、前職と同様の条件で何か良い仕事があれば、と転職を考えていたそうだ。そんな中、高宮運送でドライバーをする友人から、社長との面談を勧められたという。当初はドライバーという職に対して「重い荷物を運ぶ」、「長時間拘束」などのイメージを持ち、不安を覚えていた。しかし、高宮社長の「米袋を持てるなら大丈夫」の一言で「じゃあ、自分にもできるかも?」と思い、入社を決めた。入社後は3週間、先輩や上司の横の席に乗ってルートや仕事を覚える研修を受けてから、「できる」という自信が芽生えたそうだ。

高宮運送のドライバーは、毎月マンツーマンで座学研修や定期的な添乗指導を受けるという。研修の内容としては交通ルールや法規の再確認、ドライブレコーダーのチェックと交通安全対策が中心だ。「私どもは生きる上で欠かせない“食”を運びます。仕事の社会的意義を十二分に自覚して、自分たちは“プロ”のドライバーであるというプライドを持ち業務に臨んでもらうためにも研修を活用しています」と大津幾多郎取締役は話す。

「トラックのドライバー」として就職することに構えてしまう女性が多い中、高宮運送では上田さんをモデルケースとし、今後も、男女問わず未経験者を採用・育成することにより、業界全体の問題でもある人材不足の課題を解決していきたいそうだ。

顧客満足度と従業員満足度は比例関係にあるという考え

takamiya_2_v2.jpg仕事の主役はあくまで従業員であり、経営者はその環境を整えていく役割に過ぎない、と高宮社長は語る。なぜならば、ドライバーは一歩社外へ出ると、業務を1人で遂行しなければならないからだ。そのため顧客からすれば、唯一顔を合わせるドライバーが高宮運送の窓口であり、「顔」となる。ドライバーが雑な仕事をすれば顧客からクレームが入り、高宮運送だけでなく、荷主である顧客にもその影響が及ぶ。

そのため高宮社長は「会社に不満があると仕事が雑になる。従業員満足度は顧客満足度と正比例の関係にある」と考える。そして顧客に対して高品質のサービスを提供するため、従業員満足度を高め、経営層・従業員が一体となって高宮運送を経営していくことを重要視しているという。

取締役専務の高宮香織氏(以下、高宮専務)によると「従業員に合わせた働き方を提供できるのが高宮運送の強みです」と言う。勤務形態という形式的な面だけでなく、従業員それぞれの事情や性格も把握した上で、細やかにフォローし、調整を行っている。また、複数人で業務を担当するようにしたことで、有給休暇の取得や急な休みにも対応ができているそうだ。

高宮運送には子育て世代が多く、運動会の時期の有給休暇の調整は特に苦労するという。しかし、仕事だけではなく、家族との行事も大事にしてほしいという思いから、できるだけ応えるようにしているそうだ。

従業員の意見も聞くが、従業員自らに改善方法を考えてもらうようにも促す。柔軟な対応とは、従業員のわがままを聞くのではなく、横並びの待遇改善だけでもない。高宮運送で働く従業員が何を重視しているか、将来どのようになりたいのか、などを聞き出し、会社としてその要望にどのように応えられるかの擦り合わせを行うことだそうだ。

さらなるハード面の充実として、2017年には国の企業主導型保育事業を活用し本社事業所内に保育園(園名:ひだまり保育園)を開園。現在、従業員の利用者は3名であるが、地域住民も利用が可能ということで18名の子供たちを受け入れている。また、来年、産前産後休業・育児休業を取得する予定の女性従業員もおり、近くに子供を預ける場所があることで安心して仕事に復帰できる環境を用意している。

取材担当者からの一言

高宮運送の強みは、全従業員が150名であるにもかかわらず、経営層と従業員のコミュニケーションが密に、かつ円滑に行われていることである。高宮社長や専務、大津取締役は、従業員をフルネームで覚えているようで、名前と顔、そしてそれぞれの個人的背景を把握している様子がうかがえた。

今後の課題としては、会社の急成長とともに従業員数が増加しているため、今までの経営層と従業員とのface to faceのコミュニケーションから、組織的な管理へと、どのように変化させるかである。高宮運送の従業員を大切にし、和を重んじる企業風土などを理解した管理職層を育てていくことになるだろう。

●取材日 2018年10月
●取材ご対応者
株式会社高宮運送
代表取締役社長 高宮 徳和 氏
取締役専務 高宮 香織 氏
取締役 経営企画室 室長 大津 幾多郎 氏