女性活躍優良事例

「働く人のさまざまな事情に寄り添いながら組織も進化」

株式会社広島三越

  • 卸売業・小売業
  • 広島市
  • 101〜300
  • 両立・継続支援
  • 登用

社名 株式会社広島三越
所在地 広島市中区胡町5-11
URL https://mitsukoshi.mistore.jp/store/hiroshima/index.html
業務内容 株式会社三越伊勢丹ホールディングスのグループ会社の1つである株式会社広島三越は、広島市中区に店舗を構える百貨店。1973年4月の開店以来、「小さいけれど、特別感のある百貨店」を信念に、新しい百貨店のスタイルを切り開いている。
従業員数 211名
女性従業員比率 73.5%
女性管理職比率 38.1%

(2018年11月現在)

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  • 女性従業員比率や管理職比率は業界平均を大幅に上回る
  • 法定以上に従業員に寄り添う独自の仕組で就業継続促進
  • 女性社員を育て、管理職ひいては役員へ

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1.女性従業員比率や管理職比率は業界平均を大幅に上回る

株式会社広島三越(以下、広島三越)は、広島市中区に店舗を構える百貨店である。

広島三越の女性従業員比率は73.5%と、卸売業・小売業の全国平均51.7%(※1)と比べると21.8ポイント高く、女性管理職比率は38.1%と、卸売業・小売業の平均12.7%(※2)と比べると約3倍と、大幅に高くなっている(図1参照)。広島三越の女性管理職は16名であり、営業統括部(店舗での販売)、お得意様営業部(外商)、総務部と、各部門にバランスよく配置されている

図1 広島三越と卸売業・小売業の全国平均の比較

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※1 出典:総務省統計局(2018年)「労働力調査 長期時系列データ 表5 第12回・13回改定日本標準産業分類別就業者数」
※2 出典:厚生労働省「平成29年度雇用均等基本調査 図11 産業別女性管理職割合 課長相当職以上(役員含む)企業規模10人以上」

株式会社三越伊勢丹ホールディングス(以下、三越伊勢丹HD)のグループ会社の1つである広島三越は、女性活躍を含む人事等の方向性について、三越伊勢丹HDから提示される方針に従っている。しかし、具体的な制度の整備や施策の実施については、各グループ会社によって行われるため、広島三越においても、組織に合ったものを整備、運用してきた。

グループの代表的な企業であり、経済産業省による「平成26年度 ダイバーシティ経営企業100選」に選定された「株式会社三越伊勢丹(以下、三越伊勢丹)」と「広島三越」を比較すると、女性従業員比率はほぼ同じであるが、女性管理職比率は広島三越の方が高くなっている。また、女性正社員の平均継続勤務年数については、広島三越は22.1年と、三越伊勢丹の20.7年と比べて1.4年長く、比較的定着していることが分かる。

しかし、部長・役員に女性が登用されていないこと、男性の育児休業の実績がないこと、残業時間削減等の働き方改革などの課題を認識しており、それらへの対応や、多様な人材の活躍を促す取組について話を聞いた。

表1 三越伊勢丹と広島三越の女性活躍に関する状況の比較

三越伊勢丹(※3) 広島三越(※4)
女性従業員比率 正社員:54.4%
領域・勤務地限定社員:89.8%
正社員:55.2%
コース限定社員:97.3%
女性管理職比率 23.9% 38.1%
女性役員比率 7.6% 0.0%
男女の平均継続勤務年数の差異 正社員:男性21.3年、女性20.7年 正社員:男性19.1年、女性22.1
男女別の育児休業取得率 正社員:男性22%、女性100% 正社員:男性:0%、女性:100%

一月当たりの労働者の平均残業時間

対象正社員:6.9時間 対象正社員:8.5時間



※3 三越伊勢丹は東京、埼玉、神奈川で計8店舗。厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」に掲載された2018年4月1日時点の数値。
※4 広島三越は広島県内1店舗で取材時点の数値。

2.法定以上に従業員に寄り添う独自の仕組で就業継続促進

広島三越を含む、三越伊勢丹HDグループ全体の取組としては、労働者派遣法改正に先駆けて2010年度から「メイト社員(広島三越における、コース限定社員)」と呼ばれる、大多数は女性であった月給制契約社員を4年目から無期雇用化した。さらに、正社員への登用試験の受験資格も勤続5年目以降から4年目以降へと変更し、積極的な正社員への転換を行ってきた。また、法定を上回る育児や介護関連諸制度を設け、就業継続を促進した。三越伊勢丹では、2010年度から正社員とメイト社員の育児・介護支援を含む福利厚生制度は同一であったが、広島三越においても、2019年4月から正社員とコース限定社員の制度を同一化することとなっている。

表2 広島三越における主な育児・介護支援制度

制度名 内容
育児休業制度 子が満4歳に達する月の末日まで利用が可能
育児勤務制度

短時間勤務、半日休暇が取得できる制度で、子が小学校3年生の年度末まで利用可能
(在籍期間中の育児勤務と育児休業の合計は最長14年。超えた場合は、末子が小学1年生の331日まで延長可能)

フルタイム早番固定勤務制度 第一子が小学校4年生の年度末まで、第二子以降は、小学校1年生の年度末まで早番での固定勤務が可能
家族の介護のための休暇制度 1対象家族につき年間5日、2人以上であれば年間10日、半日単位で休暇が取得可能
介護休業制度 1対象家族につき、最長1年まで、1カ月単位での分割取得が可能
介護勤務制度 短時間勤務、半日休暇が取得できる制度で、1対象家族につき、最長3年利用が可能
再雇用制度 結婚、出産、育児、介護または配偶者の転勤等を理由に退職した場合、退職後8年以内であれば、退職時の雇用形態で優先的に再雇用する制度
グループ内継続雇用制度 結婚、育児、介護、配偶者の転勤等ライフイベントに応じ、本人希望による地域間異動を可能にする転籍制度


広島三越の女性正社員は、育児休業の取得が定着し、復職時は育児短時間勤務制度(6時間、7時間勤務より選択)の利用も多い。2017年度、2018年度ともに、5人が育児短時間勤務制度を利用している。その他、フルタイム早番固定勤務制度や介護休業制度の利用もあり、女性正社員の平均継続勤務年数は、2013年は18.0年であったが、2018年12月現在では22.1年と約4年伸びた。

今後は、コース限定社員についても制度の利用をさらに促して就業継続を図ることを目指す。また、介護の事例はまだ少ないそうだが、両立をするために上司や人事担当者が制度の利用を助言するなどして、多様な社員の活躍を支援することを考えているそうだ。

また、社員が持てる力を最大限発揮できるよう、安心して働くことができる職場環境づくりを目指している。2018年4月から、計画的な有給休暇を前年度10日から12日取得(次年度以降への積立・繰越も可能)することを目標とした。また、残業の抑制を目的として、2017年度からパソコンの利用は8:00〜20:00に制限する仕組を導入した結果、2016年度は正社員一人当たり月9.4時間から、2017年度は8.5時間に減少し、効果を上げた。取組状況は月一度開催される「働き方会議」にて共有され、施策の効果や課題などを検討しているという。

今後は、若い世代を中心に夫婦ともにフルタイム勤務の共働き世帯が増えていくと予想される中、男性も子育てや家事等を担うことが求められるため、男性の育児休業等の取得を促進し、多様な働き方を実現させることが、同社の課題である。

3. 女性社員を育て、管理職ひいては役員へ

広島三越では、コース限定社員から正社員への転換や、正社員及び管理職への昇格試験にチャレンジする女性が増加している。コース限定社員から正社員への転換は、2016年度から2018年度の過去3年間において3人となった。また、管理職への昇格者の約5割が女性となり、マネジャーについては、2015年度の3名(25.0%、12ポスト中)と比べて、2018年度は7名(43.8%、16ポスト中)と増加している。2018年度にマネジャーに昇格した羽倉沙織さんも、上司との面談を重ねる中で、キャリアビジョンを描き、管理職試験に挑戦した一人だ(羽倉さんの記事はこちら)。現在は若手ながら、広島三越の紳士ファッション部門を取り仕切る。このように女性管理職を増やしながら、出産・育児後も管理職で働いているというロールモデルを増やし、日本一働きやすい会社を目指したいと広島三越は考える。

中四国地方の百貨店において、初の女性店長となった鈴木清江氏(2005年6月~2009年3月まで在籍)が、店舗内改革や女性活躍等を進め、県内外で女性活躍についての講演を多数重ねるなどしていた。しかし、現在は、課長級(マネジャー)の女性管理職が増えているものの、広島三越に女性の部長、役員はいない。そこで、今後は女性社員についてもさらなる育成と、上位者への登用を進めつつ、多様な視点での経営を実現し、店舗業績アップにもつなげることが課題だ。

取材担当者からの一言

広島三越における女性活躍といえば、過去店長であった鈴木清江氏の名前が挙がる。女性活躍について、他企業を取材する中でも、「三越の鈴木店長の講演を聞き、人材活用の方向性が見えてきた。勇気をいただいた」などの声を聴くこともあった。

三越伊勢丹HDの中期経営計画において、「IT・店舗・人の力を活用した『新時代の百貨店(プラットフォーマー)』」としての成長を目指すという。お客様の半数以上は女性であり、海外からの客も増える中、多様な価値観を持つ人の力を生かして、IT・店舗を生かしていくということになるであろう。広島県内における女性活躍推進のパイオニアの1つといえる同社において、若手から経営層まで人材の多様化を一層進め、「小さいけれど、特別感のある百貨店」であり続けてほしいと願う。

●取材日 2018年11月
●取材ご対応者
取締役 総務部長 藤井 康雄 氏
総務部 人事・労務 アシスタントマネジャー 城 美穂子 氏