女性活躍優良事例

「自らのキャリアをデザインする発想で女性活躍を推進」

株式会社モルテン

  • 製造業
  • 広島市
  • 301以上
  • 方針・取組体制
  • 能力開発・キャリアアップ支援

社名 株式会社モルテン
所在地 広島市西区横川新町1-8
URL http://www.molten.co.jp/
業務内容 株式会社モルテンは「世の中をよりよい場所にする」という経営理念の下、コーポレートブランドを“Moving with Possibilities”と定め、人々が一歩前へと動くための製品を提供し、全ての人々の可能性とともに進み続けることを目指している。スポーツ用品、自動車部品、医療・福祉機器、親水用品・産業資材といった複数の事業を展開している。
従業員数 657名(20189月末時点の単体の正社員のみ、グループでは3,800名)
女性従業員比率 22.1%
女性管理職比率 0.9%

(2019年1月現在)

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  • 適材適所により女性活躍の場が拡大中
  • 今できることとこれからのビジョンを自ら組み立てる制度を開始
  • 公私ともにある出会いが好機になり、キャリアの糧に
  • より働きやすく、より続けやすい職場環境へ

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1.適材適所により女性活躍の場が拡大中

1958年の設立より、強みを生かして時代に合わせた多角化を進め、競技用ボール、ホイッスル、自動車のアンダーカバーやブッシュ、床ずれ防止用エアマットレス、手すりなどの製品を世の中に送り出してきた株式会社モルテン(以下、モルテン)。

モルテンの女性従業員比率は22.1%で、輸送用機械器具製造業の全国平均である15.6%(※1)を6.5ポイント上回る。女性管理職比率は0.9%で、同全国平均2.4%(※2)を下回るが、管理職手前である係長級の女性比率は6.4%(2016年比+1.2%)であり、同社における女性活躍の場は確実に広がっている。また、女性正社員の平均勤続年数は18.0年で、男性正社員の19.4年とさほど変わらず、就業継続しやすい職場環境といえそうだ。

図1 モルテンと全国平均(輸送用機械器具製造業)の比較

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※1 出典:厚生労働省(2017年6月)「賃金構造基本統計調査(輸送用機械器具製造業の企業規模、100~999人)」
※2 出典:厚生労働省(2018年4月)女性の職業生活における活躍推進に関する法律に基づく認定制度に係る「産業ごとの管理職に占める女性労働者の割合の平均値」について(改訂)

かつては、女性は転居を伴わない事務職として入社し、サポート的な仕事を主に担当した。しかし、2007年からは総合職としての入社も増え、男女区別なく役割を与えられ、活躍する女性社員が出てきた。例えば、医療・福祉機器事業における営業職に、10年前に初めて女性を配置したところ、目覚ましい成績を出したため、現在は女性営業職が11名に増えた。

また、工場の製造職では身体的な負荷が高いからと、過去は女性の配置は敬遠されがちであり、女性社員は少なく、改善活動に関しても、海外拠点に比べて女性が活躍できる場が少なかった。しかし、そんな中であっても数少ない女性社員が改善活動報告会でよい提案をすることが多かったため、近年は新卒の女性社員も毎年1,2名配置するようになった。

molten_1.JPG代表取締役社長の民秋清史氏は、「女性活躍は当たり前で、適材適所で考えている。どの社員でも強みや能力が最大限に発揮されている状況を保つために、各自がどう成長したいか、どんなキャリアを歩みたいかを主体的に考えることが重要」と話す。

2.今できることとこれからのビジョンを自ら組み立てる制度を開始

モルテンの経営理念には、「人の和」という考えがある。性別、人種、国籍にかかわらず、人の和を尊重し、組織の垣根を超え、互いに学び合える環境を整えながら、変化に強い組織を目指す。また、厳格さを保ちながらも、自由で愉快な開かれた組織を目指しているという。

その理念の下、2016年に女性活躍推進法に基づく行動計画を策定するにあたっては、男女区別なく、組織全体の人材マネジメントを重視することとし、運用中であった「マイキャリデザイン制度(以下、マイキャリ制度)」を活用することにした。

民秋社長は、「好きなこと、やりたいことに熱中している人は、すごい力を発揮します」と言い、モルテンで働く人たちが常に成長し続けるためには、自分の「やりたいこと」を知り、自分で目標を決めて追求することが極めて重要と考えたという。そこで、キャリアとは過去、現在、将来において「仕事を通じて成長すること」と定義し、マイキャリ制度を導入した。

同制度では、A3版の「マイキャリシート」に、「できること(実績、能力、強みなど)」、「やりたいこと(10年後やりたい仕事、興味や関心、大切にしたいことなど)」、「期待されていること(社会、会社、上司から自分に求められていること、世の中の課題など)」を各自が記載する。そして、10年後の「期待されていること」、「やりたいこと」に向けて、現在の「できること」とのギャップを埋めるべく、「実現に向けた主体的な行動」を考えて記載していく。このシートを見ながら、一番身近な上司に内容を話し、伝えることで、キャリアデザインを描きながら仕事における自身の成長の実現可能性を高めていくそうだ。

図2 マイキャリデザイン制度の概要

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前述の女性活躍推進法に基づく行動計画において、「全ての女性社員に対して、同制度の説明を行い、全希望者に対してキャリア面談を実施すること」を目標とした。例えば、アシスタントスタッフのある女性の場合、上司の目からすると「できること」がきちんと書けていなかったという。色々なことができるのに、本人は気が付いておらず、強みも分かっていない。上司との面談で、普段できていることや上司からの期待を共有すると、どんどん「やりたいこと」が湧き上がり、キャリアが描けてきたという。そして、結婚や出産といったライフイベントがあったとしても復帰するという話にまでつながった。

このように、自分らしさを発揮しながらモルテンでどのように成長したいのかを思い描くことにより、女性社員に対しても、キャリアアップ、就業継続を促していくのが、モルテンにおける女性活躍推進の根幹である。

3. 公私ともにある出会いが好機になり、キャリアの糧に

人事部課長の馬場嘉余子さんは、現在モルテン唯一の女性管理職だ。

「全てのことは、今につながっていますが、中でも『母親にならせていただいた』というのが、私のキャリアにおいて最も役立っています」と馬場さんは言う。

「息子の少年野球を通して人づくり、組織づくりを学ばせてもらいました。子供の成長とチームが強くなっていく過程を見ることができたのは我が家の財産でもあり、貴重な経験でした。学校のPTA役員も何度か引き受けましたが、何の打算もなく、子供にとって良いことをしていこうと、てきぱきと役割を果たすお母さん方の仕事ぶりにも影響を受けました。自分が仕事に集中できているのは家族や同僚だけではなく、地域も含めいろいろな人に支えられていると気付きました。また、学びの場で出会った仲間たちはポジティブ思考でエネルギーにあふれ、人生を楽しんでいました。社内だけでは出会わなかった人たちとの交流が自分の意識や行動を変えてくれました。」

molten_2.JPG仕事面では、事務職として入社して以来、総務・人事のサポート業務を実施してきたが、2000年に労務担当となり、給与システムの変更、立ち上げを行ったことが、キャリア上での転機になった。「給与計算を理解する過程で、雇用保険・厚生年金などの世の中の仕組みを知ることができました。また、労務の知識が身に付き、いろいろな事業所の社員と関わるようになり、自分らしさを意識して仕事をするようになりました」。そして、入社から25年目となる2003年に係長に昇進。

2008年には採用主担当となり、色々な協力を得ながら、モルテンらしい採用活動の全体像を作り上げていった。
「良い人物が採用できるようになったね、と言われると大変うれしく思いました。キャリアコンサルタント、産業カウンセラーの資格取得に挑戦して知識を深めると、次第に『応援』というのが自分のモチベーションであり、『人事』の仕事をするために、この会社に入ったのではと考えるようになりました」。

子供時代は、目立つことが嫌いで、いつも他人の様子を注意深く観察してから自分の行動を決めていたと言うが、これこそが自分の強みであると気が付いたそうだ。
「民秋社長が、『650人ほどの全社員の顔と名前をすべて覚えている馬場さんはすごい』、と褒めてくださいました。これが私の強みを知るきっかけとなりました。そして『マイキャリ制度』の導入にもつながっています」。

馬場さんは、民秋社長と何度も何度も議論を重ねて、前述の「マイキャリ制度」を検討した。自分だからできること、自分にしかできないこと、それに気付いて磨いていけば一人ひとりにスポットライトがあたり、強い組織になると考えた。社員一人一人に輝いて働いてもらいたいと願う。

4. より働きやすく、より続けやすい職場環境へ

その他にも、モルテンでは女性活躍や働き方改革のための細やかな施策を重ねている。女性営業職が増えたことから、運転しやすい小型車を導入したり、連続での出張が少ないようオフィス近郊の顧客を担当させたりすることなどだ。また、女性社員は会社支給の事務服のみでなく、ビジネススーツの着用を可とすることを実施した。女性用の作業服を男性用と同じデザインとする、工場のトイレを改装するといった、風土の改善や働きやすさにつながる物理的な変更も予定している。

今後は「マイキャリ制度」をさらに軌道に乗せ、育成のための人事ローテーションを設けることを検討したいという。さらに、上司のキャリア面談スキル向上のための教育、コミュニケーションに関する教育も検討し、幅広い役割、世代にマイキャリ制度を浸透させることを目指す。

また、若手の女性営業職が増える中、結婚・出産しても営業職を続けられることも課題だ。「転勤や出張があることが、営業職において難しい点です。それらを乗り越えられるような仕組み、ビジネスモデルの創造を期待する」と民秋社長は言う。さらに、女性エンジニアの新卒と中途採用を拡大し、技術職においても女性が活躍することを図りたいそうだ。

取材担当者からの一言

2010年に30代で第四代社長に就任した民秋清史氏は、しなやかに時代に対応すべく、新風を吹き込みながら組織を変えていると感じた。20代でアメリカの自動車部品会社で働いた経験からか、女性活躍だけでなく、社員の「やりたいこと」を引き出し、個人の成長、組織への貢献まで見据えている。一方で、女性の人事課長が現場の声を拾い、女性活躍のための細やかな対策も実施し、トップダウンとボトムアップが噛み合って進んでいる様子がうかがえた。モルテンは、現在女性管理職が1名であるが、「マイキャリ制度」の運用を重ねることで自然と増え、生き生きと多様な人材が働く組織になっていくことだろう。

●取材日 2019年1月
●取材ご対応者
株式会社モルテン
代表取締役社長 最高経営責任者 民秋 清史 氏
管理本部 人事部 部長 田中 宏樹 氏
管理本部 人事部 課長 馬場 嘉余子 氏