働き方改革事例

改革を加速させるのはトップの強い信念

株式会社山崎本社

  • その他産業
  • 廿日市市
  • 31〜100
  • entrydatajireikaikaku2-01
  • entrydatajireikaikaku2-03
  • entrydatajireikaikaku2-04
認定マーク
所在地 〒738-0022 広島県廿日市市木材港南2-4
URL http://www.yama-hon.com/
業務内容 廿日市木材団地共同給油所の営業、木材の加工など
従業員数 43名(男性19名、女性24名)

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  • 「四方よし」の企業理念のもと、仕事を通して従業員の幸福を実現
  • トップが強い信念を持って行動
  • データに基づく的確な分析で現場の無駄を省き、効率化を徹底
  • 2タイプの正社員(月給制・時給制)で時短勤務しやすい環境を整備
  • 育児休暇や時短勤務に加え、独自の子ども助成金制度で子育て世代を応援

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人ありきの中で芽生えた、四方よしの精神

人手不足解消から始まった働き方改革

yamasakihonsya_2.jpg「弊社のような労働集約型の企業は、恒常的に人手不足なのです」と、問題を打ち明けるのは、山崎本社代表取締役会長の林正史氏。大正10年に誕生した山崎本社は、もうすぐ100年を迎える歴史ある企業。木材関連事業から出発して、現在は木材港内にある給油所の運営、山林育成事業、木材加工業、ハウジング事業、不動産管理事業、外食チェーン・フランチャイズ業など、幅広い事業を広島県下で展開している。いずれも働く人あっての事業であり、「人が資本」といっても過言ではない。しかし、人手不足の近年はどの業界でもいえることだが、冒頭の会長の言葉どおり人材確保が難しくなっているという。

そこで林会長は、前々から近江商人の心得である「三方よし(売り手よし・買い手よし・世間よし)」にさらにもう一つ“社員よし”を加えて、「四方よし」の考え方を従業員に提唱。働きやすい職場環境を整えることで、従業員一人一人が仕事を通して幸福を追求できるような生き方を実践することを、全グループ共有の方針とした。
「従業員の一生は会社のためのものではない。結婚し、家族を設け、家族と苦楽を共にし、そして自身の趣味などを存分に謳歌してほしい。決して会社だけの人生にしてほしくない」と林会長。この思いは、「ワークライフバランスが取れた、新しい日本人が目指すべきライフスタイルを広島で実現したい」という広島県の湯崎知事の考えにも触発されたそうだ。会長自身、知事が唱える新しいライフスタイルの創造に貢献したいという思いが膨らみ、働き方改革につながる下地が着々と形成されてきた。

改革の原動力はトップの強い信念

データに基づく適正な人員配置で無駄を省略

yamasakihonsya_4_5.jpgそもそも同社が改革に取り組む決意をしたのは、グループの中でも特に慢性的な人手不足に悩まされている給油所で、残業時間が大きく増える事態が発生したことに起因している。林会長は、自分自身の理念に反する状況を目の当たりにし、グループを挙げて、早急に取り組まねばならないという思いに至ったそうだ。
「2年前、近隣に大型ショッピングモールがオープンしたのを機に、給油所の所長から“日曜も営業したい”という提案がありました。ところが間が悪いことに、当時従業員が一人退職し残りの従業員に大きな負担がのし掛かり、残業時間が大きく増えてしまいました。そこで、これではいかん、変えなければいけないと思ったわけです」と、当時を振り返る。


yamasakihonsya_3_2.jpg変えるからには、母子家庭や父子家庭、共働きや出産する従業員、あるいは親の介護に携わる人など、従業員の抱える様々な状況に応じて、働き方も柔軟に対応していかなければならないと考えた。そこで林会長は、各部所長が集まる経営会議で、「このままでは駄目だ! 早急に改善しなくてはいけない」と訴え、就業規則・各種規則の見直しを実施。労働基準監督署に相談しながら、2・3カ月かけて改善に取り組んだ。
「いずれにしろトップが強い信念を持って行動しないことには、こういう取組は遅々として進みません。意外に思うかもしれませんが、従業員の方が経営陣よりもずっと保守的なのです。中には変化を望まない人もいる。トップ自身が、ある程度強い語調で変化を促していく必要があります。そうするうちに最初は反発をしていた各部所長の意識改革も徐々に浸透し、取組を進めていくうちに、できることに従業員自らが気付き、進んでいきました。また、それぞれの持ち場で改善が図られ、適正な労働時間が順守されるようになりました」


yamasakihonsya_13_large.png具体的な改善の一例を紹介すると、例えば一番残業時間の多かった給油所ではタイムテーブルを作成し、これまでのデータを基に洗車1台当たり何人体制で何分で終わるかなど、時間ごとの適正な労働力を算出。足りない時間帯には配置、逆に無駄なところは配置を少なくするなどして無駄を省き、作業の効率化に努めた。従業員たちも自然と効率化を意識するようになったためか、人員が削減された時間帯も、それによって作業が滞るようなことはなかったという。

足りない時間帯に人を雇うと、経費が大きく増えると思われがちだが、通常の給与に対して1.25倍の残業手当を払っていたところに、正規の時間帯の従業員を割り振るわけだから、そうとも限らない。実際、山崎本社では結果的にはそれほど変わらず、最低人員にプラス1名の体制ができたため、有給休暇も安心して取れるという。これにより所定外労働時間は毎月20時間以下、繁忙期でも30時間以下までに削減。また、従業員たちのモチベーションも上がり、お客さまに対するサービスにもそれが自然と反映され、その影響か以前よりも売り上げが増えているそうだ。

制度がきっかけとなって効率化の意識が根付く

新たな正社員制度を設けて子育て世代を応援

yamasakihonsya_5_2.jpg山崎本社では、残業時間の短縮や有給休暇の取得促進の他にも、育児や介護にも対応できる体制を整えるなど、従業員一人一人が抱える事情にも配慮している。例えば正社員の中には月給制と時給制、2通りの従業員を設けることで、時給制従業員は介護や育児がしやすいようにしている。もちろん正社員なので、どちらのタイプにも年金や保険は用意されており、社会的保障の心配は無用だ。さらに少子化が少しでも打開できればと、「子ども助成金制度(1人目:1万円/月、2~4人目:1人に付き1.5万円/月)」なども用意するなど、従業員へのサポートは手厚い。


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残業時間の多さを感じていた給油所所長の太田さん・副所長の永田さんも、「制度がきっかけとなって、残業時間を減らすことができました。それまでは取りあえず人をそろえて、忙しさに対応しようとしていましたが、結局効率の悪さに気付いていなかったんです。今は段取りの仕分けがきちんと現場でできているし、オン・オフのメリハリができて、心のゆとりが生まれた」という。
子育て世代の高田さん(本部勤務)は、「子どもが熱を出したり、学校の行事があったりすると、休みを取ったり早退したりしなければなりません。そういう時に、休みが取りやすい環境が整っていれば安心して仕事ができます。」と、導入後の現状を歓迎している。


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今後はこうした取組をよりたくさんの人に知ってもらい、採用等への相乗効果を期待したいと、林会長。実は20数年前、「週休2日制」の導入が叫ばれていた頃に、いち早く制度を取り入れた実績もある。「働き方改革」に取り組む企業へ認定を受けたことでマークが配布されるが、PRにも積極的に活用したいという。「働き方改革」先進企業として、他の企業をリードするようなユニークな取組にチャレンジしていくことが期待される。