働き方改革事例

経営陣と従業員の近さが改革の原動力!

萬国製針株式会社

  • 製造業
  • 広島市
  • 31〜100
  • entrydatajireikaikaku2-01
  • entrydatajireikaikaku2-03
  • entrydatajireikaikaku2-12
認定マーク
所在地 〒733-0002 広島市西区楠木町2丁目3-32
企業URL https://www.bankoku-needle.co.jp/
事業内容 手縫い針、イカ針、その他ピン等の線材加工品の製造
従業員数 41名(男性20名、女性21名)

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  • 従業員の幸せを願い、改革に着手
  • 「ノー残業デー」等の明確な制度の導入で意識改革を後押し
  • 有給休暇を含む休日を明記した自社カレンダーの作成で有給休暇取得を促進
  • トップが毎日現場を巡回して社内の状況を的確に把握し、風通しの良い職場づくり
  • キャリアアップ制度の導入と同時に従業員のモチベーションアップ

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従業員の幸せを願う働き方改革

技能を守りながらの業務の標準化と効率化

type1_bankoku_2.jpg平成30年で創業100年になる萬国製針では、昭和24年にいち早く労働組合が設立され、その長い歴史の中で会社側と従業員が意見を交わし、現場の声を吸い上げ、働きやすい環境づくりに努めてきた。しかし、変わりゆく時代の中で、これまでどおりのやり方だけに甘んじているわけにはいかない。
代表取締役会長の高橋正光氏は、「今後も従業員が明るく健康に働けるように、あらためて働き方を見直し、設備の改善に努め、生産性の向上を図らねばならないと考え、働き方改革への着手を決断しました」と語る。


type1_bankoku_3.jpg同社が最初に取り組んだのは、「ノー残業デーの設置(水曜日)」と「時間外労働の削減」である。ただし制度を設けても、すぐに従業員の意識が変わるわけではない。毎週水曜日のノー残業デーの前日から各現場の上司が積極的に声掛けをし、徐々に「水曜日は早く帰る」という意識が従業員に定着していった。それにより、従業員も「今日は早く帰れるように、仕事の段取りをつけなくては」と業務の効率を意識するようになり、仕事にメリハリが生まれた。その結果、昨年比で月平均一人当たり約2時間の残業時間削減につながったそうだ。
開発課の杉本係長は、職場の意識改革において次のような効果を感じている。
「単に残業をなくすのでは、お客さまにご迷惑をかけてしまうかもしれません。現場のリーダーたちは、生産性の向上を意識した上で、人手が足りていない所はないか、生産ラインが滞っている所はないかなど、気配りしながら業務の標準化を図っています。少し意識を変えるだけで残業時間が減り、作業効率がアップしました。そして、以前よりも心にゆとりができました」

しかしながら、同社の取組に課題がないわけではない。製針のいくつもの特殊な工程を抱える同社では、「技能伝承」は業務の根幹となっており、すぐに効率化に結び付くわけではない。「職人集団」である同社では、技能を途切れさせないよう早くから従業員のスキルの多能工化に取り組み、「工業標準化優良工場」の表彰も受けている。特殊な技能を習得するにはそれなりの経験と時間が必要になってくるため、「技能伝承」と「効率化」のバランスが重要なのだ。

メリハリのある働き方の実現を目指し

自社カレンダーの作成で、均等かつ確実な有給休暇取得の仕組み作り

type1_bankoku_4.jpgさらにもう一つ、時間外労働の削減と共に取り組んでいるのが、「有給休暇の取得促進」である。現在、有給休暇は平均で6.6日取得されているが、3年以内で3日増を目標に取り組んでいる。これも朝会などを活用して、トップ自らが改革の意義を繰り返し伝え、従業員の意識変革を促しているそうだが、やはりどうしても有給休暇の取得にバラつきがある。
そこで高橋会長は「トップダウンで取組を加速化させるしかない」と、総務部の西本主任に呼びかけてアイデアを出し合った。そして来年から、通常の年間休日(115日)と別に全社一斉に休まなければならない日として有給休暇2日をプラスした自社カレンダーを作り、従業員に配布しようということになった。

西本主任が、その経緯について語ってくれた。
「カレンダーによって“見える化”を図れば、従業員にも休みの意識が徹底されますし、全社一斉に休むので工程ラインに穴が空く心配もありません。以前はお盆休みを長く取る案もありましたが、弊社は受注産業ですので、長く休みすぎてお客さまにご迷惑をかけるわけにはいきません。そこで業務に影響の少ない日を選んだ上で、前後工程の仲間たちにも気兼ねせず、しっかり休みを取ってほしいという思いから、カレンダーによる見える化作戦を考案しました。これを機会に、従業員の皆さんに、メリハリのある働き方を実現してほしいです」
高橋会長も「カレンダーの活用によって有給休暇取得の意識が定着したならば、次はリフレッシュ休暇の促進にも挑戦したい」と、さらなる改革推進に意欲的だ。

同社における取組はスタートしたばかりで、十分な成果の評価にはまだまだ時間が必要と高橋会長は言うが、それでも熱心な姿勢や改革に向けた強い意志は、自然と従業員の意識を改革へと導いている。
前出の杉本課長も「残業の削減同様、有給休暇を取る努力により、“業務の効率化”の意識は強くなった気がします。各職場でもミーティングを開き、正社員・パート・派遣社員全員が同じ情報を共有しています。役員も自ら毎日現場を巡回し、従業員と直接会話しながら情報共有を行っているのですよ」と語ってくれた。役員も常に従業員とのコミュニケーションを心がけ、従業員の状況を把握し、職場の風通しは非常に良いという。
今後、さらなる効率化を図り、従業員の努力にも応えていきたいと経営陣は考えているという。

小さな会社だからこそできる働き方改革

働き方改革で幸福を分かち合う

type1_bankoku_6.jpg時間外労働の削減や有給休暇の取得率向上といった取組の他にも、以前から「キャリアアップ制度」により、非正規雇用の従業員を正社員として雇用を図るなど、働き方改革に積極的に取り組んでいる。
これらの取組に関して高橋会長は、改革の成果を語ってくれた。
「これらは、もともと人材確保のための試みだったのですが、従業員のモチベーションアップになっています。各種制度を取り入れてからは、従業員の働く意欲が全然違います。イキイキと仕事に励んでくれています」

もともと萬国製針には、「幸福は、創造にあり」「幸福は、品質改善にあり」「幸福は、生産性向上にあり」「幸福は、常に他人を思うことにより生まれる」「幸福は、社運とともにあり」といった五カ条からなる社是がある。他人(もちろん従業員も含まれる)を思いやることで、従業員一人一人が創造の意欲に芽生え、品質改善や生産性向上に努めれば、会社の成長も図れるし、その結果みんなが幸福になれるのだ。同社の社是について、高橋会長は、働き方改革に取り組む意義と併せて次のように語ってくれた。
「これこそ働き方改革の本質ではないかと理解しています。要は企業を巡る全ての人の幸福を追求すること、それがこれからの働き方ではないでしょうか。働き方改革の取組は、個々の従業員の幸福のみならず、その家族、そして社会全般が幸福を分かち合える取組でなければならないのです。これは企業の責任であり、経営者の責任でもあると考えています」

さらに、これから働き方改革の取組を進める企業に向けて、メッセージも送ってくれた。
「弊社は従業員40名ほどの規模の会社です。大企業ではなく、私どものような小さな会社がいち早く取組を行っているということが、後に続く会社の励みになるのではないでしょうか。経営陣と従業員の距離の近さを利用して、弊社では風通しの良い環境をつくり、改革を進めています。これから働き方改革に取り組む企業の皆さんにも、ぜひ取り組んでいただきたいです」
「働き方改革なんて、所詮大手企業の取組だ」という声も少なくないだろう。しかし、「小さな会社だからこそできる働き方改革」という視点は、とても力強い。