働き方改革事例

働き方改革は“生産性を上げる改革”

株式会社広島銀行

  • 金融業・保険業
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認定マーク
所在地 〒730-0031 広島市中区紙屋町1-3-8
URL http://www.hirogin.co.jp/
業務内容 銀行業
従業員数 4,959名(男性2,397名、女性2,562名)

※写真は新本店ビルイメージ(2021年1月竣工予定)

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  • 「本店部・本店建物統一早仕舞い日」等の制定で、働き方の前に、従業員、お客様を含め人の意識を変える
  • 環境変化(本店建替え)も変革の機運を高める材料に
  • 風土・業務・制度とバランスの取れた改革で定着を図る
  • 業務を捨て去る勇気が合理化を生み、考える人材を育てる
  • 働き方改革は“働かない改革”ではなく、どれだけ生産性を上げるか

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意識の面から抜本的な改革をスタート

本店部・本店建物統一早仕舞い日の設定とパソコン自動ログオフ

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「これからの地域金融機関は、フェイス・トゥ・フェイスのお付き合いを大切に、お客さまとの信頼関係を築いていくことが大切です。付加価値の高いお客さま営業を実現させるためにも、われわれにとって働き方改革は必然でした」と語るのは、人事の面から広島銀行の働き方改革を推進する人事総務部の深町部長だ。

人口および事業者数の減少に加え、低金利環境の長期化など、地域金融機関を取り巻く環境はこれまで経験したことのない厳しい様相を呈している。そうした状況を踏まえ、よりお客さま本位の業務運営が求められているのだ。しかしお客さまとじっくり向き合うには、従来のような働き方では十分な時間をつくりだすことはできない。かつては“長時間働くことが美徳”という風潮が、世の中に少なからずあったが、もはやそういう時代ではない。そこで、お客さま営業を充実させるためにも、早急に働き方改革に乗り出す必要があったという。


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さらに、広島銀行では、本店建替え(2021年1月竣工予定)を控えており、働き方に関する考え方を転換させるには、環境そのものが刷新される今が好機と考えているそうだ。こういった追い風も生かして、働き方改革をさらに加速させたいという思いが、深町部長をはじめとする人事総務部メンバーにはあるという。

「これまでも当行では、働き方に関する改善活動に、いろいろと取り組んできました。例えば、平成2年にいち早くフレックスタイム制を導入しましたが、制度を利用するわれわれ自身の意識改革が追い付かず、いつの間にか形骸化してしまったこともありました。そこで行ったのが、月1回(現在は月4回)の定時退行を促す『本店部・本店建物統一早仕舞い日』の制定と、全店実施のパソコンの使用時間を制限する『パソコン自動ログオフ』です」

そこには「意識改革が追い付かなかった」というこれまでの反省を踏まえ、まずは習慣や風土を根付かせようとする狙いがあった。当初は戸惑いながら帰っていた従業員たちも、今では余裕をもって退行するほど、意識が大きく変化しているそうだ。

さらに、生産性を意識した働き方を定着させるよう、次の取組も行っている。

●「働き方改革推進本部」の新設 頭取を本部長として、「働き方改革」のさらなる推進を図る。

●「人事評価制度」の見直し 生産性を追求する風土醸成を図るために、生産性に関連する項目を追加。

●「勤務間インターバル制度」の導入 前日終業時刻から当日始業時刻まで、11時間の間隔を空けることで長時間労働の是正を図る。

●「リモートワーク」の整備 時間外勤務が困難な両立支援制度利用者に対しての在宅ワーク。

こういった取組を進め、従業員自身の働き方への意識を変え、組織全体の改革に結び付けたいと考えている。

改革の三本柱は「風土・業務・制度」

定着の工夫はバランスの取れた改革の進め方

type1_hirogin_4.jpg改革を定着させるためには、バランスの取れた取組が欠かせない。「制度」が整えられたとしても、受け入れる「風土」がなければ、従業員の意識や行動は変わらず、「業務」そのものが変わらなければ、働き方を変えることはできない。そこで広島銀行では、改革を定着させる工夫として、「風土」「業務」「制度」の3点に軸足を置いた、バランスの良い取組を展開している。

前述の「本店部・本店建物統一早仕舞い日」や「パソコン自動ログオフ」の導入は、意識・行動改革を醸成する「風土」を育むためのものである。「ペーパー・通帳・印鑑レス」の推進や「統合営業支援システム」といった「業務」改革により、生産性の向上を実現している。長時間労働是正に向けた「勤務間インターバル制度」、ダイバーシティ推進のための「女性職員向けセミナー」、積極的な「キャリア採用」(中途採用)といった「制度」の改革により、多様で柔軟な働き方を創りだしている。こうした取組により、広島銀行では人も組織もうまく変化を受け入れながら、新たな働き方を実現する体制に移行しようとしている。


type1_hirogin_5.jpgしかし、業務改革や制度改革は同時進行であるとはいえ、日々の業務に追われる従業員にとって、組織をあげての改革はどのように捉えられたのだろうか。「時間に縛られずに仕事をしたいと直訴されたこともある」と深町部長は振り返る。だがその一方で子育て中の女性従業員から、「同僚が残業している中で、罪悪感を抱きながら帰るのは本当につらかったです。でも働き方改革を通じて、周囲の意識が変わったのがありがたい」という声を聞くと、やはり改革の手を緩めるわけにはいかないと励まされるそうだ。

捨てる勇気と考える習慣が働き方を変える

先入観をなくした再構築で変わる考え方

type1_hirogin_6.jpg取組を行う際、最も苦労したことは何かと尋ねると、深町部長は「どれだけ業務を捨て去るか」だと答えてくれた。機械化による事務レスも、そうした「捨て去ってきた業務」の一つだが、日々の仕事の中にはまだまだ合理化できることがたくさんあるという。

例えば、従業員の成長のために行ってきた「自己開発ファイル」がその一つだ。これは上司と部下の間で交わされる交換日誌のようなもので、部下が業務上の気付きを書き込み、上司がそれにコメントを添えて返すといった仕組になっていた。だが、ある時期から書くこと自体が目的となり、それをチェックする上司にも負担となっていた。しかし、この取組が本当に必要な入行3年目までの若手従業員に対象を絞ることにより、人材育成につなげることとした。また、キャリア採用の従業員と経営層との意見交換会も実施し、他の企業での勤務経験のある従業員の視点から広島銀行の業務のムダの改善提案を受け、普段従業員の気付かなかった業務のムダを無くしてきた。その他にも、イントラネットで全従業員に対し、ムダな業務や業務改善案を募集するなど徹底した業務改善を行っている。


type1_hirogin_9.jpg業務を捨てる勇気を持つことで、効率化・合理化はぐっとスピードを増すが、それにも増して良いことは、「日頃の働き方について、従業員の間に“考える”姿勢が生まれること」だと深町部長は捉えている。

実際、働き方改革への取組が始まってから、「これまで当たり前のように日々の業務を受け入れていましたが、『どうすれば効率よく働けるだろうか』『この業務は本当に必要なのだろうか』と考えるようになりました」という従業員の声も聞かれるそうだ。

そんな従業員の声を受けて深町部長も、改革の手応えと今後の抱負を語ってくれた。

「確実に改善の芽が育っていると実感しました。また、おかげさまでわれわれの取組が各種メディアで取り上げられるようになり、それが組織内の士気をさらに高めています。働き方改革とは働かないことを良しとするものではなく、目的と手段を履き違えないよう、今以上の成果を短い時間の中でどう上げていくかといったことへの挑戦です。これからも『考えること』を怠らず、付加価値の高い働き方ができるよう、走り続けていきたいですね」