働き方改革事例

人口減少社会に備え、柔軟に多様な働き方取り込む
トップダウンで問題意識を共有

広島電鉄株式会社

  • その他産業
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認定マーク
所在地 〒730-8610 広島県広島市中区東千田町二丁目9番29号
URL http://www.hiroden.co.jp/
業務内容 鉄軌道事業、バス事業、不動産事業
従業員数 1,858人(2017年8月時点)

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トップダウンで問題意識を共有

トップの問題意識が改革の原点 労使に命題を投げ続ける

広島電鉄は契約社員の正社員化(平成21年)や短時間正社員制度の導入(平成29年)など、働き方改革の分野で先進的な取組を続けている。改革の原点の一つが椋田昌夫社長の問題意識だ。人口減少や少子高齢化が進展すれば、運転士など現場を担う人材確保が一段と難しくなる半面、公共交通機関に頼らざるを得ない人は増えて必要性は増すとの認識のもと、労務担当の取締役だった時から「時間外労働をしたい人が好きにやるような形の事業運営では、将来立ちゆかなくなる」と説き続けてきたという。労働組合に対しては「労働時間の平準化」に向けた取組の必要性を訴えることで意識改革を促進する一方、働き方改革の推進役である労務部門に対しても労働法制などの強化も見据えて「短時間」、「女性」というキーワードを通じた制度改革の方向性を提示。鉄道やバスという社会インフラを担う企業としての責任感と危機意識を労使双方が共有していることが、労務施策と交通施策の両面から働き方改革を進める原動力となっている。


将来予測し、柔軟な制度で対応

短時間正社員制度で多様な働き方受け入れ

type1_hiroden_2.png平成29年9月に導入された「短時間正社員制度」に関する本格的な議論が始まったのは平成22年秋に遡る。労働組合側から出された要求事項に「ワークライフバランス」や「計画有給休暇制度の拡大」と並んで「短時間勤務」の導入が挙げられたことがきっかけだ。労務課も「多様な働き方を取り込むための改革を進めるうえで、経営層から短時間正社員制度という命題を与えられていた」(岡本健治労務課長)こともあり、具体的な制度設計の検討をスタートした。設計の際に留意したのは「入社した人が家庭の事情で離職せず継続できる」という理念を実現する働きやすい職場づくりだ。「育児や介護で短時間しか働けない人も大きな戦力」という考えをまとめ、従業員のライフスタイルに応じて労働時間を柔軟に変えることができる仕組みを構築した。最大の特徴は通常の正社員雇用と短時間正社員雇用の転換も自由にできるようにしたこと。子育てや介護などの時間を確保する必要がある時は「短時間」を選択し、時間的な制約がなくなった際には通常シフトの勤務に戻るといった制度利用が可能となる。全国的にも先進的な制度だけに、就業規則や勤怠管理などシステム面、勤務シフトの組み方など走りながら考える部分も少なくない。「当初は現場も混乱すると思う」と話す岡本課長だが、個々の従業員の腑に落ち、定着するまで制度の意義を説き続ける。

シニア社員制度の拡充で70歳まで現役に

人材確保に向けて多様な働き方を取り込むための方策として、平成29年9月に導入したもう一つの改革が「シニア社員制度」の拡充だ。従来の制度は対象職種が「運転士・車掌」の乗務員に限られており、雇用年齢も65歳(特例で66歳)までとなっていたが、対象職種を事務職、技術職にまで広げ、雇用年齢の上限も70歳に引き上げた。制度拡充の背景にあるのはシニアも「戦力」に位置付けるという考え方だ。岡本課長は「それまでの経験が生きる場面も少なくない」と期待を寄せる。健康状態などに留意する必要があるため、契約の更新は半年単位にしたほか、会社の費用負担による人間ドックの受診間隔も狭めるという。「年金がカットされてもフルタイムで働きたい」、「短時間でもいいなら」などシニア層の働き方への希望が多様化するなか、制度拡充でより幅広い思いを受け止める仕組みが始動した。

キーワードは「同一労働同一賃金」

労使の話し合いを通じ正社員化実現

type1_hiroden_3.jpg広島電鉄が契約社員の正社員化を打ち出したのは平成21年10月。「非正規雇用労働者の処遇改善」の動きが強まる前にいち早く対応できた理由を、岡本課長は「労使双方が危機感を共有していたからだ」と説明する。平成12年前後、鉄道各社は不振のバス事業の立て直し策としてバス事業を分社化する動きを強めており、広島電鉄も同様の提案を労働組合に提示したが、この提案が拒否されたことを受けて、平成13年に次善の策として契約社員制度を導入した。緊急避難の策だったこともあり、平成16年には契約社員の労働条件のまま雇用期間の定めのない「正社員Ⅱ登用制度」を始めたものの、結果的に運転士という同一職種に3つの異なる雇用形態が混在するという状況が生まれた。当時から労使とも「いつかは矛盾が顕在化する」との認識は持っていたが、契約社員・正社員Ⅱの人数が増えるにつれ、給与格差への不満や将来への不安が拡大。採用面への影響も懸念されたことから、平成21年に「同一労働同一賃金」をキーワードにした職種別の新賃金制度を導入。3つの雇用形態の労働条件を統一することで、契約社員の正社員化を実現したという。岡本課長は「運転業務に必要なのは国家資格と技能で、正社員と契約社員とで差をつける意味はなく、むしろデメリットが大きいと考えた」と振り返る。制度の見直しにより若手従業員の賃金体系が改善し「採用希望者が増加した」との効果も生まれた。

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