働き方改革事例

労使が協力して、
働きがいのある社内風土を醸成

広島アルミニウム工業株式会社

  • 製造業
  • 広島市
  • 301以上
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認定マーク
所在地 〒733-0011 広島県広島市西区横川町3丁目6番3号
URL http://www.hai.co.jp/
業務内容 ダイキャスト、砂型、金型、低圧の各製品の鋳造および加工・販売など
従業員数 2,278名(男性2,056名、女性222名)

(2018年2月現在)

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  • 労使間で労働条件を改善し、Win×Winの関係を構築
  • 全従業員が経営者意識を持って生産性を上げる「アメーバ経営」
  • 年2日のメモリアル休暇を創設し、達成率100%を目指す
  • 非正規社員にも同等の制度を適用し正社員登用も実施

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創業当初から継続的に取り組み、社内風土として定着

労使の協力、従業員の経営者意識が改革を推進

type1_hai_2.jpg「弊社は創業97年、あと3年で100年という節目の年を迎えるのですが、創業当初から『企業は人なり』『ものづくりは人づくり』という基本認識に立ち、卓越した価値を世界に供給できる人材づくりを目指しています。従業員一人一人が生き生きと働ける環境づくりのため、労使間で継続的に労働条件などの改善を進めてきました。その結果、働き方改革に取り組む社内風土が、自然と構築されてきています」と同社の働き方改革の推進役である種清大輔人事課長は語る。

労働組合では、月に1回、労働協議会を実施しているが、労働時間等を含めた労働条件が話し合われる。もちろん、会社からの経営状況などの情報も共有され、お互いにWin×Winになれるように調整される。会社からの一方的な指示ではなく、労働組合との協力の上で、制度の策定を行い、浸透を図っているという。
同社の働き方改革を語る上で、重要なのが「アメーバ経営」。アメーバ経営とは、京セラの創業者稲盛和夫氏が考案し、さまざまな企業で実践されている経営手法だが、社内組織を少人数のチームに分け、各チームが時間当たりの採算値を算出し、その最大化を目指していく。それぞれのチームが一つの会社のように運営されることで、従業員全員が自部門の利益を意識しながら創意工夫を重ね、経営に参画するという特徴がある。アメーバ経営を取り入れることにより、同社においては、経営は一部の経営トップが行うのではなく、全従業員が関わって行うべきという考え方が社内に浸透している。従業員一人一人が経営者意識を持ち、時間を有効活用する方法を考えて行動することにより、時間当たりの生産性を高め、時間外労働を減らす努力を続けている。働き方改革と企業利益の増大は同じ方向を向いていると考えられるだろう。しかし業績が順調な時こそ、時間外労働が発生しやすい。そのため、同社では「決められたルールは守れ。それが守れなければ、品質も守れない」という創業以来のポリシーに基づき、時間外労働が発生する時には、必ず上司に報告することをルールとして決め、取り組んでいる。


さらに働きやすい労働環境を整備・拡充

子育て世代や新入社員、非正規社員などきめ細かに対応

type1_hai_3.jpgまた、「次世代育成支援」については、平成28年4月より、妊娠中の従業員および子育てを行う従業員等の仕事と家庭の両立を支援するための環境整備を一段と拡充している。それまでは、3歳までの子どもを育てている従業員に短時間勤務制度が適用されていたが、小学校就学までに拡大するとともに、具体的な勤務時間の例を3パターン作成し示すことで、制度を利用しやすくした。この制度は正社員だけでなく非正規社員も同様に取得可能だという。
「子どもができたから辞めるという話は聞いたことがありません。育児を終えたら職場に復帰するというのが当たり前で、育児休暇取得後の復帰率はほぼ100%です。中には、育児休暇を2回・3回と取得している従業員もいます。先輩が育児休暇や短時間勤務制度を使っているから自分も使いやすいという文化が定着しています」と人事課の名嘉眞さんも笑顔で語ってくれた。


type1_hai_4.jpgさらに、年次有給休暇の取得促進のために、年2日のメモリアル休暇を創設。各自が「自分の記念日をつくって休める」という有給休暇以外の休暇である。2日間連続でも1日ずつでも取得可能で、達成率100%を目指している。
人事課の尾山さんも「有給休暇は社内では『取ってください』という雰囲気で、とても取りやすいです。半日休暇もあり、私はほとんど消化しています」とほほ笑む。


同社では非正規社員は制度化された給与体系のもとに直接雇用している。人事考課をきちんと行い、更新時期ごとに賃金を上げるなど、適正な評価のもと労使が納得できる賃金体系を構築している。さらに、正社員への登用も活発に行っている。

「一度、会社を辞めた従業員が、また当社で働きたいと戻ってくることもあります。他の会社に勤めた上で、やはり当社がいいと言っていただくとうれしいですね。2世代、3世代で弊社に勤めている従業員もいます」と種清氏。労働環境の良さを物語る話は尽きない。

AIやロボットを取り入れ、ゆとりを持たせる

女性技術者やシニア雇用など新しい課題にも挑戦

type1_hai_5.jpg順調に働き方改革が進んでいる同社に、今後の目標や課題について尋ねてみた。
「製造業における時間外労働の削減は、従業員の意識改革だけでは難しく、削減しろと言うだけではなかなか実現しません」意識改革に併せて、効率化を進めるための設備投資は不可欠だ。従来は4~5人で行っていた作業を1台のロボットで行うようにした部署もある。そうした設備投資による効率化により、余裕の出た人員は、忙しい部署に適時に配置するなど、業務量に応じた人員の適正配置を行うことができ、職場のゆとりや生産性の向上につながっているという。

種清氏は、続けてこう語る。
「採用についても、必要数にゆとりを持った人数を確保するようにし、経営環境に柔軟に対応できる体制を整えていますが、人材確保は課題です。最近の学生はワークライフバランスに対する意識も高く、採用前や採用後のギャップが起こらないよう丁寧に説明していくことが大切だと考えています。また、今後は、女性が活躍できる雇用環境を整備し、女性技術者を増やしていきたいと考えています」
女性技術者は男性とはものの見方の細やかさが違い、集中力も高く定着率も良い傾向があり、欲しい人材というが、予定どおりの採用には至っていないという。会社説明会を定期的に行い、採用広報を拡充するなど、その確保に注力している。
もう一つの課題がシニア層。現在は60歳定年で、原則65歳までの再雇用制度を取っているが、ほとんどの従業員が65歳まで働く。採用環境が厳しくなっている中で、熟練したシニア層をどのように雇用し、どれだけ長く活躍し続けてもらえるかも重要な課題だという。
「働き方改革の取組については、今後、社外向けにホームページに掲載していき、求人活動時にアピールをする予定です。まだ取組の成果を評価する段階には至っていませんが、少なくとも、今年の新入社員の採用は順調です。今後、定着率等を確認しながら、これからの活動を推進していきたいと思っています」と力強く締めくくった。