働き方改革実践(認定企業)取組企業事例一覧

職員目線の働き方改革で、
やる気を引き出す

広島市信用組合

  • 金融業・保険業
  • 広島市
  • 301以上
  • 推進体制(総務人事)
  • 多様な人材の活躍
  • 育児・介護・治療と仕事の両立
認定マーク
所在地 〒730-0036広島市中区袋町3-17
URL http://www.hiroshimashi.shinkumi.jp/
業務内容 預金、融資、為替、代理貸付などの金融機関業務
従業員数 399名(男性218名、女性181名)

(2018年2月現在)

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  • 全ては職員のための取組であることをトップから丁寧に説明
  • 時間管理で削減したコストを「基本給アップ」や「定年延長」に活用
  • 給与の見直しから充実したライフデザインを描き、働く意欲を創出
  • 定年延長により、ベテラン世代の知識・スキルを第一線で活用
  • 女性管理職の教育は女性管理職に! 頼れるロールモデルをつくる

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働き方改革は生き残りを懸けた企業戦略

変化を促すトップの意志

type1_shinkumi_2.jpg徹底した顧客目線のもと、金融機関の本来業務である“融資”に特化し、盤石な経営基盤を構築している広島市信用組合。マイナス金利政策という逆風の中にありながらも、その躍進ぶりは目覚ましく、平成29年9月期の仮決算で、経常収益は14期連続増収を達成。経常利益、コア業務純益、当期純利益のいずれも過去最高を更新している。

こうした躍進を支えるものの一つは、「地元のお金は地元で活かす」という信念だ。地域に根差す金融機関として、融資に力を入れた結果が地域活性化の好循環を生み出し、同組合の収益力アップの源となっているという。そして、もう一つは、経営を支える人材の力に他ならない。広島市信用組合では、対外的に「顧客目線」の業務を展開する一方で、組合内では「職員目線」の働き方改革を推進。職員が安心して元気に働ける職場づくりと人材育成につながるさまざまな取組を通して、職員のモチベーションアップとさらなる力を引き出すことに成功している。


type1_shinkumi_3.jpg取組を指揮する山本明弘理事長は、「職員目線の働き方改革」による職員の変化に手応えを感じている。「時代も人も変わる中、顧客目線と職員目線の両方から経営を実践しないことには、企業は到底生き残っていけない」と、変化の必要性を力強く語る。


全ての取組は職員のためという意識の共有

時間管理で得た利益は惜しみなく職員に還元

type1_shinkumi_4_2.jpg時間管理においては、17時40分の定時退社を励行しており、入店は8時10分以降を厳守としている。やむを得ず残業する場合であっても、申請制度を通じて5の倍数日および25日以降は18時40分まで、月初・月末前日・月末は19時までの残業を認めるとしている。取組を定着させるため、同組合では最初に役員自ら臨店指導を行い、時間管理の必要性や管理そのものが業務評価に反映されることを丁寧に説明していった。
一方で職員の声を参考に、ATMの増設やオープン出納機などの設置を行い、機械化による業務の削減・効率化を徹底し、労働時間削減につながる環境整備に努めた。これにより、空いた時間を自己研鑽に充てるよう奨励したところ、ファイナンシャルプランナーや公的資格取得に励む職員が増え、業務改善の試みや各種勉強会なども以前に増して行われるようになったという。人事部の渡部さんは、「同僚が宅建資格を取得したと聞き、私も随分刺激を受けました」と、職場の変化を肌で実感している。


type1_shinkumi_5.jpg時間管理を徹底することにより、人件費の削減につながるが、その削減分は「給与の見直し」や「定年延長」などに活用し、長く安心して働ける職場づくりに役立てているという。もともと同組合では、好調な業績のもと、初任給の引上げなどを積極的に行い、職員に対する利益還元を惜しみなく行ってきた。特に職員たちに歓迎されたのが、「基本給の見直し」だ。食事手当や資格手当を段階的に基本給に振り替え、これまで合計5万円を超える基本給アップを実現。これにより、基本給を算定基礎とする退職金の支給額もアップし、職員のモチベーションが大いに底上げされた。また、平成29年4月より、65歳までの「定年延長」を実施しており、ベテラン層は、延長後も給与の8割が維持されることもあり、「年金受給まで第一線で働けるのは本当にうれしい。何より家族が喜んでいる」と、制度の見直しを歓迎している。

1店舗2名以上の女性役席者配置で効率的な人材育成

頼れるロールモデルの存在が女性活躍の後押しに

type1_shinkumi_6.jpg女性の活躍促進においても、広島市信用組合はいち早く着手している。平成24年度から女性を役席者に積極的に登用している。現段階で女性職員は181名いるが、そのうち係長以上の役席者は73名。全体の41%がマネジメント業務に携わっていることになる。
人事部の山田隆副部長は、「そもそも当組合は、『やる気のある人をどんどん登用していこう』という職場です。若手にチャンスを与えるためにも、20代後半ぐらいから何らかの役職についてもらっています」と語る。職場全体が女性の活躍を心から期待している点も、彼女たちの活躍を力強く後押ししている。


type1_shinkumi_7.jpg同じく人事部の山出寛部長も、女性職員に寄せる期待を語る。「当組合では育児休業取得・復職率ともに100%となっています。職場全体でも復帰を心待ちにするほどで、また、さらなる活躍を期待して、復職時のポストを用意しています。こういった風土が、女性職員のやる気の原動力になっているのではないでしょうか」


しかし、チャンスを与えるだけで、女性にとって活躍しやすい環境が整うわけではない。その点を配慮して、同組合ではユニークな取組も行っている。その一つが、積極的な女性登用による1店舗2名以上の女性内務役席配置だ。全店に女性内務役席を配置しても、1名だと預金・融資など日々の事務管理が優先されてしまい、次なる人材の育成に至らない。そこで、一時的に1店舗へ2名以上の女性内務役席を配置し、OJTや勉強会を行い、育成が終了したところで他店舗へ移動してもらうというシステムだ。組織にとっては、人材育成がより効率的にできるとともに、女性にとっては、身近に相談できる心強い管理職のロールモデルが存在し、モチベーションアップにもつながる。

顧客満足度がどうしても優先されがちだが、同組合では、地域に根差し地域の活性化を支える「顧客目線」に加え、組織を支えている「職員目線」の二つの目線で業務全体の改革を進めることを意識している。ともすれば相反すると言われがちなこの二つをともに実現することが、地域に根差した企業としての価値を向上させ、差別化につながり、「この職場で働けて良かった」という職員たちの自負や自信、満足につながっていくのではないか。