働き方改革事例

トップの決断を推進役が実践 
従業員の意識改革がカギとなった働き方改革

寺岡有機醸造株式会社

  • 製造業
  • 福山市
  • 31〜100
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認定マーク
所在地 〒729-0112 福山市神村町3685-1
URL http://www.teraokake.jp/
業務内容 有機醸造商品の製造・販売など
従業員数 48名(男性28名、女性20名)

(2018年2月現在)

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  • トップの本気が推進の力に
  • 有給休暇の計画的付与により取得が大幅増
  • 有給休暇は取らないといけない、取るのが当たり前という意識付け
  • 部門間を超えたフォロー・協力の体制づくり
  • 目標を実践しチェックしていく体制

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大胆な改革を断行するトップの決意

全従業員への意識改革の徹底

type1_teraoka_2.jpg寺岡有機醸造は、明治20年に創業した老舗企業だ。化学調味料・合成保存料無添加の有機しょうゆをはじめとする各種しょうゆのほか、ドレッシングやつゆなども製造・販売している。働き方改革の取組を始めたのは平成25年で、「社会貢献度や顧客満足、従業員満足度の向上に全社で取り組もうと検討した際、従来の就業規則を見直したのがきっかけでした」と、代表取締役の寺岡晋作氏は語る。「われわれは製造業ですから、生産性を上げていけば、有給休暇の取得率向上や残業時間の削減の課題については、どうにか解決できるのではないかという感覚がありました。もちろんこれまでも就業規則の改定などは行ってきましたが、『これからは、従業員満足度が高い会社が伸びる』と言われ始めた頃だったこともあり、『先を読んだ就業規則』にしたいと考えました」


type1_teraoka_3.jpg寺岡氏は、当初、全従業員の前で、「時間外労働をゼロにする」「有給休暇は付与に対して7割取得」と大胆ともいえる目標を掲げ、働き方改革を周知させようとした。しかし、従業員は、どことなく冷めた感じで『散々な反応』だったという。そこで、なぜそうなるのかを寺岡氏自身が考えたことが実践の契機となった。
「従業員の満足度を目標に掲げていながらも、具体的な取組の周知と実践が足りていないのではないかということに気付きました」
計画的に生産を行う工場の方では、比較的スムーズに取り組み始めることができた。一方、営業系の部署、特に東京や大阪の営業所にいる従業員から文句が上がったという。
「営業系の部署は売り上げの数字を背負っており、勤務時間は長くなりがちでした。『しんどい』『大変だ』という声が上がりましたね。残業しないと、営業から帰ってきての事務作業ができないとも言われました。私も営業をやっていましたので、彼らの言い分も理解できます。一方で、ついつい通いやすい取引先等に何度も行くなど、営業には非効率な面があることも経験上知っていました。帰社後もだらだらと職場に残ってしまうこともあり、これでは残業が発生してしまいます。業務を時間内で済ますように、私が実際に営業所へ出向いて指示しました」
さらに、電話の取り次ぎも18時までとした。実施を徹底することで、取引先にも周知を図ることができたという。


従業員の満足度に向けた具体的な取組へ

従業員と意思疎通を図り、有給休暇取得促進

type1_teraoka_4.jpg推進役として働き方改革を主導したのが経営管理部で、残業の削減への取組以外にも、従業員の事情に応じたフォローも行っている。同部署の小森さんにお話を伺った。
「ある正社員が介護などの事情でフルタイム勤務が厳しくなり、働きやすさを優先する方向での話し合いのもと、契約社員に変わったという例もあります」きめ細かに相談に応じることで、従業員の満足度を高める結果にもなったという。
「当社は、それほど会社規模が大きくないので、目が行き届くというか、個々の従業員の状況はそれなりに分かります。一人一人が貴重な人材ですので、納得して働き続けてもらえるように、できるだけ話し合いの場を設けるようにしています」

有給休暇取得率については、取組の導入前は45.4%だったのが、休暇の計画的付与も活用し、平成29年は約90%まで上がっている。この大幅な変化について小森さんは次のように説明する。
「従業員一人一人の意識が大きく変わったことだと思います。あまり有給休暇を取得していない人には、上司が取得するように促しています。今は『有給休暇は取らないといけない、取るのが当たり前』という意識に変わってきています」
トップダウンで始まった改革が、従業員の意識を変え、職場にも良い影響を与えている。


type1_teraoka_5.jpg多くの従業員がきちんと有給休暇を取得できる背景には、不在の場合のカバー体制がある。寺岡有機醸造では「部門を超えて、業務を協力してフォローしあっている」という。物流や工場のラインでの比較的簡単な作業については、製造部門以外の従業員でも対応できるようにするなど、個々ができる範囲で、休みを取った従業員のフォローをしている。

さらに寺岡氏は「実践に当たっての推進役」の重要性を語る。
「推進役の経営管理部の皆さんがしっかりやってくれたことが大きいです。トップが方針を出しても、実務に落としきれないのでは駄目です。実践して、取組の状況や結果をチェックしていく機能がないと、結果には結び付かないと思っています」

従業員の満足度アップ、離職率ゼロへ

メリハリのある働き方に向けた環境整備へ、従業員の自覚

「働き方改革による一番の成果は、有給休暇の取得率の向上をはじめ、職場環境の整備が進んだことです。離職率については、20%以上あったものが、大幅に改善されました」と小森さん。
他にも、有給休暇の取得などでリフレッシュにつながった結果なのか、体調不良等で休む従業員の数も減少したという。


type1_teraoka_6.jpgこの成果は従業員も実感しているようで、商品企画開発グループの小林さんは次のように話す。
「こちらに転職した際、有給休暇の取得率の高さや残業の少なさについてお話を聞いていました。実際に働いてみて、計画的に有給休暇が取得できる点はありがたいです。上司とのコミュニケーションもしっかり取れているので、安心して休むことができます。取得した休暇は、趣味などプライベートの充実に活用できています。仕事は、時間内で計画的に業務を行い、メリハリをつけて働くようにしています。今後は、時間を有効利用して、業務に役立つ資格取得の勉強時間に充てていきたいです」


type1_teraoka_7.jpg製造部の池田さんにご自身の働く状況を尋ねてみた。
「業務はミスが出ると、その穴埋めで計画通りに作業が進まず、続けてミスが出やすくなる悪循環になり、残業で対応せざるを得なくなります。それを防ぐため、日報を書いて部署内の意思疎通を図っています。ミスがあればまずはその原因を探り、同じミスを未然に防ぐために、チェックを丁寧に行うことにしました。さまざまな問題点に、早めに気付くことが重要なのだと思います。残業を減らし、休暇をきっちりと取得でき、趣味も楽しむなど、オンオフの切り替えをしっかりできることが、働く活力になっていると思います。もっと自身のスキルをステップアップもさせていきたいです」


最後に寺岡氏が、今後の意気込みを語ってくれた。
「働き方改革に取り組む今の良い流れをもっと定着していくようにしたいと思います。今後は売り上げアップを図りながら、より生産性を上げていきたいです。私どもの業界はどうしても人手不足になりがちですが、これまでの働き方改革の実践結果を、人材の確保にもつなげていきたいと考えています」