働き方改革事例

労使協調による働き方改革の先駆者

西川ゴム工業株式会社

  • 製造業
  • 広島市
  • 301以上
  • entrydatajireikaikaku2-01
  • entrydatajireikaikaku2-04
  • entrydatajireikaikaku2-08
  • entrydatajireikaikaku2-11
認定マーク
所在地 〒733-8510 広島市西区三篠町2丁目2-8
URL https://www.nishikawa-rbr.co.jp/
業務内容 自動車用シール材・産業資材製品の設計開発、製造販売
従業員数 1,382名(男性1,169名、女性213名)

(2018年1月現在)

seika_header.png

  • 良好な労使関係から生まれた数々の改革
  • トップの思いが息づく働き方改革の風土
  • より働きやすい環境づくりを最優先に
  • 県内初の「えるぼしマーク(三ツ星)」認定企業に
  • 性別や年齢を問わずチャンスは公平に

seika_footer.png

労働組合発足以来、職場改善は当然だった

従業員の要望を取りまとめる労使体制が鍵

type1_nishikawa_2.jpg自動車のドアやウインドー、トランク周りのシール材製造では、業界トップシェアを誇る西川ゴム工業。昭和9年創業の老舗だが、働き方改革への取組も長い歴史がある。その経緯を代表取締役の福岡美朝氏は次のように語る。
「弊社では労働組合が発足して60年弱になりますが、会社と組合の労使関係が非常に良好なのです。昨今、働き方改革が声高に言われていますが、組合が発足した当時から、従業員にとってより働きやすい環境づくりを協議しながら取り組んできました」

国内にある工場や営業所には、組合の支部長や執行委員がおり、定期的にアンケートを実施して従業員の意見や要望を取りまとめる。それらを集約し、春と秋に行われる労使交渉で協議していく。そこで合意に至った事項は、会社と組合双方が月に一度発行する広報誌やネットを通じて全従業員に公開し、徹底周知を図る。会社側から働き方の改善について組合に提示することもあるが、それらは働く環境をさらに整える事項のため、従業員にとってもメリットになり、組合側にも歓迎されているという。

これまで、特に働き方改革のために、プロジェクトを立ち上げたということはなかった。数十年にわたって築いてきた労使協調の姿勢が、当たり前のように働き方改革を進める基盤となっている。
その根幹にあるのが会長の思いだ。西川ゴム工業では、その年の定年退職者と会長、社長を交えて昼食会を開く。その席で会長が「従業員が会社を去る日に『西川ゴムに勤めて良かった』と思える会社でありたい」と常々話しているという。この会長の思いと、創業以来、労使協調で成長してきたという会社の風土が、働き方改革を推し進めてきたのだ。
「弊社の労使関係は、対立やなれ合いではなく、良い意味で緊張感があり、社外にも誇れる関係だと自負しています」と語る福岡氏の言葉が印象的だ。

いち早く実現した、魅力ある職場づくり

ユニークな制度の導入で着実に意識改革

type1_nishikawa_3_2.jpgでは、同社が長年にわたり地道に実現してきた働き方改革を具体的にひもといてみよう。
同社では、誕生日休暇や週末定時退社日の設置、年間最低有給休暇日数(8日)の設定、20時でのパソコン自動シャットダウン、フレックスタイム制など、数々の制度や成果が挙げられる。特に、フレックスタイム制の導入は30年前、20時でのパソコン自動シャットダウン導入は10年前からだという。

中でもユニークなのは誕生日休暇だ。
「誕生日というのは特別な日です。このメモリアルデーを有意義に過ごしてもらいたくて設定しました。ところが導入当初は、全員が取得できていたわけではありませんでしたが、『あなたにとって特別な日』ときめ細かく説明したり、業務上の配慮をしたりした結果、今では100%の取得率となりました」
20時でのパソコン自動シャットダウンについても、当初は時間に関係なく得意先との対応に追われる部署からの反発があったが、実行してみると得意先の方も理解を示してくれて定着したという。また、「上司が帰らないから帰れない」という雰囲気も解消され、仕事の効率化につながった。

さらに、三つ星の「えるぼしマーク」認定を受けた県内初の企業という快挙も注目点だ。「えるぼしマーク」は平成28年に施行された女性活躍推進法から誕生したもので、女性活躍を推進している企業の証しといえる。
(1)採用(2)継続就業(3)労働時間等の働き方(4)管理職比率(5)多様なキャリアコースという5つの項目で評価され、3段階の認定を受ける。5つ全てを満たせば三ツ星である。女子学生たちが就職活動の際、女性が活躍できる企業か否かを判断する指標にもなっている。
西川ゴム工業では、えるぼしマークを取得に当たっても、いわゆるプロジェクトチームを立ち上げていない。これまで女性が働きやすい環境づくりのために推し進めていた事項を、認定のための項目に当てはめると三つ星認定に至ったという。「えるぼしマーク」の認定は、思いのほか社外からの反響が大きく、今後は会社の強みとして積極的にPRし、女性の採用促進に弾みをつけたい思いがあるという。

「女性管理職の比率は、平成27年の2.1%から現在は4%に増加しました。業界としては高い数字だと思いますが人数にすると一桁で、女性役員はゼロという課題もあります。まだまだ道半ばだと感じています」と福岡氏。女性だけの講習会を女性従業員自らが開催するなど、働く側からの意識改革の取組も見られ、着実に成果を上げている。制度を設定するのはさほど難しいことではなくとも、重要なのは制度を運用すること。それができているのが同社の強みといえるだろう。

性別や年齢ではなく意欲を基準にしたキャリアアップ

公平にチャンスを与え、人材を育成する

キャリア採用で入社した設計を担当している清水さんは、働きやすい職場であることを実感している一人だ。「周りに結婚、出産、子育てを経験しながら働いている人が多く、女性が長く勤められる職場であることが伝わってきます。以前は派遣社員としていくつかの職場を経験していますが、弊社はとてもアットホームで、どこよりも雰囲気の良い職場です。特に誕生日休暇はすてきな制度だと思います」と語る。
男性初の育児休暇を取得した従業員もいるとのことで、性別を問わず、ライフステージに応じて柔軟に働けることに配慮した企業であることが伺える。


type1_nishikawa_4.jpg「弊社は、男女に関係なく、キャリアを目指す意欲のある従業員には、公平にチャンスを与えます。今後、労働人口が減少するのは明らかです。ならば、人口の半分を占める女性が活躍できる場をつくっていかなければ、企業の未来はないのです。10年先、20年先を見据えながら働く環境を整えることが、会社の未来を担う次世代のために私たち世代がやるべき使命だと考えています。一方で、長時間労働の削減や有給休暇の促進などは、まだまだ道半ばだと思っています。生産現場の自動化やICT活用などによる業務効率改善を実践しながら、人の感性を生かす業務との両立を図りたいですね。そのためにも、労使協調の伝統を守り、より良い働き方を目指した活動を今後も進めていきます」と福岡氏。
同社の長年の取組からは、良好な労使協調に基づいた強い会社組織と働きやすい職場、従業員のワークライフバランスの充実という良い循環が読み取れる。