働き方改革優良事例

営業と生産部門での特別なコストをかけない業務改善で、
生産性を落とさずに、働きがいのある会社へ

株式会社 ユニバーサルポスト

  • 製造業
  • 西部
  • 101〜300
  • 推進体制(総務人事)
  • 長時間労働の削減
  • 休暇取得の促進
  • 育児・介護・治療と仕事の両立
認定マーク
所在地 〒733-0833 広島県広島市西区商工センター7丁目5番52号
URL https://www.u-post.co.jp/
業務内容 総合印刷、デザイン、WEB、販売促進、業務代行
従業員数 156名(男性108名、女性48名)

(2018年10月現在)

seika_header.png

  • 現場リーダーも参画した「働き方改革推進部会」を設置し、全社で取組を推進
  • 時間単位の有給休暇制度や本社内子連れ出勤ルームなど、両立を支援する制度
  • 各従業員の技術レベルを見える化した「星取表」で、スキルアップと多能工化を推進
  • 営業部門のプロセス等の見直しにより、効率化に向けた取組が進展
  • 第2ステージとして、定量的な目標設定と、労使が納得できる人事評価制度を試行中

seika_footer.png

取り組んだ背景とは? ~今後の会社の成長のため「変えること」に挑戦

創業70周年を迎え、組織の成長とともに規模・事業内容とも進化・拡大している同社。業務領域が広がる中、総務や営業のほか、技術者などの専門職も多い。一方で、現場での業務は属人化し、そのノウハウは個人に蓄積するに留まる傾向があった。さらに、仕事と家庭の両立支援制度を導入していても「忙しくて活用できない」「制度のことをよく知らない」という従業員も多く、この状況に会社側も課題を感じていた。
「会社の成長のためにも、働き方改革を突破口として、業務改善や働きがいのある職場をつくっていかなければという思いがありました。2017年度に広島県の『働き方改革企業コンサルティング事業』参加企業に選ばれたことも、取組の大きな推進力となりました」と推進役を担った専務取締役の前田氏は語る。


取組導入のプロセス ~まずは課題を把握。目指す方向性と体制を決め取組の土台に

同社がまず取り組んだことは、しっかりと現状と課題を把握すること。全従業員にアンケートとヒアリング調査を行った結果、従業員のニーズを踏まえた両立支援制度の運用とともに、営業や生産管理も含めた一体的な業務プロセスの見直しと従業員個人のスキルアップなどが求められていることが分かった。そこで、2017年度の取組の方向性を「両立支援制度の見直しと拡充」「効率化に向けた部門ごとの業務改善」の2つに絞ることを決定し、その実現のための意識改革を“「人に仕事がつく」から「仕事に人がつく」”というスローガンで促していった。


主な取組と工夫点 ~会社の本気度を伝えつつ、両立支援と業務改善から取り組む

全社セミナーで会社の本気度を伝える

働き方改革への取組には、従業員一人一人の理解が欠かせない。そこで取組に当たって、トップからのメッセージ発信と従業員の意識改革を目的とした研修会「働き方改革キックオフセミナー」を開催した。全従業員を集めて会社や業務のことを話し合うのは、同社にとって初めての試み。部門の異なる従業員同士が理解を深める良い機会となったという。
社内のコミュニケーションをさらに深めるため、WEB社内報も作成。管理職が他部署の従業員を紹介する企画など、部門という枠を越えての内容に工夫した。

子連れ出勤制度など、両立支援制度の拡充と見直し

子どもの休校など突発的な事態に対応する制度がなく、前述のアンケート調査でも「育児との両立環境の整備」へのニーズが寄せられていた。そこで本社に子連れ出勤ルームを設置し、子連れ出勤制度の試行をしたところ、学校の長期休暇時を中心に利用実績が上がり従業員からも好評を博したため、その後も引き続き実施している。

有給休暇の積み立て保存制度を新たに導入

従業員から「治療や介護と仕事を両立できる制度」の導入を求める声が多く上がったことから、従来は時効消滅していた有給休暇を積み立て保存できる制度を新たに導入した。さらには2018年4月より、年40時間を上限として1時間単位で有給休暇を利用できるように、有給休暇制度を改定した。
「以前は従業員が、自身の年次有給休暇の取得状況について把握できていませんでした。まずは自身の現状を把握して積極的に取得してもらえるよう、各従業員の給与明細に取得状況を明記するよう工夫しました」と前田氏は語る。同社では取組のベンチマークとして、毎月の労働時間、休暇取得状況をモニタリングし、管理本部が実績をチェックし各部門への通知も行っている。

営業業務の棚卸しと業務プロセスの見直し(部門ごとの業務改善)

営業部門は、担当がそれぞれのやり方で業務を進めていたため、チーム単位でのマネジメントができにくい状況だった。そこで出社時に立てた1日の計画と業務終了時の実績を見える化する、新たな業務管理ツールを導入した。個人とチームの行動をデータで確認すると、訪問先移動や会議資料・報告資料などを作成するための事務作業に、想定以上に時間がかかっていることが判明した。
そこで移動時間短縮のため、営業担当エリアを見直し、担当顧客の振り分けを進めた。営業担当者が抱え込みがちな事務作業を関連部署に任せる体制を整えるため、生産部に所属していた業務支援課を営業部所属の「営業サポート課」に変更した。
「当初、営業担当者それぞれの営業スタイルがあるのだから、管理ツールなどは不要ではないかとの声がありましたが、上長が部下の予定入力や終了報告時に、アドバイスやフィードバックを徹底して行うことで活用を進めました。また従来の業務支援課では依頼するのに遠慮があり、うまく機能していなかった状況を踏まえ、連携しやすいように営業部門に所属替えしました。営業部門がお客さまとの接客業務に専念できるよう、事務作業のサポートを行っています」と前田氏は言う。
さらには、数件の顧客など可能な範囲から営業2人体制を試行し、若手従業員の育成と属人化の解消にも取り組んでいる。

生産部門の多能工化を推進(部門ごとの業務改善)

業務内容が多様化する中、「一人が複数の機械を扱える」ようスキルアップが必要と考え、生産ラインごとに業務フローや業務内容を棚卸しし、その業務を行える従業員は誰かといった各従業員の技術レベルを見える化した。
「取組前は、誰がどの機械を動かせるのかすら、明確に共有できていませんでした」と前田氏。こうした中で、各従業員の技術レベルを基に、目指すべき育成計画を一覧化した星取表(スキルアップ計画書)を作成し、多能工訓練に取り組んだその結果、一人が複数の機械・作業工程を担当できるようになり、誰かが不在の場合でも生産性を落とさずにカバーし合え、休みやすい体制づくりが進展した。多能工化の取組は、現場リーダーと部下が話し合って目標を決め、管理職が毎月進捗をチェックする体制で行っているという。


取組の中では課題も

「取り組むに当たり、会社側の思いを伝えるとともに、従業員の反応を拾うことにも意識しました」と前田氏。
スタート時の推進体制「働き方改革推進部会」は、各部門の責任者に当たる担当役員が中心だったが、従業員の主体的な取組を広げるため、途中から現場リーダーも加わる体制に強化した。それにより、リーダー自身の意識改革とともに、働き方改革に取り組む会社の目的や意図、取組計画などをそれぞれの現場単位で丁寧に説明することを促した。さらに、各現場の従業員の声をリーダーが集めて推進委員会に報告するなど、取組が一方通行にならないように工夫したという。
従業員主体の取組を促しながら、業務改善や新たな両立支援制度の取組を通じて、労働時間の短縮や有給休暇取得の促進を図っている同社だが、2018年に入ってからは、役員による全従業員への個別面談も行っている。従業員の本音を聞くことにより、従業員の改革に対する意識も高まるなど、フェース・トゥ・フェースで会話することの大事さを実感しているという。


取組の成果

特別なコストをかけずに集中的に取り組んだ同社では、その期間の終了時にアンケート調査を再度実施。会社の考え方や方針を全従業員の9割が理解し、改革継続の必要性に共感していることが分かった。 「来春の就職希望者との面接では、半数の人がわが社の取組を知ってくれていました。今後は協力会社やお客さまにも情報発信して、働き方改革の自社の取組をもっと広報していきたいと思っています」と前田氏は今後の意欲を語る。

労働時間・休暇(直近約1年間)

・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率 46%(約12%増加 ※集中取組前と比較)
・常用雇用者の総実労働時間 171.2時間(約5時間(月)削減 ※集中取組前と比較) 

育児と仕事の両立

・育児と仕事の両立のための、子連れ出勤ルームの設置 利用者延べ74名(2017年8月〜2018年9月)


従業員からの評価

「多能工化により各人がいろいろな機械を使えるようになって、誰が抜けてもカバーできる体制が整い、今は安心して休めます。実際に昨年は、例年の2倍の有給休暇を取りました」と生産本部商工プレス課リーダーの川原さん。「今年から有給休暇を時間単位で使えるようになったので、数時間早く帰って家事をしたり、家族との時間を楽しんだり。残業時間が減り、妻も助かっていると思ってくれているのでは」と語る。さらに「この機械の作業が遅れているなと思ったら、部下から進んで『手伝いましょう』と言ってくるなど、みんなで助け合うという意識が出てきて、職場の雰囲気もずっと良くなりました」と取組の進捗を実感している。


現在取り組んでいる上での課題や今後の目標 など

2018年4月から人事評価制度を再構築し、現在は試行中。全従業員が定量化した目標を立て、本人評価・上司評価をした上で個人面談を行うことで、従業員の不満解消とより公正な処遇を目指している。さらに「成果主義」だけではなく、「業務改善に取り組んでいるか」「スキル向上にチャレンジしているか」「働き方改革を理解して行動しているか」なども評価対象に加え、従業員の自律的な行動を引き出す取組を推進していくという。
「働き方は短期間で簡単に変わるものではないと思います。企業経営=働き方改革だと思うので、今後も継続的にやっていくことが大切だと考えています」と前田氏は締めくくった。

取材日 2018年9月