働き方改革優良事例

訪問重視の営業から発想を転換。
ボトムアップの業務改善で、Lifeの充実も目指す

株式会社体育社

  • 卸売業・小売業
  • 西部
  • 31〜100
  • 推進体制(総務人事)
  • 長時間労働の削減
  • 休暇取得の促進
  • 時間・場所等の多様な働き方
  • 育児・介護・治療と仕事の両立
認定マーク
所在地 〒730-0029 広島県広島市中区三川町7番5号
URL http://www.taiikusha.co.jp/
業務内容 スポーツ用品の小売業
従業員数 55名(男性20名、女性35名)

(2018年6月現在)

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  • トップメッセージの積極的な発信とボトムアップ型の取組を促進
  • 取引先の理解を得ながら商慣行の見直しで業務を効率化
  • まずは小さな取組を着実に~「なくそうゼロチェックリスト」の作成で小さな成功体験を蓄積
  • 店舗ごとの売り上げ実績を踏まえた店休日の設定

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取り組んだ背景 ~会社の方向性の統一と、「やらされ感」からの脱却

同社は創業70年を迎えるスポーツ用品の小売販売業を営む会社である。従業員の幸福と健康を願い、仕事を楽しくするため、ワークライフバランスの必要性を感じる一方で、社内には、旧態依然とした非効率的な業務の進め方があった。従業員には、待遇面での不満が表面化して、出産を機とした退職者も出ているという状況があった。
代表取締役の大野昌志氏はこう振り返る。「2016年には定時退社促進などの取組を始めましたが、ほとんどトップダウンで進めていたこともあり、経営層の思いがうまく伝わらず、従業員には『やらされ感』があるようでした。そんな折に参加したのが、2017年度の広島県『働き方改革企業コンサルティング事業』です。専門コンサルタントの助言を受けながら、新たな改革の動きを社内に入れたいと考えました」


取組導入のプロセス ~従業員が自分事として捉える改革に~従業員による専門部会の発足へ

大野氏は、前述の県コンサルティング事業参加を契機に、従業員の労働時間の削減やスキル向上とともに、仕事を楽しくする働き方の実現を目指したいと考えた。
「業務を効率化するために何ができるかを考えながら、従業員が改革を自分事として捉え自ら行動するために、ボトムアップで取組を進めたいと思いました」と大野氏は語る。
そういったトップのメッセージを、全従業員が参加した「働き方改革キックオフセミナー」で発信し、会社の本気を伝えるとともに、従業員同士のグループディスカッションを行い、理解を深めた。ボトムアップ型で改革を推進するためには、経営者層4名による「働き方改革推進本部」の下部組織として、現場スタッフを参集した「管理グループ」「営業グループ」「販売グループ」「女性グループ」の4つの専門部会を立ち上げた。ほとんどの従業員がどれかに所属し、改革を自分事として考え、改善の提案を促す体制になっている。


主な取組と工夫点 ~各部門の課題からボトムアップで改善点を探る

「売り上げが気になって、残業の削減に取り組めないという従業員も少なくありませんでした。しかし取組が進めば、将来的には売り上げが伸び、生産性も向上すると考え、一時的に売り上げが下がってもよいから、まずは残業削減に取り組むよう指示しました」と大野氏は振り返る。

外商部門~当たり前としていた商慣行に対する発想を見直し効率化

外商部門では、「取引先への訪問が仕事」という考えがあった。一方で、訪問は計画的とは言えず、画一的に行っている状況があり、訪問に要する移動時間の長さも残業につながっていた。古くからの商慣行である訪問集金も、労働時間削減の足かせになっていた。そこで、常時対面の発想を転換。取引先との交渉を行い、集金の約8割を口座振り込みに変更し、業務にかかる時間を削減した。商談においては、FAXやメールなどで、書類を送付した後で訪問する手順に変えたが、これも時間短縮につながったという。
「次は生産性を上げることが課題です。今までは全ての取引先を同じように訪問していましたが、これからは取引先を総合的に分析した上で、営業計画を立てていこうと思います。生産性の高い所に人員と時間を投資することで、労働生産性を上げたいと考えています」と大野氏は今後を語る。

外商部門~モバイル用パソコンの活用で、営業を効率化

2018年から営業担当の9人に、1人1台のモバイル用パソコンを支給している。
「新商品の情報などは、いちいちペーパー化して共有していました。今はパソコンで、お客さまにも画面をお見せしながら営業できるので、業務の効率が上がったと感じています」と第2営業部係長の藤井氏。その他、日報作成、見積もり、発注なども出先で行え、商談時間も増えたという。

販売部門~「なくそうゼロチェックリスト」の作成で小さな成功体験を蓄積

当初、何から取り組めば良いのか分からない状況があったという販売部門。大きな改革ではなく、まずは成果が出やすい部分から着手し、ロスや無駄を削減する内容をリスト化した。「笑顔がないスタッフゼロ」「レジ周りのモノゼロ」「お断りの回答ゼロ」など10項目について月2回、全店舗・全員でチェックし、できなかった時の状況と今後の対策について、各店舗で検証を行っている。それにより、全員が店内を意識して見るようになり、少しずつ店舗内の改善が進んだという。
顧客満足度の向上を図るためには、勉強会の開催や外部研修への積極的な参加を行い、修理や接客などのスキルアップと多能工化にも取り組んでいる。

女性グループ~「育休マニュアル」を作成し、相談しやすい体制も整備

同社は、全従業員の半数以上が女性である。出産・育児をしながら働き続けられる職場づくりに向けて、育休前・育休中・復帰後の3期間における、オリジナルの「育休マニュアル」を作成した。経営方針発表会において、全従業員に、育児休業制度やその取得への理解を促した。育休中の従業員に対しては、新入社員の採用情報や昇進昇格情報などの人事関連情報を発信するとともに、子育て経験のある先輩女性従業員が相談役の窓口を設置するなど、業務復帰へのサポート体制も整えた。
「産休や育休を経て、職場に戻ってきてほしいという思いから取り組んでいます。働き続けることができるという安心感が大切です」と大野氏はいう。

店舗ごとの売り上げ実績を踏まえた店休日の設定

従業員の中でも、店舗は休暇を取得しづらいと、不満が噴出していた。そこで店舗ごとに曜日別の売り上げ実績などを分析し、本店以外の各店舗で毎週火曜日を定休日と定めた。懸念していた売り上げについても、あまり影響はないという。
「店舗の定休日は完全に休みなので、特に店長や副店長は心身ともに休まると喜んでくれています」と大野氏は語る。

部門ごとに取組を進めている同社だが、7月からは、社内全体での共有を目的にしたITツールを導入した。
「今までは、個人で管理していた業務資料や、部署ごとの報告書なども共有できるようになりました。自分の部署では『正しい』ことでも、他部署から見たら『無駄』なこともあります。良い点や問題点は部署を超えて共有し、改革をもっと進めていきたいと思っています」と藤井氏は意気込む。


取組の中では課題も

ボトムアップ型の取組は、トップダウン型よりも時間を要する場合が多い。
「従業員の提案を待つ勇気が経営者に求められました。『任せる・ぶれない・口うるさく言わない』を通すことは、経営者にとっても覚悟が必要でした」と大野氏はいう。一方で、いきなり従業員に対して改善策を実行するよう求めても、各自が違う考えで違う方向に進んでしまい、現場が混乱するのではないかという懸念もあった。このため、会社が求める方向性を見える化した工程表を専門部会の議論の基礎資料として活用してもらいながら、具体策を検討・実行していったという。
「改革を進める際は、上司ほど頭が柔らかくないといけないと実感しました。若手従業員から意見が出ても、頭ごなしに駄目だと言うと、二度と提案が出なくなり不満も出ます。いったんは意見を受け入れるように意識しています」と藤井氏。


取組の成果

「何よりも従業員に不満を吐き出してもらい、その上で会社の目指す方向性について、従業員と意思統一できたのが良かったです。取組前には一時的に落ちることも覚悟していた売り上げも、改革からの大きな影響はありません。改革によって従業員の満足度が上がり、生産性も上がってアピールができる。どうせやるなら、早く取り組んで、時代の少し先を歩いていきたいですし、それが採用活動にもつながっていくと思っています」と、大野氏は今後の展開を見据える。

労働時間・休暇(直近約1年間)

・常用雇用者の所定外労働時間が5.8時間/月削減(※集中取組前と比較)
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率 が約30ポイントアップ(※集中取組前と比較)

従業員アンケート調査結果より

・仕事以外の生活の充実満足者 79%
・長時間労働の改善度 86%


従業員からの評価

「今までやっていた仕事が本当に必要なのかを考え、業務の効率化を意識するようになりました。それを部署全体で共有する意識も生まれています」と藤井氏。「また、プライベートの時間が増えて、モチベーションが上がるとはっきり口に出す若手の従業員もいます。私もジムに通うなど健康づくりを始めました」と続ける。
2018年3月に実施したアンケートでも、「休みやすくなった」「全員が仕事を考えて行うようになり、話し合う場が増えた」「今まで個々のやり方が違っていたが、統一することで誰でもいつでも協力することが可能になった」などの声が聞かれたという。


今後の目標

「今後は、社内異動を積極的にしようと思っています。動かさないと組織が活性化せず、全体最適にならない。自分の所だけ良ければいいという部分最適になってしまいます。いろいろな部署で経験を積ませることによって、従業員の可能性を高めていきたいと考えています」と大野氏。「従業員がもっと幸せになれるように、もっと楽しく働ける環境をつくっていきたい。働き方改革は働きやすさだけを求めた改革ではなく、生産性の向上が伴わないと成功とはいえないと思っています。そのためには、従業員それぞれが人間としての魅力を高めることが必要です。早く帰って、運動したり、食事をしたり、家族との時間を楽しんだりするなど、いろいろな知識を身に付け、人間力を高めてほしいと思っています」と締めくくった。

取材日 2018年9月