働き方改革優良事例

トップダウンとミドルアップダウンの2ステップで
従業員の自発的な行動を促す

東洋電装株式会社

  • 製造業
  • 西部
  • 31〜100
  • 推進体制(総務人事)
  • 長時間労働の削減
  • 休暇取得の促進
認定マーク
所在地 〒731-0103 広島市安佐南区緑井4丁目22番25号
URL http://www.t-denso.com/
業務内容 制御盤製作・システム開発
従業員数 61名(男性41名、女性20名)

(2018年6月現在)

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  • トップダウンとミドルアップダウンを組み合わせた2段階プロセスの改革
  • これまでの成功体験を否定せず、未来を見据えた意識改革を促す
  • 勤務間インターバル制度・早朝勤務制度・1920制度の3点セットで見直し
  • 困り事スレッドの設置でボトムアップの風土を醸成
  • 能力開発に連動した人事評価制度で生産性向上を図る

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取り組んだ背景とは? ~業務を改善し、本来のものづくりの楽しさを取り戻す

制御盤製作を出発点として、インフラネットワークや介護福祉システムなど、複合的に事業を拡大してきた同社では、会社の成長に伴い、従来の就業規則と実業務の間にずれが生じていた。事業によっては属人的な業務も多く、一部の従業員に業務が集中し、長時間労働が当たり前の状況があった。
取組の中心となっている、総務・経理チームのチームリーダー桑原健太氏は、次のように語る。
「それまでも、ノー残業デーの取組などを行っていましたが、社内全体に浸透せず、なかなか改善しない状況がありました。属人的な業務もあり、技術の継承という点でも危機感を抱いていました。そこで『今、何とかしなければ、いつか従業員が疲弊していまい、会社としても息切れしてしまう。本来のものづくりの楽しさを取り戻せる環境づくりや制度改革を行いたい』という経営者の意向を受け、働き方改革の取組を本格的に進めることになりました」


取組導入のプロセス ~トップダウンからミドルアップダウンへ

もともと、従業員の意見を尊重する会社の風土や文化があった同社。「従業員自らが主体的に動かなければ、改革は継続しない」という考えから、まずは従業員が主体となり、ボトムアップによる改善を始めた。しかし、それぞれの業務が忙しく継続しづらい状況や、リーダー役であるマネージャー層自体の改革に対する共感不足もあり、取組は停滞してしまった。
そこで、ボトムアップの取組も継続しつつ、社長からの明確な発信による“トップダウン”で、改革を実行した(第1ステップ)。社長が加わったことにより、意思決定のスピードが高まり、全社的な制度改革の実行や、さらなる改革の進展につながった。改革の道筋ができたところで、マネージャーが起点になる“ミドルアップダウン”に切り替え(第2ステップ)、2つのステップを踏んで、現場の従業員へ浸透を図っていった。
「結果的に2つのプロセスを踏んだことが良かったです。取組を継続していくには、やはり自発性が必要です。程よいところでミドルアップダウンに切り替えたことで、うまく定着が図れたと感じています」と桑原氏は語る。


主な取組と工夫点 ~従業員の意識を変えていくこと

トップダウンで社内制度の整備を推進

「業務改善だけでなく、従業員が“楽しく仕事ができる”仕組みをつくる」という方針を立て、社長と各部門のマネージャー層で議論を重ねながら、長時間労働の削減に向けた制度改革に取り組んだ。特徴的な取組として、以下の3点が挙げられる。

①「勤務間インターバル制度」勤務終了後に10時間以上の休息時間を空ける。
②「1920制度=退社促進制度」間接部門は19時、現業職は20時までの退社を促す。
③「早朝勤務制度」早朝出勤者には早出残業代として、50%増しの残業代を支給する。

例えば、③「早朝勤務制度」は、漫然と終わりが延びがちな夜の残業を、時間が限られる朝へ振り替えることで、効率的に働く土壌づくりを目指し導入した制度だ。これらの取組を導入することで、従業員の時間に対する意識が高まり、長時間労働が抑制され、月間の総労働時間が大幅に削減された従業員もいるという。
加えて、次のような工夫も行っている。

改革を推進しながら、マネージャー層の意識改革

一番の障壁となったのは、「残業は仕方ない」と諦めている従業員の意識をどう変えるかであった。同社には職人かたぎの従業員が多く、長時間労働を当たり前とする働き方が根強く残っていた。それを頭から否定することは、今までの従業員のがんばりを否定することになりかねない。そこでこれまでを否定するのではなく、今の時代の流れや取組の必要性を社長や桑原氏が中心となり根気よく説明した。さらには、改革の鍵を握っている各部門のマネージャー層に対して、何度もマネジメント研修を行い、考え方の変化を促した。

アニバーサリー休暇「イノベーション休暇」

組織に活力を生み出すため、ワーク・ライフ・バランスの支援制度として、会社独自のアニバーサリー休暇「イノベーション休暇」を導入している。これは、事業部のリーダーに、休業日を除く10日間の連続休暇を取得するよう奨励するもので、休暇中にかかった費用のうち、最大20万円の経費を会社が負担する。身体と心をリフレッシュし、社内に新規事業などイノベーションを起こすことを狙いとしている。さらにリーダーを中心に、上司が率先して有給休暇を取得することを心掛け、休みやすい雰囲気づくりにも取り組んでいる。

ボトムアップからの改革 ~困り事スレッドの開設

従業員からのボトムアップの改善を促すため、毎月1人1件、困り事や気付きを社内スレッドに上げることを義務付ける「困り事スレッド」を開設した。「まずは一人一人が声を上げて、継続すること大切です」と桑原氏。
書き込みは「トイレに目隠しがないから入りにくい」とか、「空調が効かない」といったことなど何でもよい。これにより声を上げる習慣が根付き、ボトムアップで改善を提案する風土が醸成されはじめているという。実際に、終業時間以降は留守番電話に切り替えるなど、働き方改革に直結する提案も出てきている。

スキルアップを目的とした人事評価制度

部門によって業務や実態が大きく異なるため、全社共通の人事評価として「スキルマインドシート」という手法を取り入れた。各従業員のスキルが、色付けしたチャートで表現され、自分の弱い部分と強い部分が一目で分かる。自分の課題や、評価されるポイントが分かりやすいため、今後の能力開発やモチベーションアップにつながるという。


取組の成果

働き方改革に対する会社全体の理解が進んだことが、何よりの成果だと捉えている。実際、取組の必要性を全従業員の約8割が理解し、その進展をマネージャー層の約8割が実感している。成果発表会などを通して、これまで早く帰ることに否定的であった従業員も、早く帰ろうと努力している様子がうかがえるという。
取組を始めてから、ボトムアップの風土が根付き、従業員から「キャリアアップの道筋を明確にしてほしい」といった声が上がるようになったのも、これまでにない成果だ。従業員自身が、キャリアアップを真剣に考えるようになった表れである。
課題であった従業員の離職についても、取組を始めてからは、仕事と家庭の両立を理由に離職する者は出ていないという。
「就業継続を悩む従業員が、辞める前に相談に来るようになりました。従業員の悩みをしっかりと聞いて、改善策や活用できる支援制度、会社の方向性等を丁寧に説明するようにしています」と桑原氏。

労働時間・休暇

・正社員一人当たりの所定外労働時間(月平均) 13%減少(※集中取組前と比較)
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率が68.5%へ18.2ポイント増加(※集中取組前と比較)


従業員の評価

「仕事と家庭の時間のメリハリを付けるようになった」という声や、「時間内に、いかに効率良く仕事をこなすかを日々考えて行動するようになった」といった声が上がっている。
販売促進チームのデザイン担当、戸谷さんに取組の感想を聞いたところ、次のような答えが返ってきた。
「1920制度で、毎日19時までに帰るため、常に時間を意識しています。どうしても間に合わないときは、早朝出勤を利用します。朝は電話がかかってこないため、その分集中して仕事ができますので、30分早く来ただけでもかなり違います。空いた時間は、習い事や自己啓発に充てていきたいと思います」


就職希望者からの反応

ホームページやブログなどを通じて、取組を社外に情報発信した結果、求人において仕事に対するモチベーションの高い人から問い合わせが増えるなど、応募者の質も向上。働き方改革が、人材採用時のアドバンテージとなっていることを実感しているという。


今後の目標

今後は、能力開発に評価が連動する仕組みと制度を構築していきたいと考えているという。具体的には前述の「スキルマインドシート」を基本とし、さらにブラッシュアップすることで、従業員のモチベーションを上げていくことを目指している。取組を一時的なものとせず、各部署のリーダーを起点に、ミドルアップダウンの取組を継続させることこそが重要だと認識している。

取材日 2018年9月