働き方改革実践(認定企業)取組企業事例一覧

里山で青年・高齢者・障害者等が、
安心して働ける取組を

社会福祉法人優輝福祉会

  • 医療・福祉
  • 庄原市
  • 301以上
  • 推進体制(経営者)
  • 休暇取得の促進
  • 多様な人材の活躍
  • 育児・介護・治療と仕事の両立
認定マーク
所在地 〒729-3713 広島県庄原市総領町中領家476番地
URL http://yuukifukushikai.com/
業務内容 福祉介護、飲食店、自動車整備など
従業員数 355名(男性131名、女性224名)

(2018年7月現在)

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  • 青年・高齢者・障害者など幅広く迎える「ボラバイト」の募集
  • トップへ直通の提案企画書と委員会設置による従業員参加型経営
  • 事業所内保育園や男性育児休暇の取得向上など、子育ての環境整備
  • メモリアル休暇で有給休暇の取得促進、労働時間は7時間20分に
  • 配置転換を丁寧に行うことで離職を防ぐ

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取り組んだ背景とは? ~里山に働き口を増やし、誰もが働ける場を提供する

里山地域である庄原市や三次市を拠点として、27年前から「ソフトケア」をモットーに高齢者福祉をはじめとする「街づくり型サービス」を続けている同法人。理事長の熊原保氏は、当時の思いを熱く語る。
「大学卒業後、庄原市に戻って老人ホームに勤務しました。27年前、甲奴郡総領町(現在の庄原市)に政策提言を行い、若者が地元に戻ってくるための受け皿として老人ホームをつくったのが、この社会福祉法人の原点です。福祉施設がポンプ役となって、若者に都会からIターンUターンしてもらい、街づくりをしたいと。もともと働く場所が少ない里山で、福祉以外でも活躍できる場をつくるために、廃業したパン屋や自動車会社、旅館などを譲り受けて新しい事業を開発し、青年や高齢者・障害者など誰もが働ける場に再生しています。働き方改革は、もう25年以上前から行っています。『子どもを連れて働きに来ていい』『高齢者も障害者もいっしょに働こう』とずっと活動してきて、ようやく時代が追い付いてきました」
ただ近年、状況が大きく変わっているという。「3年ぐらい前までは毎月採用試験をしていましたが、今は人手不足の都会に取られてしまって人材が集まりません。そのため働き方改革をさらに加速させています」


主な取組と工夫点 ~斬新な取組や制度の導入

斬新な取組の一例として、2017年4月から募集している「ボラバイト」が挙げられる。さまざまな理由にかかわらず、青年から高齢者、障害のある方などを幅広く迎え入れ、共に働くことを目指した取組である。「ボラバイト」とは、ボランティアとアルバイトを組み合わせた造語だ。現在の雇用形態ではなじみにくい人でも、「短時間なら」「週1回だけ」「最初はボランティアから」など、個性や事情に応じた多様な働き方で働ける。年齢不問、仕事内容も選べ、日にち・時間も希望に応じる登録制だ。
「社会福祉法人の地域貢献、社会貢献です。無償のボランティアから入って、非常勤職員になった人が数名います」とリハビリチーム課長の若井さん。現在の登録者は70数名で、うち34名が65歳以上の高齢者と、国が提唱する生涯活躍社会を体現している。同時に同法人にとっても、人材の確保につながっている。
さらに職場環境の改善に向けて、意見のくみ上げや制度の充実などへ、次のように取り組んでいる。

理事長へ直通の提案企画書と30人委員会の設置

従業員から個別に意見を聞くため、全従業員との面接を実施し、さらに現場の声を吸い上げるため、理事長へ直接届く企画提案書の提出を奨励している。また、中間管理職以上の30人で構成された『30人会』を設置し、今後の方針を話し合い、従業員参加型の経営を進めている。
これらの中から出てきた提案として、車両の整備、有機農法のカフェ、塩のショールームなど、すでに実現した企画も多数あり、事業拡大や後継者育成に貢献している。

事業所内保育園の整備、男性育児休暇の取得向上

最長3年間の育児休業を導入し、事業所内保育園を2カ所設置している。保育園は0歳から6歳までの子どもを預かり、保育料は無料になっている。基本的には平日だけだが、勤務時間に合わせて土曜日や時間延長も行っている。「職場内だから安心」「保育園があるから働き続けられる」と従業員からも好評だ。
男性の育児休暇も、直近3年間で3人が取得。「最初の育メンが誕生したのは2011年。当時、男性の育児休暇は一般的でなかったので、職場を納得させるのが大変でした」と熊原氏。
今では管理職や入社数カ月の従業員も取得し、2回取得した従業員もいるという。「妻が大変な時に休んで家事や育児をすることで、家庭に立ち返って、充実した日々を送れた」などと喜びの声が聞こえている。

「メモリアル休暇制度」の導入により有給休暇の取得促進

年間2日以上、全従業員が自分や家族の記念日(誕生日や結婚記念日など何でも構わない)を休暇として取得できる「メモリアル休暇制度」を導入。毎年9月に全従業員から1年間の予定を出してもらい、それを各事業所で勤務表に組み込んで、確実に取得できるように調整している。
「私は自分の誕生日と母の誕生日に取っています。母の誕生日にはランチを一緒に食べに行って、感謝の気持ちを表しています」と管理栄養士の近藤さん。

本人の意向も踏まえた柔軟な配置転換で離職を防止

熊原氏は、柔軟な配置転換も重要だという。「私から見たら離職率は高いと思いますが、同じ業界の中では定着率はいいと思います。人間関係の悩みで離職することは少なくないのですが、私どもの法人には多数の事業所があるため、その事業所に合わなかったら、別の事業所に配置転換するなど配慮します。もちろん丁寧に本人の意向を聞き、説明した上で、納得して異動してもらいます。私どもはもともと『ソフトケア』という理念で、ケアは柔軟でないといけないと考えています。働き方にもそれを応用して、できるだけ柔軟な働き方をしてもらいたいのです」


取組の成果

「2002年から、全従業員の1日の所定内労働時間を7時間20分にしています。シフト制ということもあり残業をしている従業員はほとんどいないので、労働時間は短く目標を達成しています。有給休暇については、現状でも平均取得率55.9%で比較的高い水準ですが、さらに向上させていくため、規定関係も含めて今後も整備していきたいです」と熊原氏は語る。

労働時間・休暇(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が158.6時間
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率が55.9%、平均取得日数12.0日

男性の育児休暇(直近3年間)

・配偶者が出産した男性従業員のうち、育児休暇を取得した者が3人

高齢者の活躍

・常勤労働者で11.3%、非常勤労働者で62.3%、全体では28.6%が60歳以上
・全体で5.8%が70歳以上


従業員からの評価

「メモリアル休暇制度により、子どもや孫の誕生日の祝いや、就学時の行事での利用ができ、心にゆとりが生まれている」「休暇の取得が少なくなりやすい単身者や若者も、確実に有給休暇が取れる」と従業員からは好評だ。
「勤務のシフト表作成時に、すでに休暇予定が分かるため、無理なく休んでもらえる」「休暇による穴が生じにくいため、サービスの質が保持できる」など、管理職からの評価も高い。


現在の課題や今後の目標

「女性の働き方についてもっと考えて、私自身、女性従業員のお手本になれるようにがんばりたいです」と近藤さん。
「働き方改革の認定を受けて、さらに取組を進めていこうと思っていますが、現場とはまだ少し取組に対する意識のギャップがあります。そのギャップを埋めていかなければいけないという中間管理職としての使命感を感じています」とは、若井さん。
熊原氏は、最後に従業員への期待で締めくくった。
「従業員のグループ活動をもっと主体的に行うとともに、地域活動にも参加してもらいたいです。趣味の活動や消防団など、何でもいいから、コミュニティーワーカーとなってほしい。それが職場を良くすることにつながりますし、PRにもなります。ひいては人材確保につながり、人材を定着させる方法だと思っています」

取材日 2018年9月