働き方改革優良事例

“やらされている感”を払拭する
「タイム&マネー両取大作戦」で会社の思いを共有

株式会社マイティネット

  • その他産業
  • 西部
  • 301以上
  • 推進体制(経営者)
  • 長時間労働の削減
  • 休暇取得の促進
  • 育児・介護・治療と仕事の両立
認定マーク
所在地 〒733-0834 広島市西区草津新町1丁目21番35号
URL https://www.mighty.co.jp/
業務内容 IDC・情報処理、IT技術者派遣
従業員数 462名(男性216名、女性246名)

(2018年6月現在)

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  • 会社目線の改革から従業員目線の改革へ
  • 意識改革を促す、ユニークなスローガンの設定
  • トップの決断で従業員ニーズを踏まえた制度をスピーディーに導入
  • 駐在先勤務者と会社を結ぶ「働き方改革担当大臣」
  • PCの自動シャットダウンや留守電アナウンスで意識付け

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取り組んだ背景とは? ~従業員と管理職の意識改革で満足度と生産性向上を目指す

金融機関のシステム構築・運用事業を中核とし、情報通信市場で幅広く事業を展開してきた同社は、経営理念に「人間性の尊重による相互の信頼関係を第一とし、公平な評価と適切なマネジメントによる働きがいのある企業」を掲げている。これまでに導入した休暇制度等は一定の成果を上げていたが、その必要性は一部の従業員にしか浸透しておらず、仕事の進め方や周囲の支援体制といった業務改善については道半ばであった。
当時の状況について、経営企画部・人事グループ部長の山田祐貴乃氏はこう語る。「改善が遅れていた原因は、これまでの取組が会社主導だったからです。どうしても従業員には“やらされている感”があり、長時間労働是正の取組にしても、“仕事は減らず、給与が減るだけ”といった不満が生じていました」
さらに従業員の約半数が、自社以外の駐在先に勤務している同社では、コミュニケーション不足から「会社への帰属意識の薄れ」「労務管理や評価に対する不満」「将来のキャリアへの不安」などが生じ、取組を妨げる“見えない壁”になっていた。そこで、従業員と管理職の意識改革を促すとともに、生産性の向上と処遇改善を目指した。


取組導入のプロセス ~トップのリーダーシップのもと、会社の本気度を伝える

2017年に「広島県働き方改革企業コンサルティング事業」に採用され、さらに取組を本格化させた同社。取組を始めるに当たり、従業員が抱く“やらされている感”を払拭するため、全従業員を対象にアンケートを実施し、リアルな声を拾った。社長自らがその結果一つ一つに目を通すことで、“会社側の視点”を次第に“従業員側の視点”へとシフトさせていった。こうして“見える化”された社内の問題について、山田氏は次のような感想を語ってくれた。
「制度を知らないだけでなく、会社そのものについてよく知らない従業員がいることに、私たち自身が衝撃を受けました。特に駐在先勤務者は、帰属意識が薄れた結果、いつの間にか『制度が変わってもひとごと』といった状況になっていました」
そこでまずは、社内に「働き方改革推進本部」を設置し、社長自ら推進本部長に就任した。抜本的な取組を開始したことを広く通知するため、ホームページで「働き方改革宣言」を内外に発信し、会社の本気度を示している。
従業員に向けては、働き方改革が収入減につながるという不安を払拭するため、「タイム&マネー両取大作戦」を取組のスローガンにした。このスローガンには、従業員の私生活と働き方の満足度が向上すれば、質の高い商品・サービスで顧客満足度も向上し、その結果、タイム&マネーの両取りを狙えるという思いが込められている。さらに、取組成果に応じた褒賞を支給する方針を明確にした上で、賞与の考課項目の見直しも実施。社長主導で、従業員のニーズを踏まえた、半日有給休暇制度などを短期間で次々と導入し、環境整備を進めた。


取組の工夫点 ~ボトムアップの取組と物理的な環境整備で意識を転換

ボトムアップの取組で従業員の意識改革を促す

トップダウンによる仕組みづくりがおおむね完了したところで、次はボトムアップの取組に着手した。「女性活躍推進部会」や「営業事務効率化部会」を設置して、従業員自らが現場レベルでの業務効率化を立案。管理職がフォローしながら、営業事務の作業棚卸し表の作成やプロセスの見える化など、具体的で実効性のある改善案として提言をまとめた。ボトムアップの取組を通じて、業務改善に関する従業員の意識改革を促した。

駐在先勤務者とのコミュニケーション向上

駐在先勤務者に対しては、職場巡回担当者(働き方改革担当大臣と命名)を任命して、駐在先の訪問を行った。日々の勤務に関する不満やキャリア上の不安の声を直接吸い上げる仕組みをつくり、1年間で計170人の面談を行った。この職場巡回担当者の存在も、取組の潤滑油になっている。経営とは少し距離を置く担当者が駐在先を訪ねることによって、気軽に会社に対する要望を言えるようになり、従業員の間に「言えば検討してもらえる!」という意識が芽生えていった。
さらに、「他の部署がどんな仕事をしているのか分からない」といった、会社や異動に対する不安の声もあるため、社内報も新たに発行した。会社の方針や、社内各部署の業務内容、従業員の紹介などを掲載している。
これらの取組により、駐在先勤務者との情報交換・情報共有を図ることで、会社への帰属意識や、組織としての一体感を醸成している。

物理的な環境整備と改善で従業員へ意識付け

まず残業削減に関しては、物理的な環境整備がかなり効果的だった。その代表例が、PCの自動シャットダウンと業務終了をアナウンスする留守番電話である。それまでも残業を行うには申請が必要だったが、定時以降、取引先から問い合わせなどがあった場合、対応しないわけにはいかなかった。そこで有無を言わせない環境を用意したことで、外部へ取組を周知でき、従業員の意識改革にもつながった。取組を始めた頃は、早く帰っても仕事が残ってしまっているという問題が生じたが、20時にPCが止まることが前提になると、優先順位を考えて効率的に業務をこなすなど、意識が高まっていったという。


取組の成果

数ある成果の中でも、特に目覚ましい変化は、有給休暇取得率の向上だ。具体的な数字を挙げると、年次有給休暇の取得率は高水準の70%近くになっている。残業時間についても、長時間労働部署では、1月当たり約6時間の削減を達成した。
男性の育児休暇に関しては、以前は多くの従業員が、内心取れないものと思っていたが、厚生労働大臣の「くるみん認定」を目指し、取得者には5,000円/1日を支給するとアナウンスしたところ、問い合わせが増加した。これを機に男性従業員の間にも育児休暇の取得が広がりつつある。
その他、ボトムアップの取組の成果としては、従業員目線の施策が増えたことが大きい。従業員の声から生まれたものに「小学校入学までの時短勤務の延長」があるが、最近では女性従業員から「キャリアパスを描けるようにしてほしい」といったニーズも上がってきている。駐在先勤務者をはじめ、従業員の会社に対する帰属意識が強まってきたこともうれしい成果の一つだ。取組後、駐在先勤務者中心の懇親パーティーを開催したところ、これまでにない盛り上がりだったという。

労働時間・休暇(直近約1年間)

・常用雇用者(長時間労働部署)の所定外労働(残業)時間の削減 6h(※集中取組前と比較)
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率 69.0%(約17ポイント増加 ※集中取組前と比較)

若年者(直近3年間)の定着

・正社員として就職した新卒者のうち、同期間に離職した者の割合 0%

その他成果

・男性の育児休暇制度の利用が3人


従業員からの反応

良い反響としては、「毎週水曜日の定時退社が徹底され、従業員同士で食事に行く機会が増えた」「職場が明るくなった」「有給休暇が取りやすくなった」といったことが挙げられる。
2児の母でもある経営企画部・経理グループの係長、藤井さんは、取組後の感想を語る。「PCがシャットダウンされるので、その時間までいかに集中して業務を行うかを心掛けています。最初の頃は、PCに『あと10分でシャットダウンします』という予告が出ると慌てていました。でも、留守番電話で業務終了をアナウンスしているため、お客さまからの電話を気にすることなく、最後の10分に集中できますので助かっています。早く帰るようになってからは、社内のカープファンで結成した『赤の集い』のメンバーと一緒に、大好きなカープ観戦にも遠慮なく行けるようになりました」


就職に関しての効果

「広島県働き方改革実践企業」に認定され、会社の取組が広く情報発信されたことは大きなメリットになっている。特に新卒採用では、「IT=ブラック」と思っている学生も多く、取組の取材動画がネット上で公開されるのは、会社にとって良いPRになる。説明会においても取材動画を流すことで、多くの学生が安心感を抱いてくれているという。


現在の課題と今後の目標

良い効果が聞かれる反面、今後の課題となる声も上がっている。例えば、「残業の削減や有給休暇の取得は実現できているが、個人の評価にどう影響するのか、まだ明確に見えてこない」という声や、「時短は進んだが、さらなる業務改善の取組が必要」「介護の見直しも検討してほしい」という声だ。
「今後は、営業事務の効率化や女性活躍の推進、育児と介護に関わる制度のブラッシュアップをはじめ、働き方改善に成果のあった従業員に対する「表彰制度の検討」なども行っていきたい」と山田氏は締めくくった。

取材日 2018年9月