働き方改革実践(認定企業)取組企業事例一覧

環境整備と組織変更やキャリア形成支援で、
モチベーションの向上と離職率低下

日本アイ・ビー・エム共同ソリューションズ・サービス株式会社

  • その他産業
  • 広島市
  • 31〜100
  • 推進体制(総務人事)
  • 時間・場所等の多様な働き方
  • 多様な人材の活躍
認定マーク
所在地 〒732-0842 広島県広島市西区井口5丁目2番48号
URL https://www.ibm.com/ibm/jp/ja/sgc/csol/jp-csol-index.html
業務内容 地方銀行コンピュータシステムの開発・運用

(2018年7月現在)

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  • グループウエアによるアンケートで意見を把握し、全従業員に開示
  • 全管理職がイクボス宣言を行い、育児休業は取って当たり前の雰囲気
  • 全従業員がフレックスタイムを利用し、仕事や家庭の環境にあわせ就業時間を調整
  • 新入社員向け研修の充実により、入社後3年以内の離職率0%を達成
  • 将来のキャリアについてデータベースへ入力、所属長が面談を行いコーチング
  • 人事ラインと業務ラインによるマトリックス組織で若手を起用

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取り組んだ背景とは? ~全管理職や従業員との面談の中で不満が噴出

「2017年7月、着任してすぐに管理職全員と一対一で面接をした後、ラウンドテーブルという形で7~8人のグループに分けて全従業員と話をしました。その中で、今の組織は非効率で働きづらいと従業員から不満が噴出し、『数年後にはブラック企業の仲間入りですね』と強烈なコメントを発した従業員も中にはいました」と代表取締役社長の川上泉氏は振り返る。
2016年には多くの従業員が辞める事態が起こり、「何とかしなければ離職が進み、さらに忙しくなり、風土が悪くなるという負のサイクルに陥る危機感から取組を始めたのです」と川上氏は続ける。


主な取組と工夫点 ~アンケートで把握し、組織変更とキャリア形成に重点

2016年より少しずつ取組を始め、2017年から取組を本格化した同社。まず、管理職や従業員との面談を通して出てきた意見を正確に把握するため、サーベイ・アンケートを実施した。幅広い意見を客観的に収集するため、社長が任命した「変革チーム」がアンケート項目を精査。アンケートはグループウエアで行い、結果は従業員に開示した。フリーコメントで出た意見に対しては、改善策やアクションを四半期ごとに社内のポータルサイトへ上げて、会社がどのように取り組んでいるか、進捗状況を共有できるようにしている。
意見をくみ上げ、アクションを起こした例をいくつか紹介する。

全管理職がイクボス宣言を行い、育児休業は取って当たり前の雰囲気

「IBMグループとして、ダイバーシティーの考えのもと、女性・外国籍の方にも活躍してもらう環境づくりを大切にしています。育メンということで、男性従業員の育児参画を促す環境も整っています」と川上氏。2018年1月には全管理職とグループリーダーがイクボス宣言し、育児休業や時短勤務制度を十分に推進している。
「社内的に当たり前の制度ですし、これらの制度を活用し、育児等が落ち着いたタイミングで、通常の勤務形態に戻ることが当たり前となっています」と人事部の中村さんも話す。

全従業員がフレックスタイムを利用し、仕事や家庭の環境にあわせて就業時間を調整

コアタイム10時から16時以外の時間は自由に出退勤できる「フレックスタイム制度」を全従業員が利用できる環境にあり、仕事や家庭の都合に応じて、多くの社員が利用している。10時に出社して16時に帰ることも可能で、1日の就業時間が短い分は、違う日に長く仕事をすることにより、1カ月トータルで就業時間を満たせばいいという柔軟な勤務体制を整備している。

新入社員向け研修の充実により、入社後3年以内の離職率0%に

新入社員には、IT基礎研修、ビジネスマナー研修、ビジネスパーソン研修などを実施している。約半年間の研修を通じて、ITの知識だけでなく社会人として必要な知識を身に付けていくが、新入社員にはアドバイザー社員として先輩社員を必ず任命し、研修やOJT上のアドバイスだけでなく、さまざまな面でサポートする体制を取っている。この体制を20人が利用し、3年以内の新入社員の退職者は0名である。

将来のキャリアについてデータベース入力し、所属長が面談を行い、コーチング

従業員はキャリアについて「将来的にどうなりたいか?」「そのためにどうするか?」などの情報をデータベースに入力し、それをもとに、所属長が一対一の面談を行って従業員のキャリアの方向性を確認し、コーチングを行いながら目指すキャリアに導く仕組みを整えた。4月に第1回面談を行い、四半期ごとに繰り返しながら、従業員の成長を促していく。
「私自身の経験を生かして、プロジェクトマネージャーになるためのスキルや昇進試験などをパッケージ化したものをつくり、説明会を行いました」と、川上氏自らも率先して従業員のキャリア形成をサポートしている。

人事ラインと業務ラインによるマトリックス組織に変更し、若手を起用

アンケートの中で一番多く出た不満は、非効率な組織体制に関するものだった。それまで業務ごとに部があり、部長が人事と業務の両方を担っていた。そこで2018年4月より各部をグループとし、グループリーダーは業務に特化し、人事に関しては、若手の人事ラインがグループを横串的に見るマトリックス組織に変更した。
「より柔軟な組織になったという声は上がっていますが、まだ変えなければいけない部分も残っています。そこにメスを入れ、本当に働きやすい組織となるように継続的に考えたいです」と川上氏は語る。


取組の成果

「すぐに効果が出るものは少なく、3年5年かけないと変わらないアクションも多いと思います。常にトップがメッセージを発しながら、継続的にやっていかなければいけないと考えています。2017年度は退職者が半減しました。さらに2018年度はその半分にすることを目標とすることができ、成果が出てきたと実感しています」と川上氏。

労働時間・休暇(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が 165.6時間

若年者(直近3年間)の定着

・正社員として就職した新卒者等のうち、離職した者の割合が0%


従業員からの評価

「小学生の子どもがいるので時短勤務制度を利用し、基本的に金曜日が休みの週4日勤務です。1カ月の仕事量が数値化されているので、時短勤務内でできる仕事を割り振っていただき、周りの方からのフォローもありがたいです」とソリューション統括ソリューション第一部の明木さん。
「2018年4月に子どもが生まれ、育児休業を取得しました。上の子どもの面倒を見ながら赤ちゃんの世話をするなど全面的に育児に携わって、子どもを育てるのは本当に大変だなと体感しました。育休を取ったのは1カ月でしたが、その後も残業時間を調整したり、妻が具合の悪い時に休みを取らせてもらったりしています。自分の中で仕事量を調整して、メリハリを付けて働くようにしています」とシステム統括運用管理部の山根さんも語ってくれた。


今後の目標

最後に川上氏が、今後の目標を語ってくれた。
「弊社のプロパー社員の中から、過去に例のない最上の階級に当たる従業員を誕生させたいと思っています。そのため現在、IBMキャリア・パスとスペシャリスト制度の詳細説明会や個別でコーチングも行っています。それを従業員が目の当たりにした時、自分もなりたいと思う人とこのままでいいと思う人に二分するかもしれませんが、一つのキャリアモデルになるはずです。働き方改革が、仕事へのモチベーションを上げるきっかけになることを期待しています」

取材日 2018年10月