働き方改革事例

子育て支援をはじめとした制度の充実で
長く安心して働ける職場づくりを推進

医療法人辰川会

  • 医療・福祉
  • 福山市
  • 301以上
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認定マーク
所在地 〒720-0815 広島県福山市野上町二丁目8番2号
URL https://www.sanyo.or.jp/sanyo/
業務内容 医療、介護
従業員数 345名(男性107名、女性238名)

(2018年6月現在)

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  • 事業方針説明会で理事長が自ら発信し意見交換会も実施
  • 事業所内認可保育園・時短勤務・保育手当の拡大など多様な支援
  • 育休中の従業員を対象にした交流イベントの開催
  • 高齢者の積極雇用で活躍を応援
  • 人材育成のため返済免除を受けられる奨学金制度を用意

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取り組んだ背景とは? ~女性従業員をはじめ全従業員が働きやすい職場づくり

1978年の開業以来、同法人およびそのグループは、福山市を拠点に医療施設と介護福祉施設(特別養護老人ホーム・介護事業所など)を運営し、医療と介護の連携による地域密着のサービスを提供している。
業種柄、従業員の70%は女性で、働き方改革が打ち出される前から、「女性が入職したい、女性が働きやすいと感じられる環境を整えよう」という方針があった。4年前から、子どもが小学校へ就学するまで利用できる正社員短時間勤務制度を導入し、職種を問わず全ての女性常勤職員に保育手当を支給している。
既存の制度をベースに、「働き方改革」へ本格的に取り組みだしたのは、2016年春に理事長に就任した辰川匡史氏。「あらためて着目したのが、数年前から事業目標の中で掲げていた有給休暇の取得についてです」と辰川理事長。
部署によって取りやすい、取りにくいというバラつきはどうしてもあるが、「2019年度末までに年次有給休暇取得率を昨年度実績より10%増加させる」という目標を設定した。年度初めに開かれる「事業方針説明会」では、理事長が全従業員に向けて方針を提示し、取得率アップに向けて法人として取り組んでいる。


主な取組と工夫点 ~現場で働く従業員の目線に立ち、各種制度を見直す

理事長と直接話せる「ナビゲーターワーキンググループ」

「従業員の生の声を聞き、職場の改善に生かしたい」という理事長の思いから、トップと意見交換できる月1回の「ナビゲーターワーキンググループ」をスタートした。朝礼で開催を告知し、看護師や介護福祉士、作業療法士など職種に関係なく従業員が自由に参加できる。「有休の理由を上司が聞いてくるので、休みを申請しづらい」「職場で必要な本を購入してほしい」など、さまざまな意見が飛び交うが、この話し合いの場で出された有益な要望は、ほとんどが実現している。

多様な制度で育児中の従業員をサポート

同法人の子育て支援はとても充実しており、出産した女性従業員の育児休業取得率は100%を維持している。2015年4月には事業所内の認可保育園としては福山市初となる「おひさま保育園」を開設し、地域に貢献できるよう従業員以外の子どもも受け入れている。このほか、正社員短時間勤務制度(子どもが小学校就学まで、最短6時間の短時間勤務)、保育手当支給の拡大(3歳以上の子どもが認可保育園に通う場合に限定されていた制度を、無認可保育園と幼稚園まで拡大)、育児を理由とする夜勤の免除など、子育て中の従業員を支える各種制度を整えている。男性の育児休業の取得も促進中で、対象の従業員に積極的に声掛けを行ったところ、法人初の取得者(1週間の育休取得)が誕生。その他、育休中の従業員同士で交流・情報交換できる「親子ふれあいサロン」を2~3カ月ごとに開催している。

高齢者の積極雇用で活躍を応援

法人の定年年齢の65歳以上の方も積極的に雇用し、それぞれの能力や体力に応じた仕事に就いてもらっている。退職後も社会とのつながりを持ち続けたい、何らかの形で社会貢献したいという職員も多く、個々の希望を考慮して勤務時間を柔軟に決めることにより、仕事と退職後の生活を両立させている。若手育成・技術指導を担う医師や薬剤師、臨床検査技師などから、送迎ドライバーやいきいきパートさん(看護補助・施設内環境整備スタッフなど)まで、多数の従業員が活躍している。

人材育成のための制度や環境を整え職員のスキルアップを支援

院内勉強会の開催や外部研修会参加の推進、e-ラーニングの活用(看護師が空いている時間に自分のニーズや能力に合わせて個別に受講・学習できるシステム)などにより、職員の資格取得やスキルアップを支援している。空き時間に集中して勉強できるように、法人の敷地内にはネット環境が整った学習室も用意している。また、非常勤で働きながら看護専門学校に通う学生のために、入学金や学費、教科書代などの費用を貸与。資格取得後に所定の期間勤務することにより、奨学金の返済義務を全額免除する奨学金制度も整えている。

コミュニケーションを深めるサークル活動

テニス、マラソン、野球、ヨガ、釣りなどのサークル活動が盛んで、法人が認可したサークルには補助金が支給されている。他部署の従業員とのコミュニケーションの場にもなり、活動を通じて「同じ法人で働く仲間」という意識も高まっている。


取組の中では課題も

制度が整っていても周知が不十分で、特に男性の育児休業などは、自分が対象になることを知らない従業員が目立った。
「それぞれの従業員がどこまで制度を理解しているのか、事業本部で把握するのが大変でした」と事業本部の渡邉久美子氏。そこで、週1回の朝礼や法人内LAN、会報誌、ポスターなどを使って、あらためて制度や取組についての情報を発信した。入職時のオリエンテーションでも、福利厚生や利用できる制度について丁寧な説明を心掛けている。


取組の成果

年次有給休暇の取得率に関しては、数年前からの積極的な推進もあり、2016年から2017年の1年で10%以上増加という目標も達成。福山市の「男女共同参画推進表彰」も受賞した。

休暇(直近1年間)

・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率が50.3%、平均取得日数は5.3日

育児と仕事の両立

・3歳以上の子どもを持つ従業員の短時間勤務制度の利用者10人(2018年6月現在)
・事業所内保育施設の利用者23人(2017年度実績)


従業員からの評価

同法人で働いていた友人に「子育て世代がとても働きやすい病院」と勧められて入職したという、看護師花田さん。「前の職場はとにかく忙しくて、有給休暇はほとんど申請できませんでした。でも今は希望通りに休めるし、子どもが熱を出した時などは、後日有給休暇に振り替えることもできます。柔軟に対応してもらえるので、とても助かっています。事業所内保育園が完備されているのもメリットで、毎朝2歳の子どもと一緒に家を出ます。職場のすぐ近くに保育園があるので、お迎えの時間に追われないし、同じ法人で働く他職種の従業員さんとのつながりもできて、何かと心強く感じています」と満足そうだ。
従業員の子どもが親の職場を見学する「ハッピーファミリーデー」や、地域に開かれた病院体験会「オープンホスピタルデー」などのイベントにも、積極的に参加していきたいという。


今後の目標や課題など

「ふくやまワーク・ライフ・バランス認定」を受け、「イクボス同盟ひろしま」にも加盟している同法人。今後は子育て支援などの基準を満たした企業の証しである「くるみん認定」を受けることを目標としている。
しかし、依然として有給休暇を取得する意識が十分浸透していない多忙な部署もある。法人全体で取得率が上がるように、新しい仕組みづくりや周知の方法の検討など、取組をさらに進めていくという。

取材日 2018年10月