働き方改革実践(認定企業)取組企業事例一覧

従業員の「幸せの実現」を目指し、
一つ一つの取組を着実に進める

株式会社バルコム

  • 卸売業・小売業
  • 広島市
  • 31〜100
  • 推進体制(総務人事)
  • 長時間労働の削減
  • 時間・場所等の多様な働き方
  • 育児・介護・治療と仕事の両立
認定マーク
所在地 〒731-0122 広島県広島市安佐南区中筋3丁目8-10
URL http://www.balcom.jp/
業務内容 輸入自動車販売等
従業員数 67名(男性45名、女性22名)

(2018年6月現在)

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  • 正確な時間管理で現状を把握し、上層部に意識付け
  • 全従業員への通達文で、時間に対する意識付けを徹底
  • 社内の電子掲示板でボトムアップの意見や要望をくみ上げ
  • 個人の事情に合わせた柔軟な働き方に対応
  • 新入社員向けの面談によるフォローや研修で人材育成

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取り組んだ背景とは? ~“やったことは評価する”で、能力を生かす職場へ

輸入自動車の販売を中心に、飲食事業や旅行事業、不動産事業などもグループで行う同社は、2017年に創業50周年を迎え、同年から本格的に取組に着手した。
「取組を始める前は、時間や人の管理が不十分だったのが実情でした」と、総務労務部長の釘宮幹治氏は当時を振り返る。しかし社長からの「残業時間だけではなく、やったことに対しては評価をしよう」という号令をきっかけに、全従業員が働きやすい環境をつくり、各自が能力を十分に発揮することで、経営哲学である「幸せの実現」を目指すという働き方改革の方針を掲げた。


取組導入のプロセス ~正確な現状把握から意識の変革

取組は、総務労務部が中心となり行っていった。まず、毎月行われる役員会で、全従業員の1カ月の残業時間を提示した。この継続により、会社全体が、残業時間を意識するようになった。
次に、時間外労働を全員45時間以内とし、自社の平均有給休暇取得を3年間で2日増とする目標を掲げた。経営層や管理職以上による会議で、残業時間や休暇取得、各種制度の利用状況等の報告を定期的に行い、従業員の労働時間の算出方法についても改めた。全社に向けては、従業員ならびに管理職に対して、時間外労働の抑制と適正な時間外労働の申請管理を行うように、「時間外労働に関する確認書」「時間外労働を行う際の手続きの徹底について」の2つの通達文を発信し、働き方改革への意識付けを行った。


主な取組と工夫点 ~ボトムアップで職場と業務を改善

ボトムアップからの仕組みづくりで業務改善

トップダウンの取組を開始した一方で、ボトムアップの取組として、社内の電子掲示板に、実名もしくは匿名で使用できる「スタッフご意見・ご要望投稿」のフォームを設け、業務改善の見直しなど意見を出してもらう仕組みを用意した。この情報は役員に直接届くため、上層部が必要に応じて現場のヒアリングを行い、改善に努めている。提案内容の進捗状況や改善結果は全従業員に発信しているため、「言っても無駄ではない」という風土も醸成している。こうした取組により、従業員の働き方改革への意識が徐々に変わっていった。

個々の状況に合わせた柔軟な働き方を実現

業務の効率化では、営業職に1人1台のモバイルパソコンを配布している。営業終了後に、資料作成などでわざわざ会社へ戻る必要がなくなった。直帰も可能になり、時間の有効活用にもつながっている。その他にも、従業員の個々の状況に応じ、育児や治療との両立を支援するための短時間勤務や、定年後に再雇用した従業員に対する週休3日勤務など、働きやすい環境を整備している。

新入社員向けの面談や、多様な研修制度で社内教育に力

同社では「個人を重視した社内教育の充実」を重点テーマの一つに掲げている。「従業員の教育については、全て現場任せでした。現場勤務からスタートし、現場での指導や先輩の業務を見て覚えるというものでした」と釘宮氏。
しかし従業員のスキルアップのためには、教育にも力を入れる必要があると考え、研修制度を導入した。集合型の研修に加えて、社員一人一人に合わせた個別教育も行っている。新入社員に対しては、定期的な面談によるフォローも行う。「新入社員との面談で、今まで気付かなかった従業員の声や思いも分かります」と釘宮氏は語る。その他にも、業務に関する技術や知識を学ぶための研修や資格取得訓練などを多く実施し、社内全体の多能工化の推進による効率化を図っている。


取組の成果

社内の電子掲示板で、意見や要望を投稿できるようになり、従業員が意見を出しやすくなったことで、社内の風通しが良くなっているという。業務においては時間に対する意識が高まっており、会議やミーティングにおいても、短時間化し終了時間を意識するなど、効率化が図られるようになっている。

休暇(直近1年間)

・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率が63.1%、平均取得日数は11.5日

若年者の定着(直近3年間)

・正社員として就職した新卒者等のうち、直近3年間に離職した者の割合が0%


従業員からの声

中途採用で入社の総務労務部の太田さんは取組による変化を語る。「上司から“長時間働くことが必ずしも良いことではない”と常々言われるので、自分自身の働き方への意識を改めるようになりました。今年はこれまでに比べると、残業時間も減り、定時で帰宅できることも増えました。家族と夕食を一緒にできたり、スキルアップを目指して勉強したりといったゆとりにつながっています」
旅行事業部の福本さんは「ショールームスタッフからのスタートで、さまざまな業務を経験してきました。子どもが生まれてからはお迎えがあるので、フレックス制度を利用しています。バルコムで働く女性は、出産や育児を経験して復職する方が多く、勤続年数も長いです。私が出産後の復職を考えるときも、そういった先輩方が身近にいたので、プライベートなことも含め相談しやすく、復職後のイメージができて安心でした」と語る。
その他にも、「定時内で業務が終わるよう、選択と集中を常に意識するようになった」といった従業員の声が上がっている。


今後の展開と目標

有給休暇の取得日数を増やすために、取得状況を把握し一斉取得期間を設定するなど、各部署において今後の取得計画を策定していく。社会の流れとして、従業員の家族の介護なども今後問題になってくる。このような状況による離職を防ぐとともに、介護と仕事の両立を支援するため、そうした問題にも対応していく予定である。
「まだまだ人に仕事が付いていて“属人化している業務”があります。他の人が担当以外の業務を行えることが、無駄の発見につながりますので、しっかり標準化していきたいと考えています。従業員一人一人の負担を減らすべく、新しい働き方へのルール作りやツールの導入なども、積極的に行います。そして、社内はもちろん社外に向けても、働き方改革の取組の周知を図っていきます」と、釘宮氏は締めくくった。

取材日 2018年9月