働き方改革事例

家族との幸せな生活も見据え
ライフステージに応じた働きやすさを追求

医療法人ハートフル

  • 医療・福祉
  • 廿日市市
  • 301以上
  • entrydatajireikaikaku2-03
  • entrydatajireikaikaku2-04
  • entrydatajireikaikaku2-11
認定マーク
所在地 〒738-0060 広島県廿日市市陽光台5丁目9番
URL http://www.amano-reha.com/
業務内容 医療・介護・福祉
従業員数 470名(男性120名、女性350名)

(2018年6月現在)

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  • 組織を横断する「多様な働き方改革プロジェクトチーム」が改革の中心に
  • 職員満足度調査や働き方に関するアンケート調査をベースに改善策を立案
  • 従業員の声を細やかに分析し、問題点は速やかに改善
  • 子育てをしながらの就業を支援する仕組みづくり
  • さまざまなライフステージにおける働きやすさを追求

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取り組んだ背景とは? ~職場の悩みを聞き、多様な働き方を追求

総合的な医療・介護・福祉の推進に取り組む同法人は、もともと一般企業に比べて女性の多い職場である。そのため、これまでも特に女性が仕事を継続する上で障壁となりがちな面での支援に力を入れてきた。
「たまたま数名の女性従業員から話を聞く機会があり、その中で不妊治療に通っているとの話を聞きました。職場として、彼女たちが治療に専念できるようサポートできないものかと考えました。また、声に出していないものの、さまざまな事情で働き方に関して悩みを抱える人がいるのではないかとも思いました。そこでまずは、そのような彼女ら・彼らの声を聞いてみようと思ったのが取組の第一歩です」と、働き改革の旗振り役でもある障がい者支援部部長の立花英美氏は振り返る。
男女を問わず従業員が、ライフステージの変化に伴うさまざまな障壁や困難を乗り越え、ワークライフバランスを保ちながら生き生きと仕事に取り組めることを目指し、2017年秋に「多様な働き方改革プロジェクトチーム」を立ち上げた。このチームが中心となり、職場の課題を聞き出しながら、柔軟な働き方に向けた制度や、業務改善など働き方改革を進めている。


主な取組と工夫点 ~従業員の声を細やかに分析し・問題点は速やかに改善

組織を横断する「多様な働き方改革プロジェクトチーム」が改革の中心に

2017年に発足した「多様な働き方改革プロジェクトチーム」は、一部の部署や職責に偏ることなく、いろいろなメンバーで構成されている。子育てに関する悩みも想定されたため、子育て経験者で意見も言いやすい中間管理職を選出するなど、その構成にも気を配っている。このプロジェクトチームにおいて、アンケートや聞き取りなどを通じて、従業員の抱えている問題や要望などの実態把握を行い、法人全体で問題点を共有した上で、優先順位の高いものから具体的な改善策を立案・実施している。これまでに「1時間単位の有給休暇取得」や「法人内の学童保育の設置」「育児短時間勤務の期間延長および利用条件の緩和」などを提案している。
例えば学童保育の設置は、台風などで学校が臨時休校になった場合などに急遽休みを取らざるを得ず、安心して仕事に専念できない職員がいる現状を踏まえ提案された。実現に向けては、全従業員に対してさらにアンケート調査を行い、利用希望や、預けたい子どもの対象年齢などを細やかに把握した。学童保育は、2019年6月頃からの実施をめざしている。

職員満足度調査と改善への反映

問題の洗い出しにおいては、同法人は毎年「職員満足度調査」を実施しており、その結果を全従業員に公表している。この調査では、部署や職種・性別・年齢・勤務年数などによる傾向も分かるため、働き方改革の取組を検討する際のベースになっている。
2016年度の満足度調査において、「無駄だと思う業務や手続きがあるか」という質問に対し、77%の従業員が「ある」と回答していた。無駄な業務に割く時間や労力が、従業員の時間外勤務や休暇の取りづらさ、精神的な負担につながっているのではないかと分析。速やかに、各部署で無駄と思う内容を具体的に洗い出し、上司や同僚と十分な話し合いをした上で、書類作成を最小限にしPCでの入力に切り換えるなど、業務の合理化へ一斉に取り組んだ。
その結果、2017度の満足度調査において、同質問に対する回答は74%と微減にとどまったが、それに連動する「休暇を取りやすい環境である」が65%から73%へ、「過度な精神的な負担を感じることはない」が57%から67%へ、「現在の自分の仕事はやりがいがある」が77%から82%へと、軒並み好転した。


取組の成果

制度の改善や新設について、上からの押し付けでなく、従業員側からの意見に基づいて考えられているため、従業員にもすんなりと受け入れられているという。取組の進展に伴い、「自分一人で抱え込まず、周囲に相談してみよう。何とか乗り越えて仕事を続けていこう」など、従業員が意欲的な姿勢に変わっており、職場全体に働き方改革への期待が高まっている。

労働時間・休暇(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が150.2時間
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率が67.2%、平均取得日数は9.8日

育児と仕事の両立(直近3年間)

・事業所内保育施設の設置・運営を行い、25人が利用
・配偶者(男性)の育児休暇制度2人


従業員からの評価

「多様な働き方改革プロジェクトチームによるアンケートや聞き取りは、前向きな動きとして従業員たちにも受け取られているようです。従業員の抱えている問題や要望などの実態把握や、改善策に結び付く取組に期待が集まっています」と総務課の佐藤さん。
プロジェクトチームのメンバーでもある理学療法士の江藤さんは「事業所内に保育施設があるので、子育て世代の私たちにとってとてもありがたいです。子どもの体調不良などにより、1~2時間早く退社せざるを得ない場合がありますが、時間単位の有給休暇や時短勤務などの制度を利用できることが、働きやすさにつながっていると思います。従業員の意見に耳を傾けてくれる雰囲気が職場全体にありますので、今後の制度改善にもますます期待が持てます」


現在取り組んでいる上での課題や今後の目標

「多職種の従業員がさまざまな勤務形態で働いており、今後も制度の改変や新設に当たっては、従業員の公平性の担保が課題になります。一気にゴールは無理でも、仕組みや方法を工夫することで、少しずつ前進し、状況は変わっていくと信じています」と立花氏。
子育て世代の悩みを聞く機会が多い立花氏は「仕事と子育ての両立に向けた取組は急務ですが、従業員がぶつかる生活上の障壁はあらゆる世代にあります。さらに広い視野に立って、個々のライフステージに応じた働き方を進めることで、従業員が仕事への意欲を失うことなく、やりがいを持って働き続けられる職場環境を整えたいです」と続ける。
なお、福利厚生制度については、例えば、これまで子どもが病気の時には保育園を利用できず、休まざるを得ないなどの声があったことに対し、来年早々に予定している事業所内託児施設の移転を機に病児・病後保育の導入が決まっているという。一方で、福利厚生制度については、一部の従業員のみが利用しやすい内容にならないように配慮しつつ、従業員だけでなく、家族も対象とした制度の導入を検討しているそうだ。
従業員や外部に向けては、SNSや広報誌を通じて、働き方改革への生の声を発信する。旗振り役であるプロジェクトチームは、メンバーを定期的に入れ替えながら、常にフレッシュな感覚を維持するなど、たゆまない努力を続けていくという。

取材日 2018年9月