働き方改革事例

相談しやすい家族的な風土の中、
一人一人が自分らしく働ける環境を構築

リョービ株式会社

  • 製造業
  • 府中市
  • 301以上
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認定マーク
所在地 〒726-8628 広島県府中市目崎町762
URL https://www.ryobi-group.co.jp
業務内容 ダイカスト、建築用品、印刷機器の製造販売
従業員数 1669名(男性1462名、女性207名)

(2018年7月現在)

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  • 労働組合と協力し、相談窓口やアンケート等でニーズを抽出
  • さまざまな休暇制度を導入し、メリハリのある働き方を推進
  • 育児・介護等の理由で退職した人への再雇用制度
  • 社員の状況に応じた柔軟な制度運用
  • イベントで家族的な風土を形成し、コミュニケーションを促進

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取り組んだ背景 ~先人たちが積み上げてきたものを拡充・発展

「先人たちが積み上げてきたものこそが、当社の働き方改革の原点です」と最初に語るのは、人事担当部長の金子慶太氏。その言葉通り同社では、“働き方改革”という言葉が登場する以前から、労働組合と連携しながら、ワーク・ライフ・バランスへの取り組みを行っており、その実績(例えば51年の歴史を誇るリョービ保育園など)は、社員および地域から高い評価を得ている。こうした取組を行ってきた背景について、金子氏は「従業員満足度(ES)の向上は、顧客満足度(CS)の向上につながるものです。そのため当社では、自然と働き方全般を見直す風土が根付いていました。フレックスタイム制度や有給休暇の取得促進に関しても、当社では既に1990年代初頭から取り組んでおり、今後はそれらの制度を拡充・発展させていくことが、取組を受け継いだわれわれの使命だと思っています」と語る。


取組導入のプロセス ~労働組合のアンケートで見えたニーズと取組の方向性

前述の通り同社では、かなり前からノー残業デーやフレックスタイム制度、年休の連続取得制度など、取組を継続して実施してきた。こうした取組に関しては、労働組合との労働時間等設定改善委員会を中心に、引き続き進化・発展させていく方針としている。
労働組合によるアンケートでは、「次世代を育成していく上でも、多様な働き方のニーズに応えるべき」という声が多く寄せられた。そこで新たに育児・介護の短時間勤務制度や、育児・介護を理由に退職した社員の再雇用制度など、多様な働き方に関する制度の整備に着手した。
同社は、厚生労働省のポジティブ・アクション(女性社員の活躍推進)の「女性の活躍推進 宣言コーナー」において、「ワーク・ライフ・バランスの実現」と「女性の採用拡大と職域拡大」を宣言しているが、取組を行っていく上では、この宣言も力になっているという。


主な取組と工夫点 ~緩やかなトライアルで、自分らしい働き方を実現

意見を吸い上げるため複数窓口を設置

労働組合によるアンケートの実施や、月1回の労使協議会など、社員の声を吸い上げる仕組みは、取組を継続的に発展させていく重要なポイントになっている。さらに労働組合や人事課による相談窓口を複数設け、多方面から社員の声を集め、率直なニーズ把握に努めている。

金曜日に設定したノー残業デーと休暇取得促進の仕組み

ノー残業デーを金曜日に設けることで、休日と一体化させ、メリハリのある働き方になるよう工夫している。休暇に関しても、半日単位の有給休暇制度をはじめ、家族やリフレッシュのための有給休暇の連続取得やリフレッシュ休暇を導入。部署ごと、個人ごとの計画有休なども取り入れ、休みを取りやすいように配慮している。

育児・介護・高齢者など、多様な働き方への支援

社員からの強いニーズに基づき、51年前に開設したリョービ保育園は、現在、認可保育園として運営されている。この他にも小学校3年生までの育児のための短時間勤務制度や、介護のための短時間勤務制度、育児・介護を理由に退職した社員の再雇用制度なども整備している。高齢者の再雇用制度(キャリアスタッフ制度)では、週3日勤務や半日勤務(65歳以上も対象)など、多様な働き方に応える制度が用意されている。再雇用に関しては、例えば配偶者の転勤などで退職した場合や、育児・介護で一時的に職場を離れなければならない場合などに、希望者が復職できる制度を整えた。

職場復帰にあたっての弾力的な制度運用

「育児や介護、あるいは本人の病気を理由に退職する人を極力減らしたい」という思いのもと、多様な働き方に対する諸制度を充実させているが、中には制度化しているのにカバーしきれないケースもあるという。そこで、社員の立場に極力歩み寄り、状況に合わせて柔軟に対応している。例えば子どもが小学校3年生以上の場合でも、完全職場復帰が難しいという社員がいれば、ケース・バイ・ケースで短時間勤務の継続を認めるなど、状況を配慮した弾力的な制度運用を行っている。こうした会社側の姿勢は、“相談できる職場の風土づくり”にも一役買っているという。

家族的な雰囲気の中、助け合える風土づくり

互いに助け合える風土を醸成するため、同社では社員間のコミュニケーションを円滑にするイベントとして、社員の家族を対象とした「工場見学会」や、各事業所における「ふれあいイベント」、労使共催の「夏祭り」などを行っている。もともと家族的な雰囲気を持つ同社だが、こうしたイベントが盛んに行われることによって、社員同士のコミュニケーションの活発化はもちろん、それぞれの家族が顔を合わせる機会も多くなり、子育てや介護に携わる社員への理解が自然に図れているという。


取組の成果

同社の取組を評価するバロメーターの一つとして挙げられるのが、女性社員の満足度の高さである。人事課長の松村氏は、「当社のアンケート結果によると、男女ともに働き方への満足度は非常に高いのですが、特に女性は『子育てへの理解』という面で、当社の取組を高く評価しているようです」と語る。
こうした満足度の高さからか、同社では女性社員の勤続年数が長く(女性社員の平均年齢44.8歳、平均勤続年数20.8年)、結婚・出産後も継続して勤務する女性が大半だという。夫婦で働く社員も多く、家庭的な社風は同社の大きな魅力だという。「実を言うと、私の妻も当社で働いていますよ」と松村氏。「女性が長く働ける環境が整ってきたことで、より家族的な雰囲気が増してきたように感じます。働く妻の姿をそばで見ていますので、『サポートしなければ!』という気持ちが湧くことを実感しています」
同社では、男性社員の育児休暇制度も奨励しており、「男性社員自身のワーク・ライフ・バランスの意識が高まった」といった声も上がっているそうだ。

労働時間・休暇(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が169.3時間
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率 60.1%、平均取得日数は11.3日

育児(直近3年間)

・配偶者が出産した男性社員のうち、育児休暇(同社独自の休暇制度)を利用した者の割合が26.9%
・男性の育児休業は3人が取得


社員からの評価

「2人目が生まれる際、妻の希望で2週間の育児休業を取得しました」という金型部設計担当グループリーダーの宮本さん。「出産で大変な時期に、上の子の世話を引き受けてくれて助かったと感謝されました」と語る。
総務課の松村さんは現在、短時間勤務を利用している。「子どもの病気で半日有休を使う際も、周りが気持ちよく送り出してくれますので助かっています。長く働く女性や共働きの人が多いおかげかもしれませんね」と職場の理解に感謝している。


現在取り組んでいる上での課題や今後の目標など

「まだ残業や休日出勤が多い職場があるため、長時間労働削減に向けた取組をさらに進めていく必要があります」と金子氏。「“多様性”をキーワードに、女性役職者数の増加や男性の育児参画促進(育児休業取得者、育児参加休暇取得者の合計が30%)を目指し、若い世代が当社の働き方に共感してもらえるような環境を築いていきたいです」と今後の展望を語った。

取材日 2018年10月