働き方改革優良事例

女性が定年まで働き続けている会社を目指して

株式会社荒谷建設コンサルタント

  • サービス産業
  • 西部
  • 301以上
  • 推進体制(総務人事)
  • 長時間労働の削減
  • 休暇取得の促進
  • 多様な人材の活躍
認定マーク
所在地 〒730-0833 広島県広島市中区江波本町4-22
URL http://www.aratani.co.jp/
業務内容 土木関係の総合建設コンサルタント
従業員数 395名(男性326名、女性69名)

(2018年7月現在)

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  • 従業員の思いを自由に発表するプレゼン大会で社内に刺激
  • 「女性の働き方プロジェクトチーム」で働き続けられる会社を目指す
  • 「働き方改革委員会」を設置し、ボトムアップで取組を推進
  • ノー残業デーの日は、社長が巡回して意識の向上を図る

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取り組んだ背景 ~経験を積み重ねた女性従業員が働き続けられる職場に

測量・地質調査・土木設計を手掛ける総合建設コンサルタントとして、100年にわたって社会資本整備に従事してきた同社は、仕事と家庭を両立しながら、定年まで働き続けられる職場づくりに力を入れている。取組のきっかけは、過去に結婚や出産を機にした女性従業員の退職が相次いだことから近年の採用者には定年まで働き続けてほしいという思いからだという。
「知識や経験を積み重ねた技術系の女性従業員が、結婚や子育てを機に離職するのはもったいないという思いがありました。そこで、女性の就業継続と人材確保を目的に、取組を始めました」と、企画調整部副部長の鎌田泰宏氏はプロジェクト設置のきっかけを語る。


取組導入のプロセス ~女性従業員の声を機に女性活躍の推進、全社の働き方改革へ

同社は2015年から毎年、「YouthTalk」という経営者参加のプレゼン大会を実施している。若手従業員が会社、全従業員に向けて自分の思いや将来のビジョンなどを自由に発表する場である。ここで、ある女性従業員が「この会社でずっと働き続けるためには、どうしたらよいか?」と会社に対して質問を投げ掛けた。
このこともきっかけになり、本格的に改革に着手。2017年、女性管理職(技術系)をリーダーとする「女性の働き方プロジェクトチーム」が発足し、仕事と家庭の両立の課題に対し、女性の活躍推進に向けた取組を開始。さらに、2018年の中期経営計画に「働きやすい社内環境づくりを進め、ワークライフバランスを実現する」ことを掲げ、全社で改革に取り組んでいる。取組の中で、女性に限らず全従業員が効率よく働ける環境の実現へ向けて、部署横断的な組織として「働き方改革委員会」を設置した。


主な取組と工夫点 ~ボトムアップで改善策を探る

若手従業員が自由な思いを発表する「YouthTalk」で、社内に刺激を与える

前述の「YouthTalk」は、若手従業員の有志数名の提案で始まった。自分たちの思いを発表する場が欲しいという提案は、その半年後に実現。2015年の開始以来、毎年5・6名が自主的に参加し発表を行っている。入社1年目から誰でもエントリー可能で、各自でプレゼン資料を作成し、将来ビジョンや会社への思いを発表する。「YouthTalkは、若者の夢を語る場であるとともに、彼らの思いを知る絶好の機会でもあります。新しい発想や考え方は、われわれ中堅社員に刺激を与えてくれます」と、総務部次長の大下氏は語る。

「女性の働き方改革プロジェクトチーム」で働きやすい職場づくり

プロジェクトチームは、「女性が定年まで働き続けることができる会社」づくりを目標に掲げ、14名(女性6名、男性8名)で発足。従業員の意見が反映されるよう、幅広い年代や職種(技術系・事務系)で構成されている。結婚や出産・育児・介護など、さまざまなライフイベントに際して起こり得る問題点を取り上げ、社内制度の改善や社内意識の改革に継続して取り組んでいる。例えば、同プロジェクトチームからの提案で、2018年度から時間単位の有給休暇制度の導入を実現した。

先行他社の見学で取組意欲が変化

「働き方改革委員会」は、さまざまな部署の管理職層を中心に、20名で構成されている。取組を始めるに当たり、まずは他社の事例を参考にしようと、社長も含めたメンバー全員が、すでに積極的に改革を実践している「広島県働き方改革実践企業」を見学。
「見学から帰ってくると、メンバーの意識にも変化があり、みんなが積極的に意見を出し合うようになりました。例えばパーティションがない方が、コミュニケーションが活性化するのでは?などといった議論がなされました」と大下氏。
「ゴミ箱の置き方1つ取っても参考になりました。置き場所をまとめるだけで効率化につながるといった気付きもあり、長期的に大きな目標に向かうためには、短期的に“今できる小さなこと”を積み上げていくことも大切だと感じました」と鎌田氏。

ノー残業デーは社長自ら社内巡回し、時間外労働に対する意識改革を促す

同社では、2007年から毎週水曜日にノー残業デーを設けているが、2016年からはさらに徹底して行うため、社内放送の実施や、終業前には社長が全部署を巡回して退社の声掛けを行っている。これは、残業削減への意識の向上だけでなく、社長と従業員との新たなコミュニケーションの場として定着しつつある。それでも時間外労働が多い従業員に対しては、個別に相談も行いながら、意識改革を促している。
他にも、時間外労働の削減のために、モバイルワークなどICTを活用した効率化や、管理業務の再整理といった業務のスリム化にも取り組んでいる。

有給休暇の計画作成と共有で取得を促進

有給休暇の取得を促すため、年度初めに全従業員に対して年間の取得計画の作成を義務付け、イントラネットで公開して誰でも閲覧できる状態にしている。有給休暇の計画を可視化することで、休暇が取りやすい社内環境を醸成している。


取組の中での苦労

技術職を多く抱える同社。「技術者にとっては、知識と経験の積み重ねこそが実力です。しかも、みんなまじめで責任感も強い。それだけに残業をしないことや休むことへの抵抗感があると思います。ノー残業デーを始めた頃は、仕事に支障が出るといった声もあり、なかなか定着しませんでした。しかし、地道な活動を行うことで、徐々に理解が得られてきたと感じます」と鎌田氏。


取組の成果

「業務を効率的に実施するには何が必要かについて、課内で積極的にアイデアを出し合うようになり、残業をせずに帰宅することへの意識も高まりました。ノー残業デーに社長が行う巡回時の声掛けにより、従業員のモチベーションが向上するなど、予想以上の成果もあったと思います」と、大下氏は語る。
残業時間の削減をはじめ、有給休暇の取得促進、女性や若手従業員の活躍など、働く環境の改善が進んでいる。

労働時間・休暇(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が170.1時間
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率が40.7%(前年と比べて2.4日増加)

若年者の離職率(直近3年間)

・正社員として就職した新卒者30名のうち、同期間に離職した者は1名で2.5%


従業員からの評価

「ノー残業デーの日は、定時で退社するためにはどうすればよいか、仕事の段取りについて今まで以上に考えるようになった」「仕事にメリハリが付いて、以前よりも効率的に仕事をするようになった」といった声が上がっている。
社内での取組について、「私たち、女性の働き方プロジェクトチームが提案し実現した時間有休は、子どもを病院に連れて行ったり、習い事で送迎が必要な時に利用したりと、大変助かっています」と企画調整部の藤原さんは語る。
総務部の星田さんも、「皆が以前に比べて積極的に休みを取るようになったので、今までよりも休みやすくなったと感じています」と続ける。


現在取り組んでいる上での課題や今後の目標

今後も、就業環境の整備や女性技術者の就業分野の拡大を図る同社だが、「部署や個人によっては残業の偏りがまだあります。それをなくすには、個人による対策や心掛けでは限界があると思いますので、組織としてどう取り組んでいくかが課題だと思います」と大下氏。出産や子育ての各種制度について、まだ十分に利用されていないこともあり、周囲がどうカバーするか、制度運用の工夫や充実も含めて解決策を探っていくという。「改革を進めることは大事ですが、それが“仕事のやりがいや働きやすさ”につながらなければ意味がないと思っています。その視点も忘れずに今後も取り組んでいきます」と鎌田氏は締めくくった。

取材日 2018年10月