働き方改革実践(認定企業)取組企業事例一覧

従業員目線での職場環境づくりで
多様な人材が長く働ける職場へ

日神運輸株式会社

  • 運輸業・郵便業
  • 福山市
  • 101〜300
  • 推進体制(総務人事)
  • 長時間労働の削減
  • 多様な人材の活躍
認定マーク
所在地 〒720-2124 広島県福山市神辺町川南568番4号
URL http://www.nissin-unyu.co.jp/
業務内容 一般貨物運送業、金属精錬業
従業員数 101名(男性96名、女性5名)

(2018年6月現在)

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  • 残業を前提とした働き方の見直しを打ち出し
  • 運賃等の見直しについて、受注先に協力を依頼
  • クラウドのシステムを導入し、会議の無駄を削減
  • 従業員ニーズに沿った職場環境づくり
  • 健康を推進するさまざまな取組
  • 高齢者も長く活躍できる職場づくり

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取り組んだ背景とは? ~魅力的な職場により、深刻な人手不足を解消したい

「人手不足が、一番大きなきっかけです。2010年頃からいろいろな取組をしていましたが、入社してもなかなか定着しないという問題がありました」と、代表取締役の馬屋原有治氏は人材確保の苦労を語る。同社では業務に大型免許が必要だが、取得には時間がかかるため、取得までの間に従業員が辞めてしまう問題もあるという。これらの現状を改善し、長く働いてもらえる魅力のある職場環境をつくるため、本格的な改革に取り組みはじめた。


取組導入のプロセス ~残業を前提とした働き方からの脱却

「当時、残業が多くなっていたため、まずは従業員の正確な労働時間の把握と、給与体系の見直しを行いました。昔からの従業員の中には、残業して収入を得るという考えがありましたが、今後は考えを変えていかなければなりません。しかし急に残業を削減すると、収入と生活のバランスが崩れますので、思い切って基本給を上げました」と、馬屋原氏は話す。
だらだら働く状況をなくすため、基本給を上げ、定時で仕事を終えることを原則とする方針に変えた。それでも残業がある場合は、上司に申告して許可を得るというルールも決めた。さらに「2020年11月までに、有給休暇の取得日数を年間8日以上」とする目標を掲げ、人事労務部をリーダーに、現場への周知を図っている。


主な取組と工夫点 ~多様な人材が働ける職場環境づくり

運賃等の見直しについて、受注先に協力を依頼

前述のとおり、基本給アップという思い切った見直しを行った同社だが、一方で、「当社だけでの取組には限界があります。受注先のお客さまにも状況を説明して、料金の見直しについて相談しました。当然ながら簡単ではなく、何度も資料を提出し、時間をかけて状況を詳しく説明することで理解を得られました」と、馬屋原氏はその苦労を話す。

クラウドを活用した意見交換の場で会議の無駄を削減

以前は時間をかけても結論が出ないなど、無駄な会議が多かったという。そのような会議の無駄を削減するため、クラウドを活用した意見交換の場を設けた。集まるまでの必要のない行事の案内や情報の共有については、クラウドを活用したメールで共有することで、無駄な時間をなくし、生産性のある作業に集中できるようになった。

社内報やパンフレットを給与明細と共に配布

働き方に関する会社の取組やルールの他、制度などを周知するため、パンフレット等を配布していたが、ただ配るのではなかなか内容まで見てもらえなかった。そこで給与明細と一緒に渡したところ、従業員が大切な情報ととらえ、制度などの中身もしっかりと見てくれるようになった。

従業員ニーズに沿った職場環境づくり

「もともと運輸に関する作業には“きつい”というイメージがあります。当社は採用に力を入れていますが、若い人には、土曜日や日曜日は休みたい、夜勤はしたくないという人が多いようです。そのため、介護や子育てなど従業員の事情に応じた勤務時間の変更や、入社後の資格取得支援制度などに取り組んでいます」と、馬屋原氏は話す。
従業員の健康と安全を第一に考えて、長時間労働の削減や有給休暇の取得促進、健康経営にも取り組み、若年層から高齢者まで、多様な人が働きやすい職場を目指している。定年後の継続雇用は70歳までに引き上げた。このような取組は、この業界で働きたいと考える方に向けても、採用活動で良いアピールポイントになっているという。


取組の中では課題も

「資格を必要とする業務は、負担が一部に集中しやすい傾向があります。なるべく多くの従業員へ、積極的に資格を取得する機会を提供したいと考えていますが、試験や講習の時など不在の場合の対応が課題です。まずは定着率を上げつつ、資格取得やスキルアップを会社としてどのようにフォローしていくか、まだまだ模索中です」と、馬屋原氏は話す。
また女性の採用も積極的に進めたいが、実際に作業を見学してもらうと大変そうなイメージに映るのか、採用までに至らない場合も多いという。運転業務の内容に関しても、免許取得へのサポートについても、働き方改革と合わせて、働く人の目線でもっと積極的に会社の取組を伝えていく必要があると考えている。


取組の成果

「職場環境の改善への取組が功を奏し、半年くらい前から採用に関して手応えを感じています。以前は募集を掛けても、なかなか反応がありませんでしたが、最近は応募が増えて、良い人材が来てくれるようになりました。定着率も上昇傾向だと思います」と、馬屋原氏は成果を語る。実際に最近では、給与や福利厚生の良さを重視して入社を決めた人もいるという。

労働時間・休暇(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)185.4時間(2016年と比較して13時間減)
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率58.1%


従業員からの評価

「入社して2年目ですが、意見を言いやすい会社です。上司がこの日は休暇を取ってはどうだろうかなどと声掛けもしてくれるため、有給休暇を取得しやすくなっていると思います」と、総務部署の担当者さんは社内の雰囲気を話す。他にも、「以前に比べ、病気の場合などの休暇も取りやすくなりました」「60歳以上の方も元気に働いているという環境で、雰囲気がいいと思います」といった声も寄せられている。


現在取り組んでいる上での課題や今後の目標など

社内アンケートを実施したところ、リフレッシュ休暇やバースデー休暇、家族への感謝休暇といった特別休暇を希望する声があり、既存の休暇制度に加えて、新しく導入することを検討している。また女性従業員の採用を増やすため、ドライバーだけでなく、工場における検品業務といった軽作業などの業務があることなど、会社の情報についてもっと周知を図りたいと考えている。
「働くことに魅力を感じてもらうことで、さらに定着率を上げていきたいです。運輸業界のイメージを少しでも改善していかなければならないと思います。女性の採用に注力していく上で、育児休業の取得や配偶者出産休暇の取得についても、積極的に取組を進めたいところです。共働き家庭が多い中、男性の育児休暇取得など、従業員の仕事と家庭の両方の充実にも取り組んでいきます」と、馬屋原氏は目標を語った。

取材日 2018年10月