働き方改革事例

50周年に向けて新たな価値観を創造し、
より快適な職場環境を目指す

株式会社なかやま牧場

  • 卸売業・小売業
  • 福山市
  • 301以上
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認定マーク
所在地 〒720-2413 広島県福山市駅家町法成寺1575番16号
URL https://www.nakayama-farm.jp/
業務内容 肉牛の肥育、食肉加工、食品スーパーの経営
従業員数 671名(男性296名、女性375名)

(2018年6月現在)

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  • 5年後を示した「ビジョン実現シート」の導入で従業員の意識を統一
  • 畜産現場のIoT化で、データを蓄積し業務を標準化
  • 病気やけがでの退職を防止するための制度を導入
  • 多様な人材が働きやすい職場づくり

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取り組んだ背景とは? ~50周年に向けて持続可能な企業への深化を目指す

同社では、牧場から食卓まで、一貫経営の強みを生かし、安全でおいしい食肉を提供している。生き物を扱う畜産を出発点にしており、労働環境の整備については長年の課題でもあった。
「2020年に当社は50周年を迎えます。これまでも労働時間に関しては、改善を繰り返してきましたが、この記念すべき年をきっかけに、今一度会社の在り方を見直すことにしました。新しい価値観を創造し、持続可能な企業へと深化するために、働き方改革に取り組んでいます」と、管理本部人事部部長の獅々見光伸氏は語る。
組織と人材の改革戦略として「社員がなかやま牧場で働くことの楽しさや、やりがいを感じ、幸せになるための施策」「教育の充実」「人事評価制度強化」の3項目を明示した。さらに従業員には、5年後の経営ビジョンやそこで求められる人物像を示した「なかやま牧場ビジョン実現シート」を配布し、意識の統一を図った。


取組導入のプロセス ~労働時間を把握し、有給休暇を取りやすい環境に

「より厳格に労働時間を管理するため、クラウド上でのタイムカードの打刻を行い、勤怠のデジタル集中管理により、労働時間を記録することに取り組みました」と獅々見氏。
また、販売を行うスーパーマーケットの職場では、社会保険労務士を通じて従業員に対してヒアリングを行ったところ、「有給休暇を取りたいと言い出しにくい」という意見が出た。そこで3日前までに上長へ文書で休暇申請するというルールをつくった。ルールを明確に示すことで申請しやすい雰囲気につながった。


主な取組と工夫点 ~個々の事例にできるだけ柔軟に対応

IoT化により飼育記録を共有しやすく

2015年よりIoT化を推進し、飼育記録を共有している。新人でもベテランと同じように、そして同じ品質で牛を育てられることを目指しているという。「牛を飼うことには経験が必要です。それをどう伝承していくかがこれまでの課題でした。クラウド型のアプリを導入し、データを蓄積し管理することで、どのような飼い方をすればより品質が高まるのか、数値的に分析できます。またデータを元に作業ができるので、担当者が休んでも、他の人が作業を進められます」と、獅々見氏は語る。データによる作業の標準化は、ワークシェアを容易にし、休暇の取得促進にもつながっている。
畜産部のチーフである永山さんは、「IoT化に当たり、データを収集・整理し、蓄積しなければならないので、それまではなかったPC作業など細かな作業が増えてきました。慣れていない部分があり、最初は戸惑いましたが、今は事務部門のフォローもあり、作業の一環としてスムーズに実践できています」と、取組の過程を語る。

病気やけがでの退職を防止する制度の導入

疾病の治療・通院のための休暇や勤務制度、休職から復職のための短時間勤務制度、リハビリ勤務制度を導入している同社。
獅々見氏は、「この制度ができる前までは、せっかくの縁で入社した方が、病気やけがを理由に退職してしまうという状況がありました。3年前に休職から復職のための制度を定め、実際にスーパーマーケットの職場に復職された方がいます」と話す。こうした事例を従業員に周知することで、辞めることなく復職できるという安心感や意識付けにつながっている。

高齢者の活躍推進

昨年、スーパーマーケットの新規出店の際、シニアパートナー制度を導入し、新たに60歳以上の採用枠を設置した。
「働くことを望む高齢者の方にも、純粋に働きたいという方や、社会に貢献したい方など、さまざまな考えの方がいます。現在は、週3日くらいの勤務で働いてもらっていますが、まだ導入したばかりなので意見を聞いて試行錯誤しているところです」と獅々見氏は語る。無理のない労働時間を設定して働くことができるよう配慮しており、個人の目的に合った働き方ができるという。

若手従業員の活躍推進

若手新入社員には、働くということへの理解や、困った時の相談の仕方など、定着に向けた下地づくりを目的に、3泊4日の研修を実施している。研修では、成長を考える上で必要なコミュニケーションの取り方や、働くことの厳しさもしっかり伝えるようにしている。

社内の親睦を図る行事の開催

400名規模の親睦パーティーを毎年10月に開催している。従業員が楽しめるようイベントの企画も工夫しているが、何より、従業員の多くが一堂に会することで、普段接することのない他部署との交流をはじめ、組織としての連帯感が深まるという。


取組の成果

「制度や取組の周知、IoT化の推進などもあり、労働時間に改善が見られます。若手従業員の離職率が下がったのも、若手への取組が功を奏した結果だと思います」と、獅々見氏は話す。同社のスーパーマーケット部門の職場では、出産後の復職の際には時短勤務を選択する人が多いが、業務内容については個々の事情にできる限り対応し、柔軟な働き方ができるよう配慮している。有給休暇に関しても、取得する人が休みやすいように、部署内で業務内容の共有を進めているという。

労働時間・休暇(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が157.9時間
・有給休暇取得日数は1人当たり平均2.9日(2014年)が、4.3日(2017年)に

育児と仕事の両立(直近3年間)

・女性従業員の育休取得率100%


従業員からの評価

「私はもともと、畜産の現場にいたのですが、以前は、結婚や出産を機に退職する人がいました。しかし働き方改革が進むことで、私の妊娠中は、現場にも関わりながら勤務できる事務部門へ転属してもらえました。現場が好きでこの会社へ入社したので、とても感謝しています。妊娠時の不安にも耳を傾けてもらえ、安心して仕事ができています」と、畜産部のチーフを務める永山さんは、職場の働きやすさを話す。


現在取り組んでいる上での課題や今後の目標など

「労働時間の抑制や有給休暇の取得などが前に出過ぎてしまうと、中小企業はどうしても競争力を失ってしまいます。現場にどれだけマンパワーを残しつつ、そういった制度を取り入れていくかが鍵だと思います」と、獅々見氏は課題を語る。例えば、スーパーマーケットの現場において、販売以外の業務を可能な限り管理部門で引き取り、お客様への時間を確保するなど、部署間で協力して生産性を高めることも重要だという。さらに同社の社長は、女性従業員の活躍推進にも注力していきたいと考えているという。
「良い会社というのは“がんばった人が幸せになれる”ものだと思います。それを具体化するために、点数化等を行い、賞与や昇給に反映していく新しい人事評価を導入しました。同時に、能力開発やキャリアアップの支援を図ることで、従業員の自発的な意識と行動の改革を促進していきたいと考えています」と、獅々見氏は締めくくった。

取材日 2018年10月