働き方改革優良事例

長時間労働を前提としない働き方と
休暇取得の促進で、健康で働ける環境整備

広成建設株式会社

  • 建設業
  • 西部
  • 301以上
  • 推進体制(総務人事)
  • 長時間労働の削減
  • 休暇取得の促進
  • 多様な人材の活躍
認定マーク
所在地 〒732-0056 広島県広島市東区上大須賀町1番1号
URL https://www.koseikensetsu.co.jp/
業務内容 土木、建築、軌道等建設工事の施工および監理
従業員数 810名(男性757名、女性53名)

(2018年7月現在)

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  • 社長をリーダーとしたプロジェクトチームで取組を推進
  • 適正工期での受注に向け、発注元に協力を依頼
  • 指定有休制度で計画的な取得を促す
  • PCのログを活用した時間管理の徹底で、時間意識を高める
  • 「アドバイザー制度」の導入で、若手従業員の定着率にも成果

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取り組んだ背景とは? ~建設業界全体の課題と捉え、取組に着手

「当社は、マンションや橋、道路など公共物の施工も行っていますが、それ以外に線路という特殊な部門を持っています。中国地方から北九州まで、在来線と新幹線の維持・補修を担当していますが、作業は基本的に夜間に実施します。例えば新幹線だと、最終が出た後から翌日の始発が走るまでに作業を行うため、ほぼ24時間稼働しているという特色を持った会社なのです。そのため働き方改革では難しい面もありますが、当社だけでなく協力会社との連携も含め、建設業界全体の課題と考えて、取り組んでいます」と、取締役兼常務執行役員・経営企画本部長の森幸雄氏は語る。


取組導入のプロセス ~社長をリーダーとした「プロジェクトチーム」を発足

経営企画本部人事部部長の香西氏が、取組のスタートについて、次のように語る。
「目に見える形で取組を始めたのは、2017年からです。きっかけは働き方改革に注目が集まる中で、会社内でも取組への気運が高まってきたことです。関連する法整備も進み、今まで以上に、働き方を考える必要性が出てきました。そして当社でも、以前から有給休暇の取得率向上や、時間外労働の削減が課題となっていました。そこで、従業員が健康で生き生きとして働ける環境を整備し、従業員の仕事に対する満足度や働きがいを向上させることを目的に、2017年4月に社長をリーダーとした部署横断的な組織『働き改革プロジェクトチーム』を立ち上げました」
働き改革プロジェクトチームでは、以下7つのテーマに沿って、具体的に取組の内容を検討し進めている。

1. 営業業務の改善・円滑化
2. 長期休暇を取得できる規程・制度検討
3. 労働時間管理システムの改良
4. 現場支援体制の強化
5. 作業所配置要員の適正・特休日の確保
6. 工事書類の管理方法
7. 支店業務改善


主な取組と工夫点 ~時間管理の徹底とICTを活用した業務改善で、労働時間を削減

適正工期の確保に向け、受注段階から発注元に働き掛け

余裕のない工期が、長時間労働や有給休暇取得の課題につながっていた。そこで受注段階から、4週8休を前提とした工期で発注元と協議し、無理のない工期で受注できるよう理解と協力を働き掛けている。「建設業なので工期がポイントです。現場の従業員が4週8休を取得できるように、継続的に発注者へご理解を頂くことが重要な課題です」と森氏。

長期休暇を取得できる制度を導入

「労働組合と会社側で協力し、従業員がためらいを感じず長期休暇を取得できるように、年間5日の有給休暇については、取得時期を労使で協議の上、あらかじめ指定できるように規程を改訂しました」と香西氏。
ゴールデンウイークや夏季、年末年始の期間に、有給休暇を計画的に取得するよう促すことで、長期休暇が取りやすくなっている。その他にも、勤続10年・20年・30年・40年といった節目に、2日間のリフレッシュ休暇を付与するなど、休みを取りやすいよう社内制度の整備を進めている。

時間に対する意識を変える、労働時間の管理徹底

「休日の確保の次に課題に挙がったのが、出勤・退勤の管理です。建設業では、現場が離れたところに点在しているため、時間の管理が難しいのです。それまでは勤怠システムへの打刻により勤務管理を行っておりましたが、実態と異なっている可能性がありました。そこで、まずPCのログを確認して労働時間の正確な把握を行いました」と森氏。
本人の申請による出勤・退勤時間とPCログに乖離がある場合は、勤務を管理している上長が本人に内容確認を行った。労働時間の実態と乖離があったケースに関しては、業務実績がある場合は申請内容の修正を行い、勤務時間を再計算し、残業代の差額を支払った。全従業員にPCを配布しており、従業員はPC上で出勤・退勤を打刻し、PCのログオン・ログオフをその10分以内に実施するというルールを定めた。
こうした労働時間の適正管理により、勤務終了後は速やかに退勤する習慣が根付き、付き合い残業や、ダラダラ残業等が減少した。さらに、上司自身も時間管理に対する意識が向上したため、部下に退社を促す声掛けを行うなど、職場の雰囲気も変わってきたという。

ICT活用による業務効率化と、現場の業務の平準化

「長時間労働を削減といっても、同時に業務改善を行わなければ、実効性を伴いません。そこで、ICTを活用した業務支援の取組も始めました。ドローンを活用して測量や点検を行ったり、タブレット端末を利用して現場内の情報の記録や共有を行ったりと、業務の効率化と簡素化を模索しています」と香西氏は語る。
同時に、現場の作業所に配置している要員数を適正化し、業務量の平準化も図っている。さらに土木・建築・線路の部門ごとに業務の進め方を見直し、土曜日の作業や夜勤の削減などに取り組んでいる。

若手従業員の定着を目的とした「アドバイザー制度」

同社では、若手従業員の離職および人間関係の希薄化が課題となっていた。こうした状況を踏まえて、若手従業員の定着を目的とした「アドバイザー制度」を2011年に導入している。入社3年目から7年目以内の従業員より選任されたアドバイザーが、担当する新入社員の仕事やプライベートの相談に乗り、懇親等も行う。この制度を有効に機能させるため、人事部がアドバイザーに対して、任命時の研修や中間期でのフォロー研修を実施している。その他、年齢の近い入社2年目の従業員を、新入社員特有の悩みの相談に乗り、アドバイザーを支援する「アシスタントアドバイザー」に任命している。
「このアドバイザー制度は、仕事に関する悩みだけでなく、職場の人間関係やプライベートについても相談に乗ってもらえると好評です。組織としての支援が定着し、離職率の低下に成果として表れています」と森氏は語る。


取組の成果

「社長が、会議やプロジェクトチームでの活動において、『働き方改革は、必ずやる』と宣言したことで、取組を進めやすかったです。最初の頃は、現場の従業員からは、業務との調整が難しいなどと反発もありました。そこで、取組の意図を丁寧に説明して理解を促していきました。業務改善と同時に取組を進め、会社の本気度を見せることで、従業員の意識も前向きに変わってきたと感じています」と香西氏は語る。

労働時間・休暇(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が181.6時間
・常用雇用者の有給休暇の平均取得率が56.1%、平均取得日数は10.2日

若年者の定着(直近3年間)

・正社員として就職した新卒者等のうち、同期間に離職した者の割合 12.9%
・アドバイザー制度を31人が利用


従業員からの評価

人事部の伊藤さんは、取組による変化を次のように語る。「私が3年前に人事部へ配属された時は、現場を中心に有給休暇の取得率は高くありませんでした。しかしPCでのログ管理を徹底しはじめた頃から、“現場から働き方を変えていく”という意識が生まれはじめ、職場の雰囲気が変化してきていると肌で感じています。私自身、有給休暇を利用して旅行に行ってきました。同期の仲間からも、旅行に出掛けリフレッシュするなど、有給休暇を有効活用していると聞きます」
この他にも、「定時退社が増えたことで、業務時間以外で仲間とコミュニケーションを取る機会が増えた」「定時に帰ろうという意識が強くなり、仕事をいかに効率良くこなすかを日々考えて行動するようになった」といった声が上がっている。


今後の目標など

今後も、より有給休暇を取得しやすい環境づくりや、従業員が個々の事情に合わせた働き方を選択できる制度の導入などを検討していくという。また育児休業や介護休業の取得も促進し、従業員のワークライフバランスの両立も支援していく。
「働き方改革プロジェクトチームを立ち上げ、会社全体で改善に取り組んだことで、一人一人の生産性が向上し、より働きやすい会社へと前進し始めました。規程や制度の整備が進んだので、その成果を検証し、しっかりと取組を継続させていきます。業界全体としての取組にも期待したいと思います」と、森氏は締めくくった。

取材日 2018年10月