働き方改革事例

業務の進め方を改善しながら、
従業員の自主性を促す

有限会社大杉組

  • 建設業
  • 三次市
  • 1〜30
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認定マーク
所在地 〒729-4304 広島県三次市三良坂町三良坂10037番地10
URL http://www.oosugi-kubittake.com/
業務内容 総合建設業
従業員数 21名(男性18名、女性3名)

(2018年6月現在)

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  • 1日単位の目標を明確化し、長時間労働を削減
  • 業務スケジュールを踏まえて有給休暇の取得を推奨
  • 伝統技術を持つ高齢者らの活躍を促進
  • 女性従業員の活躍の場を広げる
  • 資格取得への支援や技術手当でモチベーションアップ

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取組の背景 ~会社と従業員が互いに発展し合える関係を目指して

道路・河川・砂防・治山・上下水道等の土木工事をはじめ、荒廃竹林から有機竹パウダー・チップを生産するなど、産学官連携による地域資源の活用で環境問題にも取り組む同社。
「働き方改革に取り組むことで、かねてより考えていた『会社全体の技術力の向上』という目標にも結び付くのではないかと思いました。さらに、会社と従業員が互いに発展し合える関係を築くためにも、働き方改革で従業員のモチベーションをさらにアップさせることが必要だと考えました」と、専務の大杉博樹氏は語る。


取組導入のプロセス ~あれこれ手を広げるのではなく、ポイントを絞る

取組導入を決めたものの、何から始めてよいか分からず、最初は足踏み状態だったという。そのような時、総務の従業員がインターネットなどで、働き方改革に関する情報を収集し、自分なりに要点をまとめてきてくれたという。当時の状況について大杉氏は、「総務の従業員が働き方改革を進めるポイントとして、『いきなり手を広げて多くの取組をするのではなく、最初は3点くらいに絞って取り組むとよいみたいですよ』と進言してくれました。それで、「仕事と家庭の両立支援」「育児・介護制度の周知と休暇取得の促進」「残業時間の短縮」という3つの目標を立てて、2013年頃から取組を始めました」と話す。目標が決まってからは、社内の掲示板等を活用して制度の周知・啓発を図り、従業員の心身の健康を第一に、意識改善を進め取組の定着を促していった。


主な取組と工夫点 ~それまでの業務の進め方を見直し、効率化を意識付け

1日単位の目標を明確化し、長時間労働を削減

取組を始める前は、各現場は必要最低人数で回しており、忙しい時は現場監督者が現場の作業を手伝うこともあった。そのため監督業務や事務処理にしわ寄せが生じ、現場監督者の残業がたびたび生じていた。監督者や従業員も「自分のペースで作業したい」という思いがあり、業務の効率化を意識するというよりも、残業を前提に業務を進めていたところがあったという。そこで、大杉氏が現場監督者に業務の進め方の改善を働きかけた。
今までは、現場での作業は1日で作業できるところまでを行うという漠然とした業務の進め方であったが、監督者が全体の完成スケジュールに合わせて、1日ごとに現場全体の作業目標を設定し、皆で協力しながら作業する進め方に見直した。1日の目標が明確になったことで、従業員一人一人が業務の効率化を意識して動くようになり、スピードと正確性の向上に役立った。さらに監督者も、それぞれの監督業務に専念できるようになり高品質の保持に努めれた。その他にも定時の17時になるとブラインドを閉めて退社を促すなど、時間を意識させることで次第に残業が減っていったという。

業務スケジュールを踏まえて有給休暇の取得を会社から推奨

以前は、有給休暇制度が十分に理解されていなかったこともあり、取得が進んでいなかった。そこで従業員の目に留まりやすいよう、社内の掲示板に休暇申請のポイントなど、制度の詳しい内容を説明した文書を貼り出し、あらためて周知を行った。特に、業務が立て込まない年度初めなどの取得を会社から推奨したところ、有給休暇の取得が増加した。また前述の通り、従業員がそれぞれ工夫して業務を効率的に進めるようになったことも、有給休暇の取得向上に大きく関係している。

伝統技術を持つ高齢者らの活躍を支援

同社では定年を満70歳とし、定年後も本人の希望により、一定期間雇用を行う再雇用制度を導入している。左官や石工などの中には、彼らが退職してしまうと消滅するような技術を持つ者もいる。そのため人材確保の面だけでなく、伝統技術を守る観点からも、高齢者に長く活躍してもらえる場を維持するようにしている。昼休憩を含めた1日3回の休憩時間の設定や、夏場などは熱中症対策のために飲み物を常時準備するなど、健康面にも配慮している。

女性従業員の活躍の場を広げる

以前は、大杉氏が月1回現場に出向き、安全パトロールを行っていたが、社内ミーティングで出された意見をもとに、女性従業員による安全パトロールの実施に変えた。その結果、整理・整頓のポイントなど、今までは注視していなかった指摘が出されるようになり、安全意識がより一層高まった。事務職員が現場の様子を実際に知ることで、社内全体での情報共有も進み、安全パトロールがより有意義なものとなったという。こうした取組を機に、今後も女性従業員に活躍の場を広げてもらうことを考えている。

資格取得支援および技術手当の支給

生産性の向上・人材育成を目的として、月1回の工程会議を利用して、新技術や新しく導入したソフトの操作方法などについて、知識を共有する研修を行っている。この他にも資格取得に必要な塾費用や受験費、資格更新の手続き費用なども、会社が全額負担し、資格保持者には資格手当を支給している。会社の技術力を上げて受注できる業務の幅を広げるだけでなく、従業員のモチベーションアップにもつながっている。さらに毎朝、安全活動を目的としたミーティングを実施し、従業員同士で工事内容に応じて予想される危険について意見を出し合っている。危険を防ぐだけでなく、職場内のコミュニケーションの場にもなっている。


取組の成果

「取組を進めて時間外労働がほぼなくなり、有給休暇の取得率も向上しましたが、何より従業員が働き方に関する意見を述べるようになり、自発的に動くようになったことが一番の成果です」と語る大杉氏。社内の雰囲気も明るくなっていったという。

労働時間・休暇(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が156.7時間
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率 35.8%(取組前29%)


従業員からの評価

2018年5月に転職してきた北仲さんは、「前職では休日出勤も当たり前の環境でしたので、私の場合は残業ゼロで、有給休暇もきっちり取らせてもらえる職場環境に大変満足しています。子どもがまだ小さいので『早く帰れるから、子育てに協力してもらえる』と、妻もうれしそうです」と話す。
申請書類の作成等の事務を主に担当する小平さんは、「女性も安全パトロールに参加するようになって、当社の業務内容がよく分かるようになりました。それまでは書類を作成する際、『これはどういうこと?』と具体的にイメージできないこともあり、書類作成の手が止まることもありましたが、パトロールに参加してからはそんなこともなくなりました」と部署を超えた情報共有に手応えを感じている。


現在取り組んでいる上での課題や今後の目標など

今後は人材確保や技術の伝承ため若者の雇用率アップという課題改善に向けて、働き方改革の面からさらにアプローチができないかを検討中だという。これまでの取組により、残業削減や有給休暇の取得において、ある程度成果を出すことができたので、次は女活躍支援もかねて、育児や介護との両立支援や男性の家事参加などを重点的に取り組んでいきたいとのこと。大杉氏は「これからは土木の現場でも女性が活躍する時代が来ると思います。その時のためにも、今から女性が働きやすいように働き方や家庭の在り方を見直し、建設業の革新と成長を目指していきたいです」と抱負を語った。

取材日 2018年11月