働き方改革優良事例

連続休暇制度の導入やキャリアアップ支援により
数年間で離職者の大幅減少に成功

社会福祉法人 仁寿会

  • 医療・福祉
  • 竹原市
  • 31〜100
  • 推進体制(総務人事)
  • 休暇取得の促進
  • 非正規雇用の処遇改善
認定マーク
所在地 〒725-0026 広島県竹原市中央三丁目10番14号
URL http://www.jinjyukai-takehara.or.jp/
業務内容 社会福祉事業(ハートフル竹原中央)
従業員数 66名(男性21名、女性45名)

(2018年7月現在)

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  • 全職員ヒアリングをもとに「SWOT分析」で課題を抽出
  • 「セルフ・キャリアドック」に基づく面接でキャリアプランを明確化
  • 最大1週間休める「リフレッシュ休暇制度」の導入
  • パートから正職員への「常勤職員登用制度」を導入

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取り組んだ背景とは? ~「生き生きと働ける職場」を目指して

竹原市で地域医療の歴史が71年ある同法人。2004年に社会福祉法人を立ち上げ「ハートフル竹原中央」を開設以来、高齢者対象の福祉サービス(特別養護老人ホーム・短期入所生活介護事業所・デイサービスなど)を展開している。取組の背景について、理事長の山下由喜子氏は次のように語る。「2013年頃から離職者が目立つようになっていました。このままではいけない、『生き生きと職員が働ける職場』でなければならないと思いました」
山下氏の思いを受け、施設長の本田和哉氏が職場の問題点を洗い出し、人材確保と人材育成につながる職場の改革に踏み出した。


取組導入のプロセス ~「SWOT分析」をもとに職場環境整備と人材確保の取組をスタート

本田氏と森澤事務長が取組のキーマンとなり、「まずは現場の職員からの意見を聞かないことには改革のしようがない」と、2014年に「SWOT分析(組織の強み・弱みなどを整理し、今後の施設の在り方を導く分析手法)」を取り入れ、全職員にヒアリングを実施し、施設の将来像を真剣に議論した。SWOT分析の結果、最優先すべきは「職員がゆとりを持って働ける環境の整備」であることが明らかになり、これを皮切りにさまざまな見直し・改善を進めていった。
まだ、人材不足の解消には、介護の現場ならではの働きがいや楽しさを広く世間に知ってもらう工夫や、職員確保のための外部への働き掛けが必要であることも分かった。そこで本田氏自ら地元の高校に出向き、2015年に制度化した「就学資金支援制度(卒業後の同法人勤務を条件にした、専門学校進学の奨学金制度)」などをPRした。
「新制度が高校生の心に響いたようで、2017年から安定的に職員確保のめどが立つようになりました。これが取組を加速させるきっかけとなり、その他の制度改革も進んだように感じています」と、本田氏は振り返る。


主な取組と工夫点 ~キャリア形成を経営側と相互確認

「セルフ・キャリアドック」に基づく面接でキャリアプランを明確化

以前から年に1度の職員面接を実施していたが、2018年からはさらに充実させて「セルフ・キャリアドック(職員が定期的にキャリアコンサルティングを受ける仕組み)」を制度として取り入れた。キャリアコンサルタント・産業カウンセラーの資格を持つ本田氏が、全ての職員と「キャリアパス制度(職責・職位ごとに職務内容や求められる能力を設定し、それらを習得するための研修等を明示したもの)」や「目標管理・自己啓発・OJT計画管理シート」を用いて面接を行っている。自身の将来像を経営側と確認し合うことで、各人が今何をするべきかが明らかになり、職場全体のモチベーションアップも感じられるようになったという。

最大1週間休める「リフレッシュ休暇制度」の導入

同法人では毎月1回「衛生委員会」を開き、各職場の代表者が職員の要望・環境改善のアイデアなどを経営者側に提言している。その委員会の中で、職員のストレス解消法について意見交換した際、「心身をリフレッシュするために、まとまった休みが欲しい」という意見が出た。配置人数についてあらためて確認した結果、調整次第で連続休暇が取れることが分かったため、2018年5月から「リフレッシュ休暇制度」を導入した。2階フロア、3階フロア、デイサービスの3部署で、毎月各部署1名が5日連続(分割取得も可能)の休みを取得できる。公休も絡めると最大1週間の休暇取得が可能になり、職員からは「難しいと思っていた旅行にも、気軽に行けるようになった」など、喜びの声が上がっている。その他にも、委員会の話し合いから、保存有給休暇制度(年次有給休暇の未取得分を最大30日まで積み立て、病気治療などで長期間休む場合に使える制度)などが導入されている。

「シルバー人材センター」と連携し、地域貢献にも取り組む

設立時より「職員は介護の仕事に専念する」ことをモットーに、施設の清掃などは外部業者に任せていた同法人。取組を進める中、人手不足解消の一策として、「竹原市シルバー人材センター」を積極的に活用することを決めた。入所者の食事ヘルプなどを担当する派遣会員を1日15人まで受け入れ、職員の負担軽減・時間外労働の削減につなげている。
また、このことは竹原市在住の高齢者へ就業場所を提供しており、社会福祉法人が求められている「地域貢献活動」としての意義もあるのではないかと事務長は語る。

パートから正職員への「常勤職員登用制度」を導入

3年以上勤務したパート職員を正職員として雇用する制度を2018年に導入した。第1号となったデイサービス担当の森川さんは、「子育てが一段落したら、正規の職員として働きたいと以前から思っていました。給与・ボーナスなどの待遇面も良くなって、ますますやりがいを感じています。後に続くパートさんたちのお手本になれたら」と話している。
同法人では、デイサービスのパート職員に対して、子育て後の復帰、病気などによる休職後の復帰を認め、定年制も廃止している。実際に70歳以上のパート職員が活躍している。


取組の中での苦労点

「リフレッシュ休暇の導入において、全職員が5日連続休暇を取得した場合、安定した勤務表を組めるかどうかの確認作業が大変でした」と本田氏。全員が納得できるようアンケートで全職員の希望日を集計し、重複する場合は調整。休職者が出た場合や施設外研修への参加者が複数名出た場合なども想定しながら、シミュレーションを繰り返したという。「多くの職員が不満を持っていると、取組はなかなか続きません。まずは職員に納得してもらうことを重要視し、進めていきました。特に取組当初は、改革の必要性が職員に十分に伝わっておらず、会議で繰り返し説明し、法人全体での認識を合わせていきました」と、本田氏は振り返る。


取組の成果

さまざまな取組を推進した結果、入職2年以内の職員の離職率が66.7%(2012~2014年)から7.7%(2015~2017年)まで大幅に減少した。
2018年夏に受け入れた実習生に、これまでの取組や制度についてオリエンテーションで熱心に説明したところ、「職員の皆さんの生き生きした表情が印象的。若い人も多くて働きやすそう」という理由から、同法人への就職を希望してくれた。その他にも、「現場の職員が楽しく働いている」と利用者などからの口コミも広がり、就職希望者も増えてきているという。

労働時間・休暇(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が144.1時間
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率が62.1%、平均取得日数は8.7日

若年者の定着

・入職2年以内の職員の離職率 66.7%(2012~2014年)から7.7%(2015年~2017年)


従業員からの評価

2004年、ハートフル竹原中央の開設1年目に入職したユニットリーダーの田島さんは、「就職した当時は、有給休暇を取りたくてもなかなか言い出しにくい雰囲気でしたが、さまざまな改革が進んで申請がしやすくなりました。何か問題が生じれば施設長が耳を傾けてくれますので、相談もしやすく、職場の雰囲気も良好です。これが離職率の低下につながっているように感じます」と話す。
デイサービス担当の森川さんは、「連続した休暇が取れるようになったので早速、家族と休みを合わせて旅行に行きました。良い気分転換になりました」と、うれしそうに話す。


現在取り組んでいる上での課題や今後の目標など

同法人の今後の目標について、「リフレッシュ休暇制度をさらに浸透させ、全職員の取得を実現することがこれからの目標です。連続して休んで、心身をリフレッシュすることの大切さも説明していきたいです」と本田氏は意気込みを語る。また介護の仕事へのイメージアップのために、小・中・高校生を対象とした職場体験やインターンシップの幅広い受け入れ、高校への出前授業などにも引き続き注力していく方針だ。
介護の仕事は3K職場と言われることもあるが、本田氏は「人を看る」という仕事に誇りを持って働いてほしいと話す。そのためにも、いっそう働き方の見直しや改革を進め、地域から信頼される施設、学生が就職したいと思える施設に成長させていきたいという。

取材日 2018年11月