[特集]県内先進事例の追跡取材

「子育てとの両立支援はもちろん、キャリアアップへのサポートもしっかり」

株式会社広島銀行

  • 金融業・保険業
  • 広島市
  • 301以上
  • 能力開発・キャリアアップ支援
  • 職場風土
認定マーク
法人名 株式会社広島銀行
所在地

広島市南区西蟹屋1-1-7
〔本店建て替え中のため仮店舗〕

URL https://www.hirogin.co.jp/
業務内容 1878年に広島県内最初の銀行として尾道に設立・創業。国内に151の支店と13の出張所を開設し、上海・バンコク・シンガポールに駐在事務所も展開。中四国No.1のリーディングバンクとして長い歴史を積み重ねている。地域に寄り添い、信頼され「真っ先にご相談いただけるファースト・コール・バンクグループ」を目指し、地域経済の持続的成長に貢献することはもちろんのこと、社会貢献や環境保全といったCSR活動にも積極的に取り組んでいる。
従業員数 3,631名(契約職員含む職員合計、スタッフは除く)
女性従業員比率 37.9%
女性管理職比率 女性管理職比率3.3%(※)、女性管理職・監督職比率:11.7%

※管理職は課長、支店長および部長相当職が該当
 監督職は課長代理、支店長代理相当職が該当

(2019年10月現在)

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女性の活躍推進先進事例ノウハウ導入ブック(2015年3月発行)」事例掲載先進企業を再訪問!

株式会社広島銀行は、2014年の取材当時の課題として「女性管理職・監督職数は少しずつ増加してきたが、まだ満足のいく水準に達していない」ことを挙げていた。これらの課題に対する現状について、2019年に再取材を行った。 ※前回取材記事はこちら

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  • 2006年から13年かけて女性活躍の状況は改善
  • 両立支援制度を見直し、キャリアアップにもつなげられるように
  • 遠方居住者との結婚や配偶者の転勤などへの対応
  • 組織で計画的な異動や育成を行い、女性のさらなる活躍を促す

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1.2006年から13年かけて女性活躍の状況は改善

株式会社広島銀行(以下、広島銀行)は、2006年に「女性が持てる力を存分に発揮できる施策を積極的に推進する」という方針を当時の頭取が表明して以来、女性活躍推進に取り組んできた。その結果、結婚や出産による女性の退職者数は減少傾向にあり、女性が就業継続しやすい環境となっているといえる。

図1 広島銀行における女性管理職・監督職数の推移

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「2019年10月の管理職・監督職に占める女性の割合は11.7%となり、2014年4月の6.3%に比べると5.4ポイント増えました。しかし、女性職員が4割近いことを考えると、まだこれからです」と、人事総務部担当課長の木下麻子氏は言う。

広島銀行における、2014年度以来の「女性職員のキャリアアップサポートおよび、女性管理職、監督職数の増加」に向けたこれまでの取組と、これからについて話を聞いた。

2.両立支援制度を見直し、キャリアアップにもつなげられるように

広島銀行では、2016年4月から3年間の女性活躍に関する中期計画において、依然として女性管理職数が少ないことが課題であるとし、「2018年3月末までに、女性管理職・監督職の人数を150人以上とする」という、具体的な数値目標を掲げた。

「近年、育児休業を取得した女性の復帰率はほぼ100%です。そして復帰直後は、ほとんどの職員が短時間勤務を利用しています」と木下氏が話す通り、広島銀行においては両立支援制度の利用が定着したことにより、出産後の就業継続が一般化している。しかし、長期間の短時間勤務により、女性がキャリアアップする機会を失っているのではと考え、2016年10月に両立支援制度を変更した。

図2 2016年における広島銀行の短時間勤務制度の変更

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旧短時間勤務制度では、「勤務日数(17日または毎日)×勤務時間(4時間・5時間・6時間)」の選択が可能であった。しかし、例えば月17日×4時間勤務となると、本人のスキルを生かし、ステップアップを志向した配置が困難であるという課題があった。また、多くの短時間勤務者が残業を恐れて、なかなか通常勤務に戻せないという問題もあった。そこで、キャリアのブランクを和らげるために同制度を見直し、「勤務日数(17日または毎日)×勤務時間(5時間・6時間・8時間)」の選択とした。

3.日野さん個人_IMG_0758.jpg「4時間の勤務時間をなくし、代わりに残業を原則禁止とする8時間という選択肢を新たに設定することで、次のステップである通常勤務への準備ができたらと考えました。また、8時間の短時間制度、または通常勤務を選択した場合の育児サービス利用補助手当を旧制度より厚くし(子が3歳までは月3万円など)、子育て中もキャリアアップを目指す職員をサポートすることとしました」と、木下氏は説明する。

また、当時の大きな変更点は、5時間または6時間の時短勤務の利用を「子が小学校3年生まで」から「子が小学校1年生まで」と2年間短縮したことだ。「小学校3年生までとなると、一子の場合は約10年間、複数の場合はそれ以上の期間、5・6時間勤務を選択できることになります。反対意見もありましたが、まずは長期間短時間を使い続けることが定常化している状況にメスを入れ、育児と仕事の両立者にもキャリアップを目指してほしいというメッセージを重視しました」。

制度変更から2年たった2019年10月現在においては、時短勤務制度を利用する女性職員のうち、8時間勤務は29%であり、徐々に利用が浸透してきた。「同僚が残業している中、先に帰ることに罪悪感を感じる、といった声も聞かれました。働き方改革が進む中、誰もが生産性を上げ、8時間の時短制度(残業なし)がなくてもよい環境にしたいと思っています。また今年度は、短時間勤務等の制度利用者が特別扱いされないための制度導入を予定しています」と木下氏は言う。(広島銀行の働き方改革記事はこちら

2020年2月から開始する短時間勤務制度の見直しの概要は、次のとおりだ。
・勤務時間5時間、勤務日数17日を廃止し、勤務時間7時間を新設する。
・制度利用期間を小学校6年生まで延長し、勤務時間6・7時間については通算5年半を利用限度期間とする。
・制度利用の対象に治療(不妊治療・抗がん剤治療等を想定)を追加する。

その他、休暇制度を充実させ、治療や病院付き添い・授業参観・PTA活動等への利用をしやすくするために見直した。これらにより、女性が主体的に育児とキャリアの両立を設計することを期待している。

3.遠方居住者との結婚や配偶者の転勤などへの対応

広島銀行では、結婚や配偶者の転勤等に伴う離職防止を目的とした、職務限定の有無、勤務地限定の有無による働き方のコースを2002年から設定している。

図3 広島銀行における働き方のコース区分と女性職員の選択状況(2019年10月現在)

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※ 現在、「BAコース」「BLコース」の大卒採用は行っていない

97%の男性職員はGAコース(業務範囲を限定しない・勤務地を限定しない)を選択しているが、女性職員が選択する区分は様々だ。コース区分はライフスタイルやキャリアパスの変化に応じ、転換することができる。2020年4月からは、広島銀行内で結婚をしたカップルの一方が遠方に転勤した場合に、可能な限り別居しなくても済むように勤務地限定制度を変更する。また2020年2月からは、行内結婚以外でも、配偶者の転勤等やむを得ない理由で退職した場合は、ウエルカムバック制度(一定期間以内であれば、元の資格で復職できる制度)により、広島銀行での過去のキャリアを生かせるようにもする。

4.組織で計画的な異動や育成を行い、女性のさらなる活躍を促す

現在の広島銀行の女性管理職比率は18名(3.3%)で、主に40代後半から50代であり、両立支援制度等が今ほど充実していなかった中、キャリアを積んできた少数派ともいえる。これから女性管理職を増やすためには、その手前である監督職層を厚くしていく必要がある。

そこで広島銀行では、これまで女性自身が次のステップを主体的に描き、チャレンジするための啓発セミナーを定期的に行ってきた。近年は、ライフイベントを迎える前の若手職員への中長期的なキャリアを考える機会、次に管理監督職を展望してスキルアップや意識を高める機会を、さらに管理監督職に対しては、相談できる女性同士のつながりを持てるような交流の機会といった、キャリアステージ別のプログラムを提供している。

図4 広島銀行におけるキャリアアップのための学び・交流の機会

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今後はさらに、性別や年齢等による固定的な役割意識の払拭や、積極的に女性を管理職に登用することなどを進めていく予定であるそうだ。

「代表取締役頭取の部谷は、ダイバーシティへの理解が深く、社内外に重要性を適宜発信しています。経営層の女性活躍への期待をしっかり現場の職員に届け、多様な人財が力を発揮できる組織を構築していきたい」と木下氏は言う。「中期計画2017」の人財戦略にて、「変化に即応し、地域社会に価値を創出できる人財の育成」及び「ダイバーシティの推進」を柱としており、今後も重要施策の一つとして広島銀行は女性活躍に取り組んでいく。

●取材担当者からの一言
広島銀行は、充実した両立支援制度をバックに、既に女性の就業継続の風土は醸成されている。注目したいのは、段階的に制度を見直し、両立支援からキャリアアップ支援の方向に転換しようとしている点だ。子育て中の女性にとっては、厳しめの対応ともいえるが、「ライフイベントがあったとしても、キャリアアップを目指したい」と考える女性職員が増えれば、女性管理職も自然と増えていくはずだ。

女性活躍の取材のために県内企業をこれまで90社以上訪問したが、広島銀行を含む、銀行出身者が人事部門等を統括する部長となっているケースも多かった。また、広島銀行で行っている女性活躍の施策を参考に展開している企業もあった。「広島銀行が変われば地域が変わる。ダイバーシティが広島県内にもっと広まる」と強く、希望を感じた取材であった。

●取材日 201910
取材ご対応者 人事総務部 担当課長 木下 麻子氏
        人事総務部 人事企画課 花村 茜氏