[特集]広島県における「働きがいのある会社」取組事例

美容師の社会的地位向上へ
チーム活動で主体性を育む

有限会社エイジ

  • サービス産業
  • 広島市
  • 31〜100
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所在地 〒731-0137 広島市安佐南区山本1-8-15-101
URL https://www.prosol.co.jp/
業務内容 美容室・美容院の運営
従業員数 計65人(男性12人、女性53人)

(2022年6月時点)

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  • 美容師の社会的地位の向上へ
  • 働き方改革チーム結成で社員主導の体制へ
  • 評価制度を変え、幅広い層の活躍を後押し
  • 規模拡大に伴う交流減少を防ぐ
  • 理念の承継へ次世代リーダーを育てる

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働きがい向上に取り組んだ背景

美容師の社会的地位の向上へ

Eiji_Trophy.jpg 広島市内でヘアサロン「プロッソル」などを運営する。1990年の創業以来、「お役に立つ・美の創造・社会的地位の向上」を基本理念に掲げてその浸透に力を入れつつ、美容のプロとして成長できる仕組みづくりと、公私ともに充実できる働く環境整備を積極的に進めてきた。これらの継続した取組が社員の働きがいの創出にもつながり、GPTW2022年版広島県における「働きがいのある会社」優秀企業に選出された。
 美容業界でいち早く社会保険に加入するなど、10数年前から環境整備を始め、徐々に働きやすい職場へと変化させていった。2年前からは完全週休2日制、時短勤務制度を導入。こうした取組の背景には、代表取締役社長の三戸栄氏の「美容師の社会的地位の向上」への強い思いがある。「美容業界は長時間労働で、待遇も良くないというイメージがあります。人手確保が難しく、離職も多い状況です。私もスタイリスト時代に辛い思いを経験しました。こうしたことから当社は美容師の社会的地位の向上を理念の一つに掲げ、一般企業並みの待遇にチャレンジしています。現在は休暇や産・育休を取得しやすくなりました。さらに出産後も働き続けるスタッフが増え、離職者も減りました。100年企業を目指しており、社員が美容の仕事にやりがいを持ち、ワクワクを感じながら未来を一緒につくっていける会社でありたいですね」と展望を話す。

働きがい向上の主な取組と工夫点

エイジ通信や作文コンテストで理念浸透させ、自身を見つめ直す

Eiji_02.jpg  創業以来、社長自らの思いや理念の浸透に力を入れている。毎朝、経営理念を唱和するほか、経営発表会などでビジョンを共有する。さらに「エイジ通信」という形で、三戸氏自らが文章を書いて社員に思いを伝えており、その量は約20年で累計800ページに及ぶ。中には、エイジ通信を壁に貼り、常に思いに触れられる環境をつくっている店舗もある。
 また、半期ごとの経営発表会では、文章を書くことで自分自身を見つめ直す機会を持ってほしいとの思いから、作文コンテストを実施。テーマは「私にとっての基本理念」や「私の労働観・人生観」などで優れた作品を表彰する。自分自身の人生や仕事について考えてもらうことで、社員のモチベーションや主体性に変化が現れ、アルバイトスタッフにも波及するなど、成果につながっている。「作文や読書を通じて、自身の心を耕して豊かにすることは、お客さまとの信頼関係を築くことにつながります」と三戸氏は話す。こういった取組を長年にわたり継続することで社員も腹落ちしており、GPTWのアンケート調査では、理念浸透の項目で高い評価を得た。三戸氏は「続けるからこそ意味があります。経営理念がボディブローのように徐々に浸透しているのだと思います」と話す。

働き方改革チーム結成で社員主導の体制へ

Eiji_03.jpg 社員と役員でつくる「働き方改革チーム」を結成し、完全週休2日制の導入や、1日の中で各社員が5分間の無駄の削減を意識する「マイナス5分プロジェクト」などに取り組んだ。活動は原則社員に任せ、解決に向けて自ら考えるように促し、月1回の定例会でアイデアを出し合う。実現に向けて課題の多かった完全週休2日制は、アプリを活用した事前予約率の向上や、顧客の次回予約の促進、社員の2カ月後のシフトづくりなどを進め、隙間時間の出ないスケジュール管理などを徹底したことで、実現にこぎ着けた。三戸氏は「店長たちに任せて取組を進め、1年経ってみると、売り上げは下がらずに逆に上がっており、スタッフの力はすごいな、と感心しています。課題という壁があって、それを社員一丸となって乗り越えるこの過程が、働きがいにつながっています。プロジェクトチームは現在も活動を続けています。メンバーを定期的に入れ替えることで、多くの社員が当事者意識を持てるように工夫しています。社長を含めた毎月のプロジェクト会議で各取組の目標に対しての行動を共有し続けており、今後もPDCAサイクルを回していきたい」と話す。
 プロジェクトを社員が共同で進めることで連帯感や課題解決能力が高まり、社員は自己成長を感じているという。時短勤務や休暇増などのワークライフバランスの整備が社員満足度を向上させ、さらに、それが顧客満足にもつながるという好循環を生み出している。

評価制度を変え、幅広い層の活躍を後押し

Eiji_04.jpg 美容師としての下積みを経て顧客と信頼を築いてくると、店ではなくその美容師個人に顧客が付くようになる。そこにやりがいを感じる社員も増えてくる。ただ美容師として活躍できる年代は、傾向として35歳程度までが多い。顧客との世代差が生まれるためだ。そのため30代後半以上の社員も活躍できる体制づくりに着手。2年前から個人売り上げだけではなくチームの売り上げを重視。中高年の役職者にはマネジメントを任せ、チーム全体の売り上げ向上に貢献するように評価制度を改定した。こうしたマネジメント層を目指す社員を対象とした経営勉強会「ネクスト会」も実施。三戸氏は「個人として稼げる店長ではなく、社員一人一人に仕事に誇りを持ってもらい、人が辞めない組織をつくれる店長になってもらいたい」と期待を込める。



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取組の中で感じた難しさや課題

規模拡大に伴う交流減少を防ぐ

Eiji_01.jpg  「会社の規模が大きくなるにつれて、社員に直接思いを伝える場が減ってしまっていることに課題を感じていました」と三戸氏。その解消に向けて最近は、社員を世代別に4~5人グループに分けて「社長との食事会」を実施する。顔を合わせて直接話す機会を意図的につくり、互いの思いを共有する時間を持っている。三戸氏は「例えば若い人の場合、華やかさにひかれて、この業界に入ってくる人が多いです。しかし新人から成長してスタイリストになるまでの下積み時代は学びの期間であり、楽しいことばかりではないため、どうしても離脱が多い。その問題は以前から認識しており、そこを乗り越えるためにも今の世代の子たち一人一人に向き合い、どこに『やる気スイッチ』があるかを把握することが重要と感じています」と各社員と向き合い、信頼を築けるよう工夫している。

目指すべき姿・展望

理念の承継へ次世代リーダーを育てる

Eiji_05.jpg 今後も理念浸透に注力し、社員が働きがいを感じられる職場づくりを続ける方針だ。「理念の浸透に終わりはなく、『お役に立つ・美の創造・社会的地位の向上』という考えをいかに承継するかが大切です。幹部・役職クラスには経営スキルを一層磨いてもらい、リーダーシップを発揮してもらえるよう育てていきます。そして、風通しの良い組織にして後輩社員がより輝ける環境にしていきたい」と意気込む。

社員の声

プロッソル 五日市店 / 安田 晴菜氏

Eiji_yasuda.jpg 「働き方改革チーム」に所属し、さまざまな取組についてどうすればいいのかを社員同士で議論してきました。各店の取組内容を共有することで、良いところを真似し合うなど底上げを図れています。メンバーは年に1度変わるので、だんだんと若いメンバーが増えています。アイデアが没になることはあまりなく、とりあえずやってみようという意識で活動しています。働き方改革チームで時短勤務や完全週休2日制の導入に取り組み、体も心もリフレッシュして良い状態で働けています。経営者が社員の要望を実現してくれていると肌で感じています。

取材日 2022年6月