[特集]広島県における「働きがいのある会社」取組事例

専門知識の習得と個の強みを生かせる人材育成
社員の社会的地位向上と仕事に誇りを持てる組織づくりへ

株式会社三原美装社

  • サービス産業
  • 三原市
  • 31〜100
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所在地 〒723-0041 広島県三原市和田1-11-19
URL http://www.m-bisousya.com/
業務内容 ビルメンテナンス業
従業員数 57人(男性17人、女性40人)

(2023年7月時点)

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  • 女性目線で生産性向上へ「リーダー制度」発足
  • 部署の垣根を超えた委員会活動で主体性を育む
  • コミュニケーション創出へ「個人カルテ」使う個別面談

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取り組んだ背景

ー誰もが活躍できる職場づくりへ

mihara_trophy.jpg 株式会社三原美装社は清掃や設備、警備などの総合ビルメンテナンス事業を手掛ける。24時間365日体制で稼働する同業界は「きつい、汚い、危険」という「3K」のイメージから、若手の人材確保が難しいのが現状。同社も平均年齢60歳と高齢化が進み、担い手不足が深刻化している。同社が本社を置く三原市が2005年ごろから男女共同参画の推進に力を入れ始めたのを機に、組織改革の着手を後押しされて取組を開始。社長の藤原聖士氏は、「人材確保のために社員の誰もがイキイキと働き、仕事に魅力を感じられる環境にしたいと考え、まずは弊社社員の半数以上を占める女性に着目し、社会的地位と生産性向上のために女性管理職登用の取組に着手しました」と話す。
 また経営理念の「信頼される企業」になるためには、「全ての社員が活躍でき、働きがいや幸せを感じられる会社」にする必要があると考え、働きやすい環境の整備に加え、現在は社員の働きがいの創出に力を入れている。

働きがい向上の主な取組と工夫点

制度づくり(ハード)の取組

「生産性向上」に女性視点を キャリアパスを整備し女性管理職を登用

mihara_01_.jpg 女性社員比率が70%以上の同社だが、管理職は男性だけだった。藤原社長は女性ならではの視点を採り入れて生産性を高めたいと考え、新たな管理職ポストとして「クリーンアドバイザー」を設けた。このポジションに勤続年数や実務経験の豊富な女性社員を任命。女性目線で「女性トイレの清掃方法」や「用具の使い方・収納方法」などを各現場で指導・助言し、生産性向上につなげている。
 藤原氏は「アドバイザーに任命した社員に責任感が生まれ、これまで以上に意欲的に業務に当たってくれています。今では女性社員のメンターとしての役割も担ってくれている。社外からは『細やかな気配りがあり、安心できる』という声も届き、取組に手応えを感じています」と話す。

「働きがい向上委員会」発足で全員参加型の組織へ

mihara_02_.jpg 社員の主体性を育み、生産性向上に向けた業務改善や改革を進めるため、「働きがい向上委員会」を発足し、定期的に委員会を開いている。この委員会は部署の垣根を超えたメンバーで構成し、多角的な視点で改善に向けた提案がされる。ここでの議論を経営計画や社内制度などに反映していくことで、社員のモチベーション向上につなげている。
 また、労働災害の減少などのためにビル管理法で義務付けられている年2回の研修会を活用し、社員の安心感を高める取組も行う。業務に必要な技術・スキル向上に加え、アンガーマネジメントや質の高い睡眠方法を題材にした講演などの独自のカリキュラムを盛り込んだ研修を実施。あわせて別々の現場に勤める社員が公私の悩みを共有し合う場も設け、孤立感の解消や承認欲求を満たすなど、自己肯定感を得られる機会をつくることを心掛けている。

効果的なマネジメント(ソフト)の取組

コミュニケーション活性で 社員とともに強い組織づくりへ

mihara_03_.jpg 組織力強化のため、全社員との個別面談を開始。取得資格、人柄、家族構成などをまとめた「個人カルテ」を作り、社長自ら社員の元を訪れて会社への要望や仕事以外の悩みまで幅広くヒアリングし、社内制度の改善や人事配置も検討する。例えば子育てや孫育て、親の介護といった仕事と家庭の両立に悩む場合、離職せず働けるよう、現場ごとにカバーし合える体制づくりを進めた。
 このほか、前述の委員会活動で提案された、誕生月の有給休暇取得促進や、仕事の上での感謝の気持ちを伝える「サンキューカード」の取組も始めるなど、社員同士の相互理解を深め、認め合う風土の醸成につなげている。

企業文化の醸成(ハート)の取組

働きがい創出へ、経営理念の浸透を図る

mihara_04_.jpg 働きがいを高めるには「社員一人一人が会社の代表」という自覚を持つことが重要と語る藤原氏。「いくら建物をきれいにしても作業者の身なりや就業態度が悪いと顧客満足度は高まりません。顧客の期待を超える働きをして、多くの〝ありがとう〟を集められれば、連動して社員満足度も高まるはずです。こうした好循環を目指し、社長や幹部社員が現場を訪問して『一人一人が会社の代表』であることの意識付けを徹底しました。特にコロナ禍で私たちの仕事が社会の安心安全を支える『エッセンシャルワーカー』(社会機能維持者)であることを再認識したことから、社員には仕事の意義や社会に欠かせない立場だという理念をしっかりと伝え、仕事への誇りやモチベーション向上につなげています」と話す。

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働きがい向上の取組の中で感じた難しさや課題

― 社員からの自発的な提案を促す環境づくりに課題

mihara_05_.jpg  委員会活動を通じて社員から意見が自発的に出始めているが、「社員全員が自発的に意見を出せる環境づくり」の必要性を感じているという。藤原氏は「社員から日頃感じている細やかな気づきや意見を引き出すことは、改善のきっかけや考える機会につながります。社員から出た提案によって業務改善が進むと、会社の生産性は一層高まりますし、社員のモチベーションも高まるはずです。個人面談も活用してしっかりと社員の思いに傾聴し、業務や社内制度の改善につなげ、社員の働きがいを高めていきたいと思います」と話す。

取組の効果や成果、今後の目指すべき姿

― 地域で一番『働きがい』のある会社へ

mihara_06_.jpg 「今後も社員の連帯感や満足度を高める取組を発展させたい」と語る藤原氏。「私たちは地域の快適環境を創造し、安心安全を提供する大切な役割を担っているエッセンシャルワーカーです。この仕事に誇りを感じながら人間力を高めて、『三原美装社なら大丈夫』と地域の人に認められる組織にしたい。今後も社員のアイデアや意見を取り入れ、『働きがいのある会社』になれるよう、さらなる高みを目指してまい進します」と意気込む。

社員の声

業務管理課長 / 阿草 宗典氏

mihara_voice.jpg 「働きがい向上委員会」に所属しています。GPTWの調査で、働きがいを感じている社員が多くいることが分かりました。これを励みにしつつ、さらに高い満足度を目指し、行動することが重要だと考えています。現在は業務課長としてクリーンアドバイザーとともに現場を回って社員の現状把握に努めています。今後も全社員が仕事への誇りを持てる会社づくりを進めていきます。

取材日 2023年7月