[特集]広島県女性活躍推進モデル企業創出事業事例

誰もが、自身の描くキャリアプランを進んで行けるように

三鬼化成株式会社

法人名 三鬼化成株式会社
所在地 広島市西区横川町2丁目13番2号
URL https://sankikasei.co.jp/
従業員数(うち女性人数) 79名(29名)
管理職数(うち女性人数) 22名(4名)

(2023年9月時点)

1952年創業。ビニールカーテンやパーテーションなど、さまざまな商品の素となる塩化ビニール、ポリエチレン等を販売する、合成樹脂の専門商社です。車の部品を販売する車輌部や、生活量販店と取引のある商品企画部もあり、各部署に女性社員がバランスよく配置されています。

★トップ_時計なし.jpg

左から 沖さん、大久保常務、大久保社長、池永さん。

取材に答えてくれたのは…

管理部 総務人事担当 部長 沖 聖子(おき せいこ)さん

「女性活躍推進モデル企業創出事業」のプロジェクト責任者で、本事業参画時点では社内唯一の女性管理職。女性活躍のために必要な取組を立案・実施しました。キャリアコンサルタントの資格を持ち、社員面談も担当。傾聴を大切に、社員の本音を引き出します。

管理部 池永 晴香(いけなが はるか)さん

結婚を機に同社に転職。2年目で産休・育休を取得し、復帰後、時短勤務をしながら2回目の産休、育休を経て現在に至ります。子育てをしながら自分らしく働く経験を若い社員へ伝え活かしてもらおうと、このプロジェクトに参加しました。

★アドバイザー.jpg三鬼化成株式会社のアドバイザーは…

小野 正憲(おの まさのり)さん

「小野社会保険労務士事務所」特定社会保険労務士。女性社員の就業継続を目指し子育てと仕事の両立を支援するため、企業へ職場環境改善のアドバイスを行っています。フレックスタイム、短時間勤務、在宅勤務制度などの多様な勤務制度の導入にも取り組んでおり、特に女性活躍推進に関する企業支援に力を注いでいます。

固定概念を壊し、女性がビジョンを描ける企業へ

2021年、「女性活躍推進モデル企業創出事業」の参画前には沖さん一人しかいなかった女性の管理職。まずは男性女性それぞれの思いを知ることからスタートし、今日までさまざまな改革を行ってきました。その結果、現在では4名もの女性管理職が誕生しています。男女を問わず活躍できる風潮を生み出した具体策について伺いました。

――貴社で行われている「女性活躍推進」の取組の具体的な内容について教えてください。

★沖さん(左)と池永さん.jpg沖 今回の事業に参画する前、当社の女性社員は結婚・妊娠・退職という流れが一般的でした。そこでまず、全女性社員に「キャリアデザインの可視化」をしてもらったんです。自分が将来どうありたいかを考えて書き出し、そのビジョンに向かって何をするべきか、どう行動するべきかを真剣に考えてもらいました。その中にはキャリアアップしたい、管理職になりたいという意見もあり、その気持ちに今回始めて気付いたという人もいました。さまざまなビジョンがありましたが、「自分の力を発揮したい」という前向きな意見が多く見られました。一方で、管理職の男性社員からは「女性社員との関わり方が分からない」「女性をスキルアップさせる方法を知りたい」といった声が上がっていました。そこで、女性部下への対応の仕方が学べる研修会を実施したんです。初めは「なぜ女性のためにだけ?」と、この取組自体に否定的な声もありましたが、そういう意見があることを分かったことも成果のひとつだと考えています。社員同士に距離があるまま推し進めても、きっといい効果は表れなかったはずです。徐々に取組への理解が進み、今では男性、女性に関係なく、みんないきいきと働いています。

キャリアアップの条件を明確にしてモチベーションUP

――女性活躍推進アドバイザーの小野さんとのやり取りで生まれた「よい変化」や「感じた効果」があれば教えてください。

★インタビューの様子_時計なし.jpg沖 会社には人事評価制度がありますが、キャリアアップするためにどんな道があるのか、内勤はどう評価されるのか、今でもはっきりしていないことがあります。小野さんに、他社の評価事例などの資料をいただきました。 

小野アドバイザー 数字がはっきりと出る営業職に比べて、内勤は評価しにくい職種です。例えば電話を取った回数など、数値化できるものは数値化し、誰にでも分かる評価にすることが大切だとお伝えしました。感覚ではなく、会社が求めることを配点する仕組みを作れば、男女関係なくフェアに評価することができます。

沖 全く頭になかった評価方法でとても参考になりました。ここは未だに整備できていないところで、今後の課題といえます。

小野アドバイザー 総合職と一般職ではキャリア構築の仕組みが異なり、入社時に決まってしまうのが一般的です。しかし、実は三鬼化成さんには「職能要件評価制度」があり、入社後もご本人の希望で変更が可能です。一般職で入社しても意欲があればキャリアアップに挑戦できるこの制度を周知し、活用してほしいですね。

自身の思いに気づき、それを発信できる場を提供

――これまで行ってきた取組のなかで、特に注目してほしいポイントや成果はありますか?

★打ち合わせ風景.jpg沖 2022年に女性社員を対象とした座談会を2回開催しました。1回目のテーマは「業務についてのやりがい・主任職に対するイメージ」、2回目は「現在のキャリアにおいて自分自身が意識して取り組んでいること・自分が主任になったらどんなことをしてみたいか」。参加者それぞれがざっくばらんに思いを話すなか、「私もリーダーになれるかもしれない」と徐々に心境が変化する様子も見受けられました。

池永 この座談会に参加した9名は、全員キャリア10年の中堅女性社員です。当社は東京、福岡、大阪にも支店があり、同じ職歴でもゆっくりと話す機会がありませんでした。参加者同士が互いのビジョンや夢を聞き、刺激を受け合っていました。この座談会を機に管理職を目指してみようと思った人もいたはずです。ここから新しいリーダーが誕生し、職場に新しい風を作り出してくれると期待しています。

沖 座談会を、自分の夢や目標を外に向けて言える場にしてほしいという思いもあります。それが自分自身の意識を強くし、モチベーションを上げることに繋がります。実際に取組後は女性の管理職が1名から4名に増加。管理職の会議やミーティングに女性の人数が増えることにより、議題や雰囲気も変わりました。女性が能力を発揮し活躍することで、管理職全体の視野が広がり売り上げアップにも繋がっています。

――今後挑戦していきたいこと、展望などあれば教えてください。

沖 2023年度に実施する社員面談では、キャリアアップしたい一般職社員には積極的に総合職への変更を促そうと思っています。転勤ができないなどの理由でやむを得ず断念しているなら、転勤のない地域限定の総合職もあります。こうした情報を発信していきたいですね。

池永 私は男性も女性もいきいきと活躍している様子をSNSで発信して採用に繋げ、さらに未来のリーダー候補を獲得していきたいと考えています。

(取材日 2023年10月)