[特集]広島県女性活躍推進モデル企業創出事業事例

女性視点での課題解決でジェンダー平等な職場をつくる

株式会社タイヨー

法人名 株式会社タイヨー
所在地 広島市安芸区船越南5丁目11-1
URL https://www.taiyo-net.co.jp/
従業員数(うち女性人数) 93名(31名)
管理職数(うち女性人数) 18名(5名)

(2023年9月時点)

1951年創業。広島市~安芸郡を中心に、一般廃棄物・産業廃棄物の収集運搬やリサイクルを行う会社です。先入観にとらわれない女性活躍・職場改革が注目されており、現在さまざまな業界から会社訪問を受けています。

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取材に答えてくれたのは…

経営企画室 田中 陽希(たなか はるき)さん

タイヨーの女性活躍推進の取組に惹かれ、2021年に営業として入社。その後、女性社員のワーキンググループ「Ready Sunflower」の一員となり、現在は管理職。楽しく明るくをモットーに、仕事と子育てを両立しています。

★アドバイザー.jpg株式会社タイヨーのアドバイザーは…

桐原 明栄(きりはら あきえ)さん

「桐原労務サポートオフィス」代表。社会保険労務士・人事コンサルタントとしてこれまでに100社以上を担当。前職の派遣業界ではキャリア教育の責任者として活躍し、2,000人以上を面接してきました。そのほか、自治体や大手企業などで「女性がイキイキ働くためのモチベーションUP」をテーマとした講演の実績が多数。

会社視点で考えられる次世代女性リーダーを

男性中心で人手不足が課題の廃棄物処理業において、2018年から女性社員比率50%を目標に掲げ、女性も参画しやすい環境を整えてきたタイヨー。さらに、2021年「女性活躍推進モデル企業創出事業」の参画を機に、経営者視点で会社全体のことを考える社員の育成を開始しました。この3年間で、社内や社員にどのような変化が生まれたのでしょうか。

――貴社で行われている「女性活躍推進」の取組の具体的な内容について教えてください。

★企業内保育園.jpg田中 業界では全国的にも珍しい企業内保育園の設置をはじめ、病児保育や社宅の支援、男女別の休憩所やシャワー室、パウダールームの整備など、いわゆる3K(きつい・汚い・危険)といわれる職場でも女性が働きやすくなるように、福利厚生に力を入れています。「女性活躍推進モデル企業創出事業」に参画した2021年度には、女性社員だけのワーキンググループ「Ready Sunflower(レディサンフラワー)」を立ち上げました。現在は、私を含む5名が所属し、社員が過ごしやすく、働きやすい環境をつくることを目的に活動しています。

★ユニフォーム.jpg特に社内外で好評なのが、私たちがリニューアルを手がけたヘルメットとユニフォームです!  目を引くカラーリング、スポーツアパレルのようなおしゃれなデザインで、働く社員のモチベーションアップにも繋がっています。

――業界の中でも先進的なんですね。ソフト面ではいかがでしょうか?

田中 レディサンフラワーの活動の一つが、就活生の会社案内や、新入社員をメンターとしてサポートする「おせっかい係」です。特に入社すぐは不安なこともあると思うので、普段から世間話をしたり、「1カ月お疲れ様会」を開いたり、悩みを話しやすい環境づくりを心がけています。また、昨年からは、社員が声を上げやすい環境を整えるため、悩みや要望を匿名で投稿できる意見箱を社内に設置しました。寄せられた意見は、アドバイザーの桐原さんと一緒に毎月1回行っている、レディサンフラワーのミーティングで精査。改善や導入が必要だと感じたら提案書に起こし、管理職や役員会へ提出しています。女性目線を入れて提案することで、多数の事項がすぐに実行されてきました。

アドバイザーとの勉強会で女性社員が成長!

――女性活躍推進アドバイザーの桐原さんとのやり取りで生まれた「よい変化」や「感じた効果」があれば教えてください。

田中 もう本当によい変化しかないです! まずはレディサンフラワーの勉強会ですね。桐原さんの方から、私たちが知っておくべき制度について勉強会をしましょうって言ってくださって。例えば、育休を取ったことはあっても、細かい制度の内容までは知らないじゃないですか。そういったことを1つずつ教えていただきました。

桐原アドバイザー 女性活躍推進についてはもちろん、給与明細の見方、育休、ハラスメント、障害者雇用についてなど、この1年間でいろんな勉強会をしました。知識の引き出しが増えたことで、ミーティングでメンバーみんなが意見を出し合えるようになり、会議の形が整ってきたと思います。

田中 ミーティングを始めた当初は、問題解決へ向けて計画を立てようとしても、そもそもどう意見を出せばいいのかが分からない、提案書も書けない状態でした。桐原さんがファシリテーターとして参加してくださることによって、散逸されがちなアイデアをまとめながら整理できる力が付いたのも大きいと思います。

★ご意見箱.jpg桐原アドバイザー 課題解決の話し合いは、Googleスプレッドシート(※)で作成した課題管理表を共有して、意見箱に入れられた意見を「レディサンフラワーで解決できることなのか」「個人的な意見ではないか」「会社にとって利点があるか」など、書き出すところから始めました。見える化によって問題点が浮き彫りになっただけでなく、会社がどうなることを目指すのか全体を俯瞰する視点がみんなに養われたと思います。

田中 私たちが知識を付け成長することで、意見への返答もだんだんと変わり、それにつれて意見を出す側もレベルアップしていると感じます。例えばフィードバックする時に、「どういう対策があるか、課で話し合ってみてください」と伝えたら、次に出てきた意見用紙には、現状が一目で分かる写真が添付され、対策のアイデアまで書かれていて感動しました。

桐原アドバイザー これはもう、立派なコンサルティングですよね! レディサンフラワーのメンバーの成長をすごく感じています。他の社員にも成長の機会を得てほしいので、彼女たちと同じように勉強会を実施していきたいと考えています。

※Web上で表計算シートを作成・編集・共有ができる無料ソフト

社内の声を生かし改善、風通しの良い職場に

――これまで行ってきた取組のなかで、特に注目してほしいポイントや成果はありますか?

田中 レディサンフラワーの活動によって社内意識が変わったことです。以前は、上司面談などで改善点を挙げても、特に何かが変わることはなかったんです。だからレディサンフラワーが発足し、意見箱を設置しても、社内には「どうせ変わらない」という諦めムードが蔓延していました。

★仕事風景.jpg桐原アドバイザー それが今では「何かあれば、まずレディサンフラワーに言おう」「意見箱に意見を入れよう」という空気に変わりましたね。自分たちの意見が反映される喜びと、意見に対してきちんとフィードバックが貰えるという事実が、風通しの良い職場環境を生んだと感じます。

田中 社内もだいぶ変わりました。以前は、新入社員が馴染めるように、昼食に誘ったり声をかけたりするのは、私たちメンバーの役目だったんです。でも今では、他の社員も気にかけてくれるようになりました。

桐原アドバイザー メンバーから派生して、それが社内で当たり前になったというのは大きい変化ですよ。働きやすい環境づくりのためには、誰か任せではなく職場全体で心掛けることが大切です。さらにタイヨーさんは、職場環境の改善にいいと思ったものはトップが迷わず取り入れます。レディサンフラワーの活動も業務時間内でやろうとしている。そういう会社側の真摯な姿勢も、女性活躍の土壌づくりに繋がっていると思います。

――今後挑戦していきたいこと、展望などあれば教えてください。

田中 当面の目標は、指導的立場の女性スタッフを増やしていくことです。今年の4月からはリーダー制度を導入し、年齢や社歴に関係なく、管理職を目指しやすい環境になりました。新入社員にも「やればできる! 来年にでもリーダーになれる」って常に伝えています。

桐原アドバイザー 田中さんも入社3年目なのにすでに幹部候補ですしね。今後はよりジェンダー平等の働きやすさを目指し、レディサンフラワーに男性社員を加えることも視野に入れて、サポートを続けていきたいと思います。

(取材日 2023年10月)