[特集]広島県女性活躍推進モデル企業創出事業事例

次世代の女性社員がチームを組んで課題を絞り解決策を探る

東洋電装株式会社

法人名 東洋電装株式会社
所在地 広島市安佐南区緑井4丁目22番25号
URL https://t-denso.com/
従業員数(うち女性人数) 78名(23名)
管理職数(うち女性人数) 13名(1名)

(2023年11月時点)

1973年創業。制御盤システム事業・高速道路システム事業・空調システム事業・介護医療システム事業・IoTシステム開発事業の5つの事業部で構成されています。ここ5年で社員数が倍になり、多様な人材育成に力を注いでいます。企業理念は「エンジニアが一生で最高の仕事ができる場所へ」。

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左から 小西さん、太田さん、平川さん、吉本さん、桑原CFO。

取材に答えてくれたのは…

経営管理部 桑原 健太(くわはら けんた)さん

「女性活躍推進プロジェクト」責任者。

制御盤システム事業 FRICS Fab.チーム 営業 平川 叶子(ひらかわ かなこ)さん

同プロジェクトの初期メンバー。メンバー入れ替え後の2期にも参加し、リーダーとしてチームを引っ張っています。

I0Tシステム事業 営業 太田 美月(おおた みつき)さん

同プロジェクト内の「社内コミュニケーションチーム」リーダー。ユニークなイベントで社内交流を促進しています。

制御盤システム事業 設計チーム 吉本 悠希子(よしもと ゆきこ)さん

同プロジェクト内の「情報展開チーム」リーダー。社内情報をいかに分かりやすく社員に伝えるか、現在も奮闘中。

経営管理部 業務支援グループ 総務チーム 小西 鈴音(こにし すずね)さん

社内で同プロジェクトと並行して実施された「社内整備プロジェクト」のメンバー。『くるみん制度』の認定を担当。

★アドバイザー.jpg東洋電装株式会社のアドバイザーは…

小笠原 弓子(おがさわら ゆみこ)さん

大卸業の総務人事部、採用専門のアウトソーシング企業での経験を経て、社会保険労務士法人サトーに入社。2,000名以上の採用面接実績を基に採用支援事業を立ち上げました。企業と求職者とのマッチングに焦点を当てた採用、人材定着、職場最適化、助成金活用などが担当分野。広島県や広島市など自治体の人材確保・定着支援事業、働き方改革事業に数多く携わっています。

足りなかったのはキャリアアップに必要な知識

事業参画前は男性中心の企業文化がベースに残り、リーダークラスがほぼ男性だった東洋電装。「女性活躍推進モデル企業創出事業」をきっかけに、女性男性を問わずフラットに評価され、全社員が成長できる企業への一歩を踏み出しました。新たな取組や既存の制度の見直しを行った結果、見えてきた未来とはどんなものだったのでしょうか。

――貴社で行われている「女性活躍推進」の取組の具体的な内容について教えてください。

★インタビュー2.jpg平川 2021年12月に、総務と私の5名からなる社内プロジェクトチームを発足しました。ゴールの設定や具体的な取組について話し合いを重ねましたが、初めての試みで何から始めればいいのかも分からず、前に進まない状況が半年ほど続きました。20229月に仕切り直してメンバーを変更。当社の「社員活躍プロジェクト」の一環として機能させることになりました。2期メンバーは各事業部署の次世代を担う女性社員。まずこの10名で女性のキャリアをテーマにした座談会を開いたり、アンケートを取ったりして、スタートの切り口を探りました。そこから浮かび上がったのは「キャリアアップ」「人との関わり方」「経験」「指導力」「知識」というキーワード。中でも「知識」を得るために、そもそも社内の情報展開は十分か、一歩踏み込んで話し合いました。当社は業務内容が全く違う事業部門で組織されています。事業部横断プロジェクトでメンバーの所属も様々でしたので、業務に関する「知識」「情報展開」について話し合うことは難しく、汎用性の高い、知識、情報展開をテーマに対策を進めることになりました。

吉本 プロジェクト内に「情報展開チーム」と「社内コミュニケーションチーム」を立ち上げました。私は「情報展開チーム」を担当し、社員に必要な情報をどう届けるかを検討しています。当社では「総合案内」というポータルサイトに様々な情報を集約しているのですが、知名度が低くあまり周知されていない状況でした。全社員を対象にアンケートを実施したところ「集約の仕方が分かりにくい」「必要な情報が探しづらい」といった声が出たため、現在改善しています。まずはポータルサイトを分かりやすいものにし、必要な情報を誰もがすぐに入手できる仕組みを作っていきます。

★社内名刺.jpg太田 私が担当した「社内コミュニケーションチーム」では、急に社員数が増えたことで希薄になったコミュニケーションを活性化させる企画を考案しました。お互い名前も知らない、話したこともないという社員が多いため、趣味やプライベートの情報を盛り込んだ社内用名刺を作り、名刺交換するとポイントが貯まる『名刺deコミュフェス』というイベントを開催しています。ポイントに応じて豪華景品がもらえる特典付きです。部署の壁がなくなることで社員の視野が広がったり、ヒント(知識)を得たり、新しいモノづくりに発展することも期待しています。

小西 私は厚生労働大臣が「子育てサポート企業」として認定する「くるみん」の基準を満たすための取組を行いました。様々な基準がある中、働きやすさを向上させるために時間外労働の軽減に着手。事業部ごとのヒアリングから開始し、どの事業部や誰に時間外労働が多いのかなどのデータ収集を行いました。現在は両立支援につながる制度等を検討しています。

今後、ロールモデルとなりうる女性社員が誕生

――アドバイザーとのやり取りで生まれた「よい変化」や「感じた効果」があれば教えてください。

平川 プロジェクトが発足後、約半年間進展がなかった時、仕切り直そうと言ってくれたのは小笠原さんでした。2期目メンバーは会社の推薦ではなく自発的に参加を申し出た人を集め、彼女たちが自由に話し合った座談会から少しずつ方向性が見えてきました。小笠原さんの「ここに参加するからには成果を上げないといけない」という言葉が印象的で、やり遂げたいという強い意志が芽生えました。

太田 このプロジェクトに参加しなかったら、できなかった経験がたくさんありました。行き詰まった時には、社員からは出てこないようなアイデアをいただき、多くの刺激を受けました。

吉本 私はプロジェクトを通して、自分に自信が持てるようになりました。ここで得た知識や経験を事業部内でも活かしていきたいです。

平川 若手社員が集まっていることもあり、役職のないメンバーで何かを決めるのはとても苦労しました。そんな時も小笠原さんが客観的な視点で背中を押してくれたので、前に進むことができました。

小笠原アドバイザー 2期のメンバーには「悩みを伴うけど、得るものもたくさんある。それが理解できる人に取り組んでほしい」と呼びかけました。熱心な方が集まり、抽象的なことをどんどん形にしてくれました。“知識”というキーワードに絞ってからの彼女たちは、とにかく頼もしかったです。今後は彼女たちがロールモデルとなって、女性がもっと活躍できる企業へと進化すると感じています。

プロジェクトを通して誰でも活躍できる企業へ

――取組のなかで、特に注目してほしいポイントや成果はありますか?

★仕事風景.jpg平川 私は、以前は別の事業部で事務をしていました。事務職の世界から「いい経験になるから」と突然プロジェクトリーダーを任されました。不安しかありませんでしたが、小笠原さんのサポートとメンバーの協力があり、突き進むことができ、自分の成長に繋がったと感じています。社内でも女性リーダーや女性だけのプロジェクトに対する違和感がなくなってきていて、女性活躍推進を切り口にした取組の成果と言えるのではないでしょうか。

――今後挑戦していきたいこと、展望などあれば教えてください。

桑原 このプロジェクトで結果を出して継続させるとともに、自社だからできる新たなプロジェクトに発展させたいと考えています。そうした活動を通して、女性だけでなく、多様性に対応する組織へと成長していくヒントが現れてくるのではないでしょうか。事業に参加したことは会社にとってもいい経験になったし、社員全体の意識改革にも繋がりました。いい道しるべができたことで、これからの変化にも期待したいです。

(取材日 2023年11月)