[特集]広島県女性活躍推進モデル企業創出事業事例

事業を通じて見つけ出した、自分たちなりの“女性活躍”

株式会社リョーコーテック

法人名 株式会社リョーコーテック
所在地 広島市中区河原町12-2
URL https://www.ryokotec.co.jp
従業員数(うち女性人数) 67名(18名)
管理職数(うち女性人数) 8名(0名)

(2023年11月時点)

1967年の創業以来、広島を拠点に事業を展開。橋梁・煙突などの鉄構構造物、製鉄機械・クレーンといった産業機械の設計を手掛けています。

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左から、澤井さん、米澤社長、野田さん、松本アドバイザー。

取材に答えてくれたのは…

代表取締役社長 米澤 千晴(よねざわ ちはる)さん

時代の変化の中で会社がどのようにあり続けていくべきか、社員の声に耳を傾けながら丁寧に模索しています。

総務部主任 澤井 千晶(さわい ちあき)さん

社内唯一の総務部社員。「女性活躍推進モデル企業創出事業」において企画・立案や実行役を務めています。

橋梁・土木設計部 野田 ちえ(のだ ちえ)さん

技術部門のベテラン女性社員として一連のプロジェクトに参加。これまで感じていた課題の解決を図っています。

★アドバイザー2.jpg株式会社リョーコーテックのアドバイザーは…

松本 明子(まつもと あきこ)さん

「社会保険労務士法人SaLac(サラック)」代表。
2005年開業。MBA社労士として経営に連動した人財戦略と、キャリコン社労士として社員面談や研修を通じた育成支援、従業員と経営者双方のバランスを取りながら、人事労務の専門家としてヒトと企業が成長する組織デザインをトータルで伴走支援しています。その他自治体での講演や、企業研修も多数実施しています

「女性社員はアシスタント」という現状を変えたい

結婚を機に離職することが当たり前の風潮が長くあり、女性の人材とキャリアモデルが不足していました。この結果、勤続年数が短い女性の仕事は男性のアシスタント業務に位置づけられがちに。現状を打破すべく、多様な働き方の実現と、不要な性差の解消を急ピッチで進めています。

――本事業に参画した経緯を聞かせてください。

★インタビュー.jpg米澤 少子高齢化を背景に人材採用が年々厳しくなりつつあり、女性社員は貴重な戦力です。しかし当社には、女性は男性のアシスタント的な位置づけという風潮が残っており、女性活躍が大きな課題でした。そんな時にこの事業を知り、「当社に必要なものに違いない」と参画しました。

澤井 産休育休を取得して仕事に復帰する女性社員はいましたが、そのロールモデルが少ない状態でした。若い女性社員が、この先も当社で働く未来像を描けるようにしたいというのも狙いです。

――「女性活躍推進」は何からスタートしましたか。

リョーコーテック女性社員の会 色調整.jpg澤井 まず20219月に「女性社員の会」を発足し、部門を超えた交流や意見発信の場として、お互いの顔を知り、どんなことを考えているかを共有しました。現在でも、月1回の活動を行っています。

野田 私はここで、若い社員たちに話をする機会をいただきました。人前で話し、意見を発表する場が得られたことだけでも大きかったです。

澤井 その後、アドバイザーの松本さんによる女性のライフプラン講座や、女性社員向け「キャリアデザインの可視化講座」、さらに管理職向けの「女性部下を持つ管理職研修」の出前講座を開催しました。また、社内の業務フローの明確化、取引先の女性社員の方々との合同交流会、世代の違いによる価値観ギャップを知ってお互いを大切にする職場風土作りの為に「コミュニケーション研修」なども実施しました

松本アドバイザー リョーコーテックさん主体で始められたプロジェクトに、プラスの提案をさせていただきました。初めに行ったのは「女性活躍推進の取組が必要とされる背景」を知り、自分事として腹落ちしてもらうことから取り組みました。女性の働く力が必要とされる現在で、定年まで長期に働き続けるのであれば、「実力をつけ、より良いキャリアを目指していこう」と、一人ひとりが望むライフプラン、キャリアデザインの設計からスタートしました

女性社員と管理職社員、双方向からアプローチ

――取組で学んだこと、生まれた変化について教えてください。

米澤 「女性部下を持つ管理職研修」では、管理職サイドの思考を変革する必要があると感じました。例えば「もっと部下を褒めて伸ばそうよ」と進言しても、褒め方が分からない。昔ながらの行動パターンがしみついてしまっているんです。

松本アドバイザー 女性の活躍を推進するには、女性社員側への働きかけも大切ですが、育てる管理職サイドの意識改革の方が重要でした。双方向への意識改革を両軸に据えた施策により、刺激を与えることが有効でした。

澤井 業務フローの明確化は現在も進行中ですが、各部門でベテラン社員と若手社員がペアを組んで作業をフロー表で「見える化」しています。女性社員から「ここが分からない」「もっとスキルを身につけたい」という声が聞こえてきているのが良かったです。それに呼応するかたちで、管理職がアドバイスする動きも見られます。

★仕事風景.jpg野田 さらにコミュニケーション研修では、価値カードを使って世代間の価値のギャップと互いを知る作業を進めました。やってみると、心の距離が縮まった気がします。「こんなことを考えていたのか」と知ることで、普段の業務でも「もしかしてポジティブな言葉をかけようとしてくれたのかな」など、上司を見る目が変わりました。

松本アドバイザー 一連の取組を紐付けて行うことも大切です。社内でキャリアへの意識づけができたら、次は社外との意見交換を行ってみる。そこで得た自分の会社に足りないものを社内へフィードバックするなど、全てつながるように構成しました。

自社に最適なカスタムで女性活躍を推進

――アドバイザーと連携して良かったと感じる部分を教えてください。

米澤 女性活躍推進や働き方改革に伴うプロジェクトを我流で進めるのは非常に難しく、松本さんが弊社にぴったりのアドバイスをくださいました。管理職も女性社員も自分で考える習慣が身につき、最初は受け身だったけど、自発的な姿勢が芽生えています。

澤井 女性活躍に対し「私には必要ない」と言う社員もいましたが、その気持ちを掘り下げてくれました。そうすると「もっと技術を究めたい」など、その人が希望する活躍のかたちが見えてくるんです。女性管理職を増やす当初の目標とは違いましたが、「この仕事は完璧にこなせる」という“ディフェンスの要”のような活躍の場もあることに気付かされました。一人ひとりの“なりたい”にしっかり寄り添ってくださったと思います。

――今後挑戦していきたいことやビジョンがあれば聞かせてください。

野田 これまでアシスタント業務でも疑問は感じていなかったけど、自分なりに仕事を工夫したいという欲求が生まれてきました。それを上司に伝えると、「やってみて」と言ってくれる空気も醸成されつつあります。今後も積極的な発信、発言を心がけていきたいです。

澤井 今回、松本さんのおかげで「女性活躍を進めたいけど何から始めていいか分からない」という問題に対し、たくさんのヒントをいただきました。その礎となった「女性社員の会」は今後も継続していきたいです。

松本アドバイザー 「女性社員の会」は“裏経営会議”だと思って取り組んでいます(笑)そこで出た意見を集約し、業務や制度の改善案として会社や上司に提案し、主体的に自分達の会社を良くする動きを継続していって欲しいと思っています。

米澤 今回は女性活躍でしたが、男性社員やベテラン社員にもそれぞれの意見があります。さまざまな立場から提言を行える場を増やしていきたいです。部署や年代、性別を飛び越え、人材の効果的な活用をしていければと思います。そして、互いが互いを尊重し合い、協力して仕事に取り組む良好な雰囲気をつくっていきたいです。

(取材日 2023年10月)