[特集]広島県女性活躍推進モデル企業創出事業事例

ライフスタイルが変わっても役職をめざせる会社に

株式会社マエダハウジング

法人名 株式会社マエダハウジング
所在地 広島市中区八丁堀10-14
URL https://www.maedahousing.co.jp/
従業員数(うち女性人数) 83名(34名)
管理職数(うち女性人数) 14名(2名)

(2023年12月時点)

1993年にリフォーム会社として創業。現在はリフォームやリノベーションのほか新築、不動産売買・仲介なども行い、県内6カ所に店舗を構えています。

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左から 前田社長、高野さん、原本さん。

取材に答えてくれたのは…

総務経理室 室長 原本 肇(はらもと はじめ)さん

「女性活躍推進モデル企業創出事業」の統括者として、女性社員が長く勤められる環境改善に邁進。新卒・中途社員の採用も担います。

総務経理室 主任 高野 由美子(こうの ゆみこ)さん

女性ならではのライフスタイルの変化と仕事の両立の難しさを改善すべく、制度改革や人材育成カリキュラムの提案を行っています。

★アドバイザー2.jpg株式会社マエダハウジングのアドバイザーは…

棚多 里美(たなだ さとみ)さん

「キャリアフォーカス」代表・キャリアコンサルタント。広島県職員として児童相談所、働く女性・子育て支援部長などを経験。広島県男女共同参画財団常務理事を務めた後に起業。アンガーマネジメント・ハラスメント防止等の研修を年間130件実施しています。3人の子育てをしながらの就業継続と管理職歴14年の経験からの「生きた話」が好評です。

役職者にコーチング能力、女性社員に強みを問う

本事業に参画する以前から、「若手社員の離職率が高い」「営業や現場監督などの直接部門に女性役職者がいない」といった課題を抱えていたマエダハウジング。風通しの良い企業風土ではありますが、社員の半数近くを女性が占めながらも30歳手前で辞めていく人が多い状況です。今回の事業参画を機に、一層「女性躍進推進」の取組を進めています。

――貴社で行われている「女性活躍推進」の取組の具体的な内容について教えてください。

★インタビュー2.jpg原本 初年度の2021年度に講座を2つ実施しました。一つ目は役職者を対象にした「意欲と能力を引き出す1on1」。一言でいうとコーチングスキル習得のための講座です。役職者が部下と定期的に1on1ミーティングをやることで主体的に動ける若者を増やそうという狙いもあり、若手社員にはコーチングを学んでいる上司の方が良いと思いました。男女問わず若手全員が活躍できる環境づくりのため、まず役職者向けに講座を開きました。

高野 もう一つは、パートを含む女性社員を対象に「私の強みを活かして働く」講座を開きました。狙いは若い女性の離職率を減らすこと。加えて、女性にも役職に挑戦してほしいという思いがありました。女性社員は、結婚したら家族のこと、子どもが生まれたら子育てのことと、目の前のことで一生懸命。ライフプランも変わっていくので、長い目線で一生のキャリアを考えることが難しい。そのなかで、役職に挑戦しようという気持ちを持ち続けられる人は少ないです。子どもが大きくなり手が離れた時のことを踏まえて「あなたの強みは何ですか? 結婚も含めた一生を見て、仕事や役職を考えてほしい」という内容でした。みんなが自分の強みに気付くために、参加者がお互いの強みについてディスカッションもしました。

棚多アドバイザー 基本的に、主張できる自立型の人が多い会社です。講座でも積極的に手を挙げて意見を言える人が多く、それは非常に大きな強みです。

原本 続く2022年度は、女性活躍推進にとどまらず、リスキリング宣言、現場のDX推進、男性育休制度、若手スタッフ対象の研修、現場への360度カメラの導入など多くのことに取り組みました。

高野 実は、当社の男性育休取得率は100%なんです。

棚多アドバイザー 男性育休は他社でも進んでいますが、100%というのは凄いことです!

高野 取るのは当たり前という風土にやっとなった…という感じです。育休は周りの協力があってこそで、長期間の休みが取れない場合もありますが、躊躇なく育休申請のできる雰囲気にはなっています。そして取得することは後輩のためでもあります。配偶者の妊娠が分かったら、すぐに育休制度を教えてあげるようにしています。

360度カメラで女性現場監督候補が誕生!?

――2022年度の取組に「360度カメラ導入」とありますが女性活躍との関係を教えてください。

原本 当社には女性の現場監督がいません。業界でも女性の現場監督は少ない状況です。というのも、住宅リフォームの現場監督は1人で複数の現場を担当するケースが多く、1日の半分を移動時間に費やすこともあります。帰社後は事務作業をするため負担が大きく、家庭を持つ女性は大変です。そこで現場に360度カメラを置き、職人や営業担当者がこのカメラでその日の様子を撮影し共有することで、週5日現場へ行かなければならなかったのが1日で良くなりました。大幅に移動時間が削減でき、必然的に残業が減り、女性も現場監督を務めやすくなります。

高野 現場監督は職人が作業をしていない早朝しか現場を回ることができない場合もあり、特に子育てをしている女性にはかなりの負担です。女性が働ける建築現場にするためにはとにかく工夫が必要です。

棚多アドバイザー 3年前にマエダハウジングさんが「女性活躍推進モデル企業創出事業」への参画を決めた時、社長が「現場監督に女性を就かせたい」と宣言し、それが私たちの一つの目標にもなりました。

原本 実は今、現場監督になりそうな働きをしている女性が一人います。より彼女を応援する環境をつくっていきたいと思っています。

会社の強みと弱みが分かり、改善点も明確に

――女性活躍推進アドバイザーとのやり取りで生まれた変化について教えてください。

★仕事風景1.jpg高野 女性活躍については、社内の人間のみで考えていると気付けないことが多いです。これまで現状や課題の整理ができていませんでしたが、棚多さんとやり取りするうちに焦点を当てるべきことが分かってきました。当社の強みは風通しが良く意見を言いやすい雰囲気、弱みは女性の役職者や中堅社員が少ないこと、と指摘され、それを踏まえて講座や研修なども増やしました。棚多さんは県に長く勤められたベテランで、人生においても大先輩であり、女性目線もお持ちです。「今、やらなくちゃ」と叱咤激励され、改めて女性活躍による会社全体の生産性をあげなくてはと思いました。

棚多アドバイザー 社員一人ひとりが思ったことを言える風土があり、意欲も高く、とても成長している会社です。ただ頑張り続けると疲れてしまう女性もいらっしゃいます。活躍している女性はいるけれど、全ての女性がそれを望んでいるわけではありません。そういった点を指摘させていただき、そこから新たな気付きが生まれています。

――今後の展望を教えてください。

★仕事風景2.jpg原本 毎年、一定数の新卒社員を採用することを考えています。それが続くことで、新入社員は立場が近い先輩に教わることができ、相談しやすい人も増えます。新入社員の不安感を抑えることが離職率減にもつながり、ひいては棚多さんに指摘された女性の役職者や中堅スタッフが増えていくのではないかと思っています。

高野 新しい道を切り開いていった女性社員のように、さらに女性の現場監督、役職を増やしていけたらと思っています。そのために、より一層女性が働きやすい環境を整えていきたいです。

(取材日 2023年10月)