[特集]広島県女性活躍推進モデル企業創出事業事例

個々の強みを見出し、家庭と両立しながらキャリアアップ

株式会社プロケアしまなみ

法人名 株式会社プロケアしまなみ
所在地 尾道市長江二丁目7番8号
URL https://nagae.sakura.ne.jp/
従業員数(うち女性人数) 99名(73名)
管理職数(うち女性人数) 8名(4名)

(2023年8月時点)

2009年創業。認知症になっても、障害があっても受け入れてもらえる地域文化を創ることを目指して活動。グループホーム、小規模多機能ホーム、居宅介護支援事業所、サービス付き高齢者向け住宅等を運営しています。

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左から 豊政アドバイザー、松山代表、臂さん。

取材に答えてくれたのは…

代表取締役 松山 慎太郎(まつやま しんたろう)さん

「みんな笑顔で安心に」を経営理念に、働きやすい職場・職員の働きがいをつくることを通じ、利用者が安心して過ごせる居場所づくりを目指しています。常に時代の流れを読み、新しいアイデアや手法を積極的に取り入れて革新を続けています。

看護部長 臂 亜衣(ひじ あい)さん

総合病院の看護師を経て、2017年に午前中のパート勤務として入社し、訪問看護を担当。2年前に取締役に就任し、全事業所を管理する立場に。プライベートではジュニアバレーのコーチも行うなど、潜在能力を引き出す力を生かし、リーダー育成を行っています。

★アドバイザー.jpg株式会社プロケアしまなみのアドバイザーは…

豊政 茂(とよまさ しげる)さん

TS経営コンサルティング」代表。東証2部上場企業での長年の経験を活かし、経営人事・労務の専門家として中小企業経営者に寄り添った支援を行っています。人事諸制度の構築・運用支援をはじめ、人財採用・人財教育・労働生産性向上・モチベーションアップなど経営課題解決に向けた企業研修も実施しています。

働き盛りの女性が制約なく活躍できる環境づくり

職員の約7割が女性にも関わらず、女性リーダーの割合の低さが課題だったプロケアしまなみ。「女性活躍推進モデル企業創出事業」への参画を機に、働き盛りの女性が家庭と仕事をバランス良く両立し、さらにキャリアアップも叶う環境づくりを目指してきました。この3年間でどのような変化が生まれたのでしょうか。

――貴社で行われている「女性活躍推進」の取組の具体的な内容について教えてください。

松山 2020年から正社員を含めた全職員を時給制にし、時間に制約のある職員も活躍できる環境づくりを始めました。特に女性は、働き盛りの時期に子育てや介護などで勤務時間に制約ができる人が多く、短時間しか働けない優秀な人材が埋もれているのではと思ったからです。また、介護事業所の管理者になるには介護保険上の常勤(勤務時間:最低週32時間が基本)と決まっており、これも女性リーダー育成のネックとなっていました。そこで、基本給をベースに経験や保有資格に応じた手当を加算して時給を算定し、これまでと同等かそれ以上の収入を得られるような給与体系に変更。トータルで最低時間をクリアできれば管理者になれるよう、就業規則を見直しました。

★インタビュー.jpg臂 私も最初は、午前中だけのパート勤務として入社しましたが、その後2年ほどで時給制に変わったため、子どもが小さな頃はとても助かりました。参観日や病院など一度抜けて、用事が終わったらまた仕事に戻るとか、自分の予定に合わせてスケジュール調整できるのはとてもありがたいです。この業界で全職員が時給制というのは珍しいです。資格取得費用を全額支給してくれたり、研修を受ける日も勤務扱いになったり、そういう補助もこの業界ではなかなかないので驚かれます。

松山 当社が「女性活躍推進モデル企業創出事業」に参画した2021年度には、広島県主催の女性活躍推進の研修を受け、経営者意識を持つリーダーを育てるためにアメーバ経営の導入を行いました。2022年度にはリーダー研修や1 on 1ミーティングもスタート。次期女性リーダーの育成に力を注いでいます。

個性を生かし成長を促す1 on 1ミーティング

――これまで行ってきた取組のなかで、特に注目してほしいポイントや成果はありますか?

松山 リーダー対象の1 on 1ミーティングです。女性は、家庭との両立や、自分の能力への不安から、リーダー的立場になりたがらない人が多いと感じていました。1 on 1でその不安を払拭し、自信や意欲を高めることが大切だと考えたのです。臂が担当しているのですが、職員の意識や意欲の向上を感じています。

臂 最初は、仕事に優先順位を付けるなど、課題を可視化して改善するところから始めました。そうすることで、それぞれの能力が十分に活かせるようになりました。相手の思いや考えに耳を傾け、なるべくそのリーダーの良いところが強みとして出せるように、しっかりアシストをしていきたいと考えています。

松山 1 on 1は、人事評価にも活用しています。当社では、最近よく耳にする「ノーレイティング」というランク付けしない人事評価を取り入れています。1 on 1を行うなかでキャリアパスに沿って目標を設定し、毎月その進歩状況を確認しながら、細かな要素への評価を、時給や賞与、役職などに反映しています。

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臂 性格や特性を踏まえた評価や、個々の目標設定までの過程・仕事への姿勢も評価できるようになり、職員のモチベーション向上にも繋がっています。

松山 リーダーに求めることは、人材を育てられるかどうか。人を育て教える経験は、自分の身にもなります。そのために必要な制度を導入したり、研修を実施したり、学ぶ機会づくりをしていきたいと考えています。

豊政アドバイザー トップである松山代表が、常に職場改善のために、新しい手法や制度を意欲的に取り入れられているのが素晴らしい。プロケアしまなみさんは、どの事業所もスタッフの皆さんがとても明るい。松山代表や臂さんを筆頭に、管理職の皆さんの努力が、現場に伝わっているからだと思います。

アドバイザーとのやり取りでビジョンが明確に

――アドバイザーとのやり取りで生まれた「よい変化」や「感じた効果」があれば教えてください。

松山 経営や職場環境の改善に関する本はたくさんありますが、それを読んでその通りに実践しても、上手くいくとは限りません。ましてや自分一人でやっても、スムーズに運ぶわけがない。だからこそ、豊政さんにアドバイスをいただき、目的達成のために違う視点から考えることができたのは、私にとって大きな財産となりました。

豊政アドバイザー この事業の取組をスタートした際に、どんな道筋で目標や課題を解決していくか、松山代表が精力的にロジックモデルを作成されていて、これが結構盛りだくさんだったんです。人材評価の問題とか、目標管理の問題とか、どれを一つ取っても大きな問題。それを毎回、代表とディスカッションしながら、一つずつ整理していきました。

松山 豊政さんから参考事例を出してもらい、やり取りを重ねることで、自分の中で思い描いていた考察を掘り下げることができていきました。豊政さんは私の意見を否定したり、ご自身の考えや経験を押し付けたりすることなく、問いかけたことにきちんと返してくださる。そういったところから考えが発展していきました。

豊政アドバイザー 松山代表は明確なビジョンをお持ちなので、ヒントや答えは社長の頭の中に全部あるんですよ。それをいかに引き出すかが、私の仕事だと思っています。

――今後挑戦していきたいこと、展望などあれば教えてください。

松山 リーダーから職員に向けての1 on 1を効果的に推進していくためにも、リーダー対象のコーチングの研修を実施する予定です。職員全体には、これまでと同様に介護福祉士実務者研修、認知症介護実践者研修など、各種研修の参加を推進していきたいです。実務に必要な最低限の研修だけでなく、より高度で専門的な研修に自発的に参加し、スキルアップを目指してほしいと思います。

★チーム松山.jpg臂 施設利用者様の生活の質を上げるために、一番大事なのが現場のチームワーク。チームワークを向上するためには密なコミュニケーションが必要となり、そのために1 on 1ミーティングが重要な役割を担っています。チームワークが強化され、リーダーがいなくても現場が回るようになれば、新しい事業展開に繋げていける。その土台づくりとして、より職員の自発性を高め、「チーム松山」として一丸となって、どこにも負けないケア施設にしていきたいです。

(取材日 2023年10月)