[特集]広島県女性活躍推進モデル企業創出事業事例

“女性活躍”を起点にした“全員活躍”が叶う職場環境を

株式会社ネクストビジョン

法人名 株式会社ネクストビジョン
所在地 広島市中区榎町2-15 榎町ビュロー6F
URL https://www.nextvision.co.jp/
従業員数(うち女性人数) 104名(26名)
管理職数(うち女性人数) 24名(4名)

(2023年10月時点)

1999年創業。Web・スマートフォン・タブレット向けのアプリ設計や開発など、システム開発を主に事業を行っています。健康経営優良法人に7年連続認定。

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取材に答えてくれたのは…

取締役 兼 PMI経営戦略室 室長 横宮 伸次(よこみや しんじ)さん

役員として会社をけん引すると同時に、組織・人事・ガバナンス、法務・リスク・コンプライアンスなどを担当するPMI経営戦略室・室長を務めています。女性のためのより良い道を作っていければとアドバイザーと二人三脚で奮闘中。

★アドバイザー2.jpg株式会社ネクストビジョンのアドバイザーは…

積河内 弘樹(せきごうち ひろき)さん

「ワンシード社労士事務所」所属、特定社会保険労務士、両立促進員、65歳超雇用推進プランナー。「女性視点を活かした経営、モノづくり、マーケティングに移行するためには働きやすい職場づくりが必須」をモットーに数々の会社を支援しています。ベテランならではの引き出しの多さで、人手不足の解消や多様な人が活躍できる環境構築など、企業が抱える課題解決に貢献しています。

性差のない会社だからこそ女性はもっと活躍できる

ネクストビジョンは、IT業界でも比較的女性が多く在籍している会社です。社内では役職名でなく「さん付け」で呼び合うなどフラットな雰囲気。制度や昇級に関しても男女の差がありません。「だからこそ女性社員をもっと増やし、活躍してほしい」という思いのもと、新たな取組を模索しています。

――これまで抱えていた課題や、本事業に参画した理由はなんでしょうか。

★インタビュー2.jpg横宮 当社は女性社員が約5分の1を占めており、IT業界の他企業と比べても比較的女性が多くいます。しかし、若い社員が多いため女性の管理職が少なく、その育成方法や登用に向けた具体的な対策、制度の整備に課題を感じていました。昇進に関して性差のない職場ですので、もっと女性社員を増やし、大いに活躍してもらいたいと考えています。今回の事業では、私たちが知らない女性活躍推進への取組を知ることができるかもしれないと思い参画いたしました。

――貴社で行われている「女性活躍推進」の取組の具体的な内容について教えてください。

横宮 もともと男女関係なく活躍できる土壌が整っています。そこでこれからは女性社員を増やすため、女性の働きやすさに特化した取組を行っていこうと考えました。2021年度より、これまで実施してきたテレワークをより拡大して定着させ、若い社員の声を拾いやすくする1on1ミーティングを導入しました。また、2022年度には会社に対する帰属意識を養う社内報の作成や、より良い労働環境を整備していくための意見箱を設置。さらに多様な働き方を実現する手段のひとつとして、短時間正社員の採用を20234月からスタートしました。

テレワークの活用や短時間正社員採用で家庭と両立

――それぞれの取組の詳細や、そこで生まれた効果について教えてください。

横宮 テレワークはもともとコロナ禍でスタートしていたのですが、さらに誰でも利用しやすいように整備し直しました。今では前日の夕方に申請しても適用できる体制です。もともとITを活用することにためらいがない業種なので、テレワークとは相性が良いと感じています。

積河内アドバイザー 女性の働きやすさの実現とテレワークは親和性が高く、例えばお子さんがいる女性社員であれば、幼稚園や保育園の送り迎えがしやすい、お子さんが熱を出した時に自宅でも仕事ができるなど、大いにメリットがあります。ネクストビジョンさんでは午前あるいは午後のみのテレワークも可能なので、急遽の場合にも対応しやすいですね。

横宮 それから1on1ミーティングは、入社12年目の若手社員が、年齢の近い入社34年目の先輩社員に定期的に相談にのってもらう制度なので、仕事とは別にいろいろな話ができる場を作れたのではと感じています。

積河内アドバイザー ”逃げ道を作る”というと言い方が悪いかもしれませんが、仕事をする上で、心の安心感や仕事に対する納得感を生む場所は、とても重要だと思います。

★社内報.jpg横宮 社内報の作成は、あえて手元に残る紙で制作しました。社員の自宅に郵送して、ご家族にも見ていただけるよう配慮しています。たくさんの社員が登場して、楽しく読んでもらえているようです。

積河内アドバイザー IT業界はスキルさえあれば比較的転職が簡単な業種です。長く会社に残りキャリアを構築してもらうためには、帰属意識を高めていただくことが重要です。社内報をあえて紙ベースで作成して、郵送される手段は、社員のご家族とも会社情報を共有できるという意味で、忘れていた価値観を新たに見出す取組と言えます。

横宮 さらにオンライン上で意見箱を設置して、社内の改善点をあぶりだす作業も行いました。50件程度の意見が寄せられ、例えば「スーツではなくオフィスカジュアルに」という意見や、「掃除の際に使う雑巾を除菌シートに変えては」などのアイデアが出され、取り入れられるものはすぐに実施しました。

積河内アドバイザー 意見箱は他社でも導入しているケースが多いですね。

横宮 最後に短時間正社員の採用ですが、現在こちらの枠で入社した男性社員が1名おります。今後は、このような働き方を求める女性にも入社してもらいたいです。

積河内アドバイザー 育児や介護で短時間の勤務を希望される女性は多いものです。しかし、短時間正社員制度を用意している会社は少なく、結局は補助的な仕事しかできないパートタイマーの選択肢しかありません。例えば、育児・介護・病気治療などで、一時的に短時間勤務しかできない状態の場合、転職やパートへの移行ではなく、短時間正社員区分へ変更することで、キャリアを断絶させることなく、就労制限要因が解決することで正社員区分へ変更することが可能になる短時間正社員制度は、他社にも是非取り入れていただきたい制度です。

健康管理にも注力しダイバーシティ経営を目指す

――アドバイザーと連携してよかったと感じる点や、変化について教えてください。

横宮 これまで女性活躍を起点とした働き方改革のノウハウがありませんでしたが、外部からの視点で効果的なアドバイスをいただき、制度を推進することができました。また、自社ですでにスタートしていた取組に関しても、「間違いではなかった」という確信を得ることができました。

――今後挑戦していきたいこと、展望などあれば聞かせてください。

★仕事風景.jpg横宮 これまで整えてきたテレワークや1on1ミーティングなど含め、「当社にはこのような制度がある」と言えるものをもっと整備し、それらを構築する仲間を増やしていきたいと考えています。制度の充実は対外的に会社をアピールするのに有用なので、採用時にも活用できます。ちなみに弊社は7年連続で「健康経営優良法人」に認定されており、働きやすさに定評があります。会社があるビルの5階には「ヘルスケアマネジメント協会」が入っており、そこで心や体の悩みを相談できるのもポイントです。

積河内アドバイザー いきいきと働き続けるために、健康は男女関係なく最重要の項目です。特に近年では、男性には分かりづらい女性特有の病気や心身の状態をもっと理解していきましょうという課題があります。そのあたりにも、今後力を入れていきたいですね。

横宮 女性社員の働きやすい労働環境については整備が進んできました。これからは健康管理を含めた幅広い相談体制をつくり、性別にかかわらず、多様な社員が能力を発揮できる会社経営へと発展させていきたいです。

積河内アドバイザー 女性活躍はあくまでとっかかりです。働きやすく働きがいのある職場環境をつくることは、労働生産性や、ウェルビーイングを高めることにつながります。女性活躍を起点とした、全員活躍へ。最終的には誰もが活躍できる、真のダイバーシティ&インクルージョン経営を目指したいですね。

(取材日 2023年10月)